home

ミステリの祭典

login
猿丸幻視行

作家 井沢元彦
出版日1980年09月
平均点7.27点
書評数11人

No.11 7点 じきる
(2021/08/01 12:47登録)
猿丸大夫と柿本人麻呂といろは歌に隠された秘密に迫る、太古の歴史のロマン溢れる魅力的な読み物でした。

No.10 8点 zuso
(2021/06/21 23:28登録)
「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声きく時ぞ秋はかなしき」の猿丸太夫は柿本人麻呂だったのか。この奇怪な謎を若き折口信夫がコード・ブレイカーよろしく解いていく。国文学推理小説の新たな境地を開いた傑作。

No.9 9点 mediocrity
(2019/02/21 21:51登録)
梅原氏の死去でこの本の存在を思い出し読破。まさかあの『死者の書』の折口信夫が主人公のSF的な物語とは思っていませんでした。
暗号部分は少しややこしかったですが、折口信夫、日本史、神道に興味のある人には非常に面白い作品だと思います。
発売時には「梅原氏の本に頼りすぎ」みたいな批評があったらしいですが、一体何を読んでいるのでしょうか。あくまで参考にした上で、梅原氏に対する批判も取り上げ、全く別の結論に達しているというのに。
テーマが自分の興味のど真ん中なので点数は甘目です。

No.8 7点 tider-tiger
(2017/02/01 19:38登録)
乱歩賞受賞作って読んでいる最中は楽しくスイスイ読めるんだけど、「特記事項なし」みたいな作品が多い印象がある。そんな乱歩賞の中ではかなり好きな作品。だが、書評するのに悩む作品でもある。知的好奇心をくすぐって引っ張るタイプで、和歌、日本史、民俗学などに興味ある方には良いが、そうでない方には辛い作品でしょう。
個人的にはせっかく折口信夫が出張ってくれたのにイマイチ活かされていないように思えて残念だった。

SF的な導入部は安易だと感じた。結局、あの薬はどうなってしまったの?
素直に折口信夫を主人公にしとけばよかったのに。て、そうしなかったのには理由があるわけだが。
柿本人麻呂の謎解きはよかった。特に名前の話、なるほどねえ。証明は難しいだろうが、納得はできる。話もかなり大きくなったし、面白かった。
資料にずいぶんよりかかっている作品らしいが、主たる参考文献をしつこいくらいに明示している点は好感が持てる。

最初の殺人に関して、ハウダニットは許容範囲。フーダニットは楽しめず。ホワイは納得できる。二つ目の殺人のハウは「ほわ?」っとなりました。なぜそういうことをする。ホワイもなんだかなあ。二つ目の殺人が足を引っ張って完成度、納得度を落としてしまった。
構成も良くないと思った。人麻呂の謎解きに殺人事件をもう少しうまく絡めることができなかったか。あれでは乱歩賞だからと殺人事件を無理矢理ひねり出したように感じられてしまう。歌の謎が解かれるにつれて折口信夫の周辺で事件が起こり、人が死んでいくといった展開が望ましかった。

占星術と同年の応募で占星術に競り勝った(圧勝だった?)作品らしいが、もし自分が審査員だったら双方受賞の線で押したいところ。どちらか一方というのであれば、好きなのは猿丸だが、ミステリとしては占星術に軍配を上げたと思う。乱歩賞は小説としてのバランス、リアリティが要求される賞だと思うが、それが仇となって受賞作がどこかこじんまりしている印象(『脳男』みたいな変な作品やアアオンエみたいな素人っぽいのもあったけど)。コントロールは小学生以下だが、スピードだけはメジャーリーグクラスのピッチャーにも門戸を開いてはどうだろう。たまには本格で真っ向勝負の作品が乱歩賞受賞というのも気持がいいと思うのだが。一発目は『猫は知っていた』なのにねえ。
(ここ四、五年の受賞作は読んでいないのですが)

No.7 7点 TON2
(2012/11/05 22:57登録)
折口信夫を探偵役として、柿本人麻呂=猿丸太夫を探っていきます。いろは歌に隠された暗号も解かれます。
梅原猛の「水底の歌」の中で説かれている、「人麻呂は王朝の高官で、政治的失脚により刑死となった」をベースに、小説というよりも論文といった内容です。
作者のデビュー作ですが、これ以後この作品を超える小説は書いていないのではないでしょうか。

