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ミステリの祭典

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混戦
競馬シリーズ

作家 ディック・フランシス
出版日1977年09月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点
(2019/05/27 10:44登録)
 八十七名の乗客を危険に陥れた責任を負わされ、有名航空会社を退社したパイロット、マット・ショア。妻とも別れいくつもの会社を渡り歩き、今は零細航空デリイダウン・スカイ・タクシイで、チェロキイ・シックス・三百型を機械的に運行している。ホワイト・ウォルサム飛行場でその四人を乗せた時にも、彼は何の関心も持たなかった。
 鋭い目をしたタイダーマン少佐、有名調教師アニイ・ヴィラーズ、太った男エリック・ゴールデンバーグ、騎手ケニイ・ベイスト――彼らが不正の相談をしていたとしても、自分には何の関係もないこと。ただ、乗客たちをヘイドック競馬場まで運ぶだけ。最後の一人が国民的チャンピオン騎手コリン・ロスだとしても、自分には何も関わりはないのだ。
 ふとしたはずみでパイロットを志す彼の妹ナンシイと知り合い、好意からコリンのレースを観戦することになった。思わぬ喜び。だが、心をとかしてはいけない。
 レースも終わり、今度はアニイと仲違いしたケニイを除く四人をニューマーケットまで運ぶ。ふと彼は違和感を感じた。計器に異常はない。エンジンにも異常はない。だが、操縦装置のどこかがおかしい。
 彼はくってかかる乗客一同を宥め、ノッティンガム近く、イースト・ミッドランズ空港での再点検を選ぶ。無事に着陸し、エプロンに飛行機をとめた。チラッと機の方を見返り、そのまま気の進まないようすで歩いていく乗客たち。だが彼らの背後で巨大な爆音が聞こえ、振り返るとチェロキイがいたところに大きな火の玉がふくれ上がっていた――
 「査問」に続く競馬シリーズ第9作。1970年発表。辛くも難を逃れたコリンの事件は大ニュースとなり、その過程でナンシイや、彼女の一卵性双生児の姉で白血病患者のミッジなど、コリン一家との関係は深まっていきます。ナンシイに惹かれながらも過去への怖れからかたくなに一線を守ろうとするマット。ですが再び爆弾が仕掛けられ、手違いから彼の代理でチェロキイを操縦していたナンシイと、同乗者のコリンが危険に晒されます。
 恋愛描写とかの流れはいいんですが、一連の事件がコリンを狙った犯行ではないと判明すると、ターゲットたり得る人物が他にほぼ一人しかいないため大筋が見えてしまうのが難。以前はベスト10に入るかと思ってましたが、今選ぶならシリーズ中12位前後かな。円熟期の「黄金」「標的」には及ばず、次々作「煙幕」と同格で6.5点くらい。いい作品なんですけどね。

No.1 7点
(2013/12/15 18:31登録)
今回の主人公はフランシスには珍しく、競馬にはほとんど興味がないと明言する男です。彼-作中の「私」の職業はエア・タクシーのパイロットということで、専ら航空アクションを引き受け、競馬関係は常連客である他の登場人物たちに任せています。
3つのヤマ場が非常にはっきりした作品です。1つめは多少不安感を与えておいた後で突然意表をつく派手な事件。その事件の犯人を主人公が推測するに至る穏やかな部分の後、2つ目が緊迫した飛行機サスペンス。そして3つ目が最終対決部分、ということになります。
事件と恋愛との絡め方もなかなかいいですし、動機を中心とした謎解き興味もあります。フランシスの中でベストの1つと推す人もいるようですが、ヤマ場と平坦な部分とが明確に分かれすぎているのが、多少リズム感を崩しているようにも思えました。

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