レッドキングさんの登録情報 | |
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平均点:5.28点 | 書評数:958件 |
No.878 | 4点 | クロノ・モザイク 二階堂黎人 |
(2024/10/20 18:02登録) 突然、未来にタイムワープして殺人事件に巻き込まれた中学生。すぐに現実の「過去」に引き戻されるも、時折、未来へ飛ばされては奇怪な事件に遭遇し、過去に戻されては現実の時間・・高校から大学、社会人・・を生きて、「未来の修正」にあがく羽目に。命からがらの事件や女たちとのロマン、さらには数体のバケモノ登場に絡めて、手に汗握る「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ライトサスペンス、かつプチスペースSF。まあ、面白いし、ミステリでなくもない。 |
No.877 | 7点 | ぼくは化け物きみは怪物 白井智之 |
(2024/10/18 23:01登録) 「最初の事件」 同じクラスの小学生に降りかかる窃盗・障害(+殺人)事件。封筒折り目ロジックが鮮やか。7点。 「大きな手の悪魔」 「幼年期の終わり」風味SF+ハードボイルド調+本格ミステリロジック&トリックに、5点。 「奈々子の中で死んだ男」 昭和三年の底辺遊郭街を舞台にした、娼婦探偵と幽霊ヤクザの毒殺犯捜し。6点。 「モーティリアンの手首」 プチ「星を継ぐもの」異星人化石ミステリより、ティプトリー風生物SFネタ部分がよく。7点 「天使と怪物」 フリークス見世物一座の密室殺人三重解決。密室三つ分の価値あり(第一のはチト無理じゃね)。 8.5点 で、平均で7点。 巻頭の二種のフリが、全作貫く展開になるのかと思ったが、5作とも、全く独立した短編であった。 |
No.876 | 4点 | 青の時代 三島由紀夫 |
(2024/10/14 23:00登録) 「白昼の死角」の事書いたんで、同じく「光クラブ」をモデルにしたこれも。こちらは本来の主役一点に焦点を当てた小説。三島らしい諧謔と逆説に満ちた文体で、権威の蹉跌に翻弄され、「偽悪」と言う新たな権威に挺身して夭折した青年の顛末を描いている。でも、これをミステリと呼ぶには・・” 彼、なんでこうなったの?” Whyミステリと、こじつけるしか・・でも、そんなこと言ったら、すべからくミステリになってしまうか、教養小説。 |
No.875 | 5点 | 白昼の死角 高木彬光 |
(2024/10/14 22:57登録) 対米敗戦数年後、一人の天才東大生が起こし一世を風靡するも、官憲に弾圧され崩壊した、高利金融組織「光クラブ」。その実話を元にしたピカレスク浪漫で、大半は、創業者のカリスマ東大生亡きあと、後を継いだ「No.2」がダークヒーローとして、立て続けに引き起こす金融証券犯罪の物語。悲劇的な天才的創業者を、より豊かな創造的才能を持ったNo.2が乗り越えて進む展開・・BeatlesやR-Stonesもそうだったなぁ・・が見事。ミステリとしては、「利子のトリック」のHow(いかにカモるか)倒叙もので、フィクションとしては、「奪取」「白夜行」等の祖先筋。そして、事件としては、T商事、Hエモン・Mファンド等の他、霊感商法等の諸カルト教団事件の祖先筋かな。ニセ証券被害偽装、カラ売り、手形パクリ詐欺、手形裏書詐欺・・いろいろ、勉強になりました。 ※資本主義とは、「悪」を前提とした繁栄の原理であり、そして、それ以外に「現世の幸福」を可能にする体制など有り得ない・・「天使に支配されるぐらいならば、悪魔を支配する方がマシだ」(アラブの格言だったか) |
No.874 | 8点 | 密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック 鴨崎暖炉 |
