ことはさんの登録情報 | |
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平均点:6.25点 | 書評数:273件 |
No.273 | 7点 | 11枚のとらんぷ 泡坂妻夫 |
(2025/03/29 19:30登録) Ⅱ部は抜群に面白い。ミステリ・ショート・ショートとして、これほどの出来の作品は他にないと思う。 全体の趣向もかなり好き。読み直してみると、キーとなる事(これは数十年ぶりの再読でもさすがにおぼえていた)は、冒頭からそれとなく匂わせてくるし、全編にいくつも振り撒いているのがわかる。解決編での、それらの伏線の指摘は素晴らしく、テンションがあがる。 そのわりに、そこまで高得点でないのは、Ⅰ部とⅢ部にある。Ⅰ部は、(再読では伏線を拾えて楽しめたが)趣向を知らずに読むと、ドタバタを含む奇術ショーなだけで、事件が起きるまでが長すぎて飽きてしまうし、Ⅲ部は、解決編までは奇術大会の模様で、ミステリ的興趣は薄い。この辺、奇術に興味がある人には楽しいのだと思うが、あまり興味がない私は楽しめなかった。 再読で気づいたのは、亜愛一郎シリーズのキャラ「三角形の顔の老婦人」が出ていること。なんで記憶していなかったかなぁ。 |
No.272 | 5点 | 秘密 P・D・ジェイムズ |
(2025/03/29 18:31登録) ダルグリッシュ、最後の事件。作者も最後の事件を意識して書いているのがわかる。ダルグリッシュも「最後の事件になる」(組織替えで立場が変わり、現場から離れる)と考えるシーンがあるし、ラスト・シーンも最後の事件だからこのシーンにしたと思う。 しかし、事件そのものは独立していて、最後の事件である要素はない。 ジェイムズの構成パターンに則って、1部は事件が起きるまでの関係者をじっくりと描き、2部から捜査が始まる。2部の冒頭は、前作「灯台」の冒頭と同様、捜査担当の3人の呼び出されるところからはじまる。スタイルとして、これは読みやすい。 その後の殺人事件という特殊な状況での濃密なドラマは、いつものジェイムズだった。そこが好きな人にはいつもどおりに楽しめるが、ミステリとしての意外性や反転などには、特に惹かれるものはなかったので、高得点はつけられないかな。 ネット検索したら「5部は不要」との意見があった。言われると、物語の作りとしては確かになくてもよいと思える。それでもこの章をつけたのは、ジェイムズが必要だと考えたからだと思う。未来への希望を描いたこの章を、書きたいと思ったのだろう。作品発表時に88歳だった著者の思いを想像するのも興味深い。最後の段落から抜粋しよう。”でも私たちには愛がある。……。私たちにはそれしかないのだから。” |
No.271 | 6点 | 累々 松井玲奈 |
(2025/03/29 18:10登録) 1作目を楽しめたので、2作目も読んでみた。期待以上に面白かった。すごいな、松井玲奈。 文章は、ドライで、1人称でも自身を客観視しているようで、心地よい。 ミステリ読みにも、受け入れられそうだ。共通の世界を背景にした短編集という体だが、ある見せ方にミステリ的なセンスがあるし、2、3話目は語り手のキャラクターが少し普通じゃなく、サスペンス小説の導入のような読み心地で、異色作家短編が好きな人には楽しめそう。 読み終わってから考えると、タイトル、表紙(文庫のほう)も、内容を暗示しているようでセンスがよい。 |
No.270 | 5点 | 犯罪カレンダー (7月~12月) エラリイ・クイーン |
(2025/03/09 18:11登録) 再読。前半よりはやや落ちるかな。でもクイーン好きでないと、琴線には触れなさそう。 「堕落した天使」 このころのクイーンらしい人物配置だが、クイーンらしい推理やプロットのひねりはなく、平凡な作。 「針の目」 解決の推理のために誂えた舞台やストーリーといった感じで、緊密感が足りず、肝心の推理もクイズ的でいまひとつ。 「三つのR」 作中にミステリがでてきて、結末もなかなか楽しい。けれど、「犯罪カレンダー(1-12月)」で考えると、ちょっと……とは思う。 「殺された猫」 これも、解決の推理のために誂えた舞台やストーリーといった感じで、緊密感が足りないが、推理は本集で1番よい。 「ものをいう壜」 全体的にバタバタして、とっ散らかってる感じがする。趣向は、有名海外ミステリドラマの1作目を思い出した。 「クリスマスと人形」 クイーンらしさとは縁遠い「怪盗との対決」を楽しめれば、なかなかよい話。仕掛けは手品的。 解説の村上さんもよい。ラジオドラマを紐解いていて、充実している。 |
