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[ 社会派 ]
闇の底
薬丸岳 出版月: 2006年09月 平均: 7.08点 書評数: 12件

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講談社
2006年09月

講談社
2009年09月

No.12 5点 パメル 2021/01/12 10:15
長瀬は幼い頃に性犯罪者の毒牙にかかり妹を失った。それが一つのきっかけとなり刑事となった。そして長瀬は管轄内で起きた幼女暴行殺人事件の担当をすることになる。強い信念を持って犯人を捕まえようと決意するが、捜査は難航を極める。まるで進展がないまま第二の事件が起きてしまう。                          性犯罪を矯正することの難しさは、以前から指摘されている。性犯罪前歴者の再犯を防ぐには、どうすればいいのだろう。本書では死刑執行人サンソンを名乗る男が、その問いに答えを提示する。犯罪をなくすには恐怖しかないという信念のもと、男は少女が犠牲になる性犯罪が起こるたびに、陰惨な手口で性犯罪前歴者を殺害する。
捜査の一翼を担うのが長瀬刑事。やがておぼろげにサンソンの影が見えてきた時、長瀬は犯人のみならず、自らの心の闇と向き合わざるをえなくなる。
身勝手な犯行で我が子を失った両親の悲しみや、卑劣な犯罪の捜査にかける刑事たちの意気込みといった、読者にとって共感しやすい心情だけではない異常な性癖を持つ犯罪者の歪んだ心理も丁寧に描かれており、その浅ましくも惨めな心のありようが強い印象を残す。
謎解きよりも濃密な心理描写に力点がおかれているとはいえ、結末の意外さは出色。読み終わった後に複雑な思いを抱かせる、ひねりの効いた幕切れ。

No.11 6点 take5 2019/07/04 06:00
リーダビリティが高く社会的な問題にも踏み込んで書かれていますが、最後に明らかになった犯人の背景が弱いと感じました。犯人当てとして練りすぎてしまったのかなあと感じました。

No.10 7点 メルカトル 2018/08/17 22:10
幼女に対する性犯罪、司法の在り方、被害者の遺族の憤りと深い憎しみ、「社会派」として色々考えさせられる作品でした。その割にはリーダビリティに優れているためか、すんなり読めます。重いテーマを巧妙にエンターテインメントに昇華しているとは思いますが、深く掘り下げられているかというと、そうでもない気がします。まあ、これ以上ディープに過ぎるとそれはそれで胃がもたれそうですが。

ミステリとしては一貫してフーダニットに拘っています。果たしてサンソンは誰なのか、最後の最後まで予測がつきません。見事にやられた感じですね。本格ではないので伏線や手がかりなどで犯人を推理できる仕組みにはなっていませんが、意外性は買えます。
ラストは意見の別れるところだと思いますが、個人的にはそうあって欲しくなかったなというのが正直な感想です。

しかし、どこまでも破綻することなくよく考えられたストーリーだと思います。テンポもいいですしね、時間があれば一気読みするのが理想じゃないでしょうか。私のようにいちいち立ち止って無駄に時間を掛けるのがもったいないような作品です。

No.9 8点 ayulifeman 2012/06/04 00:08
タイトルとストーリーの概略で敬遠していましたが淡々と読めました。
そして読んでよかった。
被害者にならないように祈るしかないんでしょうね。
怖いです。

No.8 7点 E-BANKER 2011/03/30 23:15
乱歩賞受賞後の長編第2弾。
今回のテーマは「性犯罪」・・・
~子供への性犯罪が起こるたびにかつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人サンソン。犯人を追う刑事、長瀬。そして、過去のある事件が2人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たな局面を迎える~

処女長編「天使のナイフ」でも感じたことですが、この作者は盛り上げ方がウマイ。
結末に向かって「ドキドキ感」がどんどん高まっていくというのは、ミステリー作品にとって非常に重要なことだと思います。
途中で「いかにも」というダミーの容疑者が想起されるように書かれてますが、これは「きっとミスリードだろう」と思いながら読み進める・・・じゃあ誰がサンソン? というドキドキ感がたまりません。
真相はサプライズ感十分なのですが、今回はラストが割りとあっさり書かれてるのがちょっと残念。
いずれにしても、読み応えは十分の佳作という評価でいいでしょう。
(重いテーマですが、その辺はあまり気にならず・・・一気読みできます)

No.7 7点 じゃすう 2011/03/08 22:50
虚夢の次に読みましたが、今回は司法への問題提起というカラーは薄いように感じました。
むしろ『幼女暴行殺人』を犯した者を、私刑という形で葬っていくことは許されることなのか、という問いがあるように思えました。
もちろん(現在では)法律的にも道徳的にも、許されるものではないのですが、現実にもそういった事件が起きたばかりということもあり、考えさせられるものでした。

