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[ 本格 ]
騙し絵の檻
ジル・マゴーン 出版月: 2000年12月 平均: 6.18点 書評数: 11件

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東京創元社
2000年12月

東京創元社
2024年03月

No.11 6点 いいちこ 2023/11/09 19:39
本作を一貫してアリソンと親しかったホルトの視点から描いた点、オールソップはアリソンの身辺を探っていた私立探偵であり、かつ恐喝者でもあったという設定が、見事にレッドへリングとなっている。
ただ、犯行に至るプロセス・状況の描写があいまいであるという点も相まって、鮮やかな反転というほどの効果は挙げられていない。
水準を超える作品であることは間違いないが、本作もやはり世評ほどの傑作であるとは感じられなかった

No.10 7点 ぷちレコード 2022/08/25 22:58
殺人の罪で終身刑を言い渡された男が、仮出所の機会を得て、自分を陥れた人物を捜し出し復讐を遂げようとする。彼は女性新聞記者のアシストを受けながら、かつての妻や同僚たちを追求していく。
容疑者がいったん全員容疑圏外に置かれるというスリリングな展開が、鮮やかな逆転の発想を一発で劇的に様相を新たにする終盤はお見事。

No.9 8点 斎藤警部 2017/01/31 07:00
無実の二重殺人罪で無期懲役となり、十六年ぶりの仮出所で復讐に燃え尽きようと決意した男。
そこへ、事件当時まだ駆け出しだった一人の女性記者が寄り添って来るが、心を堅くした彼は。。

魅力的過ぎる、不規則極まりないフラッシュバック&カットバックの畳み掛け。時は飛ぶ。カットバックの中のフラッシュバックが今、見えた!
こんだけストーリー運びの密度が剛健だと、会話や何やらの多少の気の効かなさ(マーロウ基準)などまったく蚊帳のアウトサイド。ってもサスペンス集中を減じない程度に気は効かせてる。その、写真による閃き、って何よ。。

最後の反転は、一瞬の閃光に目の眩む様なモンではなく、ドミノが高速でパタパタ倒れた挙句じんわり来るやつ。別に世界まではひっくり返らない。もちろんそれで合格なんだが、こりゃ、後続の者共にもうひとひねりフタひねりを誘発しねえワケがねえ。。 だがそれでも、分厚い中盤(全体の9割弱)が面白過ぎたんだ、最低で8点だ!! 「どうだ、議長?」
正直、こういう隠蔽真相の肝なら、強烈さが欲しいだけなら連城の短篇演出などで味わいたかったとは思う。が、中盤の熱さの魅惑は長篇ならではのマロングラッセ大人喰いだ。スコッチソーダも4杯ほどお供したい。。 「コンテストは落選した。」

作者があまりに頭の冴えた読者を想定・期待し過ぎの渋い考えオチ、その燻し香はサンタ・クロースをも煙突から追い返す勢い。。とは少し思ったが、仮にこの結末に爆殺されずスローな憤死を余儀無くされたとしても、現実世界へ生還のあかつきには何かしら満足気なほんわかした球状のものが、心の中に小さく揺れている事でしょう、と未読の方々のために祈っておきます。  

最後の台詞の熱さと、機転がまたいいね! 以上!

No.8 6点 nukkam 2016/09/19 03:08
(ネタバレなしです) 1987年発表の本書はマゴーンのミステリー第4作でシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。森英俊は本書を戦後ミステリーでベスト3クラス、法月倫太郎もクリスティー亡き後の25年間に登場したミステリーでベスト3クラスと手放しで大絶賛しています。高い評価の理由は黄金時代の本格派を彷彿させるような謎解きになっているからでしょう。終盤で主人公が事件関係者を集めて推理を披露しながら一人また一人と容疑者リストから外していく、エラリー・クイーンの国名シリーズのような展開を見せます。そしてかなり思い切ったどんでん返しがあるのですがここはもう少し説明を尽くしてほしかったですね。このどんでん返しは考えようによってはあまりに単純なだけになぜ警察の捜査で気づかなかったのかという十分な理由が必要ではないでしょうか。上手く騙されたと納得の敗北感を味わうよりも本当にそれってあり得たのかというもやもや感が残ってしまいました。

No.7 5点 2015/12/18 10:12
無実の罪で16年間獄中生活を送ったビル・ホルト。釈放後、彼は協力者ジャンを得て罠にはめた相手を探そうとする。

執念の物語ですが、女性記者、ジャンの存在は復讐という暗さを和らげてくれます。
たった二人で、16年前のことを、しかも聞き込みが中心の捜査でどれほど調べられるのか疑問ですが、そこが小説としての面白さでもあります。
事実、最終局面で手詰まりになる。そして大団円でのぎりぎりでの大逆転。

