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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.5 8点 人生の阿呆
木々高太郎
(2015/04/27 11:58登録)
内田有紀の3rdアルバム『愛のバカ』を彷彿とさせるタイトルだが、木々高太郎の『人生の阿呆』は昭和十一(1936)年に発表された古典的推理小説、但し実際読まれた事のある人はかなり少ないと思われます。

よく「簡単に犯人が分かってしまう」と言われるらしいのですが、私は探偵役の青年が警察に捕らえられ『獄中推理』なる思索を行う、もう終盤もいい所まで行ってやっと「え!まさかあの人が!」とひらめいたのでした。 際立って純文学的な文体や雰囲気が当時犯人当て勝率9割6分だった私の目を曇らせたのでしょう。 ストーリーが単調という人もいる様だけど、私にとっては非常に記憶に鮮明に残る作品でした。 感動します。 あと、これ言っちゃぅと微妙にネタバレになるかも知れないけど 。。 「犯人の●●が●●●●●●●い」ってのは初めて見た! 斬新だ!! 

後から考えると小説として色々アンバランスな所が目立ってたかもなあ。 


No.4 7点 絢爛たる流離
松本清張
(2015/04/24 18:56登録)
高価なダイヤモンド指輪の持ち主の変遷を軸とした連作短編集。昭和の戦前から高度成長期まで、時が流れます。
第α話で一応のオチを見せたストーリーに第α+1話で新たな展開が待っていたり、なかなか一筋縄で行かない。
また、それぞれの話のスタイルというか持ち味が、意識的なのか結構ばらけていて、文学性の高いシリアスな犯罪小説で最後まで通すのかと思いきや本格パズラーがひょっこり出て来たりする。びっくりしたのは「これはまさか藤原宰太郎のパロディか?」と思わせる様な清張らしくもない安直な”手掛かり”の登場する話があったこと。「何、○○が××だと!? 分かった!犯人はアイツだ!」みたいな。それよりもっと凄いのが、まさかのバカトリックが出て来る某ストーリーで、その絵面を想像したらもう笑っちゃってしようがない。これ実際にやられたら被害者の苦痛はもう地獄絵図なんだと思うけど、だけどヴィジュアル的にもう反則でしょうってくらいのバカさ加減で、それをよりによって渋いトリック使いの清張が文章化しているというギャップがまた何とも。とは言え、全体を通して見るとやっぱり男女の機微を丁寧に描いた美しい犯罪物語がその中心にある。だけど所々おかしな点も見つかる。文章にしても、清張には稀な”速く読んでると何の事を言ってんのか一瞬分からなくなる”様な言葉運びの下手な文が少し見つかったりする。色んなギャップを含んだ連作集だと思う。

最後の一遍のエンディング、連作全体を締める大オチを一回見せておきながら。。 あの終わり方は”時代が軽くなった”って事を暗示しているのかなあ、分からないや。


No.3 8点 わるいやつら
松本清張
(2015/02/17 12:35登録)
文章の手触りは小粋な短編の様。その調子で二巻分延々と続くのだが話の動きが機敏で全くだれるところ無し。短いインターバルでちょっとずつ違和感や謎を残しながら進む技倆が見事。徐々に主人公の心が狂気じみ、頭が愚かになって行く描写が怖い。「わるいやつら」と言っても決して社会悪や巨悪ではなく、そこそこ金持ちとは言えむしろミミっちい悪党(ワル)どものお話なのだが、それでも大変に迫力のある物語を著者は構築している。


No.2 6点 殺人の門
東野圭吾
(2015/02/13 12:33登録)
この小説をもし松本清張が書いていたらどんなだったろう、とずっと想像しながら読んでしまいました。
倉持の様々な悪行の動機が最後に明かされるわけですが、最初の方に伏線とも言えないほど堂々と記載されているにも関わらず、その後の怒涛のような田島の不幸の展開ですっかり目くらましされていたな、と。 しかし田島はなんでこんなに何度も丸め込まれるんだ。。
物語本筋とはまるで無関係だけど、不敬罪に問われそうなとある台詞がサラッと出て来たのがやけに印象に残っています。
あと、主人公と同部屋だったヤンキー上がりの彼にすごく好感。てか、基本的に二人の男が対峙する構造の物語なのに、大勢の脇役達がやけに皆しっかり描かれていますね。それでいてストーリーを混濁させない筆力も流石。


No.1 9点 船富家の惨劇
蒼井雄
(2014/11/11 14:27登録)
これぞ古典的名作! 戦前の作品だが非常に現代的なスリルがあり、飽きさせないストーリー展開も過去の因縁も色彩豊かにガンガン語られます。決してメインディッシュ扱いでないアリバイトリックも小粋な味で楽しめ、何よりあの予想外の終わり方! 重厚な長編小説でありながら、、あれこそ「意外な結末」と呼ぶに相応しいと思います。東野圭吾の技巧を彷彿とさせます。

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