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[ 短編集(分類不能) ]
失はれる物語
乙一 出版月: 2003年12月 平均: 6.67点 書評数: 18件

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角川書店
2003年12月

KADOKAWA
2006年06月

角川書店
2006年06月

No.18 6点 パメル 2023/09/12 06:38
各編の主人公は、身体的に弱い立場だったり、精神的に脆い人たちが多い。そのため、物語としては暗く悲しいものになり、淡々とした文章がその効果に拍車を掛けている。光を与えられながら、光から目をそらしたり、存在を認められているのに、存在を否定したりする。そんなささやかに密やかに生きている人たちの静かで切ない喪失をテーマにした6編からなる短編集。
「Calling You」誰からも電話もメールも来なかったらという不安から携帯電話を持てないでいる女子高生が主人公。ある日、想像で作り上げた携帯電話が鳴った。悲しいが胸温まる物語。
「失はれる物語」交通事故で、右腕の一部の触覚しか残らなかった主人公。妻は彼の皮膚感覚が残っている部分に文字を書いて会話する。指を1回動かせばYES、2回動かせばNOで答える。奥さんを思う気持ちに切なさとやるせなさが残る。
「傷」暴力的な指向のために、特殊学校に移されることになった主人公。そこでアサトに出会う。彼は、アサトの特殊な能力に気付く。そこまで自己犠牲をしなくてもと言いたくなる。
「手を握る泥棒の物語」自らデザインした時計を世に出したい主人公は、資金が足りなかった。彼は伯母の宝石や現金が入ったバッグのことを思い出す。ユーモアたっぷりながら、ドキドキするサスペンス。
「しあわせは子猫のかたち」実家から離れるように遠くの大学を受験し、一人暮らしをすることになった主人公。世界の全てを拒否するように、ひっそりと暮らしていこうと決意した彼の生活に思わぬ齟齬が生じ始める。視認できない存在との奇妙な同居生活に癒される。
「マリアの指」どこにいても別格として扱われていたマリアが電車に轢かれてバラバラになった。マリアの死の謎を解くというミステリでありながら、ミステリ色は薄い。主人公の指を持ち続けるところや、研究室の男が指を探し続けるあたり、そしてそれらをつなぐ悲しい理由が見事。

No.17 7点 ミステリーオタク 2022/06/20 17:26
 この作者とはあまり相性がよくないと思っていたが、少し前に読んだアンソロジーの中での作品が面白かったので食わず嫌いをやめて久々に乙一短編集を読んでみることにした。

 表題作はあまりにもキツい話だが、マイベストの「手を握る泥棒の物語」を除けば他の作品も程度の差はあれ作者らしい哀愁と切なさと淡い希望を漂わせる物語になっている。しっかりした本格要素を含む作品もある。

 マイベスト以外の作品を自分は本当に楽しんで読んだのか何とも判然としないが、しばらくしたら又、乙一作品を読んでみようと思う。

No.16 5点 sophia 2020/08/09 19:18
プロットは悪くないのですが、何でそういう風にするのかなと思うところが多いです。「手を握る泥棒の物語」はオチがもったいない。「得意げな表情」と書いてしまわない方が良かった。「失はれる物語」はタイトルを歴史的仮名遣いにした意図が分かりませんし、「しあわせは子猫のかたち」は子猫を殺す必要性がありません。「マリアの指」はマリアの家や大学から近い等々力陸橋の方を選ぶのが自然だと思うのですが。
あと全体を通して思うのはやはり文章の拙さです。氏の作品を読むのは十数年ぶりですが、こんなに下手だったっけと感じました。赤ペンを入れたくなるレベルで、気になってなかなかテンポよく読み進められませんでした。アラフォーの現在、少しは上達されていることを願いますが。

No.15 7点 斎藤警部 2020/06/30 11:40
Calling You
“最後の一時間”をシンプルなファンタジーの切なさで締めるのかと思ったら。。SFにミステリの要素が相次ぎ参戦、更に胸キュンwの結末になりました。そういや、“もう一人”登場人物がいたんだったな。。

失はれる物語
このラストを含む最終章に救いの明るさを感じる私は、既に若くないのだな、と確認します。 忘れ得ぬ愛の一篇。


グリーンマイル(キング)を思わせる設定の、優しい残酷ファンタジー。父親の遺品の件や、去って行った人達の後日談に、もう一捻りあればとは思うが、この広がり行くエンドは良い。

手を握る泥棒の物語
こりゃあ楽しいドタバタ犯罪未遂(?!)。 本格ミステリの体にしてたらバカにもならない弱いトリックだけど、こういう話ならグッド。恋愛方面に行かないのも意外と好印象。

しあわせは子猫のかたち
ファンタジーと本格ミステリの融合。特殊設定とは微妙に違う。ノンケ男女の友情が眩しい。ある人物の掘り下げが意外と浅く終わるところに作者の人苦手ぶりが赤裸々だが、それもまた愛おしい。

ボクの賢いパンツくん
最高にいい意味でノーコメンツ。成人オムツくんに想いを馳せるのが、正しい読み方か?!