テンポがよくないとか、読書に時間がかかったとか、他の方もご指摘されていますが、まさにそのとおり。これは、時間軸の行き来だけに起因しているというよりは、複数の聞き込み場面があるわりにメリハリがなさすぎるからなのだと思います。
実際には場面が変わっているのに、ホルト視点(ほとんど一人称といってもよい)だけで構成されているので、上手い書き方をしないかぎり、ダラダラするはずです。読者への情報提供も手薄になりますしね。そこが肝だったりするのですがね。この肝となるミステリー手法は一歩間違えれば、文句が出そうですが、個人的にはまずまずの満足度でした。

最後の大逆転がまずありきなので、中盤は伏線を散りばめながら適当に書けばいい。作家は手が抜けますね。
とはいえ、中盤でのホルトの心境描写は、スリルとか、サイコサスペンスとかではないわりに、物語を引っ張ってくれるので、サスペンスの点でも及第点です。でもやはり、メリハリはない!

No.6 5点 ボナンザ 2014/07/29 18:26
謎解き小説としてはまあまあ読ませる。
自分をはめた奴への復讐というのも話として面白い。
もう少しテンポが良ければもっと高評価だったかも。

No.5 6点 蟷螂の斧 2013/12/05 11:23
ビルは、幼馴染の人妻・アリソン、およびその浮気調査をしていた私立探偵を殺害したとして服役する。釈放後、女性記者・ジャンが現れ行動をともにする。ビルは復讐のためにはジャンが邪魔であるが、ジャンはビルを慕う。この辺のやり取りは楽しめました。男冥利に尽きる?(笑)。アリソン殺しをメインに物語は進行するが、容疑者全員にアリバイがあり、動機も見つからない。さて・・・。解説で法月綸太郎氏が、最後10頁の解決篇、、下手に説明しすぎると、あまりにもあくどすぎる印象を与えかねないと誉めていますが、逆にもう少しアリバイや目撃した情景を詳細に描いて欲しかった。さらりと読む私にとっては、本作の良さが判らない。(作者からは、伏線があるじゃないか言われそうですが・・・)。過去と現在が読みにくい点については、時間軸の不明さ(混乱)と、真相の不明さ(メインである逆転)を掛け、あえてそうしているのでは?と深読みしてしまいました(笑)。

No.4 6点 こう 2012/02/22 23:28
 15年前の冤罪殺人を扱ってますがE-BANKERさんと同じですが時間軸が移動してとにかく読みづらかった印象です。カットバック方式より15年前と現在を分けてくれた方が読みやすいなあと思いました。容疑者を集めて全員の容疑を一旦晴らしておいて改めて真犯人を指摘する下りなど昔懐かしい構成というだけで楽しめた覚えがあります。

No.3 5点 E-BANKER 2011/05/11 22:20
作者の第4長編。
出版当時、「このミス」等のランキング上位を賑わした本格ミステリー。
~無実だとの叫びも虚しく、ホルトは冷酷な殺人犯として投獄された。それから16年後、仮釈放された彼は真犯人を探し始める。自分を罠に嵌めたのは誰だったのか? 次々に浮かび上がる疑惑と仮説、そして終幕で明らかにされる驚愕の真相とは?~

とにかくベタ誉めなんですよ。
他の書評を見ても、文庫版解説の法月綸太郎氏も・・・とにかく良質なミステリーだという評価の様子。
確かに、ラストで主人公が容疑者の1人1人を消去法モドキで次々に消しながら、事件の構図をガラリと変えて見ることで真犯人を指摘する場面はいい。
女流作家らしい繊細で丁寧な筆致や、男には理解不能(?)な女心を下地とした愛憎劇などもなかなか読ませる・・・
ただ、個人的には正直「面白さがよく分からなかった」。
特に、中盤がまだるっこし過ぎるし、アリバイ(トリック?)の部分も説明があまりにもラフだと思う。
ついでに言えば、16年前の回想と現在のパートの境目が分かりづらく読みにくい!(訳のせいかもしれませんが)
というわけで、300ページ程度の手軽な作品のはずが、かなり時間のかかる読書になってしまいました。
(う~ん。最近ようやく翻訳物アレルギーから脱却したかと思いきや、何か再発しそうな感じ・・・)

No.2 8点 smile66 2011/02/28 00:10
決して長くない話なのに濃度はかなり高い。
最後の謎解きもキリっとしてて素敵です。
ただ、主人公にすり寄ってくる女がよく分からん。あれが女心なのかな。

No.1 6点 kanamori 2010/08/09 21:39
タイトル通り秀逸なプロットによって事件の構図をミスリードするタイプのミステリ。
主人公が、殺人の冤罪を晴らすべく16年前の事件関係者を訪ね歩く物語と、その過去の事件の詳細が交互に描かれています。
終盤になって容疑者全員が犯人であり得ないことが判明しますが、ある視点の転換によって一気に真相が見えてくる結末はなかなか鮮やかです。


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ジル・マゴーン
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