レッドキングさんの登録情報 | |
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平均点:5.27点 | 書評数:888件 |
No.808 | 4点 | メーラーデーモンの戦慄 早坂吝 |
(2024/03/25 20:46登録) 娼婦にして女子高生探偵:上木らいちシリーズ第五弾は、「ガラケーユーザー」連続殺人事件。Why(ガラケー撲滅)のWho? 真相は・・まあ想定内のヒネリであった。主役キャラにしては、ちとエロチシズムに欠けるSMネタと、麻耶雄嵩「木製の王子」等同様に、まともに追う気にもなれない程マニアック・・良くも悪くもすげえなあ、京大ミス研卒・・なロジック。 (※実は、自分も「ガラパゴス・ケータイユーザー」なんだよ、とこっそりカミングアウト(^^) ) |
No.807 | 2点 | 少年探偵ロビンの冒険 F・W・クロフツ |
(2024/03/22 21:34登録) クロフツ第三十一作は、少年向け(ジュヴナイル言う奴ね)探偵物。といっても、そこはクロフツ、十八番どころか三十六番位の鉄道ネタが、相も変わらず執拗に詳細にマニアックに、ブレない言うか、大人げない言うか。「トムソーヤーの冒険」「スタンドバイミー」の「かつて少年だった君たちへ・・」郷愁センチメンタリズムには、遥かに遠かったが。 |
No.806 | 6点 | 妻を殺したかった男 パトリシア・ハイスミス |
(2024/03/20 22:32登録) パトリシア・ハイスミス第三作。原題は「粗忽の人」。気分の起伏が激しい男が捕われる空想上の妻殺しと「憤怒」という大罪。現実の殺人者や偏執狂刑事と演じられる・・まるでラスコーリニコフとスヴィドリガイロフ、ポルフィーリーの関係の様な・・共振と嫌悪、嗜虐と自虐の悲喜劇が、カフカやディクスン・カーレベルのグロテスクなシュール劇へと飛翔して・・すげえなあ、パトリシア・ハイスミス。点数オマケ。 |
No.805 | 6点 | ブラック・アイス マイクル・コナリー |
(2024/03/17 21:25登録) ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第二弾。「ブラック・アイス」・・コカインにヘロイン+1種ブレンドの「スーパー麻薬カクテル」と、「凍った道路」のダブルミーニング。カルフォルニアとメキシコ繋ぐ麻薬コネクションを巡る一匹狼刑事のハードボイルドで、闘牛アクションのオマケ付き。ミステリとしては、絵に描いた様な「あの」古典ネタだが、「あれは、今では通用しないゾ」クレームを逆手に取ったトリックであった・・使い様だな「科学的」証拠。 |
No.804 | 5点 | キャロル パトリシア・ハイスミス |
(2024/03/09 12:30登録) パトリシア・ハイスミス第二作。ミステリどころかクライムですらなく、相手が異性だったら「ふつう」の恋愛小説。アガサ・クリスティーの非ミステリ諸作同様、このサイトで挙げるべき作ではなかろうが、せっかく登録したんで大いにオマケして5点も盛っちゃおう・・チョビっーとだけ、さすぺんすフルでもあるし・・。 ※以前に我が国で、ある中年女が、女友達の幼い娘(だったか)を殺害した事件があった。女の夫である寺住職は、「妻は殺した子の母親の事を、とても好きだったんだと思います。」と述懐した。(松浦理英子には無理でも、沼田まほかるなら、この事件を小説にできただろうか) |
No.803 | 7点 | エレファントヘッド 白井智之 |
(2024/03/06 08:41登録) 「縦系列タイムワープ」ではなく「横並列パラレル世界」が主ネタの「SF」と、作者十八番の超絶ブっ飛びトンデモトリックの結合具合が半端なく凄い。元々、脱力レベルの「SF」設定と、笑いたくなる位のグロヘド描写が「ウリ」の作家だが、今回、また輪をかけて・・・。真相より一つ前のダミー解釈、「寒暖」「満空」パラレルパラドックスのトリックがグンバツに面白く\(^o^)/。(真相は結局、パラレルよりタイムワープに比重傾いちゃうもんね) ※にしても、こんな事言うの野暮だが、「哲学」やイデオロギーを現実政治に持ち込む愚かさに比べれば、全然、罪ないけれども、理論物理学の、「数学」または「形而上学」的論拠から、小説拵えちゃうってのはなぁ・・・やっぱヤボだな、やめとこ。 |
No.802 | 6点 | 見知らぬ乗客 パトリシア・ハイスミス |
