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ミステリの祭典

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ロマンさんの登録情報
平均点:8.08点 書評数:177件

プロフィール| 書評

No.17 10点 Yの悲劇
エラリイ・クイーン
(2015/10/20 12:04登録)
(ネタバレ)誰もが怪しいと思えるハッター家の奇異な人々。物語が進んで行くと犯人は絞れてくるのだが、なんとも後味が悪い。捜査が迷宮入りしていく中で犯人はいったいどんな気持ちでいたのだろうか。13歳という大人でも決して幼い子供でもない微妙な年齢の設定は見事だ。犯人の悲劇の結末は『誰にも』予期せぬことだったのだろうか。


No.16 9点 葬儀を終えて
アガサ・クリスティー
(2015/10/20 12:00登録)
大富豪の葬儀を終えて、遺言公開の場で発せられた「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」この鮮烈なひとことがすべてを支配する。大胆かつ周到に構築されたミステリ。本作の素晴らしいところは「トリック」が「ミスディレクション」であり「伏線」であり「手がかり」でもある不可分な物語構成にあると思う。老獪なクリスティーは更にその語りの中に罠を仕込む。意外な犯人にも文句なし。実に巧い。傑作。


No.15 8点 笑う警官
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
(2015/10/20 11:55登録)
十一月の豪雨の夜、反ヴェトナム戦争を訴える市民デモに熱されたストックホルムの一角で事件の幕が開く。その喧騒にまぎれるように、人知れず発生した事件の凄惨さが明らかになっていく序盤の緊迫感がすばらしい。激変する社会情勢、警察官の私生活を垣間見せながら、徐々に事件の真相に迫っていく展開は、まさに社会派警察小説の王道。結末近く、ある警察官が吐き捨てるように口にするやるせなさが心に突き刺さらない人はいないだろう。いまなお新鮮さを失わない必読の傑作。


No.14 10点 ブラウン神父の童心
G・K・チェスタトン
(2015/10/20 11:52登録)
ミステリの始祖と呼ばれるポー、ホームズのドイルと並び評されるミステリ界では有名な短編シリーズ。古典として後世に影響を与えた現代のトリック群の原典として一見の価値あり。ブラウン神父の人間観察、逆説、警句から導かれる結論にはおおと唸ること間違いなし。特に木の葉は森の中に隠せという超有名な文句が出てくる「折れた剣」が秀逸。


No.13 9点 人形はなぜ殺される
高木彬光
(2015/10/20 11:49登録)
衆人環視の中、奇術用の人形の首が忽然と消え、その後ギロチンによってマリーアントワネットの扮装をして切断された首無し屍体のそばにその人形の首が。寝台急行に轢かれたバラバラの蝋人形。そして次の寝台急行によって轢死させられた元子爵の令嬢綾小路佳子。殺人の前に必ず人形が「殺される」。消えた人間の首は何処に?名探偵神津恭介が挑む希代の悪魔か魔術師からの挑戦。と同時に著者から読者への挑戦状も突きつけられる。消えた人間の首の保管場所や人形殺害の理由には驚かされ騙された。


No.12 10点 Xの悲劇
エラリイ・クイーン
(2015/10/20 11:43登録)
電車の中で殺人事件が起きる。その中でドルリー・レーンは犯人を予想するもそれを明らかにしない。その後更なる事件が起きて、一人の人物が疑われる。  物語の節の一つ一つに日付と時間が書かれていて、舞台の把握と時間の流れが丁寧に読み取りやすくなっている。  レーンが最後に犯人を指名する場面は驚いた。なぜなら、物語が進んでいく中で犯人というのは舞台からは予想つかないような人物であるのに、実際には意外なところにいたからである。


No.11 10点 そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー
(2015/10/20 11:33登録)
10人の客人が招待されたのは岩肌にそびえる屋敷だった。そこで告げられたのは客人たちが犯した罰せれられることのない犯罪の歴史。次々と客たちが殺されていくが、依然として犯人は分からないまま。世間から隔離された孤島でいったい何が起こったのか? テンポよく進んでいくストーリーは小気味よく、張り巡らされた伏線は緻密で隙がない。さあはじめよう、判決と断罪の晩餐会を。


No.10 9点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2015/10/20 11:29登録)
今までにないミステリのあり方。これほどまでに終始堪能出来るミステリがあったとは。わくわくとページをめくり、犯罪研究会のメンバーが次々に発表する推理に頭の中が心地良くぐるぐる。そうして最後にはしてやられた!の清々しさ。ラストの締めくくりは最高。シンプルな事件に対して6つの推理と解決策を提示している点は味わいがいがあるというもの。推理って面白いなぁをしみじみと実感させてくれるのだ。


