home

ミステリの祭典

login
誰かが見ている

作家 宮西真冬
出版日2017年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 HORNET
(2020/08/16 15:48登録)
 幼稚園児の我が子を愛せず、ブログで理想の親子像を騙ることで鬱憤を晴らしている主婦、年下の夫が結婚したとたん求めてこないことに寂しさと不安を募らせるキャリアウーマン、嫌な上司の理不尽な振る舞いに不満を溜め、結婚退職を日々夢見る保育士―さまざまな心の闇を抱えた女性たちの行為が交錯していく。

 最近よく見るようになった「常に他者との優越ばかり気にし、鬱々と不満を積もらせている女性」もの。読み進めている間は真梨幸子のイヤミスを彷彿とさせた。
 ただ本作はダークに振り切って救いのない終わりになることはなく、最後はハッピーエンド。そこに作者のスタンスが表れていた。
 一般市民の日常を舞台として、その中に潜む邪気を描くこうした作品はサクサク読めるし、前述のように読後感もよいのでまぁよかった。

No.1 6点 小原庄助
(2017/08/04 10:17登録)
一作家一ジャンルというほど個性的なミステリ作品を世に送り出しているのが、メフィスト賞である。
昨年受賞作はなかったが、今年はこの作品が受賞。
受賞者OBの辻村深月に惹かれて応募したというが、なるほど女性たちの思いをしかと見据えていて、読み応えがある。
毒に満ちた本音がささやかれ、ママ友から排除され、家庭でも夫と子供にいとわれる女たちの衝突は、人間の嫌な部分を掘り下げるイヤミス的展開をたどり、実に息苦しい。
だが、中盤に意外な真実を明らかにして驚きを与え、緊張感を高め、最後は感動的な夫婦・親子小説に着地するから目頭が熱くなる。
人物像もプロットもテーマも良く、辻村深月なみの書き手になるかも。

2レコード表示中です 書評