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ミステリの祭典

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消滅世界

作家 村田沙耶香
出版日2015年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2022/01/27 22:54登録)
セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する…日本の未来を予言する傑作長篇。
『BOOK』データベースより。

この作者の持ち味が常識の外にあるぶっ飛んだ世界観だとすれば、本作ではそれが存分に発揮されています。夫婦の間での性交渉があり得ない世界、その代わり家の外で恋人を作るのが当たり前、男も妊娠でき女は人工受精によって子孫を残す。つまり人間の本能である性欲を持たない、未来の人間像が描かれている訳です。それでもやはり、性欲は溜まるものであるから、それをクリーンアップするための施設も用意されているという、とんでもない未来の日本社会。

最初は何考えて書いているんだろう、そんなのある訳ないじゃないかと云った、至って常識的な観点から、どうしても話に付いて行けず気持ち悪さが先に立ってしまう部分はありました。平然と異常な世界が描かれて、一体何のための夫婦なのかよく理解できず、凄く居心地の悪さを感じながら読んでいました。それが「子供ちゃん」が登場してから俄かに面白くなり、正常と異常の線引きを超えたところに新たな未来があるんだなと、何となくではありますが思えてきました。作中の人々も何かの宗教に洗脳されたが如く、それを当たり前だとして生きている姿に、違和感と不信感を覚えながらも、それを小説にしてしまう村田紗耶香という人に特殊な才能を垣間見た私なのです。

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