home

ミステリの祭典

login
みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:518件

プロフィール| 書評

No.378 7点 世界名作探偵小説選
山中峯太郎
(2024/11/06 04:18登録)
『モルグ街の殺人』『黒猫』『盗まれた手紙』の復習が完了したので、ようやく人並由真さんにおすすめ頂いた本作を読みました(^^) 山中峯太郎という作家は本サイトにも2件の書評(どちらも人並さん)がありますが、ホームズシリーズを児童向けに翻案した『名探偵ホームズ全集』で人気を博していたそうです。原作と比較したい方は『告げ口心臓』『お前が犯人だ』も読んでおくべし。

いやあ、原作と違ってキャラクターが活発なジュブナイルは楽しいねぇ。小学生の時に読んだらモルグ街の衝撃にぶっとばされ、盗まれた秘密書で「なわけねえだろw」とか笑ってただろうな。

『モルグ街の怪声』
語り手と被害者が旧友であること、殺し方のマイルドさ、女記者の存在、釘と窓の話(これ原作より非常に分かりやすい!)などなど細かな変更点に加えて、なんと真犯人が変わっています。子供に馴染み深いように変更したのではないかと注釈には書いてありますが、高いキンキン声を出すイメージがあまりないなあ(笑)
意外な犯人像に忘れがちですが、原作の『モルグ街の殺人』は、分析力が独創性を包含する(分析力⊃独創性)の関係を示すために用いられた話です。そういった話を児童にしても仕方がないと思ったのか、この辺はカットですし、デュパンのプロファイリング描写もほぼなしです。そのかわりに<友だちとバナナ>の話が加えられており、これは「観察するだけではその人のことはほとんど何も分からない」という著者なりのデュパンに対する抗議でしょうかね。

『盗まれた秘密書』
元々は非常に短い分量であるためか、かなり魔改造されています。原作では手紙の隠し場所以外に謎はないのですが、山中版ではスパイは誰なのかという謎も追加。これにより、原作の「いやいや警察ならいくらなんでも気づくでしょう問題」や「犯人が分かってるのなら襲撃すればよくね問題」がある程度解消されています。他にも犯人の盗みの手口を明確に示すことで、後に効果的な使い方もされており、これは原作のリライトとしてかなり優秀だと思います。

『黒猫』 
原作のゴシックホラーと呼ぶに相応しいラストが好きですが、本作は児童向けなので配慮されています。また、原作の方の妻は寡黙で優しくおしとやかな女性のイメージですが、本作の妻は黒猫に完全に取り憑かれており、語り手が狂っていく過程が丁寧に描写されています。というか原作の語り手は救いようのないクズなんですよね。その点、情状酌量の余地があって感情移入のできる『黒猫』はなんだか新鮮でした。原作にはいないデュパンの分析も見所です。ちなみになぜか『お前こそが犯人だ』も乗っています。現代基準では苦しいと感じたであろう所が色々改訂されてます。

このポーリライト企画は全5巻の予定だったそうですが、『マリー・ロジェの謎』と『黄金虫』は刊行されず3巻で終わっています。惜しい。

※バロネス・オルツィとサックス・ローマーの方は原作を読んでから感想を追記しようと思っているので、点数は暫定ですm(_ _)m


No.377 7点 黒猫/モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー
(2024/11/04 23:36登録)
本日2度目の『モルグ街の殺人』であるが(^^;)、これは素晴らしい!
翻訳は小川高義という方。『黒猫』『モル殺』はおそらく翻訳違いのをそれぞれ3つ以上は読みましたが、先ほど読んだ新潮文庫のポー短編集Ⅱの巽孝之の翻訳などに比べても圧倒的な読みやすさです。同時読み比べをすると、ワンセンテンスが短く、平易な語彙が用いられていることが明らかです。ポオの晦渋で格調高い文章を楽しみたい方にはおすすめできませんが、物語を全力で楽しみたい方にはこれがぴったりでしょう。