No.269 | 5点 | 犯罪カレンダー (1月~6月) エラリイ・クイーン |
(2025/03/09 18:09登録) 再読。傑出した作品はないが、安定した作品集。でもクイーン好きでないと、琴線には触れなさそう。 「双面神クラブの秘密」 これはストーリも見るところがないし、推理もクイズといったところで、凡作。 「大統領の5セント貨」 アメリカ史に知識がないと「そうなんだぁ」という感じ。正当な評価はできず。 「マイケル・マグーンの凶月」 盗難に端を発し、別の殺傷事件、待ち伏せなど、次々とイベントが発生し、最後はきれいな手がかりでしめる良作。 「皇帝のダイス」 ややゴシック調の雰囲気で展開し、伏せられた真相を、エラリイはある手がかりからあばく。結構好み。 「ゲティスバーグのラッパ」 かなり特異な状況設定。解決は、エラリイでなくても優秀な刑事ならば出来そうなもの。アメリカの地方の町のメモリアル・デイの雰囲気を楽しむ作品だろう。 「くすり指の秘密」 事件が起きるまでの溜めが、ライツヴィル以降の作劇。短編としての締めはかなり好み。 解説の法月さんは相変わらずよいですね。まず書誌の紹介を行い、「クイーンがクイーンの声色をやっている」との評を引いて作風を示し、クイーンの歴史への傾倒に触れ、クイーンの作風の変遷の中での本書の位置づけに話をすすめる。さらに、本書のノスタルジックな性格を指摘して、本書の意義で締める。さすがです。 |
No.268 | 7点 | ダイヤル7をまわす時 泡坂妻夫 |
(2025/03/09 02:14登録) 再読。今回は創元推理文庫で読んだ。その解説で初めて意識したが、初出からすると「煙の殺意」と「ゆきなだれ」をつなぐ作品群になるとのこと。「煙の殺意」と「ゆきなだれ」が、どちらも傑作短編集なだけに、比較すると本作はやや見劣りがする。すこしきつい言い方をすると、2つの作品集に入れなかった落穂拾いの感もある。それでも最盛期の泡坂妻夫の作品なので、水準は十分にクリアーしている。特筆すべきは、語り口が各話で凝らされているところかな。ベストは「飛んでくる声」。 前半3作が、「煙の殺意」に似た「謎と解決」が主。ページ数が長め。 「ダイヤル7」は、手がかりと、そこから紡がれる反転が魅力的。こういう「手がかりと推理」の部分でも、泡坂妻夫はうまいなぁ。「芍薬に孔雀」は、作者らしい特殊なカードや設定で楽しいのだが、とんでもない偶然や展開に、無理がおおきいところがある。「飛んでくる声」は、サスペンス調の前半が泡坂妻夫としては異色。でも終わってみると、「構図の反転」と「伏線の回収」は、安定の泡坂印。 後半4作は、「ゆきなだれ」に似た「動機の謎、What done it」。ページ数が短め。 「可愛い動機」は、ちょっと奇妙な話。シンプルすぎるてあまり楽しめなかった。「金津の切符」は、本作ではすこし異色で倒叙もの。前半の、コレクターである主人公の心情が身につまされた。「広重好み」「青泉さん」はシンプルなWhat done it。「青泉さん」の足跡の処理に、謎解きミステリ作家としての泡坂妻夫のセンスがあると思う。 |
No.267 | 6点 | 本命 ディック・フランシス |
(2025/03/09 02:05登録) 再読。まったく忘れていて、完全に初読と一緒だった。 一読後の感想は「デビュー作からフランシスはフランシスだった」ということだ。他感想でフランシスの特徴として書いた「ハードボイルド風の語り口、ストイックで有能な主人公、せまる敵、おそってくる苦痛」といったものが、すでに揃っている。 さらに、終盤の見せ場で、障害競馬の騎手という設定が生かされていて、フランシスの経歴から読者が期待するものがあるのは、やはりデビュー作だからだろう。 フランシスの特徴がでていて、かつ、デビュー作という点で、代表作にはふさわしいが、面白さの点ではフランシスの標準作といったところだと思う。展開にぎこちないところもあるし、とくにラストは釈然としない。「あの人物と、これからどうする?」と考えると、中途半端な気がした。 |
No.266 | 6点 | 査問 ディック・フランシス |
