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ミステリの祭典

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ぷちレコードさんの登録情報
平均点:6.32点 書評数:242件

プロフィール| 書評

No.42 7点 密室殺人ゲーム王手飛車取り
歌野晶午
(2021/01/11 20:11登録)
インターネットで殺人推理ゲームを出題し合っている五人。それぞれマスクをしたり、画面をぼやかしたりして正体を明かさず、映像と音声でやり取りしながら、推理合戦に白熱していた。密室、アリバイ崩し、犯人当て。ただし話題になっているのは全て確実に起こった事件であり、その実行犯は五人の中の出題者。探偵推理ゲームのために殺人を次々に犯しているという奇抜な設定。ただ作者は、単なる推理ゲームの羅列で終わらせていない。意表をつく展開とともに、巧妙に仕組まれた恐ろしい結末を用意している。


No.41 5点 黒百合
多島斗志之
(2021/01/04 21:21登録)
戦後間もない六甲の別荘地で繰り広げられる、中学生たちの淡い恋物語。物語の大部分を占めるパートに、戦前のドイツと戦中の神戸が舞台となる二つの短いエピソードが挿入されるという構成。
最後の最後でようやく全編に巧みな罠が仕掛けられていたことが分かり、瑞々しい青春小説の中から別の風景が騙し絵のように浮かび上がる。作者の卓越した技巧は脱帽もの。


No.40 8点 ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ
(2020/12/28 18:32登録)
人権に関する意識が希薄であった時代の米国を舞台に、両親に捨てられながらも一人で生きていこうとする少女の姿を、ミステリの技法によって描いた作品。
生き方が他人と違うためにゆえなき差別を受けるキャサリン・クラークは、犯罪事件にまで巻き込まれてしまう。社会が分断された危機的な様相を帯びる今日だからこそ、ぜひ読んでもらいたい一冊。


No.39 4点 向日葵の咲かない夏
道尾秀介
(2020/12/22 17:20登録)
肝となる世界設定がご都合主義的。しかも探偵役の造形は、この不思議な世界にあってさえ不自然極まりない。新本格黎明期に出たある名作の異形譚という印象が拭えない。


No.38 7点 聖母
秋吉理香子
(2020/12/13 19:05登録)
部分部分に覚える、モヤモヤした違和感。はっきりしないが、何かがおかしい。それが終盤に近付くにつれて、謎だった点と線が繋がり、一気に視界が開けていく。ページを戻って、違和感を覚えたところを改めて見ると、あれもこれも伏線だったのかと納得。真相を知ったうえで読み返すと、ひとつひとつの言葉の意味を見つけることが出来ます。


No.37 7点 GOTH リストカット事件
乙一
(2020/12/04 19:27登録)
「暗黒系」、「リストカット事件」は、探偵役による事件解決の論理が、残虐極まりない犯人の異常性と完全にすれ違っている。それはまさに、恐るべき現実を映し出しているといえるでしょう。
「土」は、少年少女の情死を冴え冴えとした筆致で描き切り、哀切さが強く心に残る。


No.36 7点 崩れる脳を抱きしめて
知念実希人
(2020/11/28 18:34登録)
恋愛と医療ミステリとの儚くも美しい融合が見事な作品。その中に、現役医師でもある著者の終末医療に対する考え方や患者に向き合う姿勢も垣間見えた気がする。
そして、まるで映画を観ているかのようなラストシーンは、絵画のような表紙と相俟って更に作品の感動を高めていたように感じた。


No.35 9点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2020/11/20 19:25登録)
中心に据えたアイデアを成立させるために計算し尽くされた人物像と設定、事件の捜査につれて予想外の展開をみせるサスペンスの妙。テーマの複数解釈を可能にさせる狡猾な筆致。
驚天動地な仕掛けを用いながら、それが本格初心者にも容易に分かる単純明快な構造である。さらに人間ドラマとしても充分に楽しめる。


