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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:943件

プロフィール| 書評

No.403 3点 ウインター殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/11/29 20:52登録)
ヴァン・ダインの記念すべき遺作。

これで全12作・・短編集除く・・採点したんで、わが私的ヴァン・ダインベスト5。
 第一位:「ベンスン殺人事件」
 第二位:「グリーン家殺人事件」
 同二位:「ケンネル殺人事件」
 第四位:「カブト虫殺人事件」
 第五位:「ドラゴン殺人事件」

なんだかんだ言ってもいつまでも記憶されるべき作家の偉大な業績に追悼!


No.402 2点 カシノ殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/11/29 20:46登録)
「ファイロ・ヴァンスが生涯で出会った、最も巧妙を極めた、最も凶悪な犯罪・・」なんてチンプな謳い文句で話が始まっちゃうと、「最もつまんねえ話なんでないの?」て危惧を抱かざるを得なくなり、ハードルは下がるが、結局・・「うーん」な話だった。犯人、「グリーン」「ガーデン」「誘拐」と同パターンの誤魔化し行為やらかして・・この作では容疑者二名出てきて若干賑やかだが・・そもそも「毒殺事件」ての好きでないのよ。


No.401 6点 地獄の道化師
江戸川乱歩
(2020/11/27 20:21登録)
書評見てて、あれ?自分もこれ採点しなかったっけ?と不思議な気がしたが、そうだ、二階堂黎人「地獄の奇術師」の方だった。犯人の哀れさをことさらに憐れまないドライさがよい。


No.400 3点 ドラゴンの歯
エラリイ・クイーン
(2020/11/27 20:05登録)
ヴァン・ダイン「ドラゴン殺人事件」の方は竜の足跡だったが、こっちは歯型。そっか、指紋なみとまで行かずとも血液型なんかより人物判定の決め手になるのか、歯型。「BはAと同一の人物である」と言う明白な証拠が証言で否定されれば、「BはAになりすましたと論理を立て直し・・」って、それ「論理」って程、たいそうなもんでもないような気が・・・


No.399 6点 マギンティ夫人は死んだ
アガサ・クリスティー
(2020/11/25 22:11登録)
金を奪われ殺された雑役婦の中年女。殺される前に女が切り抜いていた新聞記事には、数十年前の犯罪絡みの4人の若い女の写真が。時を経て名を変え身分を偽って暮らしているはずの、ある初老婦人。雑役婦は過去を持つ誰かの現在を発見し、殺されたのか。早いテンポで次々と容疑者達が紹介され、ちと消化不良のまま話が進み・・もう誰が犯人でもいいよってなったあげく・・え?っと驚く真犯人の告発が「血の轍」の物語と共に明かされる。人が古い写真を捨てられないのは「虚栄」「感傷」「憎悪」からってポアロの分析が良い。
※登場する女流作家オリヴァが、自作の主役探偵を語り・・「何か書くとするわね・・なかなか評判いいらしい・・いい気になってジャンジャン書き飛ばす・・気付いた時には、思っただけで不愉快になる奴(探偵)が、あたしに一生つきまとって離れなくなっちゃってんのよ・・(こんな探偵)実際に会ったら片付けてやるわよ、今まで書いてきた方法より、ずっと・・」「・・そりゃいい、グッドアイデアだ。殺しちゃって、死後出版するといい・・」アガサ・クリスティー、本当はポアロのことが嫌いだったのかな・・とりあえず「カーテン」の予告してたんだな。


No.398 4点 ひらいたトランプ
アガサ・クリスティー
(2020/11/23 21:02登録)
ブリッジゲームの傍らで刺殺された奇人。容疑者はゲームを行っていた男女4人。大胆な男、慎重な男、冷静かつ果断な女、臆病な女。殺害状況から「~のタイプの人間の犯行」と判断するポアロ。うーん、その判断ちょっとなあ・・・。せっかく部屋の見取り図あんだから、隣室の人物の動きとも絡めたの期待したが、隣室の4人は容疑者になりえない設定の人物だし。
登場する3人の女が良い。「火車」「白夜行」ヒロインの原型の様な若い美女、ブリッジ狂いの端整な老婦人、そして、どう見ても作者の自己パロディとしか思えない女流作家。あのミステリ作家・・オリヴァて言ったか・・が実に面白い。あれ主役にしたら、ヘンリー・メリヴェール卿並みに面白いキャラだと思うが。