(2024/03/03 22:31登録) パトリシア・ハイスミス処女作にして、この手のネタの元祖とか。それだけでも「心理的密室」「顔無し殺人」「葉を隠すなら森」等の、「ビッグボウ」、ドイル?、チェスタトン等と並べられる資格ありと言えますまいか? 情緒不安定な建築家が、偶然列車に乗り合わせた中退学生の狂気に巻き込まれて行く、そのイカれ具合・・「六号病棟」やイワン・カラマーゾフ思い出す・・が痛ましくも悍ましい。 |
No.801 | 5点 | 双蛇密室 早坂吝 |
(2024/03/02 20:35登録) 娼婦女子高生探偵:上木らいちシリーズ第四弾。「双蛇密室」て、ん?新機軸の和風ホラー系狙い?思いきや、標題通り「ヘビ密室」2部屋付きミステリ。これがまた、超々トンデモな、しかも白井智之風「SF」設定でない「バカリアル」ネタで。この作者、展開はブッ飛んでるが、文章簡明で、描写がグロ汚くならない・・含蓄なく平板とも言える・・ね。 |
No.800 | 2点 | 列車の死 F・W・クロフツ |
(2024/02/28 23:14登録) クロフツ第三十作。タイトルの「列車の死」、”列車「での」死" (On a train)・・十八番トラベル犯罪物・・ではなくて、”列車「の」死" (Of a train)・・まんま列車が死んじゃう話・・だった。英米にとって、ヒトラーとの原爆開発競争は、愛国どころか死活問題なの分るが、落とされた日本国民としては、素直に感動はデキンよ、フレンチの「特攻」。 |
No.799 | 5点 | 小鬼の市 ヘレン・マクロイ |
(2024/02/22 21:54登録) いかにもな本格風タイトルだが、第二次大戦下カリブ海を舞台にした、ハードボイルド風味スパイサスペンス。米国作家だから、当然にドイツ主敵、日本副敵(決して「反日」ではない)、対スペインあんびばれんと。インディオにラテン及びカトリックが混合した、中南米独特の血生臭さい切なさ・・ブードゥー教・マカロニウエスタン・「百年の孤独」にも通底した・・が匂い立つ。ミステリとしては、「驚き」の人物ツイストてところか。 |
No.798 | 3点 | ナイン・テイラーズ ドロシー・L・セイヤーズ |
(2024/02/19 17:43登録) セイヤーズ「貴族探偵」シリーズ第九作。分不相応に豪勢な鐘付き教会を持つ、沼地寒村を舞台にしたミステリ・・ではなくて、殺人事件付きの英国寒村及び教会塔鐘の物語。ラストの旧約聖書「大洪水」コンパクト版展開でチョビっと盛り上がる。ミステリとしては、相次いで死んだ夫婦の埋葬の合間に埋められた、顔を潰され両手首を切断された死体と、過去の宝飾品盗難事件の謎って所で、計画的犯行と偶然事象の錯綜、相手を庇うための行為が、企図せずに事件の様相を複雑怪奇化し・・てな、既視感溢れるパターンやね。「意外な真犯人」オチも付く。 ※英国教会の鳴鐘、あれって音楽なのね。残念ながら、インドシタールやバグパイプ同様、全く好きになれん。これが、グレゴリオ聖歌やガムラン打楽なら心地よいのだが。 |
No.797 | 6点 | 誰も僕を裁けない 早坂吝 |
(2024/02/13 08:51登録) 超一流の娼婦にして女子高生が探偵役:上木らいちシリーズ第三弾。館トリック物と法廷モノを天秤にかける、何と軽やかな鋭敏さ。論理(トリック含め)の為の論理のコマとして人間を描く「本格ミステリ」と、倫理としての人間の諸相を描く「変格」(=サスペンス・ハードボイルド・社会派・ホラーミステリetc)の断層を捌く鮮やかな手並みにカンプク。 ※たーだ、真の「変格」には、「ミステリのためのミステリ」(ま「芸術のための芸術」「美のための美」「トリックの為のトリック」ね)てな「概念」も含まれるぞ。 |
No.796 | 3点 | 虹の歯ブラシ 上木らいち発散 早坂吝 |
(2024/02/11 08:47登録) プロの娼婦にして女子高生が探偵役の、虹七色テーマ短編集。 紫:Newにして古典的時間アリバイトリックに、3点 (10点満点)。 藍:ファスナー指紋ロジックに、4点。 青:イカの血が青色だと知らなきゃ密室も指紋ロジックも無意味やねぇ。2点。 緑:あの超古典ネタに絡めた、空前(だろ?)絶後(たぶん)の叙述トリック。8点。 黄:猟色家高校生へのトラップはめ返し痛快譚。(採点対象外) 橙:・・・・・・・・(採点対象外) 赤:自作メタネタいじりひけらかし過ぎ。作者が実に鋭敏なの認めるがウザく、マイナス2点・・平均 3点 ※文庫本の表紙、まんま「狂気」のパロディだが、第七章に、虹は英語圏で6色(七色でなく)とあり、ピンクフロイドのアルバムジャケット見直したら、おお!まさしく六色だった。 |
No.795 | 4点 | ○○○○○○○○殺人事件 早坂吝 |
