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ミステリの祭典

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エイレングラフ弁護士の事件簿
弁護士マーティン・H・エイレングラフ

作家 ローレンス・ブロック
出版日2024年09月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 6点 E-BANKER
(2025/12/21 12:34登録)
~ミステリ史上最高で最凶。絶対負けない弁護士エレイングラフ。法外な報酬でどんな被告人も必ず無罪にして見せる。そう、たとえ真犯人でも・・・。E.クイーンが太鼓判を押した第一作から38年に亘ってじっくり書き継がれてきた12編を全収録。黒い笑いとキレキレの逆転が絶妙にブレンドされた珠玉の短編集~
2024年に刊行。

①「エレイングラフの弁護」=まずは、「ほんのあいさつ程度に」という感じの第一編。本シリーズの大まかな方向性は分かる。
②「エレイングラフの推定」=実に便利な言葉。「推定」って。終盤は非常にシニカル。
③「エレイングラフの経験」=“無垢と経験”。まさに金言です。結局男は美女に弱いし、そういう女性ほど毒がある、ということ。
④「エレイングラフの選任」=まさか国選弁護士に!という本作。そして、ラストはやや意外なものに・・・”やや”というのがミソ。
⑤「エレイングラフの反撃」=こういう方向性もあるのね。最後はまあ正直いって「恐喝」だよね。それか「脅迫」?
⑥「エレイングラフの義務」=今回の依頼者は貧乏な詩人。詩をこよなす愛するエレイングラフはいつにも増して・・・でも皮肉な結果。
⑦「エレイングラフの代案」=依頼人の妙齢の女性を気に入る。でもあくまで紳士として振る舞い、「代案」という結果に至る
⑧「エレイングラフの毒薬」=この毒薬は実在してる? だんだん犯罪のスケールが大きくなっているような・・・
⑨「エレイングラフの肯定」=まるで精神科医かセラピスト。今回は弁護料でのかけひきは起こらず。
⑩「エレイングラフの反転」=依頼人はアメフトのスター選手。絶体絶命と思いきや、最後は軽々と無罪を勝ち取る。どうなってねん?
⑪「エレイングラフの決着」=ついに依頼人の美女までもがエレイングラフの手に落ちることに・・・。嫉妬深い男はダメだね。
⑫「エレイングラフと悪魔の舞踏」=最後は少しだけ今までと異なる趣向が入っている。依頼人ふたりともう一人の・・・

以上12編。作者本人のあとがき×2を含めて、解説も必読!
ブロックの短編は、これまで「殺し屋ケラー」シリーズが滅法面白くて、続編が出ないかなあーと思っていたところ、本作の登場!となったわけ。
もう、職人芸。特段付け加えて書くことないし、いらない先入観を持たないほうがいいし、以上!ということです。

ケラーもそうだし、バーニイもそうだし、本作のエレイングラフもそうだし、図形的な存在(いつも同じような思考、行動)なんだけど、作者に息を吹き込まれると、なんとも魅力的な存在になる。
そう、ブロックは「魔法の息」をもっているのだろう。そうやって、読者に至高の読書時間を与えてくれる。素晴らしい作家です。

No.2 7点 クリスティ再読
(2025/04/15 17:12登録)
ネイビーブルーの地に半インチ幅のロイヤルブルーのストライプ、その片側に金色、もう一方の側に若草色の細かい縁取りが入ったネクタイ

これがエイレングラフ弁護士の「勝利」のネクタイ。
エイレングラフの「推定」は、自分の依頼人はすべて無実。どんなに決定的な有罪の証拠があったとしても。依頼料は常識外れの額だがすべてコミコミの成功報酬のみ...悪徳弁護士という言葉では足りない「悪魔の弁護士」エイレングラフの活躍を描く連作シリーズ!

その昔のミステリ雑誌でお馴染みだったエイレングラフ弁護士シリーズがようやく本としてまとまった。いや~大好きでした。エイレングラフが取るエゲツない対抗措置が見ものだけど、いや、実はこれってシリーズ化するのが大変なんだよね。ネタ自体は「なるほど」とはなるんだけど一発ネタに近いから、全12作と言うことで、「マンネリ」をどう回避するのか?が一番の注目ポイントだと思う。これをうまく変化を付けて処理できているからこそ、シリーズとして成立していると思う。力業と言えばまさに力業。

だけど、ブロックってマット・スカダーや泥棒バーニーで有名になった人で、長編の日本紹介は1980年くらいからだから最近の作家というイメージがあるんだけども、実は実はの早熟かつ長期間活躍した作家のわけで、デビューは22歳・1960年のこと。同姓のロバート・ブロックとも近い早熟っぷりでもあるな。シリーズ第一作はダネイが気に入ってEQMMに採用したというくらい。

色々な意味で、すごい。

No.1 8点 人並由真
(2024/12/01 04:44登録)
(ネタバレなし)
・依頼人は絶対に無実である
 (無実の依頼人からしか依頼を受けない)。
・ゆえに依頼人は絶対に無実の判決を勝ち取る。

 この二条を鉄則とし、多額の報酬は常に依頼人が無罪を勝ち取った場合にのみ戴くことを約束する、成功報酬制を貫徹する弁護士マーティン・H・エイレングラフの事件簿。全12編。

 どういう方向のシリーズなのか、いきなり第1話から強烈なインパクトで見せつける連作短編ミステリ集で、その背徳感いっぱいなブラックな味わいは、あの喪黒福造辺りに通じる。

 午前中の病院の診察の待合中と、夕方のクラス会への往路&帰りの電車の車中であっという間にイッキ読みしてしまった。

 これほど地の文を省略し、スタッカートなリズム風の会話の連続で綴られ、それが効果を上げた連作シリーズってそう無いんじゃないだろうか。
 
 ローレンス・ブロックの短編作品はさほどまとめて読んだことがなかったこともあって、コレは存外に面白かった。

 2024年の海外翻訳ミステリのなかで、ひそかなダークホースになるんでないの?

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