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ミステリの祭典

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ドラゴンの歯
エラリイ・クイーン、別題『許されざる結婚』

作家 エラリイ・クイーン
出版日1948年01月
平均点5.12点
書評数8人

No.8 5点 斎藤警部
(2022/04/20 09:17登録)
終盤寄り、一気に盛り上がるあのシーンで、こりゃ「◯◯◯◯し」トリックにヒネリをカマした応用篇かと大いに期待したら、真犯人暴露までがなかなかに悪く地味。。大見得切るよな目の醒めるロジックじゃあない。だがそこからの軽い頭脳戦一波乱に物語はちょっと救われた。
「◯◯◯◯し」(というか「◯◯◯◯り」)トリックの旨味持ってそな部分が、折角もう二つも大きなのが(小っちゃいオマケも一つ)あるのに、そっちらとの有機的絡みって言うんスかね、そういうので今ひとつ活かしきれてないやね。
全体で見て、謎解きやら犯罪を巡る冒険より、旧いコメディ映画を思わすドタバタ感覚こそが主軸かも、特に前半と締めントコにその感が強い。実際、そのお蔭でかなり楽しく読めたわけですよ。ドタバタがおとなしくなっちゃった後半では、眠たい箇所もあったね。 「よし次いこ次!」って前向きに思える作品ではある(笑)。

No.7 3点 レッドキング
(2020/11/27 20:05登録)
ヴァン・ダイン「ドラゴン殺人事件」の方は竜の足跡だったが、こっちは歯型。そっか、指紋なみとまで行かずとも血液型なんかより人物判定の決め手になるのか、歯型。「BはAと同一の人物である」と言う明白な証拠が証言で否定されれば、「BはAになりすましたと論理を立て直し・・」って、それ「論理」って程、たいそうなもんでもないような気が・・・

No.6 7点 虫暮部
(2019/12/26 11:48登録)
 遺産相続を巡るあれこれは、書き方が巧みなので飽きずに読めるが、飽くまで想定の範囲内に終始している気もする。ようやく事態が動くのは物語の半ばあたり、そこを過ぎて俄然面白くなるものの、最後に物凄い偶然による人間関係が発覚して呆然。国名シリーズにも似たようなサプライズがあったね。あと、前作『ハートの4』と同じような“雇用者と使用人の関係性”を連続して使い回すのは如何なものか。

No.5 4点 ボナンザ
(2019/03/02 12:16登録)
後期クイーンらしい一作。とはいえ意外性もロジックもトリックもイマイチではあるが。

No.4 5点 クリスティ再読
(2017/07/09 16:01登録)
本作はクイーン流の「映画小説」みたいなものだ。ベースはいわゆる「スクリューボール・コメディ」。戦前のハリウッドの都会的な喜劇、っていうとこのスタイルがメジャーだったわけで、監督としてはルビッチが代名詞なんだけど、実際にはキャプラ(「或る夜の出来事」。「スミス都へ行く」のジーン・アーサーのツンデレが特にそれっぽい)もそうだし、戦後までこのスタイルを引き継いだのがルビッチの弟子ビリー・ワイルダー(「アパートの鍵貸します」とかね)と言ってもいいだろう。またRKO時代のアステア&ロジャーズのミュージカルだってベースはこれだ。
ここらの映画に親しんでいると、この作品のテイストはごく自然に理解できるんだけど、ミステリマニア一般にそれを要求するのも何だよね...ボーがエラリーの名前を名乗って活動するとか、奇矯な億万長者の遺言とか、内緒の結婚式の治安判事の正体とか、ここらへんをスクリューボール・コメディらしいアイデア(変装とか身元を偽るとか実に演劇的な効果絶大なわけで)だと楽しむのが、本来の作者が想定した読み方のように感じる。
まああくまで「ミステリ仕立て」に近いところもあるから、ミステリ的な部分はそもそもあまり期待すべきじゃない。ヒロインへの襲撃とかキャラの入れ違いとかそういうプロットの部分での変化を、絵をイメージしながらロマンチックなサスペンス映画をのんびり楽しむような感じで読むべきだな。それこそ今ならボーとエラリーの関係をバディ的興味で萌えるのもありかもよ。
ある作家を「あるジャンルの巨匠」と扱っちゃうと、それこそ状況に流されていろいろ試行錯誤した「流行」の部分が後から見るとまったく見えなくなって、単に「つまらない駄作」という情けない評価に甘んじることにあるわけで、そういう面を特に本作とか否定できないわけだが、時代と背景の理解のための資料みたいに読むんだったら、本作でも十分お役に立ってくれる(クイーンが書いたからこそ、かろうじて訳されるわけでね)。

