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ミステリの祭典

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平均点:6.50点 書評数:162件

プロフィール| 書評

No.62 6点 星籠の海
島田荘司
(2014/01/06 16:32登録)
御手洗潔国内編最終章―瀬戸内海を舞台にして、御手洗達が凶悪犯を相手に行ったり来たりする大長編なのだが、トラベルミステリーっぽさが多くてそれ故ミステリーとかエンターテイメントとしては並。
事件にかかわってくるのはかつて瀬戸内海を支配した村上海賊の秘密兵器「星籠」。それをめぐって海辺の町・鞆で事件は進み、歴史ミステリー的要素もある。もともと映画化を前提に作った話であるためスケールが大きく、そこそこの面白さがあるのだが御手洗シリーズをついに映像化するなら、もっと謎解きを多用した方が良かったように思う。しかし、犯人の自白を引き出すためにあんなことをするとは…驚き。
発想や展開はさすがで、長いながらも飽きずに読めたので、島田先生には今後も頑張って執筆して欲しい。


No.61 2点 ロジック・ロック・フェスティバル
中村あき
(2014/01/05 15:16登録)
古野まほろ「天帝のはしたなき果実」の盗作として一時期ネットで話題になった作品。私は古野氏の本を読んだことがないのであまりよくわからないが、星海社のホームページで無料全文公開されているため読んでみた。
「虚無への供物」だのなんだのを引き合いにした割りにいたって普通の結末で、取り立てて話題にするほどではない内容。よく言えば「虚無への供物」劣化版。本格ミステリや論理に対する意気込みは感じられるのだが…これはフェアなのか?論理が詭弁っぽくて、実際問題として犯人の特定ができるのか微妙。そもそも「(盗作だとしたら、)盗作でこれ?」といったレベル。(内容に関して)保健室にもお医者さんがいるだろうが。ギャグは空回り出し、ラノベだからって適当に書いていいわけじゃない。「山手線太郎」はひどい。
どうやらネットの書き込みを見ると共通点が多数あるらしい。なかなか深読みしたコメントもあって楽しく読ませて頂いた。新人賞の責任者である星海社副社長は、「天帝のはしたなき果実」メフィスト賞受賞にもかかわっていたらしいし、盗作を世に出すのは出版社の問題ではないだろうか。どっちにしろ中村あきが今後どうなるか、気になる。


No.60 9点 魍魎の匣
京極夏彦
(2014/01/05 14:53登録)
京極堂・百鬼夜行シリーズ二作目にして日本推理作家協会賞受賞作。個人的には前作の「姑獲鳥」をそのままグレードアップさせた雰囲気を感じた。
前回のテーマが妊婦、子供などの具体的な内容だったのに対し、今回は魍魎、箱(匣)などの抽象的な概念として登場する。どこを見ても匣ばかりという匣尽くしの中で一体それは何を意味するのか?を探っていくストーリーだといえる。匣は中に物を入れるためにあるのだろうか?それ自体を満たすことに意味があるのだろうか?
一応本格ミステリに分類されてはいるが、推理部分は京極堂が作中で行っている通り「噴飯もの」、とはいかないまでもこれだけではもちろんお話にならない。しかし、ストーリーとの連係プレーともいえる解決シーンは見事で、例えば消失の真実なども純粋な驚きがある。
伏線の張り方など今後改善できる点は多々あるが、本作がミステリー界でも珍しい地位を得ていることは間違いない。また、ここまで安定して重厚感のある作品をかけるのはさすがだと思う一方で、やはり姑獲鳥と比べてそれほどすごいかといわれると…。


No.59 5点 四神金赤館銀青館不可能殺人
倉阪鬼一郎
(2013/12/31 18:43登録)
海を挟んでつくられた二つの館・金赤館と銀青館で起こる、大量不可能殺人を描くバカミス。「ここまでやるか?!」をやってしまった感がある。
確かにメイントリックはダイナミックで、二転三転するストーリーには引き込まれるのだが、はっきり言ってその部分はどうでもいい。殺害方法に深くかかわってくるわけではないし、そもそもそんなに重要な部分ではないように思った。伏線についてはトリックが多すぎて話が部分的に意味不明になっているため、もはや解読不能。(再読すると、ある程度納得がいくが…こんなの分かるか!)
あとはそうとうに大変だったであろうあの部分だが、これは中々良かった。果たしてここまでやってしまう著者の作風を面白いと思えるかで評価は変わるだろう。これが「袋小路派」なのか…。
ところで、作中に出てきた『泉水館第四の秘密』のトリックは最高に面白いと思った。
ただ、やっぱり登場人物が多すぎるし、微妙。とりあえず他の作品も読んでみよう。