(2025/03/09 02:02登録) 冒頭から主人公が困難にみまわれ、以降、それをなんとかしようとしていくのだが、寄り道することなく、一気にすすむ。安定のフランシスだ。 しかし、フランシスの良作と比べると、事件が小粒で、最後にわかる首謀者も小物感がある。フランシスの作品で、上位には推せないかな。 ただ、ヒロインは印象に残った。「あごをあげる」、「姿勢が良い」などの簡潔な描写が、キャラクター・イメージを表すスケッチとしてかなりよかった。主人公と比べると、年齢のバランスが悪いのはしょうがない。当時はそれが多かった。 |
No.265 | 6点 | 狩人の悪夢 有栖川有栖 |
(2025/02/09 18:19登録) 読んでいるときの心地よさが、実によい。 少しずつ事件の様相が見えてくる感じや、ひとつの事実がわかるたびにディスカションして全体の構図を確認するところは、初期クイーンの捜査パートや、鬼貫物の長編の読み心地だ。「これが謎解きミステリの楽しみだよな」と感じる。 それに比べると、解決部は、少し物足りない。犯人の思いや背景などは味があるが、それほど意外な推理や構図はなかった。 あと、編集者の江沢鳩子がとても魅力的に感じた。口調がよいのか? どこがいいのか説明が難しいが、プロな感じか? 生き生きとしているように感じた。 |
No.264 | 7点 | 三人の名探偵のための事件 レオ・ブルース |
(2025/02/09 18:06登録) 期待以上に楽しめた。 4人の推理がどれも楽しい。各探偵の推理が、パロディ元の探偵の特徴を出しているのが実によい。 好きなのは、神父の推理。Xが見えたというあたりの象徴性がよい。 これは、レオ・ブルースの他作品も、かなりそそられるなぁ。 |
No.263 | 7点 | 巴里マカロンの謎 米澤穂信 |
(2025/02/09 17:54登録) 「冬期」が書かれる前の本サイトの感想には、「このシリーズは今後どうなるの?」「終わらせずに今後も続く?」などと書かれていて、本サイトの投稿者をやきもきさせた(?)が、「冬期」できれいにふたりの関係性に結がついたので、「春・夏・秋・冬がメインストーリーで、本編は番外編」という位置づけにおさまったと考えてよいだろう。 春・夏・秋・冬は「ふたりのキャラ/関係性を描く」ことが主で、「謎と解決」は従だったが、本作は、「ふたりの関係性」を固定して「謎と解決」の方を主にしている。そのため、「謎と解決」に関しては、本作がシリーズでいちばん良い。意外性は大きくないが、納得感はある解決で、伏線のはられ方も、じつに良い。 Wikiによると、本になっていない作が3作あるとのことだが、早くまとまらないかなぁ。楽しみだ。 あと、この手のノリなら、アイディアが出ればいくらでも続けられるので、「冬期」以降の大学生編も作者の意思があれば可能なのだが、無いよね。出たら絶対買うのになぁ。 春・夏と同様、これもまた再読だが、これもまた初回より楽しめた。全体にちりばめられているユーモアがよかった。10年のブランクで小佐内さんのキャラがまるくなったのか? 演出は間違いなく春・夏よりうまくなっている。1作ずつ見てみよう。 「巴里マカロンの謎」。謎解きの動機に無理がないのが展開をスムーズにしている。春の「おいしいココアの作り方」なんかは、「その疑問にこだわらなくても……」と思ったが、本作で「店員を呼ばない」と決める理由が、いかにもキャラらしい理由で、ストーリーの流れをじゃましない。冒頭の名古屋に向かうところでも、「なにするのか言ってなかった」あたりのやりとりが楽しいし、推理の途中でも「ガナシのフィーリング?」をはじめ、ボケとツッコミの間合いが多く楽しい。謎解きは小粒でも、会話の楽しさで読ませる。 「紐育チーズケーキの謎」。導入部、チーズケーキの感想を語りあうところから、キャラのたった会話で実に楽しい。「そういうことなのよ、小鳩くん」という会話の締めまで実にいい。事件途中、古城さんが理由も聞かず走り出すときに語りで小鳩くんがツッコミをいれるところや、「それにはおぼやないわ!」という言い間違えなど、全編、いろいろと楽しい。謎解きもシリーズで上位で、満足度の高い一編。 「伯林あげぱんの謎」。犯人当てとして作られたためか、謎の検証はいちばん力がはいっている。そのためか、逆に、作内のユーモア分は薄くなっているが、ユーモア分はラストで全回収しているので、バランスのいい良作。 「花府シュークリームの謎」。謎解きとしてては、冒頭のxxxxxやxxが伏線として立ちあわわれる展開がよい。インタビューによると、作者の初期構想では、ふたりの立ち位置は「ハードボイルの探偵」と「名探偵」とのことなので、それからイメージすると、これは”いかにも”というストーリー。こういう”「行動力」と「推理力」の組み合わせで事件が解決される”話をもっと作ってほしいなぁ。ふたりの会話は、他作品以上にバディ感があって、そこもグッドポイントだ。 |