最後の刑事の選択、賛否両論でしょうね。
しかし共感できてしまう、支持したいと思ってしまうのは、たぶん人として自然な感情なのではないのかと思っています。

「復讐は恨みの連鎖しか生まない(だから我慢しろ)」というのは、被害者に一方的な泣き寝入りを強いる言葉であり、それこそ人権侵害であると思います。

欲を言えばサンソンの、どうしてそういう手段を選ぶようになったのか、など深く掘り下げてもいいのではないかと思った。
テーマとはずれるが、村上と藤川、長瀬と父親のエピソードなども、もっと詳しく知りたい部分だと思った。
ミステリとしては慣れた人にはミスリードがわかりやすく、イマイチかもしれません。

No.6 7点 ウィン 2010/09/25 12:12
江戸川乱歩受賞後第一作となる本作だが、期待を裏切らない出来だった。
ミステリに社会問題を盛り込み、さらにミステリとしてのうまさもある。この人には将来的にもっとビッグになってもらいたい。
前作の「天使のナイフ」ではテーマが少年犯罪で子供は加害者であったが、本作のテーマは児童への性的な暴行及び殺人、子供たちは被害者である。
最後まで犯人は分からなかった。まさか、のラストだった。重いテーマながらも、面白いのですぐに読める。オススメ。

No.5 7点 touko 2009/12/10 22:38
主人公と先輩刑事たちの関係になぜか「坊ちゃん」を連想したり、犯人逮捕時のくだりにはなんだか「羊たちの沈黙」を思い出してしまいました(笑)。
犯人はほぼ二択、意外性はあまりないだけに(もう1人の方だったら救いがなさすぎ)、天使のナイフと比較すると、サプライズ度が足りないなあ……などと思いながら読んでいたのですが、犯人の計画の内容とラストはひねりがある(不謹慎にもシャレてるなあ、うまく決めたなあなどと感じてしまいました;)と感心。
ただし、幼女強姦致死のようなあまりにも深刻な内容と、売れ線エンタメのお手本のような読みやすさや作劇上の技巧がミスマッチな感がなきにしもあらず?
しかも、相乗効果ではなく両方薄まっているような感じがしてしまって。。

他の方の評にもありましたが、題材のショッキングさに依存していない直球のミステリ作品も読んでみたいです。

No.4 6点 シーマスター 2009/12/07 23:46
前作と同様に悲愴な過去が絡んだ陰惨な連続殺人劇であり、「誰が次々と私刑を処す殺人魔なのか?」が謎の中心となる濃味のミステリー。

Who?に関しては自分も途中「コイツなら意外性も十分だし辻褄も合わせられる」と2回(つまり順に2人)ほど目星をつけたが敢えなく××

推理して真相に辿り着ける話ではない(決して負け惜しみではない、断じて違う)が、これほど絶望的でやりきれない構図を予想できた読者がいるのだろうか?
99%の悪魔性と1%の人間性の罪深きカルマの果てには漆黒の闇以外の何物もないということなのか・・・

映画〇〇〇〇Nや〇〇Wにも通ずる悪の因果応報と連鎖、底知れぬ暗鬱さのみを残すトラジディであることだけは間違いないだろう。

No.3 7点 あびびび 2009/11/19 15:28
夢中になって読めた。ある意味、天使のナイフよりも濃厚だ。

しかし、終章でその後が淡々と綴られているが、そのせいか余計に不気味な結末となった気がする。

他の作品も読んでみたい。

No.2 9点 2009/08/06 09:49
 読み終わった第一印象は、「もったいない」ということでした。

 なぜ「もったいない」のかはさておき、とっても面白い作品でした。
 テーマは重いけど、ミステリーとしても完成していて、緊迫感があり、読んでいて飲み込まれていきました。
 
 「もったいない」についてなのですが、やっぱりテーマが重過ぎるな、と。
 文章の読みやすさとストーリーのおもしろさは、素晴らしいものを持っています。それだけに、もう少し軽い作品を書いたら、すごい作家になるだろうな、と思いました。
 高野和明と共に、乱歩賞二大作家ですね。二人とも東野圭吾にどこと無く似ていますが。
 
 あと、タイトルは個人的にはどうかと。。。

No.1 9点 ryo 2008/09/05 07:11
面白い。またまた一気に読めました。「そうであって欲しくない」人間と、動機は不明だが「心の闇を持っている」人間の、どちらかに犯人は絞られてはきましが、ぐいぐい引き込まれました。最後は、あれでよいのかなぁという気持ちと、犯人の心の闇がはっきりしないままではありますが・・・。
最後、長瀬の笑顔の裏の闇が気になります。


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