home

ミステリの祭典

login
九月が永遠に続けば

作家 沼田まほかる
出版日2005年01月
平均点5.33点
書評数6人

No.6 6点 ぷちレコード
(2022/05/08 23:25登録)
物語は、かすかな不安とともに始まる。佐知子の一人息子の文彦が、ゴミ捨てに行ったまま帰ってこないのだ。翌日、若い恋人の犀田がホームから転落し、電車にひかれて死亡する。文彦が事件に関係しているのか。
失踪という日常生活に穿たれた不安から物語は始まり、過去の亡霊が押し寄せるおぞましいサスペンスへと変貌していく。人の心の奥底に眠る忌ぬべきものを、ひとつひとつ丁寧に顕在化していくその過程が何とも生々しい。
しかも鋭く研ぎ澄まされた悪意と、ふてぶてしいグロテスクな狂気が融合し、恐怖を増幅する。気色悪い物語。

No.5 6点 レッドキング
(2018/08/19 11:17登録)
「彼女がその名を知らない鳥たち」よりは リアリティから離れているが 「ユリゴゴロ」ほどミステリとして造りこまれてない その分中途半端に 味が薄まってしまったかな

No.4 6点 小原庄助
(2018/03/26 09:35登録)
主人公の佐知子はシングルマザー。ある晩、高校生の息子がごみを捨てに行くと言い残して失踪する。その後、不可解な出来事が相次ぎ、佐知子は血眼になって息子の行方を追う。
子どもを心配する中年女性の物語は、筋を追うに従って不穏な様相を見せ始める。元夫の再婚相手の奇態。息子の担任の歪んだ過去。絶望を塗り込めたような息子の絵。先が見えない不安や、知ってはいけない過去が暴かれる恐怖が、ジワリとにじみ出てくる。
「エロ怖」とあるものの、実はそれほどエロくない。それよりも、ごく普通の日常を送っている人々がみな、名状しがたい闇を抱えていることの不気味さが、人間の本質をひっそりと言い当てていて読者をひきつける。怖いけれど、ページをめくる手が止まらない。目を背けたくなる描写や錯綜した人間関係をさらりと読ませる文章力がこの作者の良いところだろう。

No.3 7点 HORNET
(2015/01/17 20:34登録)
 何かの賞をとったらしいが、「そう聞いて読んだら期待外れ」という評価が各所で多く、Amazonで¥1でたくさん出品されている、典型的な「評判で売れたが、イマイチで手放す人多し」の作品らしい。何を隠そう私も他の本を買ったついでに、「¥1だからついでに・・・」と同じ出品もとから買った。
 だが、私としては意外によかった。というかこういう話好き。きっと好みが分かれるのだろう。ゴミ出しに行ったまま姿を消した息子の行方を捜し回るのが主人公のバツイチ女性。この女性自身も決して清廉潔白な生活を送っているわけではなく、若い男と逢瀬を重ねている(離婚しているのだから別に悪いことではないのだが)。まぁどろどろした色欲やら人間関係やらがうずまく、ある意味著者の得意分野。結局「魔性の女」オチのような感じだったが、1日ですぐに読めるし、その割にはいろいろ入り組んでいるしでお得な買い物だった。

No.2 4点 いけお
(2012/08/25 02:40登録)
異常かつなんとなく共通の感性が各人物にあり、わかりづらい。
最後まで心理ありきで展開されるプロットとは思わず、残念になった。

No.1 3点 makomako
(2011/12/31 15:38登録)
 第5回ホラーサスペンス賞受賞作で国内ミステリー部門第1位という帯がついて本屋に山済みされていたので、ミーハー心を刺激されてどんなものかと読んでみたが、残念ながらはずれ。
 文章はまずまずだが話の内容が全く好みではない。登場人物はある面で普通の人だが一皮向くとどろどろのごてごて。妙に気の強くそして切れやすい女が主人公で、不自然と思えるほど親切で鈍感なおとこが助けてくれる。こんな話は女性にしか書けないだろう。それにしても女性から見た世界はこんな風になっているのかと思うとちょっと驚く。
 全体として救いようのない話がねちねちと続きうんざりしたといった印象でした。
 私の感性が古いのかもしれませんが、これが本当にベストセラーになっているのですかねえ。
 

6レコード表示中です 書評