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[ ハードボイルド ]
マーロウ最後の事件
フィリップ・マーロウ
レイモンド・チャンドラー 出版月: 1975年01月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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晶文社
1975年01月

No.1 6点 クリスティ再読 2019/07/21 23:28
さて、評者のチャンドラー短編も本短編集でコンプとしよう。「イギリスの夏」「バックファイア」「二人の作家」あたりは戦後の作品で、とくにハードボイルドというわけでもない。「チャンドラーらしい」短編は要するにこれでコンプである。本短編集は「湖中の女」「女を裁け」「翡翠」「マーロウ最後の事件」の4篇を収録。すべて稲葉明雄訳で、「湖中の女」は同題の長編の原型、「女を裁け」は創元「雨の殺人者」所収の「女で試せ」でタイトル変えた理由はなぜだろう(「女を裁け」の方が明快と思うが)。訳文はほぼ変わらない。言うまでもなく「さらば~」の元ネタ。「翡翠」は解説で「高い窓」に使われて..と書いているが勘違いで「さらば~」の中盤。アン・リアーダンが出るあたり。
「湖中の女」は長編のダイジェストみたいな雰囲気。これはこれでシンプルな良さはあるのだが、長編読んでりゃ読む理由は薄い。
「翡翠」は翡翠の買い戻しに同行して、殴られてリアーダンに会って、臭いインディアンに拉致されて監禁されて、といったあたり。これはこれでまとまりがいい。というか、「女を裁け」「犬が好きだった男」もそれぞれちゃんと辻褄が合った作品だったのに、「さらば愛しき女よ」に合体したら、わけがわからなくなったわけで、長編化ははっきり改悪だと思う。「さらば~」名作説は評者は疑問である。マロイが好きなら「女を裁け」を読むべきだ。
「マーロウ最後の事件」別名「ペンシル」は長編とは無関係の作品。マフィアから足抜けしようとする男の逃亡を、依頼されてマーロウが助けるが...という話。マーロウの協力者でアン・リアーダンが出演。スタイルが完全に戦後のマーロウになっていて、かなり貴重な作品に思う。「長いお別れ」が好きなら本作読むのが一番満足感が高いんじゃないかな。マフィアの殺人予告の「ペンシル郵送」を、マーロウがあまり真に受けない辺りがナイス。

というわけでチャンドラー短編をコンプ、としよう。ベスト5は順不同。
「ネヴァダ・ガス」「シラノの拳銃」「ヌーン街で拾ったもの」「金魚」「女で試せ」。この評価だとハヤカワ版だと「トライ・ザ・ガール」を読むと断然お買い得、ということになる(苦笑)。


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レイモンド・チャンドラー
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