鳥の巣 |
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作家 | シャーリイ・ジャクスン |
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出版日 | 2016年11月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 4点 | レッドキング | |
(2024/10/07 00:14登録) 四重人格・・卑屈で内気なA、素直で健気なB、凶暴な悪戯者(ロキの如き)C、高慢で功利的なD・・の娘と、翻弄される精神科医、偏狭で抑圧的な叔母、計6人による、グロテスクでコミカルな精神分析治療サスペンス。医師と娘のみならず、娘内人格ごとの一人称叙述の変化が巧みで、場面によってはジェイムス・ジョイス「ユリシーズ」。1954年の作品で、まだ、この手のネタ活かした本格ミステリの体は成してないが、What:過去に何があったの? Who:最後に女を統治したの何番目人格? のミステリにはかすっている。 |
No.1 | 7点 | 雪 | |
(2021/07/16 16:11登録) エリザベス・リッチモンドは内気でおとなしい23歳、友もなく親もなく、博物館での退屈な仕事を日々こなしながら、偏屈で口うるさい叔母と暮らしていた。 その彼女がある日、止まらない頭痛と頻発する奇妙な出来事に悩んだすえある医師のもとを訪れる。診療の結果、原因はなんとエリザベスの内にある複数の人格だった。ベス、ベティ、ベッツィと名付けられた別人格たちは徐々に自己主張をし始め、主人格であるエリザベスの存在を揺るがしていく・・・・・・ 〈孤高の異色作家〉ジャクスンの、研ぎ澄まされた精緻な描写が静かに炸裂する、黒い笑いに満ちた傑作長篇がついに登場! 1954年発表。夫スタンリー・エドガー・ハイマンに捧げられたサイコ・サスペンスで、ジャクスン作品としては『絞首人』(1951)に次ぐ第三長篇となるもの。各章で語り手の代わる小説で、冒頭で描かれる博物館員エリザベスはくすんだ無色の存在なのだが、診察中第三の人格ベティが悪魔憑き映画『エクソシスト』紛いに登場してからは一気にヒートアップ。更に上手のベッツィも加わって四つの人格が明確に区分され、一つの肉体の中で主導権争いをしながらくるくると入れ替わっていく。第二章では邪悪そのものに見えたベティが次章ではか弱さといじらしさを見せ、一転して読者の心に食い込んでいくのは名手ジャクスンの腕だろう。序盤ではぎごちなく見えた文章も、第三章では分裂の真因を窺わせつつ、流麗かつ繊細なものになっている。 再びライト医師の叙述に戻った第四章ラストでは爆弾が炸裂。単行本255Pからはいったい何事が起こったのかと思った。それから後は舞台劇風に進行し終章となる三ヶ月後、彼女たちの中から一つの人格が選ばれて幕が降りる。 真のエリザベス・リッチモンドとなったのは果たして誰だったのか? いくつかの台詞と描写から推測はできるが、最後まで明確にはされない。「最終的なエリザベスの人格は秘密」と著者自身の語る、明るそうに見せながらもある種の不穏さを漂わせたブラック・コメディである。 |