マリアの指
やられた。。。。。。。。。本格流儀でもこんだけ決められるのか! しかもこの心理の深み。叙述ミスディレクションに「おお!」と思った矢先、まさかの。。 「なーんだ○○かよ」と鼻白んじゃう事象が次々に覆される快感と、それに伴う残酷なツイスト。。。 じんわり沁みます。最高です。やばい、立ち直れない。

ウソカノ
密度が高い! バカ話かと油断したら、油断しただけの甲斐がある、創作秘話めいたスペシャルな味だった。

No.14 6点 まさむね 2019/07/07 00:23
 「Calling You」、「失はれる物語」、「傷」、「手を握る泥棒の物語」、「しあわせは小猫のかたち」の5作品は既読だったのですが、内容をよく覚えていなかったため、2度目でも十分に楽しめました。作者には申し訳ないですが、何てお得な読者なのだろうかと、自分勝手に満足しました(笑)。
 さて、書き下ろしの「マリアの指」。分量的にもこの短編集中で1番だし、ミステリ的な面も強そうなので楽しみにしていたのですが…。うーん、作者らしいし、決して悪くはないのだけれども、結末にスッキリしない感情も残ったかな。
 全体としては、作者の良さを知ることができる短編集と言えると思います。個人的には「手を握る泥棒の物語」が好き。真逆の世界観「失はれる物語」も響きますが、読む時点の精神状態に評価は大きく左右される気がしますね。

No.13 8点 ニックネーム 2015/12/20 17:00
特に「calling you」「泥棒」「子猫」の話が良かったです。

No.12 6点 メルカトル 2014/12/14 22:34
なかなか乙一らしい作品が揃えられているなという印象だ。出来にばらつきはあるものの、平均すればそれなりに評価できると思う。
表題作は起伏とオチがないので、いまいち。ダークさは好きなタイプなんだが、もっと生々しさが欲しかった気がする。『しあわせは子猫のかたち』が最もミステリ色が濃く、個人的には頭一つ抜きん出ていた。繰り返し短編集に掲載されているのも納得の出来だ。次点は『マリアの指』で、これもミステリ的要素が強い作品だが、犯人を断定する決め手に欠けている。よくよく考えてみれば非常にドライな主人公だと思うが、これもまた乙一の持ち味なのだろうか。他についてはまずまずではあるが、ファンにとってはこれぞ粒揃いと言ってもよい作品が並んでいるのではないかという気がする。
乙一は本格ミステリを書こうと思えば書けるし、しかもかなり優れた作品をものにすることも十分可能なはずなので、出来ることならば短編集でも連作でもいいのでもっとミステリに挑戦してほしいと私は強く願っている。

No.11 6点 okutetsu 2011/08/22 02:41
表題作の「失はれる物語」は正直読んでて辛いのであんまり好きになれませんでした。
しかし、他の短篇は読み応えがあってかなり好きなものが多かったので、そこそこ満足。
ミステリではないですが「calling you」が一番良かったと思います。

No.10 6点 ウィン 2010/09/25 12:04
書き下ろし作品が読みたくて借りて、そのついでに他の短編も再読。
書き下ろし作品は微妙だった。
面白くも面白くなくもない。何ともいえない。
一番の出来だったのは「失はれる物語」。
抜きん出ていい。
俺はあんまり乙一作品と相性が良くないのか、どの作品を読んでもピンとこないのだが、この「失はれる物語」だけは、ものすごく心に響いた。
これだけなら◎だ。

No.9 5点 VOLKS 2009/03/02 22:07
ミステリー小説として云々よりも、小説としてどれも個人的にあまり好きな作風ではなかったので、この点数ということで・・・

No.8 6点 深夜 2007/12/30 22:15
「calling you」2点 設定が好みではない。
「失はれる物語」7点 ラストの暗い収束が気に入った。
「傷」5点 なんか綺麗過ぎるな。
「手を握る泥棒の物語」5点 可もなく不可もなく
「しあわせは小猫のかたち」6点 設定は好みでないが、良い話だなと思う。
「マリアの指」8点 良質な短編ミステリーって感じ。ラストはなんか気に入らないが・・・

全体としては平均して大体6点くらい。

No.7 7点 ぷねうま 2007/11/04 11:06
全体的に統一性がなく、ちぐはぐな印象の短編集。寄せ集めと書き下ろしだからしょうがないか。
「手を握る泥棒の物語」が一番面白かった。
「マリアの指」は本格を書こうと思って書いたのかもしれないが、はっきり言って駄作だと思った。

No.6 7点 2007/09/25 22:59
失はれる物語でかなりのショックを受けた。が、それで衝撃を受けすぎて他の作品をほとんど覚えていない。

No.5 8点 わたなべ 2005/03/19 01:16
「手を握る泥棒の物語」が特に面白かったです。
「マリアの指」で減点。
全体的にも「ZOO」には及ばないか。

No.4 8点 aya 2004/08/18 01:47
表題作・失はれる物語とマリアの指以外は本当に面白かった。マリアの指以外は読んだことある作品やったけど、また泣けた。CALLING YOUは、やっぱりせつなぃ。書き下ろしー☆とか思って楽しみにしてたマリアの指はちょーっと期待はずれ。好きな人は好きなんやろうけど、好みじゃなかった…。

No.3 4点 ごりあて 2004/08/11 16:22
「マリアの指」は反則だと思うんですが・・。

No.2 9点 あびにゃん 2004/06/15 11:17
「calling you」、「手を握る泥棒〜」はミステリーでダークな感じではないもののかなり楽しめた。特に「call〜」はちょっと泣けた。「傷」は読んでて途中で疲れてしまった。「幸せは仔猫〜」は普通。最後の「マリアの指」は唯一のミステリーで書き下ろしとのことでかなり期待をして読んだせいなのか結構期待はずれで物足りなさを感じた。

No.1 9点 りえ 2004/03/18 21:56
「calling you」、「失はれる物語」、「傷」、「手を握る泥棒の物語」、「しあわせは小猫のかたち」、「マリアの指」の6話の短編集。乙一があとがきで、「GOTH」は怪物を描いたものと書いていた。これは、童話のような感じがした。ミステリとして読むなら、かろうじて「マリアの指」がそうかなーというくらい。「手をー」以外は読後せつなくなる。後味よくてグー。でも一番おもしろかったのは、あとがきの追記。笑ってしまった。


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