No.397 5点 シンデレラの罠
セバスチアン・ジャプリゾ
(2020/11/20 22:58登録)
記憶喪失はそれ自体が解決を要する「Who?」だから、第一人称で叙述されれば即ミステリ始動となる。「あたしってA?B?」のミステリが、途中から第三人称叙述挟んだサスペンス展開となり、最後は、ひんやりとサイコ風に「ドグラマグラ」して終わる。


No.396 3点 誘拐殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/11/20 22:55登録)
資産家のろくでなし次男の身代金誘拐事件。あまりにも明白な「狂言」誘拐の証拠群に一人疑義を唱え、「偽装」狂言誘拐の殺人事件と指摘するファイロ・ヴァンス。これまた分かり安い犯人で・・けして「グリーン家」「ガーデン」みたいに容疑者キャラからして分かり安いって言うのではないが、かれらと同じ事やらかして実に分かり安くて。
※本格のキモが密室殺人ならハードボイルドのそれは行方不明(誘拐)てことで、ここではヴァンスもチョビッと「ハードボイルド」して・・軽く3人射殺しちゃった。
※ヴァンスの「今ならワーグナーの二幕に間に合う」てセリフに思わずニヤり。


No.395 5点 ガーデン殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/11/19 21:05登録)
ガーデン家の屋上ガーデンで起きた事件。銃による自殺であること明白な状況で、些末な物証から殺人を宣言するファイロ・ヴァンス。アリバイトリック解明から殺人が可能だった犯人を割り出し、証拠なき状況から「おとり捜査」仕掛けて解決へ。あまりにも分かり安すぎる犯人。序章でヴァンスの対女性抒情匂わせ、「大博打」云々の「カナリア」ネタ再現匂わせて、ミスリード狙ったのか微妙な叙述トリックにはなってはいるが・・・あそこまで露骨に「グリーン家」をなぞっちゃうとねえ。ところであの仰々しい「出馬一覧表」何だったんだ?


No.394 2点 グレイシー・アレン殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/11/15 18:21登録)
二人の登場人物・・妖精にして天然詩人のヒロインと虚無的哲学者のラスボス・・が魅力的。特にヴァンスとラスボスの「哲学対話」章は実に素晴らしく、知識人:W・H・ライトの面目躍如。 あんな場面、クリスティ、カーは無論、クィーンにも書けないだろう。


No.393 4点 ハイチムニー荘の醜聞
ジョン・ディクスン・カー
(2020/11/13 16:24登録)
ホームズ・ワトスン物語に何故あれほどの「ミステリスタンダード感」覚えるのか考えると、あれがガス灯の世界・・電力以前の世界・・の物語だからだということになる。ミステリには、あの世界がよく似合う。電力照明のない世界、想像しかできない世界、そして、ミステリには英国と英国人が実によく似合う。


No.392 5点 ドラゴン殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/11/08 22:43登録)
これがもし「バスカヴィル家の竜」てな題の、ドイル19世紀作ホームズ物だったとしたら、「ミステリ史上の記念碑」の一つに挙げたくなっただろう。
でも、島田荘司の大技トリックや三津田信三「水魑の如き沈むもの」とか知っちゃうとねえ・・ヴァン・ダインて、なんか損な位置の人だな。


No.391 5点 悪魔のひじの家
ジョン・ディクスン・カー
(2020/11/03 06:25登録)
密室が二部屋。一部屋は「完全」な密室だが、もう一部屋は半開きの「不完全」密室。起きた事件は両部屋とも殺人未遂。とりあえずこれで我が基本評価点5点を進呈。「悪魔のひじ」と呼ばれる岬に佇む、幽霊が徘徊する古豪邸を舞台に、遺産相続の絡んだ殺人未遂事件が展開する。「緑樹館」という魅力的な屋敷ネーミングに半狂いの老兄妹。せっかく舞台を魅惑的な展開期待へと盛り上げたのに竜頭蛇尾につぼみ、フェル博士ドタバタもなく、基本評価点のみで終わってしまった。


No.390 7点 死者のノック
ジョン・ディクスン・カー
(2020/10/29 21:04登録)
二部屋の密室。 一部屋目では「密室殺人」、二部屋目は「人間消失」。しかも二部屋とも「完全」な密室。これだけで我が高点基準7点進呈!
(密室構成の出来については突っ込まない・・ただ前から思っとったんだが、外からも内からも鍵で開閉できる扉って普通なのか?・・まあいいやコマカイことは)