No.262 | 6点 | そこにいるのに 似鳥鶏 |
(2025/02/09 15:31登録) 短編ホラーでは、もはや斬新なストーリー展開はむずかしいと思う。そうなると、あとは見せ方、演出、描写で、いかにゾクリとさせるかだと思うが、本作は堂に入っていた。デビュー作を出版当時に読んでいた身としては、成長したなぁと感慨深い。(デビュー作は、まだ、だいぶ、こなれていなかった) 収録作でよかったのは「空間認識」、「労働後の子供」。 「空間認識」は、すこし有名ホラーを思い出す状況設定だが、描写がうまく、映像が目に浮かぶのがよい。 「労働後の子供」は、ひねりのあるまとめ方がよい。 あと、AMAZONによると、単行本と文庫本で、タイトルの異同がいくつもあるとのことなので、要注意。私は文庫本で読んだ。 |
No.261 | 6点 | 追憶の殺意 中町信 |
(2025/02/09 15:11登録) 書かれた時代を考えれば、しょうがないのかもしれないが、自動車教習所という舞台や恋愛事情などの話はあまり好みでなかった。 しかし、事件の様相が変わっていく過程は面白かったし、その過程で提示されるトリックや、トリックが見破られる契機はよく考えられていて、かなりよかった。この辺の、プロット作りやトリックや手がかりは、いかにも鮎川哲也風だ。(鮎川好きは、徳間文庫の「太鼓叩きはなぜ笑う」の解説で、熱く語っている) 残念なのは、キャラクターが立っていないために、情感に訴える部分が乏しいところで、中町信が再ブレイクまでマイナーだった要因はこういうところなのだろう。 |
No.260 | 4点 | 空白の殺意 中町信 |
(2025/01/03 01:36登録) これはいまひとつだった。なんといっても、高校野球という背景や、ラブホテルを舞台にした情事などの話の展開が、あまり好みでなかった。 警察も含めて、根拠もないのに「……としか考えられない」いう決めつけが多く、事件に対する試行錯誤が行われないのも、謎解きとしては残念。 途中、ある人物の独白が入るので、それについては、読者には事実だと担保できるが、登場人物にはわからないはずなので、「なぜ断定できるの?」 と思ってしまう。だから。その推定が覆されても、「いや元々根拠薄弱だったじゃん」と思って、意外性を感じない。 全体の仕掛けについて、カーのある作品をフィーチャーしているそうだが、カーのほうがよい。確かにそれはxxxxの謎を解くためのキーだが、そもそもxxxxに焦点があたっていないので、そこを強調されてもなという感じがした。 |
No.259 | 7点 | 模倣の殺意 中町信 |
(2025/01/03 01:31登録) よみやすいのはよいが、文章表現でいいと思えるところはないので、よくもわるくもプロット勝負。まあ、いつもの中町信作品だ。本作は、途中のプロット展開も飽きさせないので、なかなかよかった。 2つの語りが交錯する構成になっていて、そこはかなり好みだった。ひとつは誘拐事件で、もうひとつは剽窃事件。それぞれにアリバイ崩しの展開が盛り込まれているのが、鮎川好きを自認している中町信らしいところだ。(鮎川好きは、徳間文庫の「太鼓叩きはなぜ笑う」の解説で、熱く語っている) さらに、「2つの事件の絡ませ方」は、あの趣向も含めてきれいにきまっていて、これはよかった。「驚き」のインパクトは大きくないが、「あれはこういう事だったのか」と、いくつものエピソードがカチカチと嵌まってゆく「整理の快感」にすぐれていると感じた。 まあ、今から、中町信だからと、過度にインパクトに期待をして読むと、がっかりしてしまうかもしれないが、良作だと思う。 |
No.258 | 5点 | 泡の女 笹沢左保 |
