レッドキングさんの登録情報 | |
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平均点:5.28点 | 書評数:943件 |
No.223 | 4点 | 死にいたる火星人の扉 フレドリック・ブラウン |
(2019/06/29 17:13登録) これ日本語タイトルの勝利だね。原タイトルだったら読まなかったし。最初のトリック、探偵と同様に「闇からの声」の変形を予想していた。 ※こんな殺人トリックを考案した。壁に掛かってる普通の風景画の上下をひっくり返すと恐ろしい幽霊の絵に見えるっていう騙し絵の仕掛けを作り、それを心臓病持ちのターゲットに遠隔操作で見せてショック死させ、その後、絵の上下を元に戻しておくという・・・ |
No.222 | 4点 | 理由 宮部みゆき |
(2019/06/27 22:27登録) むかし、中古マンションを購入しようと、あっちこっちの部屋を内覧したことがあった。その中に、未だ家族が住んでいて、父親の恨めしそうな視線や女の子の淋しそうな表情の方が印象に残ってしまった部屋があった。人生ってキツイな、お互いに・・・と、あまり関係のない話になってしまった。 |
No.221 | 7点 | 火車 宮部みゆき |
(2019/06/27 21:57登録) フー?・・「犯人は誰?」ではなく「彼女は何者?」のフー。文庫本約600頁の中で、ずっとそのフーであるヒロインが読者に現前する場面が、最後のわずか数頁というのが凄い。 水商売のネエちゃんに「人生論」語らせるのは愛嬌としても、弁護士に長々と「社会時評」ウンチクさせる場面はちとウザい。こういったあたりで眉に唾付けたくなるんだよな「社会派」とかいうやつ。 それはともかく、あのラストシーンが良いので点数は1~2点のオマケ付き。 |
No.220 | 5点 | ルームメイト 今邑彩 |
(2019/06/21 07:01登録) 同じルームメイトものとしては「二の悲劇」よりも面白い。 ところで、もしも「一人称」だけで多重人格物を叙述されて、登場人物のみならず叙述者自体さえも怪しくなったら、ミステリとしての解読は難しくなるかなあ。 ※追記。これ文庫版では最終章を「仮封印」し、作者が思わせぶりに「読んだら気分悪くなるわよ、それでよかったら・・」みたいに書いてるけど、あんなこと書かれたら余計に読むよ。 |
No.219 | 4点 | 二の悲劇 法月綸太郎 |
(2019/06/20 23:54登録) タイトルの「二」だが、名と実の分離としての「二」、二人称の「二」、それから双子の「二」。 名前のネタは「日常の謎」短編ミステリ位であっさりまとめられてたほうが良かったようにも思える。にしても、葛(カツ)-清(キヨ)-葛(クズ)なんてよく見っけてきたなあ。 一人称の叙述が、叙述トリックもしくはワトスン君的な「不完全な三人称」としての謎提示の表現ならば、ミステリは「完全なる三人称」の描写として解決する。ここでは登場人物の一人を二人称で描写することによって、あるダミー解決の伏線の効果を狙ってるんだろうけれども、結果はいまいちかな。 で、双子ネタだけど・・それはさすがに「なんたらミステリ十戒」レベルのしろもんじゃないの? |
No.218 | 7点 | 一の悲劇 法月綸太郎 |
(2019/06/15 17:08登録) 身代金誘拐殺人ものだが意外にも密室のオマケ付き。明らかに原尞「私が殺した少女」に次韻しているから、とても素直には読めず、フー・ホワイ・ハウにも用心深く構えてしまう。結果「真犯人これしかないだろう」って所に正解できた。あのアリバイトリックには満足。 にしてもタイトルの「一」だが、ダイイングメッセージに絡めたあのネタ、ありゃ少し無理だよ。 |
No.217 | 6点 | 頼子のために 法月綸太郎 |
(2019/06/12 22:38登録) 娘を殺した犯人に復讐した父親の「手記」が第一章に置かれていれば、どうしたって「叙述トリック」を疑いたくなり、驚きへの期待値も上がる。で、驚きの真相は、おおよそ想定内だった。 叙述のままに身を任せ素直に驚いて貰える「ハードボイルド探偵物」と違い、捻りに捻った展開を期待される「新本格物」の作者って大変だなあ。 にしてもこの話、「親-子」の愛も「男-女」の愛も、結局は「自己-愛」には及ばないって怖い結論になる。 |
