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ミステリの祭典

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プラ・バロック
クロハシリーズ

作家 結城充考
出版日2009年03月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 7点 ぷちレコード
(2022/02/08 22:54登録)
警察の群像劇は類型の域を出ていないが、悪魔的な犯罪の全容が浮かび上がってくる展開は読み応え十分。
雨、工業地帯、猟奇的犯行、仮想空間。「ブレードランナー」「セブン」のようなダークな映像作品を容易に想起させる材料を用いながらも陳腐にならず、先鋭的に仕立てた手腕は買う。

No.3 5点 猫サーカス
(2021/06/13 19:07登録)
神奈川県警の女性刑事クロハは、呼び出された現場で思いもよらない凶悪な事件に立ち会うこととなった。埋め立て地の冷凍コンテナからから、十四体もの死体が発見されたのだ。はたして集団自殺なのか。やがて一人の身元が確認されたものの、新たに六体が発見された。頻繁な改行や体言止めを多用した文体のため、かなり安っぽく感じもするが、それも作者の計算の内なのか、独自の雰囲気に統一された作品である。メールに残された数字の謎をはじめ、クロハが仮想空間で会話していくなど細かい道具立ても含め、全てが近未来風イメージによる無機質な世界。表面的な解決の向こうにある驚きの真相など、巧みな構成をそなえている。

No.2 6点
(2015/11/17 10:35登録)
著者の作品にはSF的な趣向が多いということを知っていたので、一時期流行った近未来世界が舞台の映画、ロボコップやブレード・ランナー、マッドマックスなんかの荒廃的な風景を思い浮かべながら読むことができました。
本書の雰囲気には、そんな映像がマッチしています。

後半のサスペンスは文句なしといっていいでしょう。
全編にわたって描いてある、女主人公である刑事クロハの行動や心情も格別な味があります。
難点としては中途が都合よく進みすぎるということ。それと、クロハの独り舞台はしかたないとしても、脇役の扱いが中途半端なことはいただけません。

日本文学ミステリー大賞新人賞は満場一致で受賞とのこと。
でも、満場一致ほどあてにならないものはありません。審査員全員といってもあくまでもプロの視点なので、万人に喜ばれるとは限りません。
といったことを前提としてのぞんだほうがいいでしょう。

No.1 5点 まさむね
(2011/05/19 23:45登録)
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作(2008年)。女性刑事版ハードボイルドといったところでしょうか。
仮想空間,アバター,集団自殺,猟奇的殺人・・・と、まぁ,いかにもなアイテムを総動員してますが,雨の工業地帯を舞台にした,無機質的な雰囲気の醸成は良かったです。その無機質さの中に挟み込んでいる「人間味」の表現手法については,評価が分かれると思いますね。
女性刑事が主人公で,この雰囲気。結構しっくりきますよ。

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