No.389 7点 青銅ランプの呪
カーター・ディクスン
(2020/10/27 19:16登録)
不可能トリックはミステリの華だ。いや、花火と言うべきか。それが一瞬の幻とわかっていても、儚く美しく魅惑的な・・やはり花火だ。「三つの棺」の素晴らしき犯人消失幻影、密室こそが、密室からの人物消失こそがトリック中のトリック・・・
それを手にした者は塵と消えるという呪いのランプ。密室状態のゴシック大屋敷より相次ぎ消失する大富豪の娘と父。
衆視の中、人物「A」が「消失」するためには、①瞬間早わざで「非A」に入れ代る。②同じく「その他大勢」に紛れ込む。③「A」に偽装していた「非A」が偽装を解いて「非A」に戻る。④もともと幻影だった「A」の幻影を解く。⑤一瞬にして誰も気づかない落とし穴に落っこちる。⑥同じく「くぐり抜けワープ」で瞬間移動する・・・イカン、不可能トリックと言えない不純物が混じってきた。


No.388 4点 青ひげの花嫁
カーター・ディクスン
(2020/10/23 21:54登録)
ホラー童話「青ひげ」の如く、結婚した女が次々と行方不明となり、殺人鬼の疑いのかかる謎のモテ男。その殺人鬼から送られてきた台本を、実人生で実験的に演じようと興じる俳優といぶかる女演出家。俳優自身にも当の殺人鬼である疑いが掛かり、読者もその疑いを捨てきれない。はたして殺人鬼青ひげの正体は誰か。花嫁達の死体が埋められているはずのゴルフ場は、掘り返せば痕跡が一目瞭然となる地形で、隠ぺいは不可能のはず。しかし、唯一例外の場所があった・・・そこはかとなくホラー感はあるが「青ひげ」タイトルから期待されるほどの怖さはない。H・M卿登場の場面は相変わらずドタバタ笑かしてくれるが。


No.387 5点 カブト虫殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/10/19 20:24登録)
あまりにも明確すぎる数々の証拠。だが、殺人容疑者Aを指し示す証拠群が、Aに冤罪を擦り付けるために、真犯人Bがバラまいたニセ手掛かりであったとしたら・・しかし、その展開それ自体が「真犯人B」を陥れるために、真・真犯人Cによる筋書きだったとしたら・・。「僕は知ったのだよ・・5分もたたないうちに・・○○が犯人だと・・」なんと超探偵なファイロ・ヴァンス。
※あの不在殺人トリック(ダミーだが)、「グリーン家」のやつより好きだ。


No.386 6点 ケンネル殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/10/15 19:30登録)
「ベンスン殺人事件」新訳を読んで、「現象学的直観」探偵ファイロ・ヴァンスを再発見し、これも再読。面白かった。ただ、ここのファイロ・ヴァンス、現象学を飛び越して「超越論的独断」の超探偵=作者のネタ明かし役 にまで存在が後退しちゃってるけどね。だが、面白いことは面白い。愚直なまでに古色蒼然とした密室トリックの何と香り高い「骨董感」。もしも殺害場所と死体発見場所の移動不可能性に焦点を当てて、もっと作り込んでくれていたら、カーや「翼ある闇」の「バカミストリック」にまで飛翔してたかも。


No.385 3点 カナリヤ殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/10/12 19:44登録)
「ベンスン殺人事件」に続いて、新訳文庫本にて再読。やはり、昔、記憶にあった通りのファイロ・ヴァンスだった。デビュー作のシンプルにして鮮やかな「現象学的解釈」推理が、ここでは単なる「心理学的」・・類型的行動学、~型人間学・・の独断のレベルにまで薄まってしまっていて残念。
「ポーカーは人生の縮図だ!」「碁を打てば相手の人間がわかる!」「車の運転は男の人生の象徴!」etc 今でもいろいろウンチクあるけどねえ・・。それにつけても、この二つの機械トリック、ショボすぎ(でもキライじゃない)


No.384 7点 ベンスン殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/10/08 20:46登録)
新訳・・といっても何年も前の出版だが・・文庫本にて再読。
そっか!ファイロ・ヴァンスって、1926年にして「現象学的解釈」「本質的直観」推理をやってたんだ! 笠井潔の矢吹駆より、ずっと根源的にシンプルに。ただ「グリーン」「僧正」のみならず、このデビュー作以降は、そうした「オーラ」は失せてしまってたような・・よくてロジック、多くはただの「心理主義的」独断に堕してたような記憶が・・でも、念のため読み返してみよう。

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