(2024/02/11 08:42登録) この作家も、このサイトで教えてもらった。オっ、麻耶雄嵩の後輩・・いろんな意味で(^^) 古典的孤島モノの意表を突く、純情描写を逆手に取った、トンデモ設定に、2点(3点満点) 「ダイイングメッセージの為の針糸密室」てな趣に、1点。 凶器隠し場所トリックと付随ネタ、えげつないが意味ある性的描写に、1点。 (「アメリカ銃の秘密」読んだ時、自分も、この手のネタを考えた事あるゾ!) 探偵設定(当然、ネタバレは承知だったが、「星降り山荘の殺人」よりよく)に、1点。 肝心なタイトルの格言ことわざ伏字ネタは・・つまらん(-"-)! マイナス1点。・・・合計:4点。 |
No.794 | 7点 | 倫敦から来た男 ジョルジュ・シムノン |
(2024/02/07 21:53登録) 江戸川乱歩は正しい。短気で横柄、気分屋で人好きしない主人公の鉄道員は、一見、ラスコーリニコフとは似ても似つかない・・あんな美形でも若くもなく、天使の如き恋人も男気溢れる友もいない・・。それでも、この作品は、何故に男が罪びとにならざるを得なかったのか、そして、それを告白せざるを得なかったのかを、解明としてではなく、小説として描いている。「罪と罰」同様にミステリとは言えんが、目をつぶってオマケしたく。 |
No.793 | 6点 | 金時計 ポール・アルテ |
(2024/02/06 17:16登録) 二十世紀初頭と終盤、ほぼ一世紀隔てた二つの「事件」。相互描写とくれば、興味は何より時を超えた連関に向くが、そこについては・・うーむ(-"-)。ミステリとしては、過去事件の雪足跡密室・・なんちゅうテクニカル・・に3点(満点)。現代(今では四半世紀前だが)事件の方の不可能トリックは、なんちゅうカー=アルテ(^^)。クリスティー風の人間関係トリックと時を超えた「狂気のヒロイン」造形見事で、点数加点。 |
No.792 | 7点 | 残虐記 桐野夏生 |
(2024/02/03 18:16登録) 十歳の時に、町工場住込みの男に誘拐され、その部屋に一年(実際にあった元ネタ事件では9年)にわたり監禁された少女が、長じて女流作家となり、事件の手記を残し行方をくらませる。作品は、作家の夫と名乗る男から編集者に送られた原稿の体をなしている。女の出奔のきっかけは監禁犯人から送られた手紙で、それも作品の冒頭に付く。未熟に歪んだ情緒の男として描かれる犯人のみならず、元少女の作家、その母親、男の同僚、義手の検事それぞれが、己の空想・・現実崩壊に至る程の夢想・・の逃れられない罠に閉じ込められている。「甘い」までに「残虐」な幻想譚、どこまでが「真相」でどこから「虚構」なのか曖昧な、ハーフミステリ文学。面白い。 |
No.791 | 5点 | 緑の毒 桐野夏生 |
(2024/02/01 23:24登録) とり澄ました所では川端康成「眠れる美女」、直接には映画「水のないプール」およびそのモデル実話「クロロホルム暴行事件」思わせる、39歳医師の麻酔薬連続凌辱事件。陰気で独りよがりな暴行魔の開業医、その妻の女医と妻の浮気相手の救命医、被害者の女達と看護師等病院関係者達。小サイズの長編に手際よく収められた群像劇が、偶然必然に犯人を追い詰めて行く、ブラックにしてコミカルなファルスで展開する。 |
No.790 | 6点 | レイクサイド・ストーリー サラ・パレツキー |
(2024/01/30 18:10登録) サラ・パレツキー第二作。自身の情念から、元アイスホッケー選手の従兄の不審死を捜査するヒロイン探偵。五大湖舞台に、穀物会社や運輸船会社の経営者関係者家族を巻き込んだ悪事が暴かれて行く。真相は実に「まっとう」で、捜査は愚直にして緻密。これにアリバイトリックの一つも付いてたら、まるでクロフツ・・と、最後の最後に一気にアクションアップしてエンド。北欧神話オーディンかバイキング王の如き客演キャラがよい。※点数オマケ(したくなる) |
No.789 | 5点 | 女ともだち 真梨幸子 |
(2024/01/25 23:07登録) 桐野夏生「グロテスク」同様、これも「東電OL殺人事件」を元ネタにしている。映画「昼顔」「ミスターグッドバーを探して」はじめ、「堅気にして娼婦」パターンは、男の下世話好奇心のみならず、女のアイデンティティー深層にも刺さるのか。「グロテスク」以上に、元ネタ以外のキャラ立て役回りに重点が置かれ、ミステリらしく仕上がっている・・そもそも、元ネタや「グロテスク」は事件解決してないし・・にしても、胎児死体の蒐集埋葬って・・(*_*; |