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ミステリの祭典

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TON2さんの登録情報
平均点:5.65点 書評数:330件

プロフィール| 書評

No.90 8点 屍鬼
小野不由美
(2012/11/07 18:07登録)
(ネタバレ)
文庫本で5分冊でした。
まだ次々と死者が出る原因が分からず緊張感のある(一)(二)はとても面白いと感じましたが、(三)以降はまあまあでした。
スティーブン・キングの「呪われた町」へのオマージュとしての吸血鬼ものです。日本の風土と吸血鬼というのは相性がどうなのかと思いますが、舞台となる外場村(=卒塔婆村)は、まだ土葬ということになっています。
人の血を吸わないと非常な空腹感におそわれて生きていけない。自分の近親者を襲わざるを得ない。近親者を襲ってはならないのか、それとも許してくれるのか。屍鬼も悩みます。
人間だって、生きるためには、他の命を食べているではないか。
ラストで寺の副住職が、「屍鬼というだけで殺してもいいのか」と悩み、屍鬼のリーダーと逃げることになります。
欧米の吸血鬼物語のように、吸血鬼を絶対の悪として描いていないところが日本的です。


No.89 7点 猿丸幻視行
井沢元彦
(2012/11/05 22:57登録)
折口信夫を探偵役として、柿本人麻呂=猿丸太夫を探っていきます。いろは歌に隠された暗号も解かれます。
梅原猛の「水底の歌」の中で説かれている、「人麻呂は王朝の高官で、政治的失脚により刑死となった」をベースに、小説というよりも論文といった内容です。
作者のデビュー作ですが、これ以後この作品を超える小説は書いていないのではないでしょうか。


No.88 7点 不連続殺人事件
坂口安吾
(2012/11/05 22:52登録)
(ネタバレ)
昭和22年に発表された、第2回探偵作家クラブ賞受賞作。
終戦後間もない夏、山奥の豪邸に集まった、作家、画家、詩人、女優たちの男女。それぞれの愛憎うずまく中、8つの殺人が起きる。
不連続殺人とは、真の動機を明らかとしないために、関係のない殺人を織り交ぜるということ。
終戦後すぐの時期に、よくこんな刺激的な作品が書けたものだと思う。
ATGで映画化されたようなので、映像も見てみたい。


No.87 6点 不夜城
馳星周
(2012/11/05 22:47登録)
第18回吉川英治文学新人賞受賞作。
舞台は新宿で、裏では台湾、上海、北京などのチャイナマフィアが仕切っている。主人公は台湾と日本のハーフ。日本にもなじめず、中国社会からもはじかれ、自分ひとりが生き残ることにエネルギーを傾けている。生き残るためであれば、仲間も裏切り、愛した女さえ見捨てる。
ハードボイルドの極致だが、主人公をはじめ誰にも感情移入できない。すごく面白いとは思ったが、後味は良くない。


No.86 3点 黄昏の囁き
綾辻行人
(2012/11/05 22:42登録)
子どもの頃のかすかな記憶に殺人の秘密が……。兄や兄の昔の友人が殺されていく。調査を始める主人公と元予備校の講師・古都。犯人は古都の母親だった。15年前の黄昏に、痴呆の義父は事故に見せかけて殺した。それを当時義父といっしょに遊んでいた子供たちに知られたのではないかと……。
15年ぶりに町に来たサーカスのジンタの音など、舞台はそれらしいものですが、中味は薄い内容です。綾辻の作品だから読んでみたけれど、期待はずれでした。


No.85 6点 文福茶釜
黒川博行
(2012/11/05 22:36登録)
骨董品・美術品の真作・贋作に金と欲がからむ連作短編集。
相剥(あいはぎ)、初出し(うぶだし)など、古美術の世界は欲ボケのインチキだらけ。
初心者は近寄らないほうがいいようです。


No.84 4点 皇女の霊柩
内田康夫
(2012/11/05 22:34登録)
浅見光彦もの。
皇女和宮の東下りの際、中仙道を通り、各宿場には万一の場合に備えて、柩が用意されていたという。
木曽の妻籠、馬篭が舞台。


No.83 2点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁
島田荘司
(2012/11/05 22:30登録)
吉敷刑事もの。時刻表のトリックだったと思いますが、10年ぐらい前に読んだので忘れてしまいました。


No.82 6点 蒲生邸事件
宮部みゆき
(2012/11/05 22:29登録)
現代から2.26事件の当日へタイムトラベルするSF的ミステリー。日本SF大賞を受賞した作品だが、この作者の他の凡作のように物語にキレがないと感じました。


