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ミステリの祭典

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ねここねこ男爵さんの登録情報
平均点:5.65点 書評数:172件

プロフィール| 書評

No.32 8点 クビキリサイクル
西尾維新
(2017/10/17 21:54登録)
好き嫌いのある文章でしょうし、個人的にこの手のは本来ダメなんですが、本作はそっち側にためらいなく振り切ってるので全然オッケーすんなり読める(ぼくの独白がクドいくらい)。何人か存在意義不明なキャラクターがいますが、続編を睨んだものと知り納得。

ミステリとしてはなかなかの完成度。『首切り死体は何故首を切られるか?』に新しいアイデアを持ち込んでいる。タイトルないす。第二の密室がちょっと苦しいくらいか。

コレ以降の作品はミステリ色ほぼなしみたいで読んでませんが、本作単独ならなかなか上質なのではないでしょうか。


No.31 7点 キングを探せ
法月綸太郎
(2017/10/17 21:05登録)
非常にテクニカルで上手い!ただ読んだあと衝撃のあまり呆然とはしない、という。

すべてが緻密なパズルとして組み上がっていて、その緻密さには万人が感動するが、ものすごく良く出来ている以上の感想を持てない、というところか。

ただ、それだけというにはあまりによく出来ているのでぜひご一読を。


No.30 9点 頼子のために
法月綸太郎
(2017/10/17 20:53登録)
手記=隠蔽工作、なので読者は心の準備をして読むのでそれをどう上回るか?という形式ですが、全部提示した上で見事にそれを達成する本作はこのパターンのベストではないでしょうか。最後の一対一はちょっとあっさり(というか、もっと深めて欲しかった)のでこの点数ですが、きちんと匂わせてあったし、全体として文句なし。

後味の悪さを指摘される方が多いですが、個人的にはあの後味だからこそ、と思います。救いがあったら救われない話では?


No.29 3点 悪意
東野圭吾
(2017/10/17 20:42登録)
緻密さより衝撃優先のこの作者らしい内容。
ですが、同様のアイデアを用いた他作品より数段クオリティが落ちる。

手記=虚実入り混じり、読者はそんなこと分かってるので読者は警戒し作者はいかにソレを上回るかですが、結局ありがちな『手記の著者は都合の良いことしか書いてなくて実はすごく悪いやつだったよ〜』以外の要素なしで残念。

そういう小説ではないのは分かっているのだが、証拠として重要なビデオテープの内容に関して、解決編でいきなり「あのビデオはこれこれこういう理由でダメ」と探偵役が言うのがちょっと…。だったら予めソレを著述しておくべきではないか?(何度も見返したが、事前にソレに触れている部分はなかったように思う。もしワタクシの見落としならご指摘頂きたい)


No.28 5点 今はもうない
森博嗣
(2017/10/15 14:14登録)
ファンブックですね。メインの仕掛けが生む効果とその対象から。

この作者に対する個人的な評価は他作品のレビューに書かせていただいた通り決して高くなかったのですが、それが過小評価であることに今気づきました。
この人は恐ろしく商売上手なんですね。それが分からなかった。


No.27 5点 白夜行
東野圭吾
(2017/10/13 22:34登録)
面白いけど、長い。
長さが苦痛にならないのはさすがの力量だけど、長い。
正確に言うと、こんだけ長いならもうちょっと具体的に書いても良い部分があるでしょうというのと、後半になると各エピソードの流れとオチが推測できるようになってしまうのがキツい。「最初は警戒→でもすぐ色仕掛けで陥落」がバレバレなので…。あるときは色仕掛け、あるときは破綻への工作みたいに仕掛けのバリエーションを期待してはいけないのだろうか。
オチはああするしかないとは思うけど、あっさり。


No.26 3点 御手洗潔の挨拶
島田荘司
(2017/10/13 22:05登録)
超絶凡作品集。読まなくていい。
この作者は不可思議な状況を作ってから解決を考えるタイプなんだろうが、解決を思いつかなかったときに恐ろしく無理矢理な物理トリックと、不思議なことは全部偶然で済ませる傾向がある。本作でもそのダメっぷりを存分に味わうことが可能。
そこを批判すべきではないと言うのはわかっていても、場合の数の説明はブチ切れそうになった。勉強不足なのに頭良さそうなフリするなよ作者。