No.58 7点 キマイラの新しい城
殊能将之
(2013/12/30 15:52登録)
欧州の古城を移築したテーマパークの社長に、中世の騎士の霊が憑りついた。探偵の石動戯作は750年前の殺人事件を推理することになるが…

大胆なメイントリックや。ロポンギルズでのアクションが面白く、異色作でありながらもそれなりに楽しめた。多重解決や亡霊の登場などは複雑で特殊なものだが、そこまで敷居は高くない。
ただ、ミステリとしては伏線や証拠といったものが一通りそろってフェアな戦いとなるため、文句はないし、ハチャメチャな展開は笑えてよかったが、全体としてのまとまりが悪い。物語の必然性が薄いのだ。もう一工夫が欲しいところではある。石動の似非密室講義や謎の薀蓄もあったが、話と直接の関係はない。
一方で終わり方は何とも言えない良さがあった。これはこれで良いと思う。今年亡くなった殊能さんのご冥福を祈りたい。


No.57 10点 レーン最後の事件
エラリイ・クイーン
(2013/12/28 19:12登録)
悲劇四部作の掉尾を飾る長編。本作で今までクイーンのイメージが変わった。
まず特筆すべき点は次々と謎が解明されて捜査が進むにもかかわらず、事件も速いスピードで進んでいき謎が続出する構成。物語の展開が絶妙で引き込まれる。
そして、いかにもな文章がいくつもあるのだが、その全てが正しく伏線として回収される美しさがある。じっくり読んで味が出てくるタイプの名作だ。
これらの点で、作品としてのグレードは「Zの悲劇」くらいなのだが、ここで過去三作品の総ての伏線が回収されるために最高点とした。ラストにつながる「Yの悲劇」でのレーンの行動や「Zの悲劇」でのアレ、さらにはシリーズ全体にわたってつくられた罠。
悲劇四部作はその一つ一つが「幕」となっている一連の「悲劇」なのだと思った。だからこそエピローグのない唐突な終わり方やレーンのあの行動が生きてくるし、本格の限界に挑む超大作が浮かび上がってくる。

というわけで、「レーン最後の事件」だけで8点、四作まとめて10点。


No.56 5点 ダンガンロンパ霧切1
北山猛邦
(2013/12/28 18:51登録)
ゲーム「ダンガンロンパ」の登場人物・霧切響子の過去のストーリーであり、「物理の北山」が描く本格ミステリ。本書にはゲームのネタバレがあるので注意。

雪の降るシリウス天文台にて殺人が起こる吹雪の山荘もの。オリジナルキャラクターとして女子高生探偵の五月雨結が登場し、本格らしい作品になっている。原作ファンなら大概楽しめるはず。「探偵図書館」なんていかにも。
「ダンガンロンパ」の雰囲気と北山氏の世紀末的な作風が融合していいコラボになった。推理小説としては大それたトリックはなく、目立ったところはないが、「2」に期待。
ところで、自分は天文が好きなので真面目な天体観測の話が面白かった。でも大口径のイメージがわかないと微妙だろうな…


No.55 8点 『アリス・ミラー城』殺人事件
北山猛邦
(2013/12/25 14:36登録)
『城』シリーズ三作目。ルイスキャロルの「アリス」とクリスティの「そして誰もいなくなった」を題材にした作品。

メイントリック(ネタバレはダメだけど、某名作と似てる)は好き嫌いが分かれるところ。「フェアかアンフェアか」の恒例の論争になりそうだが、そもそも読者にとっては架空の世界の証拠なんて何の意味も持たないのだから、ある程度の伏線がはってあるならこの論争は不毛。ただ、いわゆる「吹雪の山荘」の中でも特殊な類に入る作品だからこういう実験的な試みもありだと思う。演出は、もう少しこだわってほしかったが。
著者ならではの物理トリックは好調で、ダイナミックに仕掛けてきた。序盤で出てくる「物理トリック談義」も面白かったが、やはり、クライマックスの推理で「アンチ物理」的な内容が出てきたことは推理小説としての大きな飛躍だ。物理を追求してきた著者の、一つの結論ともいえるかもしれない。
しかし、物語としてはまだ描き足りないところがあるし、何よりこれはかなり上級者向けだ。(動機が論外なのもまた事実だが、じゃあ、もっとまともな理由を思い付くかといわれてもそうではないだろう。これがミステリの限界なのだろうか。)自分が探偵だったらもっと楽しく読めたかもしれない。
もちろんミステリの初心者も読んではいけない。まずはクリスティの「そして誰もいなくなった」、しばらくしたら変化球の「『アリス・ミラー城』殺人事件」を。