(2024/10/11 23:24登録) 密室How(トリック解明)特化ミステリ第二弾。タイトル通り七密室。各部屋ごとに3点満点で加点評価。 「ラジコン密室」:2.5点・・音ネタ後出し感だけ惜しい。 「錠・閂密室」:1.5点・・「液体窒素」はイカンな。 「蝶番密室」:0.5点・・「液体窒素」、やめぃ! 「断首密室」:2.5点・・これ面白れぇ(^.^) 「カードキー密室」:1.5点・・んな事は知らん、でも説明には納得。 「十字塔密室」:2.5点・・島荘やねぇ。 「高塔密室」:2点・・もしかしたら、凄いトリックかも、伏線ちゃんとあったし。 で、2.5+1.5+0.5+2.5+1.5+2.5+2=13・・13点!ん、サイトのルール違反になってしまう。では、加点でなく平均点で、(13÷7):3 = X:10、X=(13÷7)×10÷3、で、6.19047619…≒6点。そこに、密室特化の姿勢を真摯に讃えて、加点1点。さらに、ラノベ超えたポップな愉しさに、オマケ1点。合計 8点。 ※密室はミステリの「花」。ただ、こうも、自分にとって理想的なミステリ出て来て、改めて思ったんだが、一本の単体に「薔薇」「チューリップ」「百合」「ひまわり」・・と派手に多輪すると、ぶち壊しになる面もあるなぁ。一本は一二輪の花で集約されてる方が、作品としては美形かな。「三つの棺」「殉教カテリナ車輪」「ポアロのクリスマス」「能面殺人事件」みたく。(桜ツツジの如く群れ咲きの道もあるか) |
No.873 | 6点 | 二人のウィリング ヘレン・マクロイ |
(2024/10/08 07:07登録) 通り掛りの偶然に、自分の名前を「盗」称する男に出くわした探偵精神医。偽称男の後を付けて乗り込んだのは、地区セレブ達が集う、ちょっとしたホームパーティー。そこから不可解な二重毒死事件に遭遇し・・・。 巻頭の献辞に ” ジョン・デイクスン・カー夫妻に ” ってあるんで、ん?マクロイがカー献辞? ほう、マクロイ、密室やんのか・・思ったら、カーはカーでも「毒殺ラブ」カー(^<^)の方であった・・「不可能」してなくはないけどね。 ※相変わらず、ナチス由来ネタに拘ってるな、マクロイ。 ※本当だぁ、グレタの姉妹判断(文庫本第一刷P141、192)翻訳ミスってる。英語じゃ、一単語では、Sister(Brother)しかないもんね。そもそも、「姉」と「妹」(「兄」「弟」)を分ける概念自体が薄いのかな、英米。 |
No.872 | 4点 | 鳥の巣 シャーリイ・ジャクスン |
(2024/10/07 00:14登録) 四重人格・・卑屈で内気なA、素直で健気なB、凶暴な悪戯者(ロキの如き)C、高慢で功利的なD・・の娘と、翻弄される精神科医、偏狭で抑圧的な叔母、計6人による、グロテスクでコミカルな精神分析治療サスペンス。医師と娘のみならず、娘内人格ごとの一人称叙述の変化が巧みで、場面によってはジェイムス・ジョイス「ユリシーズ」。1954年の作品で、まだ、この手のネタ活かした本格ミステリの体は成してないが、What:過去に何があったの? Who:最後に女を統治したの何番目人格? のミステリにはかすっている。 |
No.871 | 2点 | 宇宙の戦士 ロバート・A・ハインライン |
(2024/10/05 22:19登録) 「エンダーのゲーム」の事書いてて、この作品も思い出した。こっちは露骨に、十字軍由来の異教・異端壊滅衝動に彩られた宇宙戦争SFだった。男女および民族間の平等は達成されながら、軍歴を持つか持たないかで、ハッキリ権利が区別される未来世界で展開する、蜘蛛の様な宇宙生物・・たぶん、異教徒・有色人種・東洋人等がイメージされている・・との死闘。30年後に映画化(「スターシップ・トゥルーパーズ」)された際の、巨大昆虫風生物の方は、怪獣映画ビジュアル的に面白かった。 |
No.870 | 3点 | エンダーのゲーム オースン・スコット・カード |
(2024/10/05 22:11登録) 「名探偵に甘美なる死を」「VR浮遊館の謎」と立て続けに、バーチャル空間ゲームもの読んで、この名作SFを思い出した。異星生物との存亡をかけた戦争の最中、宇宙船内で少年兵達が行う戦闘訓練バーチャルゲームが、どんでん返しオチする話だった。その後もシリーズ化して、第二作「死者の代弁者」は、なかなかに面白かったが、この作家の宗教的価値観の臭いが、どうしても鼻につき、残念。ミステリとしては・・うーん、「銀河鉄道の夜」の方がミステリアス。 |
No.869 | 5点 | VR浮遊館の謎ー探偵AIのリアル・ディープラーニング 早坂吝 |