No.25 6点 フィッシュストーリー
伊坂幸太郎
(2017/10/13 21:41登録)
この作者のオサレ感が良い方に作用している短編集。
表題作はバンドマン達の下りが長すぎることに目をつぶれれば素敵な話。
おすすめ。


No.24 3点 重力ピエロ
伊坂幸太郎
(2017/10/13 21:36登録)
『前評判が高いせいで、自分も高評価にしないとセンスのないやつとみなされるのが怖いから高評価にしよう』『え?君たちこの魅力が分からないの?ボクには分かっちゃうんだけどなぁ』という圧力を感じる作品。

「本来なら重い話なんだけどそれを受け止めてあえてスタイリッシュにいっちゃうよん」←うおおおおおおおお!!っていう風な、タイトルから滲み出ているようなこの作者にありがちのオサレ感全開で、それが許容できるかどうか。


No.23 6点 向日葵の咲かない夏
道尾秀介
(2017/10/13 21:26登録)
ミステリではなく幻想小説です。最初からそのつもりで読めばなかなか面白いです。
おそらく、読書量と評価が反比例するでしょう。


No.22 9点 家日和
奥田英朗
(2017/10/13 21:21登録)
この人がすごいのは、性別年齢層関係なく人間を書けることでしょう。
他作品の作者の言葉で「ふとした瞬間に表れる人間の小さな真実を書きたくて、ストーリーの皮をかぶっているのだ」というのがありましたが、まさにその通りの短編集です。気楽に読めて笑えて共感できてで文句なしにおすすめ。

ミステリの評価も高い作者ですが、この人はやはりコメディとエッセイでその真価を発揮する人だと思います。


No.21 7点 江神二郎の洞察
有栖川有栖
(2017/10/13 21:12登録)
ファンブック的な性格がどうしても出てしまっていますが、それでも楽しめます。
有栖川有栖氏の文体の美しさを一番堪能できるでしょう。

ある有名作品の、誰しも引っかかってる欠点をフルボッコにしてるのと、登場人物の口から語られる作者の推理小説観は必読かと。

『桜川のオフィーリア』はある意味で最も有栖川氏らしいと思いますがいかがでしょうか?
個人的に裏ベスト短編です。


No.20 7点 十角館の殺人
綾辻行人
(2017/10/04 22:20登録)
良くも悪くも有名なあの一文に全振り。
読者が推理する楽しみはほぼゼロ。

信者の方々には申し訳ないが、この作品はそれなりに過大評価されていると思う。

実際、本作を読んで衝撃を受ける人って実はリアルタイム以外ではそんなにいないんではないかと思う。「あ、このパターンか」って。
ただ、大きな流れを生み出した功績は計り知れない。間違いなく。


No.19 8点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2017/10/04 22:03登録)
どういったタイミングで出会うかで評価が分かれるであろう本作。

『叙述トリックって最近満ち溢れてるからソレだけだとディスられるし色々てんこ盛りしたろ!!』
『叙述トリックで得られる衝撃はサイコーゆえそれに全振りしたろ!!』

お手軽に衝撃を与えられる叙述トリックが氾濫し、それに伴って前者のスタンスの作品が支配的ですが、後者を楽しめるうちに本作に出会えるかどうか。


No.18 8点 月光ゲーム
有栖川有栖
(2017/10/04 21:52登録)
学生アリスシリーズの一作目にして評価がイマイチの本作です。

①登場人物が多すぎ
②動機が納得しがたい(個人的にはそうでもないが)
③犯人に意外性がない
④③も含めて全体的に地味

あたりがその理由でしょうか。つまり作者の『若さ』が出てしまっているということなのでしょう。デビュー作ですし。
ただ、本作以降の学生アリスシリーズの高評価につながるもの、心意気が本作にはあり、この作者の他作品中の言葉を借りれば「どこまでも推理小説である推理小説」であろうとした結果なのだろうと思います。

クイーンのファンを公言する作者や法月綸太郎氏は、クイーンの作品を読んだとき「モノが違う」と感じたそうですが、自分にとっては本作がソレです。「何故この人が犯人なのか?」をきちんと説明してくれるミステリは本作が初めてでした(大半のミステリがやる『こう考えれば辻褄が合う』という説明になってない説明は大嫌いなので…)。

最近評価される推理小説はとにかく衝撃重視で、『意外でありさえすればいい犯人』『インパクトがあれば非合理でもよい真相』『それらを比較的簡単に表現できる叙述トリック』になりがちなところを、あえて古典的作法に忠実に書ききったことにこの作品の価値があるのだと思います。逆に、非論理的でも良いから衝撃だけ貰えればよいとする向きには低評価となるのではないでしょうか。