『本能vs理性 黒い猫について』 採点不能
ポーの飼っていた黒猫を例にとって本能と理性の境界の曖昧性について説くエッセイ。知的生命体という驕りによって、我々は理性を神格化する。

『アモンティリヤードの樽』 7点
こちらも犯罪小説。地下室、壁、モルタル、塗り固め、『黒猫』の人間版であり成功バージョン。やはり慢心は良くない。

『告げ口心臓』 5点
なんとこちらも犯罪小説。『黒猫』の使い回し多すぎ笑 しかしこちらは異常心理を持った犯罪者ではなく、罪悪感によって心臓が掻き乱されるような等身大の人間でありました。

『邪鬼』 8点
おいおいこれも犯罪小説だった。人間の行動原理は器官の作用によるもの。それとは別にひねくれた精神による作用「邪鬼」が存在するという。たとえば動機がないのが動機、というようなもの。それは魔性の情熱となり、人間を犯罪に駆り立てる。犯罪を白状させたのは理性かそれとも…

『ウィリアム・ウィルソン』 
どっかで書評済み。

『早すぎた埋葬』 6点
こちらもどっかで書評済み…かと思いきやしてなかった。医学が未発達だった頃、生きたまま埋葬されることへの恐怖は尋常じゃなかったのでしょう。この作品集だけでも生者の埋葬は既に3作目、ポーはこのネタ多いよね。こちらはユーモア小説。ヨカッタネ


No.376 5点 大渦巻への落下・灯台 -ポー短編集Ⅲ SF&ファンタジー編-
エドガー・アラン・ポー
(2024/11/04 17:36登録)
ゴシック編、ミステリ編に続きSF&ファンタジー編。前半の3つと『灯台』だけ拾い読みで良いと思います。『パノラマ島奇譚』が好きな方は『アルンハイムの地所』も読むべきかな。『ポー短編集Ⅳ 冒険編』みたいなのが一向に出る気配がないの、このアンソロのチョイスのせいだろ笑

『大渦巻への落下』
白髪になってしまった青年が、その原因となった奇怪な出来事を振り返る。これまた乱歩の『孤島の鬼』と似通っていますね。中身はまったくの別物で、サバイバル小説。語り手は生存本能よりも知的探求心が打ち勝ったからこそ生き延びた。図らずも人間讃歌になっていることが面白い。

『使い切った男』
今まで読んだポオ作品らしからぬコミカルな雰囲気。これなんでSF/ファンタジー編に入ってるの?と疑問に思っていたら、なるほど(笑)

『タール博士とフェザー教授』
これが本当の狂人の解放治療か!いやしかし現代の精神医療を風刺した夢野久作と保守派のポオでは逆のスタンスだな(すぐに登場人物の言動=作者の思想と決めつけるのは私の悪癖)

『メルツェルのチェスプレイヤー』
これははっきり言ってつまらなかった。プロに完勝する現代のコンピューターをポオに見せたい。

『メロンタ・タウタ』
2848年が舞台の正真正銘のSFだが、物語性がなくこれもつまらん。ちなみに未来予測は大外れ。いや2024年だからまだ断言はできないか…笑

『アルンハイムの地所』
なるほど、これも面白くはないけれど人工楽園系小説の始祖か。個人の資産で8兆円て…

『灯台』
とある灯台守が持ち場の灯台について違和感を抱く冒頭4ページだけで終わる、ポーの遺作?なにこれ、続きが気になりすぎるんだが。特に1.2メートルの厚みは怪しい、死体とか埋まってんのかな。


No.375 7点 モルグ街の殺人・黄金虫 -ポー短編集Ⅱ ミステリ編-
エドガー・アラン・ポー
(2024/11/04 09:48登録)
ゴシック編に続きミステリ編ですが、編集者の趣味か?非ミステリも混じっています。3読目ともなればかなり余裕を持って読める。隠し場所の意外さに気を取られてサラッと流していたが、何気にデュパンは数学の公理は異教の伝説みたいなもんだとディスりまくっているのを見逃してはいけない。代数学専門の兄に読ませたら発狂しそうな内容だ。ポーは知り合いの数学者に大嫌いな奴でもいたのだろうか、それとも詩人としてのプライドか。論理の『モルグ街の殺人』、心理の『盗まれた手紙』と記憶しておこう。