No.34 5点 火蛾
古泉迦十
(2020/11/14 20:22登録)
宗教小説ないし、ファンタジーとも見えた物語が論理的に収斂してゆく姿は、本格ミステリならではのカタルシスを堪能させてくれ、二人の語り手を配した二重構造も過不足なく機能している。
ただ、ミステリとしての仕掛けが必ずしもテーマに即しているとは思えなかった。


No.33 6点 グラン・ギニョール城
芦辺拓
(2020/11/06 19:27登録)
作者の凝り性ぶりが見事に結実した作品。事件そのものの行方は言うに及ばず「城」の世界と探偵森江春策の世界をどのように近づけていくのかという展開方法にも激しく興味を掻き立てられた。


No.32 7点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2020/10/30 20:15登録)
読者が陥るであろう錯誤を想定してメイントリックが策定されている。トリックの作りとともに、見えない人に気づかされたという目から鱗が落ちるような読後の感触が心地良い。
しかし、関係のない事件が挿入されているのは思わせぶりで中途半端な気がした。


No.31 8点 スイス時計の謎
有栖川有栖
(2020/10/22 19:25登録)
表題作は小説の形式は極めてオーソドックスな型の探偵小説。
しかし、その論理展開には新鮮なものがあり、かつ理詰めで物事を突き詰めていくことの美しさや楽しさを十二分に伝えてくれるものだった。
設定、構成などの外見的な部分でケレンに頼らず、純粋に論理のみで勝負しており、本格ミステリとして高度な達成をなしえている。


No.30 6点 アイネクライネナハトムジーク
伊坂幸太郎
(2020/10/16 20:06登録)
大きな事件が起きるでもなく、衝撃的な展開もない。普通の人々が紡ぐ日常の記録、なのにキラキラと輝いてみえる。
登場人物たちの軽妙でセンス溢れるやりとりがとても心地よい。現実的なちょっとした奇跡がほっこりさせてくれる。


No.29 5点 貘の檻
道尾秀介
(2020/10/07 19:21登録)
横溝テイストにあふれた舞台設定に加え、地下水路、農作業のしるべとなる山の残雪の形、薬物、写真など多彩な道具立てを駆使し、人物の造形にも怠りのない精緻な本格ミステリ。


No.28 6点 孤狼の血
柚月裕子
(2020/09/30 20:19登録)
昭和レトロな香りのする熱い男たちのせめぎ合いを、鮮やかに活写している。心に楔を打ち込まれるようなラストの衝撃は無類。


No.27 7点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2020/09/23 20:07登録)
「都市伝説パズル」は、見立て殺人の変形とアリバイトリックを融合させる難度の高いテクニックに裏打ちされた凝りに凝った構成に感服。
「イコールYの悲劇」と「縊心伝心」は、何気ない疑問から精緻なロジックを築き上げてゆくダイナミズム、本格ミステリの根源的魅力を満喫させてくれる。


No.26 6点 ロスト・ケア
葉真中顕
(2020/09/17 18:07登録)
介護問題という重いテーマに挑みながら、一方的で表層的な視線に堕することなく、しかもトリッキーな企みが炸裂している。


No.25 4点 ゴーレムの檻
柄刀一
(2020/09/09 20:34登録)
作中風景や謎が詩的で美しい。だが、収録短編によっては、幻想世界での事件の興味深さに対し、外枠である現実世界の謎解きが意外にあっさりしている。


No.24 7点 土漠の花
月村了衛
(2020/08/31 19:12登録)
現実に起こり得る危機をテーマに、不利な条件、内紛、命の危機の際に示すべき人間の矜持、隠された謎など、本書には冒険小説のあらゆる要素が詰まっている。


No.23 5点 オイディプス症候群
笠井潔
(2020/08/26 20:10登録)
クローズド・サークルテーマの変型と思われていた「孤島ミステリ」に哲学的なアプローチを試み、それを壮大な思索小説にまで昇華させている。
語りはしばしば渋滞し、全体の仕組みも見えにくいので読む人を選ぶ小説といえるでしょう。

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