No.6 6点 E-BANKER
(2011/02/18 20:51登録)
第26回江戸川乱歩賞受賞作。
本作は、高橋克彦「写楽殺人事件」など、その後続いた「歴史ミステリー」受賞作の先駆的な作品。新装版で読了。
~「いろは歌」に隠された千年の秘密とは? 猿丸太夫、百人一首にも登場する伝説の歌人の正体は? 友人の死の謎を解き明かす若き日の折口信夫の前に意外な事実が姿を現す~

「なかなかの力作」というのが読了後の感想。歴史ミステリーも嫌いな分野ではないですし、井沢氏の著書は「逆説の日本史シリーズ」で十二分に接してますから、氏の歴史観や考え方がスムーズに頭に入ってきました。
「柿本人麻呂」という人物は、歴史上でもなかなか興味深い研究対象なのでしょう。(江戸時代から名だたる歴史家が研究しているわけですから・・・)
特に古代日本史においては、「貴族の怨霊信仰」がキーワードになるというのが、「逆説シリーズ」でも繰り返し主張されてる点ですし、その考え方が本作でもかいま見えますね。(菅原道真や崇徳上皇などが代表的)
まぁ、「歴史」そのものが大いなるミステリーそのものなのですから、これがつまらないわけはありません。
ただし、それ以外の純ミステリーとしてはあまり見るべきところはなく、「付け足し」のような扱いなので、評点としてはこの程度。
「歴史好き」の方ならば、1度は読んでみる価値は有りだと思います。
猿丸村での殺人事件のトリックは綾辻の某作品を思い出してしまいました。(本作の方が先ですけど・・・)
(これと「占星術殺人事件」が同時に応募されてた訳ですから、相当ハイレベルな争いだったんでしょうねぇ・・・)

No.5 7点 kanamori
(2010/08/01 15:35登録)
SF的趣向は、歴史ミステリとしての単なる手段なのはちょっともったいない気がするが、猿丸太夫の暗号解読、柿本人麻呂同一人物説など歴史の謎が楽しめた。
主人公の折口信夫など、実在人物が文学趣味の読者以外にとってはちょっとなじみがないのと、文学研究者寄りの内容は読者を選ぶかもしれません。

No.4 7点 STAR
(2010/02/18 11:10登録)
歴史好きなので、ミステリー+歴史で楽しめました。

No.3 5点 測量ボ-イ
(2009/05/04 11:15登録)
面白くもなく、つまらなくもなく、評価は微妙です。
でもこの作品があの「占星術」を抑えて乱歩賞を受賞
したとは以外ですねえ。

(2017.2.5 追記)
乱歩賞に対する所感は、先日あったtider-tiderさん意見と同感。
ここ20~30年の乱歩賞って、こじんまりまとまってはいるけど、
読者をアっと言わせる何かがないんですよねえ・・
あの「占星術」がこの作品に負けてしまった30年以上前に、既に
その兆候があったのでは。
この作品に関しては、今を思えばやや辛めの採点のようにも見え
ますが、初志徹貫で修正はしないでおきます。

No.2 8点 touko
(2009/01/14 01:17登録)
逆説の日本史シリーズの作者による歴史ミステリー。
個人的に歴史ものも古典文学も折口信夫も暗号解読も大好物なので、ニコニコしながら読んだ記憶があります。
もっとも、折口を主人公にするなんて離れ業をやってるので、勝手に相当けれんみのある作品を期待してたんですが、そつなくまとまった優等生的作品だったので、その点では少々ガッカリした記憶も?

ミステリーとしては手堅い作品で、そんなにマニアックでもないし、暗号解読ものが嫌いじゃないなら、楽しめるかと思います。

No.1 9点 makomako
(2008/10/21 21:41登録)
これは何度読んでも面白い。殺人のトリック自体はやや小粒ではあるが、猿丸太夫と柿本人麻呂をからませた歴史推理とパズル論議が複雑でよい。薀蓄と言うより知的興味をひかれる。登場人物が過去に人物と一体化する作用があるという薬を飲んで民俗学者で歌人の折口信夫に一体化してしまうというありえない設定で始まるのだが、読んでいるとごく自然に物語の世界へ入り込んでしまう。この作品は第26回江戸川乱歩賞に輝いたもの。当時乱歩賞受賞作品はすべて読んでいたので発売されたらすぐ買って読み、これが歴代乱歩賞で一番と思ったのを思い出す。さらにいえば第26回江戸川乱歩賞選考では今は本格好きからは古典のように扱われている島田宗司の占星術殺人事件(このときは占星術のマジック)を抑えての受賞なのだ。私が持っている昭和55年度発行版では選考委員の評も載っておりこれもなかなか面白い。パズルが嫌いでない本格推理愛好家なら必読でしょう。

11レコード表示中です 書評