『群衆の人』は人間観察が趣味の語り手がとある老人に惹かれて尾行するお話。都会人なら誰しもが持つ感情、罪悪の権化、ただ集団にいるだけでは幸福も人生の意味も見出せないといった群衆の本質たるものが描かれているのだと思うが、まあよく分からん。翻訳もイマイチなそうなので他のでも読んでみるかな。
目玉は『ホップフロッグ』これが読みたかった!江戸川乱歩の『踊る一寸法師』はこれに影響を受けたらしいので。道化師とは基本的にいじられキャラなわけですが、それも度がすぎるとこういう結果を招いてしまうという教訓ですね。小学校の学級文庫に置いておくべきでしょう。ましてや彼は親友への暴力がきっかけになっているので、まだ幾分か優しいのですが…
ホップフロッグは身体能力の欠如。それに対して、オランウータン(またもや笑)に仮装させたことは知性・品性の欠如を揶揄した皮肉でしょうか。天井を見上げるときたねえ花火が見えるという映像的に派手なラストは『踊る一寸法師』よりはるかに印象に残りました。


No.374 8点 ぼくは化け物きみは怪物
白井智之
(2024/11/02 04:28登録)
「みんな教えて」のこのミス予想企画の期限もあと1ヶ月(隙あらば宣伝)、さすがにランキングに高確率で関わるであろう白井智之の新刊は読まねばなりませんね。はじめの方は「2年連続大傑作を拵えてきたシラユキ先生でもたまには凡作も書いちゃうよね…(安心)」と油断していたら………

『最初の事件』 5点
掴みとしてはかなり良い、なんたって小学生名探偵の最初の事件だからね。ここからアフリカ・韓国・時間兵器…etcとお話が広がっていくかと思いきや、ぶつ切り!もったいない!!

『大きな手の悪魔』 6〜7点
「尼崎事件」が元ネタか。狡猾な老婆と紳士な悪魔の頭脳戦。いくらなんでも紳士すぎるでしょ山羊さん…

『菜々子の中で死んだ男』 7〜8点
犯人探しの遊郭巡りと飛躍ロジック楽しく、最後に浮かび上がるタイトルの意味もお見事。

『モーティリアンの手首』 6点
まさかの地学ミステリ。化石に執着する男とその貴婦人、それぞれの思惑は3万年の時を超えて地層に生き続ける。設定がいつもよりSF特化。いつかハードSFとかも読んでみたいね。

【以下ネタバレ注意 『名探偵のいけにえ』に関する言及もあり】



『天使と怪物』 9〜10点
1つ1つの密室は既出のアイデアであるが、本作の凄さは3通りの不具者に適した3通りの真相、多重解決に対する新たな試み、異様な現場の状況に筋を通す真犯人の動機。何から何まで計算され尽くさている。密室に対して数通りの解を出し、多重解決を意味のあるものに昇華させたという点で『名探偵のいけにえ』を思い出さずにはいられない。そう、怪物とは白井智之だったんだな…
短編でここまでの完成度の作品は正直見たことがない。

ただ、短編集としてみると『死体の汁を啜れ』の方が上かな。


No.373 7点 蛇影の館
松城明
(2024/10/30 16:09登録)
特殊設定ミステリって要は「オレの考えた最強のルール」の中で謎解きが行われるわけなので、ネタ切れ気味のトリック界隈に新風を吹き込ませるのが魅力です。(例:エレファントヘッド) その一方で、①設定に上手く馴染めなかったり、②設定そのものが壮大すぎたり、③制約がなさすぎたりすると、「もう勝手にやっとけ」「殺人なんてこの際どうでもよくね?」「なんでもありかよ」となるのが弱点です。
本作はどうも①と②のきらいがあって、合わない方も結構いると思われますね。私もルールを追うのにかなり苦戦して読み疲れました。 
本作の設定は寄生獣みたいな感じ。蛇だけど。
部屋密室・蛇密室・肉体密室の三重の密室をどう突破するのかに引っ張られてずっと読んでましたが、なるほどその手があったかと思わずニヤリとするトリックでした。想像を絶するほどではありませんでしたが、個人的にはこういう作品は好意的に評価したいところです。


