| ぷちレコードさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.22点 | 書評数:333件 |
| No.333 | 8点 | 沈黙の教室 折原一 |
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(2026/07/31 21:50登録) 物語は交通事故で記憶を失った男が、ある中学校の同窓会における殺人計画書を所持していたことから自分との関わりを調べていくくだりと、黒板メモや怪文書を使った陰険ないじめが横行するその中学校の二十年前の出来事が交互に描かれていく。 作者独自の多重構造で現在と過去、複数の人物を巧みに出し入れし引っ張っていく。連続殺人といじめの因果関係を主軸とする人間ドラマの顛末も面白いし、手記や新聞などの多彩な文体を駆使した叙述の仕掛けにも磨きが掛かっている。 |
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| No.332 | 5点 | 同級生 東野圭吾 |
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(2026/07/31 21:46登録) 野球部でキャプテンの西原荘一は、甲子園予選の前に同級生の宮前由希子が交通事故で死亡してしまう。彼女は西原の子供を身ごもっていた。 由希子の死が謎のメインとなるかと思いきや、それ以後不可解な事件が相次ぎ、サスペンスには事欠かない。作者が仕掛けた謎は察しがつきやすいし、その意味では謎解きの核心はトリックそのものより、物語から浮かび上がってくる複雑な人間関係の構図にあるといっていい。 |
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| No.331 | 6点 | 聖女の島 皆川博子 |
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(2026/07/14 21:55登録) 絶海の孤島にある更生施設の園長の要請を受けた修道女がその施設に赴くところから物語は始まる。 荒んでいるはずの施設を前に、明るく理想ばかりを語る謎の園長の物言いを追っていくうちに真相が分からなくなってくる。結局真実というものは、その人の信じた幻想に過ぎないのではないかという気にもさせられる。人間の心の奥底に潜む狂気を題材にしたサイコサスペンス。 |
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| No.330 | 7点 | ダイナマイト円舞曲(ワルツ) 小泉喜美子 |
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(2026/07/14 21:50登録) 花嫁修業中の「わたし」がパリに入学していた時の親友クレマンティーヌに招待され、ヨーロッパの小国、ロンバルト公国を訪ねる。クレマンティーヌは大公にみそめられ、大公の八人目の妻になる。以前の妻たちは謎の死を遂げており、また王宮内の電話の混線から不可解な暗号を聞いてしまう。 王宮や舞踏会、王族、貴族、執事といったおとぎ話的舞台を設え、そこに魅力的な登場人物を配し、その背後でうごめく陰謀は現実的という状況に物語は広がりを見せる。丁寧な伏線が張られ、あらゆる謎がラストで見事に解き明かされるのは、まさにミステリの醍醐味を感じさせてくれる。 |
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| No.329 | 7点 | 球形の季節 恩田陸 |
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(2026/06/30 21:11登録) 東北の小都市を舞台に高校生の間で流行る奇妙な噂を調べていく生徒たちの話。 坂井みのりを始め市内数校合同のサークル地歴研のメンバーは噂を調査した結果、その出所が谷津地区にあることを突き止める。一方のみのりは噂だけでなく、金平糖を使った呪いが流行っているのにも気づくが、やがて噂通りに女生徒が失踪を遂げてしまう。 少年少女のナイーブな心理を浮き彫りにした濃やかな筆致で古風な青春小説調の前半もさることながら、超能力少女の苦悩、美少年の陰謀、超自然現象の謎など、オカルト趣向を効かせた中盤のサスペンス演出が素晴らしい。 |
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| No.328 | 6点 | ぼくのミステリな日常 若竹七海 |
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(2026/06/30 21:04登録) 冒頭の「桜嫌い」は「ぼく」の同僚がアパートの火事に巻き込まれた一件を描いた謎解きものだが、次の「鬼」は心理サスペンスもの、次の「あっという間に」は再び謎解きものに戻るがこれは暗号もので、次の「箱の虫」は人間消失ものといった具合に、同じ謎解きものでも様々なテーマを用意して味わいを異にしている。残りの作品もホラーあり、叙述トリック者ありと作品ごとに趣向を変えている。 表現豊かな情景描写、多彩な人物設定、生き生きとした会話、二重構造の物語を巧みに生かしたトリックなど、デビュー作とは思えない出来栄え。 |
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| No.327 | 5点 | 孤独の歌声 天童荒太 |
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(2026/06/15 21:33登録) 多摩川沿いの住宅地で連続発生するコンビニ強盗と女性監禁殺人の行方を、ロック少年と若き女性刑事、サイコキラーの三人の視点から描き出している本書は、青春成長小説とサイコスリラーの要素を巧みに融合させた異色サスペンスである。 コンビニで夜勤をしながら作曲に打ち込む少年と監禁殺人の捜査に執着する女性刑事の交情からは作者独自の持ち味が窺える。その意味では堅実な仕上がりを見せているが、サイコスリラーとしては監禁殺人とその犯人像のディテールにもうひと工夫欲しかった。 |
