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[ サスペンス ]
黄金の褒賞
アンドリュウ・ガーヴ 出版月: 1960年01月 平均: 7.67点 書評数: 3件

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早川書房
1960年01月

早川書房
1980年11月

No.3 7点 クリスティ再読 2023/04/01 22:23
ガーヴというとシリーズキャラクターを頑固なくらいに排斥し、無名で平凡な善人が時ならぬ「悪意の脅威」に晒されて、右往左往・七転八倒するプロットが十八番のわけだ。本作はそれを純粋化したような話だから「道の果て」あたりが近い。

子供と妻の命を我が身を投げうって偶然助けた見知らぬ男。主人公は退役軍人と称するこの男への負い目から、とんでもない運命に巻き込まれる。主人公が善人であり世間知らずの学者体質だからこそ、この話の趣きがあるのだが、今回は「イベント」自体は中盤であっさり片付いてしまう。だからこそ、話の進行の中で「どんなかたちでのドツボが待っているのか?」と読者がアタマをひねるのが眼目で、現在進行形のスリラー要素がない、というのが大きな狙い。結構珍しいタイプの話じゃないのかな。

だから本作、ガーヴの中でも地味といえば地味な作品だし、「考えオチ」みたいな面があるヒネった小説だ。そういう罠といえばそうだが、それを最後にするりと....ガーヴのハッピーエンドのお約束はしっかり守られている。
「ガーヴは甘口」と仰るのはわからないわけではないが、これが王道というものでしょうよ。

No.2 7点 人並由真 2019/12/18 18:09
(ネタバレなし)
 財産家の伯父エドワードから多額の遺産を受け継いだ、市井の古物研究家ジョン・メランビィ。40歳前後の彼は32歳の美人の妻サリイ、そして8歳の息子トニイと6歳の娘アリスンとともに悠々自適の生活を送っていた。そんなサリイが子供たち、さらに知人の娘である18歳の美少女カイラを連れて海水浴を楽しむある日、ゴムボートの事故でトニイとサリイ自身が危うく命を落としかけた。だがそんな二人を救ったのはハンサムな四十男で、元軍人と自称するフランク・ロスコオ。命の恩人にも関わらず謙虚なロスコオに好感を抱いたサリイは、彼を自宅に招待。事情を聞いたジョンも彼を長年の友人のようにもてなし、この近所で養鶏場を開きたいというロスコオに協力することにした。だが、メランビイ家の中で、ロスコオは次第に秘めていた闇の部分を露わにし始める……。

 1960年の英国作品。ガーヴの最高傑作に推すファンも多い? 一編のようだが、実際にリーダビリティもサスペンス度も最強で本を読むのが止められず、二時間でいっきに通読してしまった。
 中盤からの(中略)的なジェットコースター風の展開、さらに最後に(中略)が見せる(中略)など、いや完成度と結晶度の高い小説である。改めてガーヴすごい。
 
 とはいえ一方で、60年前のあまりにも良く出来た作品ゆえの宿命で、パーツパーツの趣向や仕掛けを因数分解していくと、それから現在までの長い歳月の間にいろんな作家、作品が、この後追いバリエーションを生み出してしまったなあ……という感じも少なくない。つまり、今となってはもう……の部分もそこはかとなく感じたり、そこはちょっとキツイかも。
 まあ余計なことをあれこれ無駄に考えなければ、主人公の途中の推理の流れ、あちこちに設けられた仕掛けなど、ガーヴ諸作のなかでも確かに上位に行く作品であろう。
(これから読む人は、ガーヴの作品にあまり数多くなじまず、作者の手札の切り方も学習しないうちに出会った方がよい、とは思うけど。)
 繰り返すけれど、出来そのものは、本当にいい長編なんですよ。

No.1 9点 mic 2013/10/20 13:52
 前半はリアリテイのある善人ぶった悪党の粘着質な振る舞いが大いに面白かった。このまま終盤に向かって主人公がどのように苦悩から解放されるのか、或いはもっとひどくなるのか、大いに興味があったが、作者の考えは当方の思考のずっと上を行くものだったようで、久しぶりに読了後いい意味で愕然とした。ガーヴ恐るべし。


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アンドリュウ・ガーヴ
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