No.372 7点 一寸法師
江戸川乱歩
(2024/10/29 04:43登録)
『地獄の道化師』の続きに収録。あちらと比べると、やたら読みにくい上に真相の納得感で数段落ちますが、『黒蜥蜴』『蜘蛛男』『暗黒星』よりは本格推理小説としてよく練られている印象です。明智小五郎って日本三大探偵なのに結構ダークなやつだな。結末がお決まりパターンから脱却していて気に入ったのでこちらも7点。


No.371 7点 地獄の道化師
江戸川乱歩
(2024/10/29 04:41登録)
犯人消失トリック・犯人の意外性・真相の納得感など、今まで読んできた乱歩の通俗物の中では出色の出来映えだと思いました。私は空さんが指摘している誘拐の描写ですっかりミスリードされたせいで、真相は普通に衝撃的でありました。なにかと謙遜(というか卑下)するイメージの乱歩でさえも「通俗ものながら、犯人の意外性の構成は、ややうまくできていたのではないかと思う」と言っています。それにしても、男の○○○は流石にズルいwww
話の流れは毎度お決まりのパターンですが、それでそれなりに面白くなってしまうので仕方ないです。


No.370 5点 少年探偵団
江戸川乱歩
(2024/10/29 04:28登録)
俺みたいなハタチ超えて、児童書コーナーで少年探偵団シリーズ漁ってる野郎、他に、いますかっていねーか、はは 

少年時代はつゆ知らず、これは匂うなあ…小林芳雄少年と明智小五郎のただならぬ関係…怪しいロマンスの雰囲気が…
頬を赤らめたり、○○させたり、『暗黒星』でもそうだったが、明智はひょっとして美少年嗜好が強いのだろうか。そういう描写をあえて入れてるような気がするんだが、考えすぎか?

少年探偵団シリーズ26作を読んで書評していこうかと思ったが流石にやめておこう(笑) 大人向けの方に戻ります。


No.369 6点 怪人二十面相
江戸川乱歩
(2024/10/29 04:23登録)
掲示板にて大人になってから再読したという方がいて、私もつい。
怪人二十面相はその存在自体がミステリアスな神出鬼没の超人というイメージでしたが、意外と協力者をお金で買収したり、明智と煽り合ったり、子供にいっぱい食わされたりと、人間臭いのが意外でした。
当時の少年達が寝る間も惜しんで、夢中に読んでいる姿が目に浮かびます。

乱歩がティーン向けに書いた作品は、区別のために「明智小五郎シリーズ」より「少年探偵団シリーズ」にした方が良さそう…?


No.368 7点 眼の壁
松本清張
(2024/10/27 11:57登録)
鮎哲サンのせいで松本清張が読みたくなり、清張を崇拝する祖母から借りた『眼の壁』を本棚から取り出した次第。
手形詐欺事件を苦に自殺した上司の仇を撃つべく、萩崎は記者の友人と組んで調査に乗り出す。相手は右翼の大物。事件の鍵を握る女の影。萩崎は密かに恋心を抱く。
『ゼロの焦点』とは違って、ラストはあっけない点や黒幕の背景がボカされた点が悔やまれるところではあるが、テンポも良いし、サスペンスとしてもすこぶる面白い。が、祖母の御眼鏡には適わない様子である。


No.367 7点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2024/10/26 17:27登録)
【松本清張作品のネタバレもあり】




