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ミステリの祭典

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シャイニング

作家 スティーヴン・キング
出版日1978年03月
平均点7.71点
書評数7人

No.7 8点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2022/07/01 14:51登録)
巻頭にエドガー・アラン・ポーの短編「赤死病の仮面」から引用があり、作品の中にも何度か出てくることからもわかるように、明らかにポーの影響のもとに書かれた作品である。
ホテルが命を持ち、最後に爆発する場面はポーの「アッシャー家の崩壊」を思い起こさせるものがある。展開は巧みで最初から結末を予感させる「REDRUM」を出し、それに向けて様々な伏線が張り巡らされていることで、登場人物の心理の中で恐怖感が高まるのに比例して読者に恐怖感を募っていく。ホラーものとしては非常に計算された作品といえる。

No.6 8点 よん
(2021/04/05 13:19登録)
S・キューブリックの映画化で有名になったが、実は原作の方が凄い。まさしく「恐怖の心理学」をテクストにしたような作品。同一作品の「キャリー」に続い読めばなお一層楽しめるでしょう。

No.5 8点 ◇・・
(2020/02/22 11:09登録)
徹底した描写力とキャラクター造形の妙。それから、お決まりを少しずつ少しずつ、ずらしていくプロットの巧さ。それほど突飛なことが起きなくても、小さなことの繰り返しでどんどん思いがけない方向に物語が導かれていく。絵空事じゃない深層心理に訴えるリアルな恐怖。
雪に閉ざされたホテルという一種の密室モノだけど、ホテルがとてつもなく広い。その広い中に三人きりという、空間恐怖症的な手触りがある。もちろんいろんなものが潜んではいるし、逃げ場のあること自体が恐怖という発想も新しかった。

No.4 10点 Tetchy
(2016/10/09 23:44登録)
とにかく読み終えた今、思わず大きな息を吐いてしまった。何とも息詰まる恐怖の物語であった。これぞキング!と思わず云わずにいられないほどの濃密な読書体験だった。

誰もが『シャイニング』という題名を観て連想するのは狂えるジャック・ニコルスンが斧で扉を叩き割り、その隙間から狂人の顔を差し入れ「ハロー」と呟くシーンだろう。とうとうジャックは悪霊たちに支配され、ダニーを手に入れるのに障害となるウェンディへと襲い掛かる。それがまさにあの有名なシーンであった。従ってこの緊迫した恐ろしい一部始終では頭の中にキューブリックの映画が渦巻いていた。そして本書を私の脳裏に映像として浮かび上がらせたキューブリックの映画もまた観たいと思った。この恐ろしい怪奇譚がどのように味付けされているのか非常に興味深い。キング本人はその出来栄えに不満があるようだが、それを判った上で観るのもまた一興だろう。

≪オーバールック≫という忌まわしい歴史を持つ、屋敷それ自体が何らかの意思を持ってトランス一家の精神を脅かす。それもじわりじわりと。特に禁断の間217号室でジャックが第3者の存在を暴こうとする件は既視感を覚えた。この得体のしれない何かを探ろうとする感覚はそう、荒木飛呂彦のマンガを、『ジョジョの奇妙な冒険』を読んでいるような感覚だ。頭の中で何度「ゴゴゴゴゴゴッ」というあの擬音が鳴っていたことか。荒木飛呂彦氏は自著でキングのファンでキングの影響を受けていると述べているが、まさにこの『シャイニング』は荒木氏のスタイルを決定づけた作品であると云えるだろう。

ところで開巻して思わずニヤリとしたのは本書の献辞がキングの息子ジョー・ヒル宛てになっていたことだ。本書は1977年の作品で、もしジョー・ヒルがデビューしたときにこの献辞に気付いて彼がキングの息子であると解った人はどのくらいいるのかと想像を巡らせてしまった。
そしてよくよく読むとその献辞はこう書かれている。

深いかがやきを持つジョー・ヒル・キングに

つまり『シャイニング』とは後に作家となる幼きジョー・ヒルを見てキングが感じた彼の才能のかがやきに着想を得た作品ではないだろうか。そしてダニーのモデルはジョー・ヒルだったのではないだろうか。