(2024/10/01 22:43登録) 探偵AIシリーズ第四弾。方丈貴恵「名探偵に甘美なる死を」に続き、こちらもバーチャル空間ゲーム物。幾つかのロジックと設定ドンデン返しは見事だが、あれより、本格ミステリ質量は、1~2ランク劣るかな、と。そう言えば二人とも京大ミス研あがりなんだっけ、綾辻ともかく麻耶の後輩は、キレるなぁ(^<^) |
No.868 | 7点 | 名探偵に甘美なる死を 方丈貴恵 |
(2024/09/29 22:38登録) 現実の館と仮想の館。生身の人間とバーチャル分身アバター。大掛かりなゲームシステムで繋いだ二元空間を並走する、企画的な密室連続殺人。見事な館内図構成と鮮やかな真相解明ロジック。三種・・気圧トリック(いまいち)、ドールハウストリック(Very Good !)、二元設定トリック(まあまあ)・・の密室トリックを解体する、滑る様な伏線回収が心地よい。 |
No.867 | 7点 | はなれわざ クリスチアナ・ブランド |
(2024/09/25 04:08登録) 孤島小国の海岸ホテルを舞台にした、広義の密室殺人事件。「密室」を形作るのは主役警部の視点で、六人の容疑者には、全員、犯行は不可能・・なはずだった。隻腕の音楽家を要にした妻と二人の愛人を廻る四角関係をメインに、半ば狂った恋情ドラマが、不可能犯罪のダミー解決を波状的に繰り返したあげく、カタストロフ風の悲劇エンドへ・・と思わせて・・・。 ※最初の容疑者扱いが、視点を担う主役警部ってのが笑える・・「犯行時、あんたは皆を見ていたかもしれんが、皆はあんたを見ていない」・・確かに(^'^) |
No.866 | 5点 | 死者と踊るリプリー パトリシア・ハイスミス |
(2024/09/21 22:33登録) リプリーシリーズ第五弾にして最終弾、かつ第二作「贋作」の続編。夭折した画家の贋作ビジネスに関わるリプリーに、かつて犯した殺人をネタに執拗に絡んでくる不気味な夫妻。奇矯で陰湿で挑発的な夫妻との神経戦が、遺棄死体の出現を機に、グロテスクで滑稽なプチサスペンスへ展開する。リプリー、今回、このシリーズで初めて人を殺してない。 ※ところで、このシリーズのリプリーの年代設定が気になる。1950年代の「太陽がいっぱい」では二十代、で、この第五作ではCDが出て来るので、80~90年代、てことはリプリー還暦あたり?・・何か違うなぁ。リプリー、シリーズを通して「未熟な若者」のまま、全然成長してない。野暮な「現実的」設定には囚われず、「永遠の若者」像のハーフダークファンタジーとして読むべきなのか。 |
No.865 | 8点 | 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック 鴨崎暖炉 |
(2024/09/16 22:59登録) 機械密室のHow(トリック解明)特化ミステリ・・・密室の密室による密室の為の密室・・・ Great ! 第一の「鍵入り瓶密室」・・見事なる機械仕掛け、鮮やかなる伏線回収・・に、3点(満点)。 第二の「鉾槍密室」に 1点 、第三の「銃弾密室」に 0.5点、第四の 「ドミノ密室」には 1点。(「液体窒素」はいかん) 第五の「最後の密室」と「始まりの密室」にまとめて 3点。で、3+1+0.5+1+3・・計8.5点・・うーん、8点。 ※つい最近、このサイトでこの作家を「紹介」された。嗚呼 ! ここに自分向きのミステリ作家が、また一人・・と詠嘆。 |
No.864 | 5点 | 半七捕物帳 岡本綺堂 |
(2024/09/12 23:24登録) 手元の本は「巻の一」だが筑摩書房版、サイトに登録のある「巻の一」は光文社版(中身違うのか?)限定みたいなんで、こっちに書くのかな。 「お文の魂」 武家に嫁いだ妻と幼子に現れる水に濡れた幽霊女、その正体は・・ 「石灯籠」 失踪と帰宅を繰り返した小間物屋の娘と、女将刺殺事件の消失トリック 「堪平の死」 商家の素人芝居が真剣すり替え事件に・・あれで切腹て無理でない? 「湯屋の二階」 三つの包み・「ミイラ首」「鬼龍首」「黒い鮫皮」・を持つ武士の謎 「お化け師匠」 蛇に首を巻かれて怪死した因業な女師匠。事件の真相は・・ 「半鐘の怪」 誰もいないはずの半鐘の打鐘に続く怪異の数々の真相や如何に・・ 「奥女中」 十日ごとに夢幻的な屋敷に拉致され、贅なもてなしを受ける別嬪町娘のお伽噺奇譚 「帯取の池」 池に浮かぶ艶美な帯と持ち主の娘の絞死。