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ミステリの祭典

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長い腕

作家 川崎草志
出版日2001年05月
平均点6.57点
書評数7人

No.7 6点 八二一
(2024/04/18 21:44登録)
第二十一回横溝正史賞受賞作で、ゲーム業界の内幕ものとしても興味深い作品。インターネットを犯罪の道具にする匿名的な悪意が、横溝風の土着的な雰囲気と融合しているのには感服するしかない。

No.6 5点 パメル
(2022/12/19 08:00登録)
世間では奇妙な事件が頻発していた。退職を控えたゲーム会社の社員・島汐路も同僚の女性二人がビルから転落死したのを見た。不審に思った島が二人の周辺を調べたところ、彼女たちが「ケイジロウ」というキャラクター人形を偏愛していたことが判明。彼女の故郷である四国の田舎町・早瀬で起こった女子中学生の猟銃射殺事件にも「ケイジロウ」が関係していたことに気づいた島は、さっそく早瀬へ帰って事件の再調査を始めるのだが。
作者はゲーム会社に勤務していたことがある経験を活かし、ゲーム会社の内部事情を描いた第一部から、横溝正史作品を思わせる閉鎖的な村を舞台にしたおどろおどろしい第二部へと物語を展開させ、さらに二つの事件を共通のテーマで繋いでみせた意欲作。
前半と後半をガラリと雰囲気を変えながらも、両者も「物質的な歪みと精神的な歪み」というモチーフによって連結させた趣向は興味深く読め、ネットの持つ影響力に改めて考えさせられる。クライマックスには、怪奇小説の要素も盛り込まれており、新しいタイプの恐怖を描いたホラーとしても楽しめる。プロットを成立させるために、ややご都合主義的に異能者が現れる感はあるが。

No.5 6点 メルカトル
(2014/06/17 22:32登録)
第一部は主人公の汐路を通して、ゲーム・メーカーの実態を詳らかにしている。これは作者のキャリアを生かした、氏ならではの描写ということだろう。興味のある人には楽しく読めるのではないかと思うが、そうでない人にとってはやや退屈かも知れない。事件は一応起こるのだが、大した扱いは受けていないので、ほとんどミステリから乖離した形になっている。
第二部は汐路が閉鎖的な村に帰省するところから始まる。ここでは彼女が事件を追い始めるが、手を広げ過ぎて読む側からしてみれば、一体どの事件に焦点を当てているのかがイマイチ分からない。そしてやや冗長な印象を受ける。が、盗聴器を排除するシーンなど興味深い場面もあったりする。
終盤は一気にヒートアップし、それまでの平板さを挽回するがごとくスピード感も出て、盛り上がりを見せる。ホラーっぽく、ねっとりとした描写から、一転論理的なミステリ的解決に向かって収束していく過程は非常に読み応えがある。
最初から終盤のような読ませる作品に仕上がっていれば、文句なく横溝正史賞受賞作に相応しい本格ミステリとして、後世に残る名作となったであろう。残念ながら、現段階ではそこまでの領域には達していない。

No.4 8点 虫暮部
(2014/06/05 20:19登録)
面白かった。全員排除という落とし所が凄い。 
 難を言うなら、細かいことだけど、“パソコンの打ち間違い方が共通”というのは都合の良過ぎる犯人側のミスではないかと思う。語彙とか漢字表記の選択とか、“ミス”と認識されにくい手がかりを使ったほうがわざとらしさは軽減された筈。

No.3 9点 mohicant
(2013/08/05 22:26登録)
 過去の人間の悪意が現代に作用するなんて、作者の発想に脱帽。伏線もうまく作用し、ミステリとしてレベルが高いと思いました。長い腕というタイトルも深い。ミステリ好きなら読んどいて損はないと思います。

No.2 6点 misty2
(2011/05/18 21:59登録)
書店の謳いに誘われ、拝読。
ホラー調に盛り上げる場面もあり、気になる作家となった。
小生には、作品名と内容の繋がりがみえず・・・。
何方か、教えてください。

No.1 6点 3880403
(2011/04/08 18:35登録)
ドキドキしながら、すらすら読める。
途中でもしやホラーなのか?と思ったが全然ミステリ!
ネットやゲームの話もあり、古い建築の話もありで飽きさせない。
ゲーム制作をやっている作家ということでゲームの描写などはよくできていたと思う。

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