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ミステリの祭典

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秘密

作家 ケイト・モートン
出版日2013年12月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 八二一
(2024/06/02 20:27登録)
ローレルが、死期が近づきつつある母親の過去の秘密を探る。現代パートを穏やかに描く一方、過去の戦中のパートを闊達に描いてコントラストをつけている。
物語は愛情、友情、誤解が交錯する。次第に明らかになる衝撃的な秘密。伏線の張り方も素晴らしい。

No.3 6点 nukkam
(2020/12/11 22:23登録)
(ネタバレなしです) オーストラリア出身で米国に移住したケイト・モートン(1976年生まれ)は「21世紀のダフネ・デュ・モーリア」と評価されているみたいで、本格派推理小説ばかり偏愛している私の心には全く刺さらない評価なんですが(笑)、2012年発表の小説第4作にあたる本書については創元推理文庫版の巻末解説で本格派要素もあるように紹介されているので試し読みしました。上下巻合わせて700ページに達する全34章の大作なのでお試しとしてはちょっと敷居が高かったかな。1961年に母ドロシー(ドリー)が娘ローレルの目の前で殺人を犯し、それから50年後の2011年にローレルはいったい何がドロシーを殺人に駆り立てたのかを追求することになります。事件のあった1961年はそれほど描かれず、1941年と2011年を何度も往ったり来たりするプロットです(これは作者の得意パターンらしい)。1941年に関してはドロシーの青春物語要素が非常に濃く、丁寧な描写が光りますがミステリー要素が希薄でもやもや感が強かったですね。最後は巧く「秘密」が明かされてすっきりできました。もっともあの真相だとある人物の言動が不自然に感じられて、のどに魚の小骨がささったような読後感も残りましたが。

No.2 7点 猫サーカス
(2017/11/25 19:44登録)
物語は現在、50年前、第二次大戦中の1941年を行き来しながら進む。穏やかな現在と対照的に、戦時下のロンドンでは爆撃機が飛び交い、波乱万丈のドラマが繰り広げられる。恋をし、夢を抱く若者たちの姿は生き生きとしまぶしい。「これだけは長く生きていれば誰だって、どこかで後悔したくなるようなことをやっているはずよ」と死の床で母が漏らした言葉の意味が明かされた時の驚き。語り口もストーリーも仕掛けも、文句なく素晴らしい。なによりローレルの動機が母を糾弾するためではなく、愛する母を理解するためだという事に心を揺さぶられた。

No.1 7点 kanamori
(2015/01/12 11:46登録)
死期がせまった母親ために帰郷した英国の国民的女優ローレルは、彼女の少女時代に目撃した、母ドロシーが見知らぬ男を刺殺した50年前の事件を思い出す。事件は正当防衛として処理されたが、ローレルは男が発した一言に疑念を抱いており、事件の隠された真相を明らかにしようとする----------。

物語は、ローレルが母親ドロシーの過去を調べていく現代パートと、ドロシーが戦時下のロンドンでメイドとして暮らす70年前の過去パートを交互に描き、時空を行き来しながら薄皮を剥がすように”母の秘密”が明らかになっていく。相互のエピソードが真相につながる伏線として補完するような構成が効いていて上手い。
サラ・ウォーターズやロバート・ゴダードを髣髴とさせるゴシック・ロマンスという評判もあるようですが、語りの重厚さや文章の格調の高さという点ではやや物足りなさを感じ、中盤までは冗長さもある。しかし、過去パートの物語でヴィヴィアンという女性が絡みだしてからの終盤のどんでん返し的展開は見事で、ドロシーの恋人ジミーの役割にも感動させられた。
ミステリとしての仕掛けの部分だけを取り上げるとベタなトリックではあるけれど、非常に読後感のいい上質なミステリでした。

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