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ミステリの祭典

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社会部記者
社会部記者シリーズ

作家 島田一男
出版日1995年05月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2026/03/16 22:55登録)
1951年の第4回探偵作家クラブ賞は「但し島田氏は授賞作品の他にも力作が相当あるので、発表は「社会部記者」その他と附加へることを申合せた。功労賞的な意味も含めたものである。」ということで、ちょっとややこしい。実際「風船魔」もこの時候補に挙がっていて2票入っている。そういう経緯もあって、受賞作短篇「社会部記者」を原題の「午前零時の出獄」に戻し、他にこのシリーズ第1作の「遊軍記者」と「新聞記者」、及び「風船魔」の4本を収録して「社会部記者」を総タイトルとしてコンパイルしたのが、双葉社の日本推理作家協会賞受賞作全集になる。なかなかツボを押さえた仕事である。

舞台は東京日報。社会部長の北崎が仕切る社会部である。このシリーズ、あまり個々の記者のプライベートは掘らないのが特徴で、とにもかくにもしゃれっ気のある会話とスピード感で飛ばしていく。北崎親分の一の子分みたいに焦点が当たるのが遊軍記者の亀田。次郎長親分と森の石松といったところで、落語というよりも呼吸が浪曲だなあ。

「午前零時の出獄」はヤクザの出所と更生に社会部が関与するナニワブシ。「遊軍記者」は写真学校のビルが焼けて焼死体の事件。ちょっとしたアリバイ崩しみたいなものがある。「新聞記者」は軽演劇の一座に送られた精神病院を舞台にする芝居の話。「風船魔」は女性舞踏家の死体が大きな風船にぶら下がって銀座を散歩してしまう奇抜な事件。という風に、それぞれテイストの違う話だが、なかなか奇抜で派手なもの。筆力があるから何とかなっている。
「午前零時の出獄」にややトリックめいた仕掛けがあるかな。

どうやら受賞の弁などみると、一種のハードボイルドのように期待されていたことが見える。実際、草創期のテレビドラマの「事件記者」に繋がるわけで、これがそれこそ「七人の刑事」などとともに刑事ドラマのプロトタイプになったことを考えたら、影響力絶大、ということにもなるのかもしれないな。
まあ島田氏というと、評者が学生のころでも「捜査官シリーズ」で売れていたわけで、息の長さということでは凄いものがある。そのうちやろうか。

No.2 7点 ALFA
(2024/08/30 08:00登録)
伯父が新聞記者だった。定年後は紳士然としたナリで飲み歩いていたが中身は結構ラフだった。現役時代はきっと生きのいい「ブン屋」だったんだろう。ちょうど作中の記者たちと同時期になる。

4話の連作短編からなる、第3回推理作家協会賞受賞作。
ミステリー色はやや薄いが記者の風俗小説としても面白く読める。
そういえば「事件記者」という人気ドラマもあったなあ・・

No.1 8点 斎藤警部
(2015/05/27 12:20登録)
賞を獲ってブレイクした頃のこちらの短編集。
江戸落語を思わせる会話文・地の文がとても時代がかった粋を感じさせ、それも新聞記者という忙しいサラリーマン男社会ならではのちょっと野暮の混じった粋なのが、実に堪らない。こういう小説を読んでると、忙しくて薄給でも好きな仕事をやってる奴は幸せそうだなあ、と思います。
同じく短編集「自殺の部屋」なんかと較べて推理小説としては薄味だけど、それすらまた魅力。

午前零時の出獄 /遊軍記者 /新聞記者 /風魔船
(双葉文庫)

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