No.54 7点 匣の中の失楽
竹本健治
(2013/12/21 12:12登録)
いわゆる四大奇書の一作。中井英夫の「虚無への供物」を意識したアンチミステリ構造に独自のメタミステリとしての構成を添加した、後の新本格に大きな影響を及ぼした作品。
ただし、「虚無への供物」の二番煎じ的な雰囲気を脱していない気がした。これなら内容がストレートな「虚無」の方が読みやすいし、わかりやすい。そもそもこれだけの作品を書くのは一般人には不可能な芸当だとは思うのだが、これより上の「虚無」がある以上高い評価は難しい。
やはり本作は「本格推理とは何か?」「解決とは何か?」をテーマにした文学で、本来の推理小説とは違った「アンチミステリ」なのだが…独自のメタミステリ手法は評価できるとしても、これは結局「虚無」のファンブックといった作品だ。
一方で作中の密室トリックはなかなか面白かった。だからこそ、内容を「密室とは?」という点に絞った方が良かったように思える。あとは、登場人物が多すぎて書き分けられていないという難点がある。

色々と文句を書いたが、デビュー作でこれだけ書ける作家はまずいない。それだけは言っておこう。


No.53 6点 『瑠璃城』殺人事件
北山猛邦
(2013/12/21 11:54登録)
『城』シリーズ二作目。世界を股にかけて運命と生まれ変わりを描く本格ミステリ。
最初は多発する不可能犯罪に魅せられたのだが、少し考えればわかってしまうトリックだった。内容がストレートだったし、展開に意外性はない。ただ、ここまで物理トリックに情熱をささげる人は少ないからその点では凄い。バカミスっぽい点もあったが、一応の補足はあったので納得。
一方、生まれ変わりという特殊ルールは複雑で、フェアプレーぎりぎりのラインになっている。このネタならもう少し内容を膨らませても良かったかもしれない。
良かった点は、探偵のスノウウィをはじめとするキャラが個性的で、物語としての展開はよく出来ていること。特にクライマックスのあの展開は予想できなかったため、首切り死体が大量に登場した割に読後感がいい。


No.52 6点 空飛ぶ馬
北村薫
(2013/12/18 15:44登録)
女子大学生の「私」と噺家春桜亭円紫師匠の「日常の謎」をめぐる連作短編。
このジャンルを開拓した作品としては画期的。読書好きの「私」や、円紫師匠の魅力はなかなか趣味が合わないと分からないだろうが、自分はとても楽しめた。特に円紫師匠の落語がなかなか臨場感が出ていて面白い。
また、今までのミステリでは描き切らなかった人情や人の内面の温かさを巧く表している。世知辛い時代にこのような作品が出てきたことは嬉しい。また、ミステリとしても「砂糖合戦」や「空飛ぶ馬」は面白かった。
ところで「織部の霊」は「半七捕物帳」の「お文の魂」のパロディなのかな。おふみさんもゲスト出演していたし。


No.51 6点 教場
長岡弘樹
(2013/12/18 15:31登録)
警察学校にやってきた白髪の風間はクラスの新しい教官だった。風間と警察学校の生徒たちの出来事を描いた連作短編集。

新ジャンル・警察学校小説の決定版として書店に並んだ本作だが、最初の方は少しワンパターンかな、と思って読んだ。警察ともあまり関係ないように思われた。しかし、途中から勢いに乗ってきて、最後の背水あたりは結構面白かった。一つ一つの話でちゃんと伏線を回収し、読みやすいミステリ。
警察の組織の一員でありながら、まだ警察官ではない警察学校生。彼らが社会で働くまでの苦悩を描く異色の構成で、中々内容の焦点が定まらない。ジャンルとしてはまだ開拓の余地がありそうなので、著者が次回作でどれくらい進化できるかに期待。


No.50 1点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2013/12/16 14:08登録)
あまりに有名な作品だけにこの点数をつけるのにはずっと躊躇していた。それゆえ、本作の書評は今まで避けてきたのだった。
もともと、私は東野圭吾氏の作品と相性が悪い。その作品の面白さが良く理解できないのだ。そんな私が氏の代表作にケチをつけるのはおかしいかもしれないが、一度私の意見も読んでいただきたい。