怪事件の真相や如何に・・ 「春の雪解」 按摩の霊感話から引き出された、愛と恩讐の男女五人春物語 「広重と・・」 武家屋敷の屋根に幼女の屍体・・島荘「人喰いの木」元型の如き・・これ、あり得なくね? 「・・と河獺」 雨中に傘の上から襲われ顔面に傷を負った隠居・・こっちは、あり得そう(かな) 「朝顔屋敷」 奉公人の現前で神隠しにあった旗本子息・・ハードボイルドプロットの一つの元型やね 「猫騒動」 近所迷惑な長屋ネコ婆さんと魚売り孝行息子のバケ猫怪談 「弁天娘」 弁天様申し子と噂される質屋娘と怪死した美少年の小僧の因果 「ミステリ」と言うより、「ミステリアスな末期江戸奇譚」だが、カテぇコタぁ言わずオマケして採点しちまぇ。全体で5点 |
No.863 | 7点 | 誕生パーティの17人 ヤーン・エクストレム |
(2024/09/09 23:17登録) 「ウナギの罠」で味をしめたので、これも。二部屋ワンセット + 一室、締めて2密室付きの、3人+1人殺人。たしかに密室物でもあるが、まるで不可能感なく、それを「現実的」と肯定評価するか、「外連味不足」と否定評価するか・・迷うなぁ(^'^)。いずれにしても、「カー」でないことは確かだが、面白い。翻訳されたの二作だけ? 他のも是非読みたいが、スウェーデン語翻訳者なんて、そういなさそうだしなぁ。 ※この文庫本の表紙イラスト、実によい(^.^)。「七人のオバ」「衣裳戸棚の女」のイラストに匹敵する。 |
No.862 | 7点 | 死の味 P・D・ジェイムズ |
(2024/09/05 23:59登録) 教会で惨死した前大臣と浮浪者。資産家だった大臣、狷介な老母、美貌で軽薄な後妻、後妻の浮ついた兄、後妻の愛人のヤリ手医師、大臣の慎ましやかな愛人、左翼活動家の実娘、娘の活動家仲間の男、曰くありげな家政婦、過去に不審死を遂げた使用人の二人の女、哀れな司祭、死体発見者の老婆と少年、そしてダルグリッシュ(どうもダルビッシュ言いたくなるなぁ)警視と女警部・・・ドロシージェイムズのいつもの重厚な音色が、妙に軽やかに変奏していて、最後には、脇役のはずの女警部が、サラ・パレツキー女探偵なみのハードボイルドヒロインしちゃって。ミステリ根幹はせいぜいアリバイトリックなんだが、そう思わせない位にミステリアスに引っ張ってくれる、さすが。1点オマケ。 |
No.861 | 6点 | 暗い鏡の中に ヘレン・マクロイ |
(2024/09/01 23:05登録) 生霊ホラーとドッペルゲンガートリックと”死せる愛の社交界”ロマンの融合、素晴らしい。 |
No.860 | 4点 | 四元館の殺人―探偵AIのリアル・ディープラーニング 早坂吝 |
(2024/08/29 22:53登録) AI探偵シリーズ第三弾。島荘 「斜め屋敷の犯罪」 以上に、「完全に正しい」タイトルであった。脱力感において、カー「震えない男」や東野「卒業」等をぶっちぎる密室トリックには眼をつぶり、「水平線効果」とかのAIロジックを評価して。 |
No.859 | 3点 | リプリーをまねた少年 パトリシア・ハイスミス |
(2024/08/28 22:22登録) アラン・ドロン死す・・日本以外では本国含め、どれだけ人気あったんだろ・・ で、リプリーシリーズ第四弾。 大企業経営者の父親を殺して家出した、16歳美少年のアプローチを受けるリプリー。法的にはシロながら、世間的にはグレー視されるピカレスクヒーローとして、少年に見込まれ、何の利益にもならない保護者、それ以上に「アニキ」役をイソイソと受け入れる。パリからハンブルグ、さらには壁時代の西ベルリンへ、少年との浪漫逃避行の末に、身代金目当て誘拐団との大立ち回り救出劇を演じ、挙句の果てに、衝動的な人殺し・・またもや・・までに至る。映画「太陽がいっぱい」のラストインパクトから遠く離れた、半汚れ・・実は真っクロな・・ヒーローの、美少年相手の暇つぶし感傷旅行てとこか。ゲイクラブでの女装救出劇あたりは、ちょっとした手に汗握る展開で、ラストの苦さもよい。「取り返しの付かない事に心塞がれる人生は損だよ」てな処世訓、正論だが、失恋と人殺しとでは重さ違うしねぇ。 |