No.216 | 6点 | 私が殺した少女 原尞 |
(2019/06/11 23:35登録) 少女誘拐殺人に巻き込まれた探偵の一人称語りの小説。実際に起こった様に見えた出来事が、フーダニット進行に釣られながら、全く別の物語へと反転して終結する。話自体は見事で面白い。ただ主人公に魅力がない。不必要なまでの不愛想仏頂面と、ひねくれた形容表現の悪たれ多弁。ハードボイルド探偵のお約束なんだろうが、何か日本語の文体風土に合わん。これが「むせび泣くアルトサックスBGM」のシャープでクールな映像物ならば絵になるんだろうが。 「人間のすることは全て間違っていると考える方がいい・・・」このセリフはなかなか。 |
No.215 | 4点 | オリエント急行の殺人 アガサ・クリスティー |
(2019/06/05 10:44登録) 被害者でなく容疑者達の「ミッシングリンク」解明の話。これほど、名優を揃えて映像化して映えるミステリってないんじゃないか。名優達に演じられる「それぞれの役割を演じている容疑者達」、素晴らしくならないわけがない。 ミステリ小説としては・・・映像作品の「無難な台本」「読んで損のない原作」。それにしても「全世界のあらゆる階層からなる容疑者・・」って、「白人の、上流から、せいぜい下の上の階層」ってところじゃん。 |
No.214 | 8点 | ある閉ざされた雪の山荘で 東野圭吾 |
(2019/06/03 18:22登録) 叙述トリックの素晴らしき傑作。 三津田信三「厭魅の如き憑くもの」もこれには及ばなかった。 |
No.213 | 5点 | 人形はなぜ殺される 高木彬光 |
(2019/06/02 11:59登録) 鍵のかかった箱という「密室」から人形の首が消失し、ギロチンにかけられた屍体から生首が紛失して、人形の首が代わりに残される。何故に人形の首は生首に入れ代ったのか・・・ 「刺青」「能面」で描かれた「心理的誘導のための密室構成」という妙味は、この作品でも効いてはいる。が、そのトリックが「箱からの人形の首消失」って、「刺青」「能面」の密室殺人に比べれると、あまりにもちっちゃい。 で、肝心なメインの「何故に人形は殺されたのか」事件、イマイチつまらない。あれでは「トラベルミステリー時刻表アリバイトリック」ではあるまいか。 |
No.212 | 6点 | 呪縛の家 高木彬光 |
(2019/05/29 14:57登録) 「刺青」「能面」以上に機械トリックが不可能な完璧な密室での殺人。機械トリック密室構成でないのならば、当然、心理トリック=叙述トリックとなるわけで、注意して読めば読者への挑戦状のうちのフーの方は分かる。が、ハウの方は当てられなかった。結局、機械トリックだったし。でも、自分にしてはめずらしく挑戦状で犯人挙げられて気分良かった。 ところで、心理的密室トリックのできの良いのって、どうしても共犯者の存在か予期せぬ事故が不可欠なのね。 |
No.211 | 7点 | 能面殺人事件 高木彬光 |
(2019/05/27 12:45登録) そのトリックが探偵に見破られること自体を目的とした「機械的密室」。見破られることによって、他者を冤罪に陥れるための密室。「手段としての密室構成」ってあたりは「刺青」の踏襲だが、密室構成の方法が「刺青」よりも遥かに分かりやすく、それ以上に「鬼女の能面」を密室構成に使用する趣が素晴らしい。 |
No.210 | 6点 | 刺青殺人事件 高木彬光 |
(2019/05/25 12:46登録) 密室バラバラ屍体から刺青を施したトルソだけが消えていた「首無し殺人」ならぬ「胴無し殺人」。そのトリックが探偵に見破られること自体を目的とした「針と糸トリック密室」。トリックが見破られてこそ意味を生じるっていう密室構成の目的がユニーク。残念なのは、この針と糸トリック、ちと分りづらい。 |
