皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] パーフェクト・マッチ デイヴィッド・ロイド警部&ジュディ・ヒル部長刑事 |
|||
---|---|---|---|
ジル・マゴーン | 出版月: 1997年06月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 6件 |
東京創元社 1997年06月 |
No.6 | 5点 | SU | 2023/01/31 22:28 |
---|---|---|---|
未亡人ジュリア・ミッチェルが湖畔で死体となって発見される。最後に彼女と会っていたと思われる青年クリス・ウェイドは、自分に殺人の容疑がかかることを恐れ、訪問したばかりの不倫相手であるヘレン・ミッチェルの家から失踪。
失踪中のクリスは、過去のトラウマと二日酔いのために記憶がはっきりせず、事件の当日の細部を思い出せない。並行して描かれるロイドとヒルの捜査からは、クリスの容疑は動かないように見える。 捜査の過程で自然と謎が立ち現れる。そして捜査とディスカッションを通して次第に矛盾が露になっていく。論理に基づくサスペンスにワクワクが止まらない。ただ、鬼面人を驚かす類のトリックに慣れてしまった方には、物足りなく思われるかもしれない。 |
No.5 | 6点 | ROM大臣 | 2021/09/01 13:42 |
---|---|---|---|
湖畔で見つかった女性の絞殺死体の犯人探しというシンプルなフーダニットで、その捜査過程もじっくり書き込まれている。だが、こういった典型以上に印象的なのが、斜にかまえた人物描写から生まれる独特の雰囲気ではないか。
「誰もかれもがわれわれに嘘をついているような気がする」とは作中のロイドの言葉だが、これは英仏ミステリの十八番ともいえる手法で、人間描写が輪郭の不透明な水彩画のように作品を形成していく。 容疑者の複雑な心理の中にも謎を解く鍵をひそませることで、ミステリの出来に深みをもたらしている。起きた事件の状況はシンプルなのに、どこか曖昧模糊とした雰囲気にからめとられるような感覚が、もうひとつの魅力なのだ。 |
No.4 | 5点 | nukkam | 2020/07/01 20:25 |
---|---|---|---|
(ネタバレなしです) 本書の創元推理文庫版の巻末解説でグェンダリン・バトラー、P・C・ドハティーと共に「新作が待ちきれない作家」として紹介された英国のジル・マゴーン(1947-2007)ですが1992年発表の本書でデビューしてからの短い作家期間に残された作品は20作にも満たないのが残念です。本格派推理小説を得意としており、解説で紹介されている数作はどれも読んでみたいです。本書は全13作のロイド警部&ジュディ・ヒル部長刑事シリーズ第1作でもありますが、ロイドのファースト・ネームが対外的には「デイヴィッド」で通していますがこれは本名ではないことが語られてます。ジュディは気になって仕方ないようですが私にはどうでもいいです(笑)。驚いたのはこの2人(ジュディは夫あり)が不倫の関係を結ぶこと。それもどうでもいいことなのかもしれませんけど、経緯が詳細に語られないので結構唐突感ありました。そして本筋の謎解きの方ですが、容疑者たちの男女関係もかなりややこしいことになっています。文章がドライなのでそれほどべたべたした描写になってませんが書き方によってはかなりどろどろしたドラマになったでしょうね。謎解き伏線をしっかり張っていて、トリックも古典的ながら使い方も巧みです。しかし創元推理文庫版の登場人物リストで事件の鍵を握る人物が漏れているのは残念です。作者でなく出版社の落ち度かもしれませんが、丁寧に書かれた内容だけにこのキズは目立ちます。これは減点評価せざるを得ません。 |
No.3 | 4点 | 了然和尚 | 2016/04/20 20:43 |
---|---|---|---|
みなさんご指摘の通りメイントリックは、古典によくあるパターンで、現代の捜査において成り立ちにくいパターンですが、まあそれはそれなりに話にはなってます。
不満なのは捜査陣で、男女の本職警官なのですが、この2名の知的役割がはっきりしていないのが推理物としてつまらない。二人出てくるならホームズとワトソン型とか役割がはっきりしないと読者が一緒に楽しめません。でも、男女で性的役割ははっきりしていて、安易にひっつくのはハリウッド映画みたいで、面白い人には面白いのでしょうか?夏樹静子的男女の情緒もなかったな。 |
No.2 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2016/02/11 17:28 |
---|---|---|---|
裏表紙より~『嵐の去った早朝、湖畔で女性の全裸死体が発見された。遺体は最近莫大な遺産を相続した未亡人のものと判明。その前夜、彼女を車に乗せ、そのまま姿を消した青年が犯人と目されている。だが、この事件には腑に落ちない点が多すぎた。ロイド警部とジュディ・ヒル部長刑事のコンビが不可解な事件に挑む。期待の俊英のデビュー作。』~
トリックは単純ですが、それを非常にうまく隠しています。よって、サプライズは大でした(笑)。全裸死体であるにもかかわらず、暴行の痕跡はないという謎で引っ張て行きます。登場人物が少ないのも魅力ですね。「騙し絵の檻」のカットバックには苦労しましたが、本作のカットバックは読み易かったです。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2010/04/19 19:06 |
---|---|---|---|
ロイド警部&ジュディ・ヒル部長刑事シリーズ第1作。
真正面から本格ミステリに取り組む姿勢が明白で、非常に好感が持てるシリーズです。このところ邦訳がストップしているのはちょっと解せないです。 現代ミステリですから、探偵役二人のある関係のエピソードなどを挿入しなければならないのは許します。 本書は、事件は地味でトリックも使い古されたものかもしれませんが、騙されている人物の視点を多用することで、読者もミスリードする手法が巧いと思います。 |