輝かしい道を歩いてきたと思われる人間がその実… というのがタイトルに隠された意味でしょう。知らんけど。
似た内容に対して鮎川哲也は『黒い白鳥』、松本清張は『ゼロの焦点』と題して同時連載をしていたなんて、ものすごい偶然があるもんなんですね。それともただ終戦直後の日本の暗部を描くのが流行っていただけなのでしょうか?同じ意味だとしても私は清張のタイトルの方がおしゃれで好きです。
内容について。鮎川哲也というより鬼貫警部シリーズ?はやはり激渋です。このアリバイトリックは流石にリスクありすぎだろというようなつまらんツッコミはさておき、やはり鬼貫の捜査プロセスを楽しむものです。たとえ容疑者に犯行が絶望的に不可能に見えたとしても、あらゆる可能性を検討し、一縷の望みに賭け続ける鬼貫サンが魅力なのです。そして犯人の動機にも…


No.366 5点 猫は知っていた
仁木悦子
(2024/10/22 22:25登録)
1957年出版とは到底思えません。今年出版されたと言われても、レトロなアイテムが出てくること以外に違和感は抱かないでしょう。ただ、65年以上前であることを考慮しても、鮎川哲也・横溝正史・高木彬光あたりが既に台頭していたわけで(たぶん)、本格ミステリとしてはそこまで傑出した出来だとは思えません。柔らかくて温かみのある筆致と適度にゆる〜くほのぼのした雰囲気で凄惨な連続殺人が起こるというそのギャップが受けたのかなあ?と妄想です。当時は女流の本格推理作家というのも大変珍しかったそうですね。


No.365 9点 ビッグ・ボウの殺人
イズレイル・ザングウィル
(2024/10/20 02:11登録)
まさに青天の霹靂…実にショッキングな出来事であった…私が好きな某推理漫画の中でベストトリックに堂々と認定していたものが、まさか1892年で既に編み出されていたなんて…
ソチラの方では他の方々が指摘しているようなトリック露呈の可能性を著しく低めてはいるものの、ほとんど本作のアイデアの流用であった。少年時代にソチラで味わった時の衝撃を本作の評点に加味して9点とする。心理密室の元祖であることやトリックのシンプルさ・独創性・破壊力を考えても『黄色い部屋の謎』より有名になるべき作品な気がします。いや、もう十分有名なのか?また、トリックだけでなく幕引きも完璧です。

※こちらも「みんな教えて」の「この密室トリックがすごい ベスト5」にてお二方が挙げていたので読みました。カルチャーショック!


No.364 6点 雪密室
法月綸太郎
(2024/10/19 20:47登録)
シリーズ1作目。後の『頼子のために』『一の悲劇』に繋がるような親子がテーマの内容です。警視のオヤジが初っ端から息子の頭脳をアテにしすぎていて笑いました。あの信頼関係はシリーズを通して徐々に構築されてきたのではないのですね。
肝心の密室トリック、ひさびさの「読者への挑戦状」に心が踊りましたが、いささか簡単すぎましたね。映像を思い浮かべながら読んでいくと、明らかに怪しい奴がいるんだなこれが(笑) ああもうこいつで決まり決まり。と思っていたら…まさかの…嗚呼…私はいつまでこういうのに騙されるんでしょう…
簡単すぎた方には、検死で「絞殺」ではなく「縊死」と診断された背景を推理するのもまた一興です。

やはり法月綸太郎はイイね


No.363 6点 明智恭介の奔走
今村昌弘
(2024/10/17 19:11登録)
前回最下位の者として、今年の「みんな教えて」のこのミス予想企画をガチで当てに行くために(嘘)、注目度の高い新刊も読みます。
ネタバレになるからあまり言えませんが、これはシリーズのファンにとっては待望の一冊だったのではないかと思います。自分はあっちよりこっちの方が好きです。
大学が舞台の学園ミステリをあまり読んだことがないので、『最初でも最後でもない事件』と『宗教学試験問題漏洩事件』の2つは特に楽しかったです。前者は動機の推理、後者は事件の規模の割にかなり本格風トリックで嬉しくなります。
「とある日常の謎」については夫婦関係に焦点が当てられる日常の謎ミステリです。夫婦という題材にせよ、日常の謎にせよ、今まで本格の中の本格を書いてきた今村昌弘とは一風変わった作風といった印象で、読了後に心が温まるお話です。『でぃすぺる』も早く読まないとな。