本作は天才数学者の石神が自分の愛する花岡靖子の為に、鉄壁のアリバイで完全犯罪を成し遂げようとするストーリーだ。見事な伏線や、二転三転する展開に驚かされた読者は多いだろう。私もそうだった。
しかし、まず気にいらなのはトリックに大きく関係するある部分だ。ネタバレにならないように書くが、人の命を虫けら同然に考えるあるまじき内容があるのだ。さらにそこまではいいとしても、それを作中で最も論理的思考ができるはずの湯川がほぼ黙認している。恋愛小説とか、ミステリとかそれ以前に人間としてあってはならない事ではないだろうか。なぜ湯川はそれを…。
またトリックの必然性に乏しいことも本作の欠点の一つである。これは偶然に頼りすぎだし、例え必然的な流れとしてこのトリックが現れたとしても、やはり東野氏自身の道徳的人格を疑ってしまう。もう少しこの点を丁寧に書いても良かったのではないだろうか。恐らくキリスト教圏に翻訳されても日本ほどの賞賛は受けられないだろう。

思うに東野氏は恋愛部分と推理部分を別々に思い付いたのではなかろうか。それを強引に縫い合わせてしまったがために思いもよらぬ亀裂が入っていまったのではないだろうか。だから、私は本作が本格かそうでないかという議論には不毛さを感じる。恋愛として若しくは推理小説として別々にとらえるならある程度の評価ができるのに、二つ合わせてよく見ると完成度が低いのだ。実際には恋愛部分もさほど偉大な内容ではないと思うのだが、本書評では特に触れないこととする。

あとは、些細なことだが石神や湯川の描き方に違和感を感じる。理系としての立場から言わせてもらえば、彼らは明らかに文系である。湯川の妙に論理から逆らった行動や、石神の再試での奇妙な行動。理系だったら「数学に関する意見を書いてほしい」なんて言わないでしょう。理系を主人公に置く文学において、ここまで粗雑な表現をした東野氏がまた理系であるという事実に驚きを感じる。何故本作が直木賞に輝いたのだろう。

ここまでグダグダと書いてきたが、私は本作のすべてを否定したいわけじゃない。本作のトリックや描写にはなかなか優れた部分もある。しかし、本作にある道徳的問題は社会問題も巻き起こしかねないし、それを論理的思考者であるガリレオに美化させるやり方は間違っていると思う。その意味での点数だ。


No.49 7点 失脚/巫女の死
フリードリヒ・デュレンマット
(2013/12/14 11:17登録)
世の中を皮肉り、かつ喜劇化する不思議な手法の作品だ。収録されている四つの短編のうち気になったのは「失脚」。粛清に怯える革命政権の大臣たちの心情が戯画化され、中々考えさせる仕上がりになっている。特にアルファベットで呼ばれる登場人物のうち「J」が抜けていることが不思議だったが、これは何を意味しているのだろうか。
もう一つの表題作である「巫女の死」は歴史改変もののある種のミステリで、「悲劇オイディプス王」の物語を知っているととても面白く感じられた。何より一読の価値がある良質な異色短編集だ。


No.48 7点 99%の誘拐
岡嶋二人
(2013/12/12 11:20登録)
身代金であるダイヤモンドをめぐって、最先端のテクノロジーを駆使した犯人と警察や被害者を描いた倒叙型誘拐サスペンス。吉川英治文学賞受賞作。
当時最先端だった科学技術を中心に物語が展開する一方で今なお色あせない名作だ。西澤保彦氏の解説を引用するならば「疾走する孤独」。倒叙であることによって犯人の計画の綿密さとスリルが読者に強く伝わってくる一方で、その人物の犯行動機に悲しみを感じる。だから謎解き要素はないが、作品世界に魅せられた方は私以外にも大勢いるだろう。(個人的には例の作中作に複雑な仕掛けがあると睨んでしまったのだが…)
やはり印象的なのは誘拐された少年とアスカの会話。「決して許してはいけません」というセリフが心に残る。


No.47 7点 慟哭
貫井徳郎
(2013/12/12 11:09登録)
トリック自体は目新しいものではないし、伏線の張り方が鮮やかというわけではない。ただし、それでも本作の衝撃は大きかった。

