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ミステリの祭典

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ぷちレコードさんの登録情報
平均点:6.25点 書評数:309件

プロフィール| 書評

No.9 8点 火車
宮部みゆき
(2020/05/14 19:52登録)
クレジットやローンという現代社会の金融産業の異常な拡大と、その蟻地獄のような底なしのマネーの世界に呑み込まれてしまう、多くの犠牲者の姿。
現代社会の影のなかに、自分自身すらも失ってしまう人間たち。作者は、この異様な現実を、一本一本の糸を解きほぐすようにして描き出す。推理小説としても読みごたえがあり、同時に経済小説、社会小説としても面白い。火車とは「生前に悪事をした亡者を乗せて走る火の車」だという。いや、その「亡者」とは実はわれわれ自身であり、その車こそ、現代のこの社会自体である。


No.8 6点 透明カメレオン
道尾秀介
(2020/05/05 20:10登録)
読みどころの集合体といって過言ではない本作だが、特に素晴らしいのは、物語を用いてフィクションが人にもたらす特別な効能を描いる点にある。偽りとは必ずしも卑怯であり害をなすものではなく、創作とは現実よりも劣る絵空事をただ濫造する行為ではない。
現実を前にしたとき、偽りが折れそうな心を支え、創作が一歩踏み出す力をもたらすこともある。そうした真理を、本作は笑いと涙を交えて教えてくれている。


No.7 7点 鍵の掛かった男
有栖川有栖
(2020/04/20 20:09登録)
大阪中之島にある銀星ホテルに長い間逗留していた、身寄りのない年配男性、梨田の死は自殺なのか他殺なのか...。
一本一本の紐を解きほぐすような聞き込みと行動、そして考察は梨田の鍵の掛かった人生に丁寧に歩み寄り、難航する調査の中にあって確実な光を見出す。
ハウダニットの楽しさというよりは、全編を通してひとりの男の人生を味わう大人の小説として読み応えがある。都会の喧騒を忘れさせてくれる佇まいと居心地の良いホテルの贅沢な時間を存分に堪能できる。


No.6 7点 ユリゴコロ
沼田まほかる
(2020/04/12 14:34登録)
主人公は、婚約者に失踪されたばかりか、母まで亡くしてしまった亮介。彼はある日、父の書斎の押し入れに四冊のノートを発見する。そこには、おぞましい告白が綴られていた。
手記の謎に迫るメインストーリーに、やがて婚約者失踪のからくりが明らかになるサブストーリーが合流し、最後に用意されている悲しくも美しい真相に驚愕必至。


No.5 7点 沈黙のパレード
東野圭吾
(2020/04/03 18:10登録)
被害者遺族側の苦悩を描きつつ、トリックもどんでん返しもしっかりしていて、その上で久しぶりのガリレオコンビがやっぱり魅力的。
作品の中で流れた時間分、ゆっくりと登場人物の心情が変化していく様を描きつつ、そしてその変化が物語が進むには不可欠というそのバランスが素晴らしい。


No.4 8点 満願
米澤穂信
(2020/03/27 19:37登録)
人間誰しもが持っている弱く痛い部分を突かれるような、じわじわと締め付けられるような怖さが少しずつ迫ってくる。
後味は不穏であり不気味で背筋がゾクゾクして、でもそれが何とも魅惑的でどんどん深みにはまって抜け出せない。
極上のストリーテラーによる至福の短編集。


No.3 9点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2020/03/19 20:07登録)
人里離れた山奥の山荘に集まった学生たち。やがて彼らは閉じ込められて、事件は起こる。ミステリ読みに慣れた方にとっては飽きるほど使い古された展開。
しかし、この作品はありきたりを大胆に裏切る。そのあまりにも斬新すぎるアイデアには驚かずにはいられない。突飛な舞台設定ではあるが、特筆すべきは謎解きの論理性の高さ。それをしっかり踏まえているからこそ、型破りな設定が際立つ。
読む人を選ぶ部分は確かにあるが、なるべく多くの人に読んでいただきたい。


No.2 8点 孤島の鬼
江戸川乱歩
(2020/03/12 19:28登録)
なんとも魅力的で、恐ろしくも悲しい話。
慶応年代にまで遡る伝奇的な因縁話であると同時に、とんでもないトリックの推理小説でもあり、背筋が凍るほどの恐怖譚でもある。
そしてこの作品、名探偵明智小五郎にもその傾向がほの見える同性愛を、真正面から描いている。


No.1 7点 戦場のコックたち
深緑野分
(2020/03/05 20:01登録)
日常は日常でも「戦場の日常」ミステリというのが相応しい本作。
情勢を動かすような大きな事件ではないにしても、戦争という特殊な状況下にある以上、現代の我々の日常との隔絶は感じずにはいられない。それゆえに没入できないということは全くなく、かえって想像力を持って読むことが出来た。
一章ずつ読めば決して長くはないし、通読したからこそのサプライズプレゼントが待っている。

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