というわけで、『ロジックよりトリック』『どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!』な人は読んではいけません。


No.17 8点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2017/10/04 21:37登録)
時間、場所、人を一挙に誤魔化す離れ業のアリバイトリックとして有名な本作。それだけで必読かと。

松本清張が推理小説の非現実的な面をディスり手本を見せてやると執筆した「点と線」へのカウンター。


No.16 4点 乱鴉の島
有栖川有栖
(2017/09/30 23:55登録)
魅力的な導入部分に対して、解決がちょっとあっさりしすぎな感。
登場人物たちの(ある意味高尚な)秘密と、ごくごく平凡下衆な犯行動機とのコントラストを狙ったのかもしれませんが…。
島や館の雰囲気だけで長編を引っ張るのはきつい。圧縮して中編ならもうちょっとバランスがよかったかも。惜しい。


No.15 4点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2017/09/30 23:42登録)
二通りの解釈が可能な話を構築し、一方の可能性に触れた上で真相はより衝撃的なもう一つの方だった、というこの年代からしばしば見る形式です。
真相がある意味古典の焼き直しゆえ、エクスキューズとしてもう一つの可能性を提示しているのでしょう。が、評価できるのはそういう話を構築した労力に関してで、お話としては「ふーん」という感想以上のものはありませんでした。(メタ的な視点ながら)かなり早い段階でネタバレしがちなのもマイナスではないでしょうか。だって登場人物の行動が不審で浮いてるもん。


No.14 6点 図書館の殺人
青崎有吾
(2017/09/30 23:25登録)
館シリーズ3作品の中では一番のおすすめです。
登場人物のキャラ設定も落ち着き読みやすいです。
ただ気になるところもあって、(①にネタバレを含みます)

①論理で犯人を特定するゥーンだ!!が強すぎて、犯人の行動が証拠を置きにいっているようにしか見えず不自然。
カッター周辺が特に。探偵がかなり細かいことを根拠にしているのでそれに習うと、
『それが現場に落ちるのを極力避けるために、とのことだがトイレまで移動する間はどうする?2階のトイレにしてもそれなりに移動しなくてはならない。どうにかして現場をトイレに隣接させたほうがよかったんでは』
『行動の言い訳として他に心理的理由があるかもと言っているが、探偵の推理どおりなら恐ろしく冷静にロジカルに行動する犯人であり、これは読者へのエクスキューズでしょう』
『ハサミなら最小限の切断が可能だろうが、カッターで紐状のものの先端だけ切るのはとても難しい。切断したい部位の両端を押さえなければならず、そうするとかなりの長さを切断する羽目になる。目撃されたら相当印象に残るし、後日長さを揃えるにしても店に行くわけにもいかない。さらに確実に現場に細かく舞うのでかえって証拠品を増やすことにしかならないのでは?』
2階のトイレまで落ちない事を前提にするなら、張り紙のテープの粘着力が残っている部分を破って抜け落ちそうな部分に貼り落ちないようにすることも可能では、とか色々あります。
おそらくクイーンの超有名作の『トラブル回避の些細な痕跡から特定』をやりたかったんでしょうが、それにオリジナリティを加えたろ!としてひねりすぎた結果かなり行動も推理も不自然で苦しい。

②他の方も指摘済みの通り、①を優先したため動機が??
個人的にミステリの動機はどうでもよい派(過去の復讐とか実は親子とかあとづけされてもなぁ)なのだが、ロジックと意外性を優先したため本作の場合とってつけた感が。
③ラストで一対一を書きたいのは分かるが、今作は特に無理やりじゃないか?

この辺気にならない向きは7〜8点の作品だと思います。面白かった。


No.13 6点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2017/09/28 23:24登録)
それなりに面白かった。
が、よく出来ているのはメイン以外の部分で、本体はあまりにも目撃者に都合の良い目撃のさせ方をさせてるなぁ…と。そりゃあそこだけ切り取れば謎めいて見えるわな。その言い訳として目撃者を子供にしたんだろうけど。要はよくある『複雑な状況を作って都合の良い部分だけ切り取って見せて読者を混乱させる』タイプです。このタイプにありがちな解決で天才的探偵が快刀乱麻です。
本作のおかげで「『目撃者は子供』ネタの作品を書いたことがある作家は信用できない」ことを知りました。

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