連続する幼女誘拐殺人事件と捜査が一向に進まない警察組織のジレンマを描きつつ、家族に深刻な問題を抱える一課長の佐伯に焦点を当てる。テーマは家族愛なのか、それとも…

新興宗教や幼女誘拐などの話題のリアルさが際立ち、捜査とは別に語られる新興宗教に走る心に傷を負った男の姿が目に浮かんだ。そして、クライマックスは手に汗握る展開で、最後の一行まで読者の心をつかんで離さないところは作者のテクニックだ。警察小説と本格ミステリ、そして感動の融合だ。


No.46 3点 死亡フラグが立つ前に
七尾与史
(2013/12/12 11:01登録)
シリーズ初の短編集。ノストラダムスの大予言にある人類滅亡を阻止するために出遭ったばかりの陣内・本宮コンビが奮闘する「死亡フラグが立ちましたのずっと前」、ターゲットを殺すまで追いかけてくる謎の『狩猟者』と親子の逃走劇を描く「死亡フラグが立つ前に」など四編。

果たしてこのシリーズはどこへ行くのやら?短編の内容は特徴がないものが多く、マンネリ化しているように思える。この四作品だけで本にしたのは失敗じゃないか?緩やかにクオリティが下がっている。
最後の「ドS編集長のただならぬ婚活」は作者の長編「殺戮ガール」とのコラボだが、次回作の長編がこんな展開になるとすると…ネタ尽きてません?


No.45 4点 死亡フラグが立ちました! カレーde人類滅亡!?殺人事件
七尾与史
(2013/12/11 19:05登録)
マヤ文明の2012年の人類滅亡予言になぞらえて、人類の滅亡をたくらむ魔女一族と、貧乏ライター・陣内、天才投資家・本宮が戦う。

前回はバカミスっぽい展開だったが本作でいよいよ魔法を認めるようになる。果たしてそこに納得できるかどうかだが…本作品はそれ以前に作品の展開がパッとしない。あまり大きな展開をせずにそのまま終わった感じだ。前作の勢いは取り戻してほしいと思うのだが、今後どうなるだろう?


No.44 8点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2013/11/26 17:22登録)
北海道最北端、宗谷岬に位置する斜めに傾いた館、「流氷館」。主人の浜本幸三郎のもとに集まった客人たちだったが、雪の降る中で悲劇が起こる。密室殺人や、奇妙な現象が起こる一連の事件を御手洗潔が解決する。

いわゆる「バカミス」として賛否両論の論争を引き起こした名作。斜めの屋敷をどういう風に使うか?というストレートな疑問と多発する密室殺人。本格好きにはたまらない要素だ。そして、メイントリックは鮮やか。「バカミス」覚悟で読んでいったため、騙されたときに嫌な気持ちはしなかった。むしろ爽快感の方が大きい。これを許容できるかできないかは趣味によって大きく変わるだろう。しかし、本格ミステリに「挑戦」され、見事に作者に打ち負かされたい読者なら満足できるのではないだろうか。
すべてが伏線となり、一つの答えに導いている。だから、犯人像やあの花壇の謎は比較的すぐに分かってしまった。しかし、それでいて最後まで気を抜けないのが本作の凄いところだ。粘り強く仕掛けてきて、読者を驚かせる。御手洗があそこまで計算していたとなると、もう人間業じゃない。
読んでいるときは、もしかして動機は…と思ったが、これも最後の最後で綺麗に処理された。本当はこちらにももっと仕掛けてほしかったのだが、某名作へのオマージュか?


No.43 6点 テロリストのパラソル
藤原伊織
(2013/11/23 19:20登録)
公園で偶然爆発テロに出遭ったアル中のバーテンダー、島村には隠された過去があった。過去に友人と爆弾を爆発させ、一人を死なせてしまったのだ。自らがテロの犯人として指名手配される中で、島村は事件の真相を探る。江戸川乱歩賞、直木賞受賞作。

個性的なキャラクターや島村こと菊池の人物としての魅力、流れの見えない事件捜査と驚愕の真実。読みやすく印象的な作品だ。特にラストシーンは圧巻で、犯人の動機、菊池の過去、事件を取り巻く人々の思いが交錯していく様子が凄い。しかし、あの人物はなぜあんな事を……捻じ曲げられた思いの象徴が「テロリストのパラソル」だ。とても心に残るものがある。
欠点は、事件の展開が分かりづらく、複雑な事象が多い事。ご都合主義展開が多い点が批判されがちだが、そういうテーマなのだから仕方がない。映像化向けの作品だと思った。

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