No.362 5点 夢野久作全集 2
夢野久作
(2024/10/15 00:36登録)
夢野久作が記者時代に記した関東大震災の1年後の東京のルポルタージュ。前半には江戸っ子の人口減少問題について論じられます。そこには「一般に或る人種が文化の絶頂に達すると人口が減少する」と書かれています。これには驚きました。この言説が1924年で既に議論の的になっていることにです。現代において、少子化の原因は様々ですが、先進国の大半が抱える問題であることを考慮すると、やはり文化の絶頂であることかなあと。文化の発展によって人間がゆとりを持ち、子孫の繁栄以外の方法で幸福を追求できるようになったことが1番なのではないでしょうか。と、こんな黴の生えた議論が丁度100年前から既に交わされていたのだと考えると感慨深いです。そして結婚相談所(当時は結婚媒介所)が存在していたことにも衝撃です。入会料5円、会見料5円、結婚成立料30円。現代基準ではどのくらいなのでしょう。本書を読まなければ、私は100年前の東京の姿など知る由もなかったでしょう。100年で科学技術は恐ろしく進化を遂げましたが、人間の性質というものはたいして変わりません。今とは何もかも違う、大昔だと思っていた100年前の日本にも現代とさほど変わりのない生活や慣習があったのだと大変勉強になりました。
いつもの怪奇小説をお求めの方はスルー推奨の巻です。


No.361 6点 バベル消滅
飛鳥部勝則
(2024/10/14 10:30登録)
『殉教カテリナ車輪』に続き、図像学×本格ミステリ。とはいえこちらは前作ほどの親和性を生み出せていない印象。前作と流れも似ているが、風変わりなヒロインや田舎特有の人間関係の狭さとどこか退廃的で荒んだ登場人物たちが魅力。ミッシングリンクものとしては前例があるかはわからないが、結構ユニークな動機。やはり密室がほしいところ。

※飛鳥部勝則を刊行順に読んでいく計画が入手困難な『N・Aの扉』のせいで早くも頓挫しそう


No.360 7点 第四の扉
ポール・アルテ
(2024/10/11 12:57登録)
密室×2は正直しょぼい…最近読んだ「スウェーデンのディクスン・カー」や「中国のディクスン・カー」と比べても派手さがまるでない。でもこのしょぼさがなんか嫌いになれない…というか好きだ。怪奇、憑依、密室、メタネタなどサービス精神旺盛なのに、ここまでコンパクトにまとまっている点も評価したい。(日本の作家だったら500ページは優に超えそうw)ということで6点ではなく7点。
本サイトを利用していて痛切に感じるのは、どうやら私は早急にジョン・ディクスン・カーを読むべきであるということだ。


No.359 8点 江戸川乱歩傑作選(新潮文庫)
江戸川乱歩
(2024/10/09 11:15登録)
これは乱歩初心者の私にとって珠玉の短編集だった。
国内最古の暗号と密室『二銭銅貨』『D坂の殺人事件』、明智のプロファイリング能力が光る『心理試験』などの有名な探偵小説寄りの代表作群に加えて 、乱歩の持ち味である異常心理・性愛・残虐嗜好が存分に活かされる『芋虫』『人間椅子』『鏡地獄』も揃ってて隙が無い。
ただし『鏡地獄』があるならば、『目羅博士の不思議な犯罪』も収録しといて欲しかったかな。結構気に入ってるので。あと有名所で入ってないのは『押絵と旅する男』とか?
何気に『パノラマ島奇談』がないのはかなり痛い。まあ、あれは短編とは呼べない分量だから仕方ないのかな?

518中の書評を表示しています 141 - 160