No.9 9点 ユダの窓
カーター・ディクスン
(2015/10/20 11:24登録)
不可能犯罪の巨匠カーター・ディクスンの傑作。二人のいる密室で片方が死体で発見された。その人は飲み物に薬を混ぜられたと主張するも、デカンターは減っておらず、グラスも濡れていない。あらゆる状況証拠が彼が犯人だと示すなかでヘンリ・メリヴェール卿が弁護する。犯人が使ったという「ユダの窓」。続きが気になり、ページを捲る手が止まらなかった。ストーリーが進むにつれて見事に筆者の手の上で踊らされていた。


No.8 5点 テニスコートの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/20 11:21登録)
30年代の作品にしてテニス・ロボットの開発云々とアホなことぬかしよるが、それが伏線であるとはあまりに意外だ(ただし全く褒めてないけど)。そして、相変わらずハリウッドのメロドラマかロマンチック・コメディみたいだ。


No.7 10点 占星術殺人事件
島田荘司
(2015/10/20 11:16登録)
冒頭のおどろおどろしい内容から一気に引き込まれ、御手洗と石岡の会話を通じての事件の概要説明、そこから文次郎の手記で事件の奇怪さに拍車をかけながら話が展開していく。見所として、事件が醸し出す不気味さもあるが、読み解こうとする程複雑怪奇になる事件が、解決編の図一つで全て繋がる瞬間が一番の盛り上がりだ。占星術などの普段聞きなれない言葉が登場するが、本質のトリックはいたってシンプルであり、話しのテンポも良く読みやすい。謎解きでは混乱するだろうが、悩んだ人程その分解答の快感が大きく、本書を楽しめるだろう。


No.6 10点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2015/10/20 11:11登録)
異常な愛を求める主人公のミステリー作品。凌辱による惨殺描写は途中で嫌気がさしたが、終盤は緊張感を味わえ、ラストは衝撃的だった。叙述トリックを猟奇表現で上手く包み隠した点が凄い。見事に騙された。読後は結末に唖然とし、また読み返したくなる一冊。


No.5 8点 衣裳戸棚の女
ピーター・アントニイ
(2015/10/20 11:09登録)
ユーモアがありほのぼのしていて凄惨な感じはしない。挿絵も良い感じ。解決編で笑ったミステリは久しぶり。バカミスと呼ばれてるものかもしれないけど、この強引な真相は、このほのぼのとした雰囲気に合ってて良いと思う。


No.4 9点 ビッグ・ボウの殺人
イズレイル・ザングウィル
(2015/10/20 11:04登録)
19世紀に誕生した密室殺人の起源となる作品。当時の時事問題に関心がないためそれを中心に繰り広げられる人間関係にもあまり乗れなかったが、法廷シーンを経て明らかになるトリックは、まさしく密室の起源に相応しい、今となっては誰でも知っているあのトリック。意外な犯人、意外な動機。How Who Why、すべてそろった見事な作品が19世紀に完成されていたことに驚いた。ミステリとしての驚きを期待すると肩すかしかもしれないが、100年以上の時を経ても圧倒的な輝きを放つ傑作。


No.3 9点 緑のカプセルの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/20 11:02登録)

毒殺もののミステリはあまり数を読んでいなかったが、まさかここまで強引かつ堂々と毒を呑ませる犯人がいるとは思わなかった。普通ならまず有り得ないこの殺害方法を成立させるためには今作のようなシチュエーションが不可欠で、カーの優れたプロット構築能力を見せつけられた思いがある。「心理学的推理小説」の名に相応しい、鮮やかなトリックも見事。フェル博士による「毒殺講義」も盛り込まれ、読んでまず損はない一作と感じた


No.2 9点 皇帝のかぎ煙草入れ
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/20 11:00登録)
表題の通り「かぎ煙草入れ」が重要な殺人事件。これは巧い。ごく単純な事件を心理的な仕掛けで巧妙に騙してくる。短いながら、どんでん返しもあり楽しめた。カーと言えば不可能犯罪という印象だったので、どんな超絶技巧なトリックが仕掛けられているのかと期待していたところを良い意味で裏切られた。犯人は予想通りで驚きはないけれどトリックは予想外で別の意味で意外な展開だった。なるほど確かにクリスティが好みそうな推理小説。物語としても読みやすく冒頭から引きこまれた。特に男女の確執が迫真。ヒロインの男運の悪さには同情するしかない。


No.1 10点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2015/10/20 10:52登録)
(ネタバレ) 叙述トリックの代名詞というくらいの予備知識しかなく読み始めたが、読んでいるうちになんとなく「そういうことなのでは?」というのは感じられた。語り手でありワトソン役である登場人物が犯人であり、実は全てを語っていなかった、という叙述トリックはたしかに当時は斬新で賛否を巻き起こしたことだろう。ただ、嘘を書いていたりするのではなく、書いてある事自体は全て事実なので、当時これをやってのけたアガサ・クリスティーの目の付け所が素晴らしかった、ということだけは確かだろう。

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