No.209 | 4点 | 僧正殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン |
(2019/05/23 18:57登録) 「マザーグース童謡」の見立て殺人。容疑者は(「爺やはイカン」を除き)6人・・4人の科学者とその家族の女2人。キャラのエキセントリック度(「常識的には怪しい」=「ミステリ小説的には無実」)の高い順にA>B>C>D>E>Fと容疑者がいれば、ミステリ的には、「一番まともそうな人」のFが「意外な犯人」となるべきところだろうが、「グリーン」の前例があるせいか、「二番目に普通」のキャラのEが犯人で終わる。この時代は、まだこんな「意外な犯人」で驚かすことができたんだろうなあ。読者もすれちゃったから作家も犯人造形大変だな。 |
No.208 | 6点 | 恐怖の谷 アーサー・コナン・ドイル |
(2019/05/18 23:37登録) 首(顔)の無い死体ミステリの初出って、これではないかと密かに思ってた。子供の頃、ホームズ長編で唯一馴染めなかったのがこれで、多分、唯一「本格」のニオイがしたんだろう。でもこれ1915年の小説で「ビッグボウ」はおろか「黄色い部屋」や「ブラウン神父」よりも後なのね。顔の無い死体=死体入代りネタの元祖ってどの小説なんだろう。 ところでホームズていうかドイル、「モリアーティ」にこだわり過ぎじゃないか? 昔、コカイン中毒からノイローゼになったホームズが、フロイト(!)の診療を受けた結果、「モリアーティ」ってホームズの母親の愛人の名前で、そこからくるホームズの被害妄想と判明する・・ってな映画があった。 2022/1/1 訂正・追記 ハッキリしないがどうやら「顔の無い死体」物の源流(ディケンズにそんなのあるとか・・乱歩は紀元前からあるとまで書いてる)としても良さそうなので、「仮特許権」として6点に加点変更。 |
No.207 | 6点 | バスカヴィル家の犬 アーサー・コナン・ドイル |
(2019/05/18 16:10登録) 子供の頃に「呪いの魔犬」とかいうタイトルで読んだ。なぜか登場人物の一人 ステイプルトンが気に入ってしまった。田村正和(古畑任三郎演じる以前の)やルパン三世の石川五右衛門がイメージにあった。(ちなみに執事バリモアは銭形警部。) あらためて新潮社文庫で読み返したら「あごのとがった やせた小男」という描写で、ちょびっとイメージと違った。でもずっとあいつが贔屓だったので点数はオマケ付き。 |
No.206 | 4点 | 四つの署名 アーサー・コナン・ドイル |
(2019/05/16 21:13登録) 「・・モルヒネかい?コカインかい?」「コカインさ。~%水溶液。君も一本どうだい?ワトスン君・・」じつに痺れる会話だ それにしても宝箱が空っぽで本当に良かったねえワトスン君。「僕はおかげで妻まで得るし・・・それで君はいったい何を得るんだい?」「僕か?僕にはコカインがあるさ」 |
No.205 | 5点 | 緋色の研究 アーサー・コナン・ドイル |
(2019/05/16 17:00登録) あらゆる小説の中で最もカッコいいタイトルの一つ。かつ記念碑的なホームズ処女作。この二点だけで5点献上。 でも手元にあるのは延原謙という訳者の昭和二十八年刊行版。「ふふふ、驚いてらあ」「おもしろいですな」「さんざ悩まされましたが、私はもうすっかり筋道がわかったです・・・」 シャーロック・ホームズに、こんな日本語セリフを吐かせてはいかんだろう、やっぱり新訳で読まんと。 |
No.204 | 7点 | 屍人荘の殺人 今村昌弘 |
(2019/05/12 19:06登録) このサイトで知って読み、期待以上に面白かった。「二重の密室」の外壁を構成しているのがゾンビの群れって・・・少年漫画「進撃の巨人」を連想した。トリックとしては第一の不可能殺人が面白い。というよりこの部分だけをもっと徹底的に「密室=不可能」に作り込んでもらえたら、第二第三の不可能事件は別にいらないとさえ思った。 ところで、あの第一の殺人のエピソードで、子供の頃に見た円谷プロ「怪奇大作戦」の、吸血鬼になってしまった女とその恋人の男の切ないラストを思い出した。 |