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| No.326 | 6点 | 明治殺人法廷 芦辺拓 |
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(2026/06/15 21:25登録) 明治二十一年を舞台に、推理小説的な常識や警察の科学的捜査どころか、司法制度すら曖昧な当時の状況で、いかにして論理的な推理をベースにしたリーガルミステリを描き切るかに挑戦している。 綿密な取材で当時の人間のリアルな反応を活き活きと再現している。加えて現代の諸問題にもそのまま適用できるような鋭い社会的課題への希求も熱い。 |
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| No.325 | 5点 | 暗獄怪談 或る男の死 鷲羽大介 |
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(2026/05/31 21:44登録) よくある怪談実話系の体裁であるが、手触りが違う。友人の祖母の遺品を巡る顛末「或る男の死」、この世のものではない不気味なものが襲いかかる「押し入れの中」など、怪談作家の聞き書きで従来の怪談に近いが、全体的に冷めている。怖がらせるというよりは、怪異からの人間の真実を照射しようとする眼差しが強い。 真っ黒い尿がある事実を示す「墨汁のような」、虎と喚起させる深層意識の熱情「美しきランナー」、そこにある死の予感「小鳥にひかれて」など幻想的で象徴的で、何ひとつ説明がないゆえにイメージが脳裏に焼き付く。 |
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| No.324 | 7点 | ファラオの密室 白川尚史 |
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(2026/05/31 21:37登録) 背景となる時代は紀元前十四世紀。主人公は変死体となって発見され、ミイラにされた神官のセティ。だが心臓に欠けた個所があったため冥府の裁きを受けられず、ミイラ姿のまま地上に舞い戻ってきた。セティは自分が死んだ事件の真相に辿り着けるのか。 セティの死以外にも、解くべき大きな謎が存在する。先王アクエンアテンの遺体が密室状態のピラミッドから消失した大事件だ。アクエンアテンといえば、太陽神アテンを唯一の神を定め、他の神々への信仰を禁止した異端の王として知られるが、アクエンアテンの死の直後という時期でなければ成立しない点であり、歴史ミステリとして極めて野心的な試みといえる。古代エジプト特有の宗教観と密接に関連した特殊設定も謎解きに不可欠な要素となっており、専門知識をわかりやすく語る筆致も見事である。 |
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| No.323 | 5点 | 星くずの殺人 桃野雑派 |
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(2026/05/19 21:08登録) 二〇××年、一人三千万円という破格の宇宙旅行が始まった。宇宙ホテル「星くず」では、正式開業を前に六人の参加者によるモニターツアーを企画。しかし開始早々、事件が発生する。無重力のはずの部屋で、首吊り死体が発見されたのだ。開業前胃のイメージ悪化は避けたいが、死体を放置するわけにもいかず、添乗員の土師は苦悩する。 宇宙空間ならではの謎に始まり、通信途絶、船外活動、スペースデブリなど、次々と襲うサスペンスも緊張感たっぷり。曲者ぞろいのツアー参加者たちの背景も徐々に明らかになってゆき、様々な駆け引きを含むサバイバルものでもある。 |
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| No.322 | 6点 | 半暮刻 月村了衛 |
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(2026/05/19 21:01登録) 会員制クラブに勤める山科翔太と辻井海斗は、女性客を騙して借金まみれにし、風俗店に落としていたが、ある日警察の摘発にあう。だが逮捕され実刑に服したのは翔太だけだった。 児童養護施設で育ち、少年院に入ったことがある翔太と、経産省のキャリア官僚の息子である海斗。第一部では翔太が自らの罪と向き合い、第二部では広告代理店に就職した海斗の罪を捉えていく。ヤクザは暴力団対策法に縛られるが、半グレはカタギの世界に身を置きながら、法の隙間で好き勝手が出来る。代理店勤務のエリート社員でも犯さざるを得ない合法的な犯罪。「日本社会の闇と本物の悪をえぐる」という帯が、ひしひしと迫る社会派サスペンス。 |
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| No.321 | 5点 | 留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白 山本巧次 |
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(2026/05/07 22:33登録) JR北海道、留萌本線は赤字路線の一つだが、その廃止が決定した近未来という設定で書かれている。運命の日が間近に迫った列車を爆発物を手にした男が占拠する。運転手と乗客を人質にとった犯人は、交渉役として廃線に一役買った道議会議員を要求した。 ローカル線とハイテクを駆使した犯罪の取り合わせに意外性があっていい。合理性を追求すれば何かが必ず犠牲になるが、それによって喪われることもあると、作者は警告を発している。 |
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| No.320 | 5点 | そして今はだれも 青井夏海 |
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(2026/05/07 22:28登録) 高校教師の笑子は、生徒から予想外の依頼を受ける。高校では女子生徒の退学が続出しており、その背後には教師Xがいるというのだ。Xは女子生徒の弱みを握り、退学に追い込んでいるという。笑子は正体を探るべく活動を始める。 Xの候補者は四人しかいないはずだが、どうしてこのように混乱が生じてしまうのかという謎解きも興味深いが、謎解きの後のビターな展開が忘れ難い。 |
