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[ 警察小説 ] 刑事の怒り 刑事・夏目信人シリーズ |
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薬丸岳 | 出版月: 2018年02月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 2件 |
講談社 2018年02月 |
講談社 2020年03月 |
No.2 | 6点 | E-BANKER | 2020/08/10 18:20 |
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警視庁刑事・夏目信人を主人公とするシリーズ最新作。
「刑事のまなざし」「その鏡は嘘をつく」「刑事の約束」に続くシリーズ四作目となる。 単行本は2018年の発表。 ①「黄昏」=東池袋署での最後の事件は、老いた母親と二人暮らしの娘が数年前に死んだ母親をそのまま放置していたという事件。「真犯人は誰だ?」なんていう謎もなく、事件は実に地味な展開。なのだが、錦糸署に転勤となってからも、夏目はこの事件に拘りを持つことになる。ただ・・・ラストも結構地味なのだが。 ②「生贄」=女性への強姦事件。それは許すことのできない犯罪。ということで、錦糸署での夏目のパートナーは心に傷を抱えた女性刑事本上。二人の捜査の結果浮かび上がる真相は、女性から男性へ向けた鋭い槍のような訴えだった。でも、自分の身を挺してでもというのは・・・痛ましい。 ③「異邦人」=外国人出稼ぎ労働者の犯罪がテーマとなる本作。テーマとしてはちと古いような気はする(ヴェトナム人が日本という国が”夢の国”なんて思ってるって、いつの話だ?)。出稼ぎ労働者に対しても夏目の態度は真摯そのもの。で、最終的には心が温かくなる話。 ④「刑事の怒り」=唯一書下ろしとなる作品。で、これはシリーズ一作目「刑事のまなざし」から続く、夏目の娘-ある事件の被害に遭い寝たきりとなっている-にもつながる話。事件の被害者は娘と同様、ベットで寝たきりとなっている二人の男性。自分で動くこともできない、言葉を発することもできない人間は死を望んでいるのか? 捜査を行うなかで、夏目は苦悩することとなる。そして判明する重い事実。もちろん「怒り」とは真犯人に対する夏目の「怒り」。 以上4編。 今回より装いも新たに、東池袋署から錦糸署へ異動となった夏目。転勤おめでとうございます!っていう感じでは全くなくて、早速次から次へと事件は発生する。 (この展開って、何となく東野圭吾の加賀恭一郎シリーズとかぶるような気がする) これまでもエゴや保身、妬みなど、人間の負の感情に端を発する犯罪にまっすぐに真摯に接してきた夏目。当然、今回も変わらぬ姿勢で事件と取り組むこととなる。 ただ、今回はメインとなる④を含め、事件としては地味で派手さは全くない。それこそ、東京のそこらへんに転がっていそうな事件。それでもそこには人間の醜い感情が露になっている。 決して目をそらしてはいけないのだ。そんなことを感じさせてくれる本作と、刑事・夏目。シリーズファンなら是非どうぞ。 (ただ、正直インパクトは弱いかな) |
No.1 | 7点 | take5 | 2019/08/05 11:13 |
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2023*2*10
再読 夏目のおかれた状況がなければ、 エゴによる偽装の自殺幇助を暴くくだりも 信憑性がでないでしょう。 自らが悲しみを受け止められる人が 一番優しく厳しくなれるのだと 再認識した次第です。 薬丸岳が好みです。 夏目シリーズ第4弾 短編集 前作で夏目の娘の状態に進展があったので、 事件にどう絡めてくるか興味深く読みました。 今回も4つの短編に社会的な問題をいくつも取り入れています。 以下ネタバレ含みます。 特に性犯罪被害者の視点と、尊厳死の視点が大きいのですが、 それぞれ当事者にならないと真にはわからない事だと思います。 その中で、真摯に書いている作者と、真摯に向き合っている主人公に、 今回の読書もよい時間を頂きました。 |