No.3 7点 nukkam
(2015/08/08 12:42登録)
(ネタバレなしです) 1939年発表のエラリー・クイーンシリーズ第14作の本書は前作の「ハートの4」(1938年)に続く作品ですが、舞台はハリウッドから懐かしのニューヨークへと戻っています。ですが内容的にはハリウッドものの延長線上にあるといってもおかしくない、波乱万丈の物語です。女の対決あり、危機一髪からの脱出劇あり、甘ったるいロマンスありと映画向きのシーンが満載です(実際に本書は映画化されています。但しストーリーは大幅改訂されたそうですが)。評論家にはどちらかといえば不評の作品ですが個人的には十分楽しめた本格派推理小説でした。完璧と思われた推理がたった一人の証人によって覆されてしまう第19章が特に印象的です。ところで本書のタイトルの意味は何なんでしょう?ギリシャ神話に「ドラゴンの歯を地面に撒いたところ、武装兵士が生まれてきた」というエピソードがあったように記憶していますが、それと関係あるのでしょうか?私にとっては未だ解けない謎です。

No.2 5点 Tetchy
(2009/08/30 01:38登録)
ハリウッドシリーズ第3弾の本作は『ハートの4』でも精力的に導入されていた恋愛が事件に大いに絡んでいる。従ってまずは事件ありきでその後探偵による捜査が続く本格ミステリの趣向とは違い、2人の遺産相続人の一方に起こる殺人未遂事件の数々が同時進行的に語られ、物語の設定はサスペンスになっている。

今回のテーマは「成りすまし」だろうか。他人の人生に成りすます人物たちのドタバタ劇のような様相が伴う。まず腹膜炎を患って捜査に出られないエラリーに代わって相棒のボーがエラリーと名乗るところからそれは始まる。

《以下ネタバレ》

その後も各登場人物も実は○○だったというのが繰り返される。
遺産相続人の1人マーゴ・コールはアン・ブルーマーなる女性詐欺師であったし、事件の依頼に来たカドマス・コールはまた執事エドマンド・デ・カーロスが成りすました人物だった。そしてボーとケリーの結婚立会人である治安判事も実はエラリーが成りすました姿だった。

《ネタバレ終わり》

これはハリウッドを経験した作者クイーンが映画界で過ごした経験に基づいているに違いない。映画スターは色んな映画で色んな役に扮し、様々な人物に成りすまし、また架空の人生を繕う。そして映画スター自身も本名ではなく芸名を名乗り、第2の自分を演じているのだ。この「自分以外の誰かに成りすます」特異な職業にミステリとしてのインスピレーションを得たに違いない。

が、しかしながらそのためか逆に物語や謎の薄さを糊塗するが如き演出になってしまったように見えてしまう。数々の人物が実は違う誰かであったという演出は確かに面白いが、どうもそれをするだけの動機が薄いのだ。
そして何よりも犯人の動機が最も解りにくいのがこの作品の欠点とも云うべき点だ。

どうにも纏まりの悪さとご都合主義が目立つ作品だといわざるを得ないのが残念だ。

No.1 5点
(2008/12/26 21:16登録)
エラリーの登場する作品の中でも、知的な謎解きの要素が最も感じられないものだと言っていいでしょう。角川文庫から『許されざる結婚』のタイトルで出ていたこともありますが、内容はまさにそのとおりのものです。
軽いユーモラスなメロドラマ・ミステリとして、複雑な謎や緻密な推理は期待せず気軽に読めば、それなりに楽しめるのではないでしょうか。

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