No.81 3点 義経はここにいる
井沢元彦
(2012/11/05 22:26登録)
古美術研究家の南条圭が探偵役。
義経は果たして平泉で死んだのか、北へ逃げたのか。この謎は、中尊寺のミイラと堂の配置から、平泉で死んだと考えられる。中尊寺は、義経の怨霊鎮めの役割を持つという。
この作者は、同じようなテーマで何冊も書いているみたい。


No.80 6点 陰摩羅鬼の瑕
京極夏彦
(2012/11/05 22:22登録)
(ネタバレ)
前作から待ちに待った京極堂シリーズです。
外界から隔絶された屋敷の中で育ったために、「死」という概念が欠けてしまったという一発トリックものです。
舞台が長野県の諏訪、白樺湖あたりなので、土地勘があり、面白く読めました。
「絡新婦……」「塗仏……」と比べると、大きくスケールダウンした感じが否めません。


No.79 5点 原子炉の蟹
長井彬
(2012/11/05 22:18登録)
原発で起きる連続殺人事件を扱った乱歩賞受賞作。サルカニ合戦の見立て殺人というところがミソです。
原発内で働く労働者の過酷さ、命を削っての労働だということが繰り返し語られています。現実の福島第二原発事故を先取りしているといえるでしょう。


No.78 7点 水の眠り 灰の夢
桐野夏生
(2012/11/05 22:14登録)
私立探偵村野ミロの父親ムラゼンこと村野善三の若いころの物語です。ミロの出生の秘密が明かされます。
時代は昭和38年、彼は東京オリンピック前夜の高度成長時代のトップ屋です。連続爆弾魔・草加次郎事件、エログロナンセンスを地でいく狂乱のパーティーを繰り広げる新進デザイナーなどが描かれています。
男の作家が書いているのではと思うほどのハードボイルドです。


No.77 5点 シャイニング
スティーヴン・キング
(2012/11/05 22:08登録)
ジャック・ニコルソン主演の映画を先に見ました。ホラーの傑作ということですが、主人公が狂気に落ちていく過程がよく分からなくて、自分としてはイマイチな映画でした。
そこで原作を読んでみました。冬期は雪深いために閉鎖されるホテルに管理人として採用された一家の話です。過去の様々な不幸ないきさつの積み重ねにより、霊が宿った幽霊屋敷もの。
霊が管理人一家を次々に恐怖に落としていく過程が描かれ、一家の父親がそのとりことなり、妻と一人息子を殺そうとします。
キングはアメリカン・モダンホラーの第一人者ですが、自分にはもの足りなく感じます。この本もやっと読み終えました。


No.76 3点 佐用姫伝説殺人事件
内田康夫
(2012/11/05 22:01登録)
浅見光彦ものです。陶芸の新技法の盗作にからんで殺人事件が起こります。舞台は佐賀県有田です。


No.75 3点 日光殺人事件
内田康夫
(2012/11/05 21:59登録)
浅見光彦もの。天皇の前での歌会始に選ばれた和歌が、盗作であり、これにからんで殺人事件が起こります。
天海僧正は明智光秀で、奥日光の智秋家は明智光秀の子孫かもしれないという話が出てきます。
あいかわらず、ミステリー度は低めです。


No.74 5点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件
島田荘司
(2012/11/05 21:54登録)
英国に留学中の孤独な漱石とこわれているホームズのやりとりが面白い。東洋の呪いとかが出てくるが、謎解きはミエミエ。


No.73 3点 確率2/2の死
島田荘司
(2012/11/05 21:52登録)
プロ野球のスター選手の子どもが誘拐された。吉敷刑事が犯人に操られ、公衆電話から電話へと走り回るが、野球の試合が終わったとたんに、犯人は身代金の受け取りを放棄した。
野球賭博だと思ったら、案の定当たり。平凡すぎる。
この題名は全く意味不明。


No.72 7点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2012/11/05 21:49登録)
トリックはバカミスのようですが、そのための斜め屋敷という壮大な無駄が面白いと思います。
登場人物は皆アクが強くて、御手洗潔登場までは、そのあつれきが面白かった。
御手洗が出てきてからの解決篇は、これは天才ゆえの悲しさなのでしょうが、何が何だか分からなくなりました。
だいたい動機自体が殺人を犯すほどのものか疑問ですし、御手洗のトリックあばきも、人形のマスクを特別注文するほどのものかと思いました。


No.71 6点 十三番目の人格―ISOLA
貴志祐介
(2012/11/05 21:42登録)
多重人格障害の女子高生に、13番目の人格として、肉体を失った霊魂がとりつく。それが邪悪なイソラ。
ホラーとしては今ひとつの感じ。映画も見たが、これもできはイマイチ。

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