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ミステリの祭典

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zusoさんの登録情報
平均点:6.24点 書評数:252件

プロフィール| 書評

No.12 6点 出版禁止
長江俊和
(2020/05/12 19:18登録)
想像すると吐き気を催すような描写があるにはある、そういう怖さです。ホラーとしての怖さとは少し違う感じがする。最後は気持ち悪く裏切られました。


No.11 6点 月と蟹
道尾秀介
(2020/04/24 18:31登録)
主人公は父親の故郷である海辺の町で、祖父、母親と暮らしている小学五年生の慎一。
子どもが生きている世界はとても狭くて逃げ場がない。だから、いろんな逃げ道を有している大人から見れば、些細な葛藤や悩みだって、小さな世界に閉じ込められている子供たちにとっては一大事。この小説の行間からは、そんな子供の行き場のない思いや声にならない悲鳴が聞こえてくるのです。
的確かつ新鮮な比喩を巧みに織り込んだ繊細な文章と、人間心理に対する深い洞察力に驚いた。


No.10 8点 私という名の変奏曲
連城三紀彦
(2020/04/16 19:34登録)
この作品の魅力は、正体不明の犯人にヒロインが殺される冒頭から真相のどんでん返しとなるべき一部が読者に提示され、なおかつ作者も誰が犯人だか書き上げても、分からないというような凝った仕掛けと、ヒロインの哀しい肖像が鮮やかなところにある。


No.9 7点 四人の女
パット・マガー
(2020/04/09 20:19登録)
人気コラムニストが、前妻、現夫人、愛人、フィアンセの四人の女のうちの誰かを殺そうとする。読者はだれがいつ殺されるのかを考えながら読みます。
本格ミステリという評価軸から離れれば、ロマンス・ミステリとしてほぼ完璧。


No.8 9点 黄色い部屋の謎
ガストン・ルルー
(2020/04/01 15:13登録)
密室トリック、人間消失での心理トリック、そして意外な犯人と、三拍子揃った名作中の名作。黄金時代の乱歩ベストテンで唯一のフランス作品。


No.7 8点 火車
宮部みゆき
(2020/03/17 20:23登録)
婚約したばかりの女性が突然失踪した、調べてみると、一度「自己破産」をやっていた、そして次々に謎が出てくる、この女性は一体誰なのか。そして休職中の刑事を中心に、調査が進むにつれてとんでもない事実が明らかになってくる。
なぜ、平凡な人間が、犯罪を犯してしまったのか、それは社会や経済の仕組みに原因があるともとれる。犯人自体も被害者だというわけです。
ここに住宅ローンの破綻、消費者信用や自己破産の問題と絡んできて、なかなか勉強になります。啓蒙的な経済小説としても読めます。


No.6 6点 名探偵の掟
東野圭吾
(2020/03/10 20:54登録)
古来、平安古典や忠臣蔵の、本歌取りや揚げ足を取った作品は数多い。これもそういう流れにあるものと考えてもらった方がいい。そしてまた、ここに収められた作品は、正面から本格に向かい合う作品と同じく、考え抜かれた趣向がこらされている本格推理のパロディ。


No.5 7点 むかし僕が死んだ家
東野圭吾
(2020/02/23 10:21登録)
幼い頃の記憶がないという幼馴染の女のために主人公が訪れた、「封印された幻の家」。そこで蘇った恐るべき記憶とは。
あまりに見事に回収されていく伏線と、立ち現れた重たい真相。「私はやはり、私以外の誰でもないのだと信じて、これからも生きていこうと思います」ラストシーン、主人公に届いた幼馴染からの短い手紙。一つの青春の終りであるこのエピローグに辿り着いたとき一読者である自分の心についた血の滲む傷は今も鮮やかなまま。


No.4 6点 砂漠
伊坂幸太郎
(2020/02/17 20:46登録)
東北の大学が舞台で、キラキラした風情の青春小説。
青春のカッコ良さよりも、カッコ悪さ、まの悪さ、取り返しのつかないことが書かれたりしていて、共感できる部分も多かった。
でも、ミステリとは言えないですよね。


No.3 6点 ソロモンの犬
道尾秀介
(2020/02/14 20:23登録)
同じ大学に通う四人の男女を中心にしたある少年の死をめぐるミステリ。
秋内は、自転車便のアルバイトをしながら学校に通い、仲間と遊ぶ大学三年生だった。ある時偶然にも、知り合いの少年が犬の散歩中にトラックにはねられるという現場に居合わせた。だが、その事故は作為的なものではないか、という疑問が浮かび上がる。
舞台は夏の漁港町。同級生に片思いの若者が語り手をつとめている。そのため、随所に軽妙なユーモアが含まれていたり、主人公のほろ苦い想いが伝わってきたりする全体的に爽やかな雰囲気の物語。後半にはいると、人を食ったような仕掛けがあり、作者らしさを感じで満足した。


No.2 8点 死神の精度
伊坂幸太郎
(2020/01/31 20:44登録)
六編からなる短編集で登場する死神は、死の国の調査委員で、担当する人間が死ぬのにふさわしいかどうか、身辺調査をして情報部に報告するのが仕事。調査期間中には、ストーカー問題がおき、ヤクザの抗争に巻き込まれ、殺人事件の現場に居合わせ、恋のキューピッド役になり、自殺行につきあわされetc。
クラシックな密室殺人劇あり、昔のハリウッド映画を思わせるサプライズ・ストーリーありの各編は、大なり小なりミステリの骨格を保って、絶妙にリンクし、死神はいつもちょっとした探偵の役割を果たす。
構成を含めた作品的な巧みさで言えば、「死神の精度」「恋愛で死神」「死神と老女」の三編だと思うが、個人的には感動したこともあり、「死神と藤田」「旅路と死神」が好みです。


No.1 6点 季節はうつる、メリーゴーランドのように
岡崎琢磨
(2020/01/22 21:16登録)
「季節」にまつわる謎のお話。謎のことを「キセツ」と呼び、日常に潜んでいる謎を解き明かしながら物語は進み、最後には大きな謎を解く。その「謎」が魅力的。
またこの作品の魅力になっている「謎」はもう一つあります。人間の心です。人の感情というのもまた、私たちにはわからないもの。相手がどう思っているのか、または、自分がどう思っているのか。そういう人の心にも「謎」が潜んでいるものです。
この作品のもう一つのテーマは「片想い」です。相手に恋する主人公とヒロインの、「キセツ」を通した交感がこの本の主題になっています。恋愛と絡んだミステリ小説は昔からありますが、この作品ほどロマンスとマッチしている作品も少ないでしょう。

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