(2025/01/03 01:00登録) 「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズのカバーに惹かれて、もう1冊。 本作の面白さは、捜査の道行きの部分だろう。「招かれざる客」の感想でも書いたが、鮎川哲也の鬼貫ものを思い出させるもので、なかなか楽しい。ただ、これも「招かれざる客」と同じだが、順調にいきすぎなのは、やや難点。 真相の提示や、解決編もスピーディで、すっぱりと終わるのは、「軽やか」と肯定的にみるか、「あっさりしすぎ」と否定的にみるかは、好みが別れるところと思った。 時代(1961)を考えると、読みやすいのは実に驚異的。なにしろ、烏山がまだ人家がまばらで、風呂を薪で焚く時代なのだから。 |
No.257 | 5点 | おしゃべり雀の殺人 ダーウィン・L・ティーレット |
(2025/01/03 00:55登録) 解説で、第二次大戦前のドイツを、1936年当時に描いたことを称揚している。たしかに生々しい描写がいくつかあるが、それをもって本作を傑作とするのは、ちょっとちがうなぁと思う。 上記のような描写が少しはさまれるが、全体はヒッチコックの映画のようだった。いちばん近いイメージは「北北西に進路を取れ」かな。冒頭の「雀がしゃべった」というエピソードも、終盤にその謎は解かれるのだが、前半はヒッチコックが言ったマクガフィンとして機能する。 そして、次々と事件が起き過ぎて、読んでいる方は全体像がよくわからなくなり、謎を究明するモチベーションも低下してしまうので、これはやや失敗作かと思う。 あと、場面転換がわかりづらいところが多々あるのもマイナス。例えば、レストランに向かって歩き始めて、色々思考をめぐらした記述がつづいたあと、「テーブルについたら」とくる。「レストランに着いて」の一言があるだげで全然違うのにと思う。他にも、「家をめがけて走った」につづけて「机の鏡板を巻き上げ」とあり、家に入ったり部屋に入ったりの描写がなかったりするので、一読では戸惑ってしまった。 |
No.256 | 6点 | エロス 広瀬正 |
(2025/01/03 00:49登録) ミステリーではない。SFというのも、ニュアンスが違う気がする。ファンダジーかな? 最近の異世界ものに近しい世界観かな。 面白さのポイントは、ノスタルジー。多分書かれた当時から見ても、過去となった戦前を描いているので、「今、読んで」だけではなく、当時もノスタルジーが面白さのポイントだったのではないかと想像する。 ラストにある趣向が存在するが、これは個人的には好きになれなかった。そんな簡単な話じゃないよねと感じる。 |
No.255 | 6点 | 創られた心 アンソロジー(海外編集者) |
(2024/12/15 23:55登録) 副題に「AIロボットSF傑作選」とあるように、SFである。 しかし、その中の1作の「もっと大事なこと」は未来世界を舞台にしたハードボイルドで、SFミステリとしてなかなかよいので、登録してしまおう。事故のように見える財界の大物の死を、語り手の私立探偵が、スマート・ハウスとロボット執事に質問していくことで炙り出していくというもの。 真相は結末に近づくにつれ気づいたが、その見せ方はテンポがよく、真相の居心地の悪さを見事に盛り上げている。 |
No.254 | 7点 | 夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤穂信 |
(2024/11/16 18:33登録) 再読なので、ふたりの対決としてみられた。結果、1回目より全然面白かった。例えるなら、ガニマール警部対アルセーヌ・ルパンというところか。 これも、初読時は「謎と解決」に期待していたから、「小粒過ぎる」と評価できなかったよ。ケーキのごまかしや、半の意味、場所当てでは、ちょっとなぁ。 小鳩くんと小佐内さんの立ち位置や関係性は、春期以上に掘り下げられ、ラストの落とし方も含めて、じつに面白い。夏秋冬はどれもいいなぁ。 発売当時はそんな言葉は知らなかったが、いま読むと、ふたりはアセクシャルかアロマンティックかもしれないと思った。 あと、いま本サイトを見ると、案外点が低いのね。まあ、初読時の自分の評価を思うと、これはしょうがないのかも。 アニメ(2024夏期)も見たので、ちょっとだけ感想を。 1話を「巴里マカロンの謎」からもってきて、「夏期」は4話と半分で描かれ、最後の半分は「秋期」のイントロ。2025春期で秋冬のアニメ化とのこと。やはり「謎と解決」に目がいってしまい残念。ポイントで描かれる小佐内さんのダーク表情はとてもよいので、そこは見どころ。でも、やはり、この話の面白さはふたりの心理戦なので、これを描くには小説に分があるよなぁ。 |