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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.76点 書評数:425件

プロフィール| 書評

No.385 7点 白昼堂々
結城昌治
(2024/08/02 20:48登録)
全国をまたにかけた集団窃盗団と刑事たちとの駆け引きを実にユーモラスに、時にはハラハラさせながら描き、ラストで思わず爆笑してしまう。軽ハードボイルドの傑作。


No.384 6点 竜血の山
岩井圭也
(2024/07/12 20:34登録)
水銀鉱山で働く一族の物語だが、殺人、家族の秘密、策謀、隠蔽、露頭などを捻りをきかせて劇的に物語る。
鮮やかな人物描写、堅牢なプロット、時代を捉える鋭い観察力、そして象徴にむかう力強い作風など長所が多々ある。


No.383 5点 食べると死ぬ花
芦花公園
(2024/07/12 20:30登録)
家庭に問題を抱えた人々の前に美しい男が現れ、贈り物を与えるという作者らしい邪悪な救済の物語。
次第にある一家・一族をめぐる物語へと拡大していく展開や男の正体など、宗教伝奇趣向も作者らしい。


No.382 6点 AX
伊坂幸太郎
(2024/06/21 20:42登録)
家族のために足を洗いたいと考えている殺し屋が主人公の連作短編集。
人間味あふれる登場人物、心をくすぐられる会話、予想外の展開とエンターテインメント性は高い。


No.381 8点 地雷グリコ
青崎有吾
(2024/06/21 20:40登録)
高校生同士の頭脳バトルが楽しめる連作短編集。だが、長編としても成立しており、ひとつの大きな物語としての魅力がある。
ゲームはどれも独創性があり、ロジカルに練り上げられている。また、高校生たちが生き生きと描かれており、青春小説としても上質である。


No.380 5点 砂男
ラーシュ・ケプレル
(2024/06/21 20:37登録)
閉鎖病棟に収容された史上最恐のシリアルキラーと誘拐事件をめぐるサスペンス。
大胆な趣向、意外な仕掛けに外連味のあるアクションと娯楽性を凝らしたつくりに圧倒された。


No.379 5点 書架の探偵
ジーン・ウルフ
(2024/06/02 20:30登録)
図書館同士の取り決めで海辺の小さな図書館に送られた主人公のミステリ作家スミスが、病に臥す女性の依頼で行方不明の夫を探す。
案件がほぼ片付いた後に、奇妙な展開をしていくが、それは唐突に途切れる。謎に満ちていて、ユーモラスでエロチックな一冊。


No.378 7点 秘密
ケイト・モートン
(2024/06/02 20:27登録)
ローレルが、死期が近づきつつある母親の過去の秘密を探る。現代パートを穏やかに描く一方、過去の戦中のパートを闊達に描いてコントラストをつけている。
物語は愛情、友情、誤解が交錯する。次第に明らかになる衝撃的な秘密。伏線の張り方も素晴らしい。


No.377 7点 藪の中
芥川龍之介
(2024/06/02 20:24登録)
一人の侍が殺される。三人の容疑者は、誰もが自分が殺したと主張し、真犯人が分からない。真実なら死罪だが、あえて殺したと嘘をつくのは何故か。
そこに人間の深層心理が表現され、読めば読むほどに圧倒される。法医学的に分析しても、死体所見と現場の状況にいささかの矛盾もない。


No.376 5点 ボーン・クロックス
デイヴィッド・ミッチェル
(2024/05/10 20:57登録)
一九八四年に十五歳だったホリーの人生を中心に、輪廻転生のような形で生き続けている時計学者、相性の良い他者を儀式的に殺害することで延命する隠者の、二大勢力の戦争を描き出していく。
複数の時代や特殊能力を持つ人間を語り手に据えながら、パズルが組み上がっていくように大きな世界を築き上げて見せる、壮大な幻想文学。


No.375 5点 めぐみの家には、小人がいる
滝川さり
(2024/05/10 20:51登録)
洋館に潜む小人の群れと少女の邪悪な交流譚。ファンタジーやホラーではお馴染みの題材だが、そこに陰湿ないじめの問題を加味。
グロテスクな小人の生態とも相まって、彼らの狩り暮らしとの共生に説得力を具える何とも陰湿なディテールの快作である。


No.374 7点 スクイズ・プレー
ポール・ベンジャミン
(2024/05/10 20:46登録)
皮肉な眼差し、誇張されユーモラスな比喩、活きのいいワイズクラック、あふれる機知と警句。一見非情な正義を求める伝統的なハードボイルド・ヒーローのようでありながら、繊細な優しさも隠し持つ。作者らしく内省的で、時に温かく抒情的で胸に迫る。


No.373 6点 長い腕
川崎草志
(2024/04/18 21:44登録)
第二十一回横溝正史賞受賞作で、ゲーム業界の内幕ものとしても興味深い作品。インターネットを犯罪の道具にする匿名的な悪意が、横溝風の土着的な雰囲気と融合しているのには感服するしかない。


No.372 6点 死神の戯れ
ピーター・ラヴゼイ
(2024/04/18 21:39登録)
住民の信頼の篤い牧師だが実はという話。不埒な性格造型、風刺の効いた皮肉な観察、意外性に富む展開で楽しませてくれる。人と食ったような幕切れには、ニヤリとさせられた。


No.371 6点 火蛾
古泉迦十
(2024/04/18 21:36登録)
第十七回メフィスト賞受賞作。イスラム神秘主義の教義が謎解きの骨子と有機的に結びついた神学ミステリで、歴代の同賞受賞作の中でも異彩を放っている。


No.370 5点 撃て、そして叫べ
ダグラス・E・ウィンター
(2024/03/31 20:43登録)
密売事件の罠にはまったギャングが、逃亡から逆襲へと転じて敵を追い詰めていく物語で、捻りのきいたプロット、独創的なキャラクター、心にしみいる脇役と申し分ないし、臨場感に満ちた銃撃場面の数々も興奮もの。


No.369 4点 必須の疑念
コリン・ウィルソン
(2024/03/31 20:38登録)
哲学思想にまで話が広がる気配をみせる謎の提起は魅力的。
だが、序盤の追跡劇におけるサスペンスの希薄さ、終盤に明かされる真相の唐突感など、小説全体としては粗が目立つのが残念。


No.368 6点 老虎残夢
桃野雑派
(2024/03/31 20:35登録)
南宋時代の中国を舞台に、武侠小説と本格ミステリを両立させている。
個性が際立つキャラクターを操り、彼等の特殊能力を活かしつつ、師が弟子に奥義を授ける直前に発生した密室状況での変死事件の謎解きを鮮やかに描ききっている。


No.367 6点 背後の足音
ヘニング・マンケル
(2024/03/07 20:20登録)
同僚刑事が殺されるシリアスな事件、綿密で着実な捜査、やがて浮かび上がる現代社会の歪み、そしてヴァランダーが糖尿病になってしまうというユーモラスな要素が、圧倒的に達者にまとめ上げられている。


No.366 7点 空白の起点
笹沢左保
(2024/03/07 20:17登録)
高額の保険に加入してほどなく殺された男の死の真相を、保険調査員が追う。トリックの扱い方も見せ方も巧みだし、人間関係のもつれを描く筆も冴えている。

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