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| No.319 | 5点 | 虚ろな感覚 北川歩実 |
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(2026/04/24 21:39登録) 7編からなる短編集。その中から2編の感想を。 「完璧な塑像」有野文江は、美容整形医の都波満彦に友人の梨恵を紹介し、都波と梨恵は交際し婚約するところまでいった。しかし都波には他に女がいたという理由で、婚約を破棄した梨恵は、一人旅に出た切り行方不明となった。梨恵からの音信が途絶えて一年が過ぎた頃、文江は街角で梨恵そっくりな女を連れている都波の姿を見かける。ここから二転三転して意外な結末を迎えるのだが、パズラーとしては粗が目立つし、人物描写は生彩が欠け、失踪事件にまつわる伏線がほとんど張られていないのは不満。 「告白シミュレーション」薬の副作用で一時的な前向性健忘症に陥った田坂摩耶は、ニ十分程度しか記憶できなくなる。 摩耶に好意を抱く主人公は、彼が短期記憶を覚えておけないのをいいことに、愛の告白を何度もシミュレーションしてみる。卑怯な恋愛遊戯の果てに明らかになる、滑稽かつ暗澹とした真相こそ作者の真骨頂だろう。 |
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| No.318 | 6点 | 君のクイズ 小川哲 |
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(2026/04/24 21:28登録) 三島玲央は一千万円の賞金が掛かったクイズ番組の決勝戦に駒を進めていた。しかし決勝戦の対戦相手だった本庄絆が、問題文の読み上げ前に解答する「ゼロ文字押し」で優勝する。なぜ本庄絆は読まれる前から答えを知っていたのか。玲央は決勝戦を振り返り、競技クイズのメソッドに基づいて彼の思考を読み解こうとする。 相手の「知っている」を材料にして、より理解しようとするコミュニケーションの過程が、人生の映しでもあるクイズを通して描かれる。一方で、他人の人生をどこまでも知ることが出来るのか、という問いに答えが用意されている点も見逃せない。クイズによって知る行為の意味を広く問いかけている。 |
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| No.317 | 5点 | ゆうずどの結末 滝川さり |
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(2026/04/09 21:17登録) 呪われた本というメタ趣向の都市伝説もの。 自殺した作家・鬼多河さりが遺したホラー小説「ゆうずど」を一行でも読んだ者は市が訪れるという。たとえ途中で読むのをやめても、どこかに捨ててもその呪いから逃げることは出来ない。 様々な場に現れる「ゆうずど」が発動する呪いに救いはないが、それを受ける者たちもまた闇を孕んでいる。定番のテーマ、モチーフをグロテスクなディテールと歪な心理描写で捻るのがいい。 |
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| No.316 | 5点 | ラザロの迷宮 神永学 |
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(2026/04/09 21:12登録) 湖畔の洋館に8人の男女が集まり、殺人事件を題材とする参加型の謎解きゲームに興じる。真相解明まで館から出られないというルールのもと、ゲームが始まった。程なく彼等の眼前に転がった死体は本物だった。 典型的な閉鎖環境ミステリだが、そこに血塗れで警察を訪れた記憶喪失者の素性を探る警察小説が絡んでくる。 多様な驚愕が連続したあげく、思いも寄らない角度から真相が顔を出す。ギリギリの綱渡りが楽しめる。 |
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| No.315 | 8点 | 木挽町のあだ討ち 永井紗耶子 |
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(2026/03/25 21:18登録) 江戸期の芝居小屋を舞台に、ひとつのあだ討ちを目撃した、様々な人の現実を描くことによって、あだ討ちの正体を少しずつ明かしていく。 語り手を変えた「自分語り」を積み重ねた構成。いわゆる聞き書き形式の筋立てで、語り手たちのキャラクターはよく考えられており、それぞれの語りは謎を隠すと同時に真相の一部分を示す形になっており、精緻かつ周到である。 奇想天外なアイデアを、手の込んだ文章が支えている。笑いあり涙あり、芝居の観客や上演に携わる人たちへの敬意にあふれている。 |
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| No.314 | 7点 | 地雷グリコ 青崎有吾 |
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(2026/03/25 21:12登録) 高校生の射守矢真兎は、ゲームを通して次々と現れる強敵と頭脳戦を繰り広げる。そのゲームは他愛のない子供の遊びに独自のルールを追加し奥深い頭脳ゲームに仕立てている。 射守矢は対戦相手の言動から性格や癖を見抜き、それを活かして相手を出し抜こうとする。初体面の相手がどんな人間かを見抜いていく。そして対戦相手が知り合いの場合は、さらに知り尽くそうと執念深く観察し、関係性の変化を呼ぶ。 勝負は文化祭の屋上使用権を賭けたゲームに始まり、しまいには数千万円がかかった勝負にまで発展する。しかし、ゲームを楽しむ高校生たちの青春小説としての趣が、最後まで失われないのも魅力のひとつである。 |
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