1作目では超能力者、2作目では吸血鬼、3作目の本書では幽霊屋敷と超能力者とホラーとしては実に典型的で普遍的なテーマを扱いながらそれを見事に現代風にアレンジしているキング。本書もまた癇癪もちで大酒呑みの性癖を持つ父親という現代的なテーマを絡めて単なる幽霊屋敷の物語にしていない。怪物は屋敷の中のみならず人の心にもいる、そんな恐怖感を煽るのが実に上手い。つまり誰もが“怪物”を抱えていると知らしめることで空想物語を読者の身近な恐怖にしているところがキングの素晴らしさだろう。
そう、本書が怖いのは古いホテルに住まう悪霊たちではない。父親という家族の一員が突然憑りつかれて狂気の殺人鬼となるのが怖いのだ。
それまではちょっとお酒にだらしなく、時々癇癪も起こすけど、それでも大好きな父親が、大好きな夫だった存在が一転して狂人と化し、凶器を持って家族を殺そうとする存在に変わってしまう。そのことが本書における最大の恐怖なのだ。
やはりキングのもたらす怖さというのは読者にいつ起きてもおかしくない恐怖を描いているところだろう。上下巻合わせて830ページは決して長く感じない。それだけの物語が、恐怖が本書には詰まっている。

No.3 8点 ∠渉
(2014/03/06 13:29登録)
とにかくラストの怒涛の展開にはただただあっけにとられるばかりで、開いた口が塞がらなかった。それくらい破壊力があったし、これはホラーの枠に入りきるのかと思っちゃうくらいのスリルとサスペンスの質も最高だった。シリアルキラみたいな犯罪心理にも通じそうな感じで幽霊より人間のほうが恐い。幽霊が霞んじゃった笑。
物語が軌道に乗るまでが結構長いけれど、読み終わって「どうしてこうなってしまってのか」を振り返ってみたときの材料の量と質がものすごい。あぁ、だからこんなに自分は作品にのめりこめてたんだと。

とにかく現実世界の歯車にホラーを噛ませるのが巧い。とにかく入り込める。そらキングのことだから惨劇になるんだろうしそれが好きなんだけど、中盤あたりで「なんとかハッピーエンドにならんもんですか」って念じちゃってました。やっぱ惨劇だったけど笑。でも救いもあって良かった。心から良かったと思った笑。

とても使い古された題材とは思えない。なるほどモダン・ホラーってこういうことなのね。

No.2 5点 TON2
(2012/11/05 22:08登録)
ジャック・ニコルソン主演の映画を先に見ました。ホラーの傑作ということですが、主人公が狂気に落ちていく過程がよく分からなくて、自分としてはイマイチな映画でした。
そこで原作を読んでみました。冬期は雪深いために閉鎖されるホテルに管理人として採用された一家の話です。過去の様々な不幸ないきさつの積み重ねにより、霊が宿った幽霊屋敷もの。
霊が管理人一家を次々に恐怖に落としていく過程が描かれ、一家の父親がそのとりことなり、妻と一人息子を殺そうとします。
キングはアメリカン・モダンホラーの第一人者ですが、自分にはもの足りなく感じます。この本もやっと読み終えました。

No.1 7点 mini
(2012/01/06 09:45登録)
* 雪の季節だからね(^_^;) *

コロラド山中にあるそのリゾート・ホテルは冬季は雪に閉ざされ交通が遮断されるので、営業は休止し翌年春の雪融けの季節まで管理人だけが施設保持の為過ごすのだった
不可解な死を遂げた前管理人の後任として新たに管理人として赴任したジャック一家だったが、このホテルなんか変・・

キング・オブ・ホラーことスティーヴン・キング
前回「呪われた町」を読んだ時には、何でキングってこんな評価高いのかと納得できなかったが、今回「シャイニング」を読んで納得、たしかにキングはすげ~作家だ
題名のシャイニング(かがやき)とは一種の霊感能力の事
内容は単なる”幽霊屋敷”ものなんだが、やはり現代に幽霊屋敷を持ち込もうと思えばこういう形に成らざるを得ないよなぁ
この作品が本格だったとしたら典型的な”雪の山荘テーマ”そのもので私の嗜好ではないのだが、これはホラーだから許せる(苦笑)
ホラーの金字塔という一般的評価に違わぬ名作だろう
ただ終盤がほとんどホラーと言うより純然たるスリラー小説と化しているのは読者によって好みが分かれるかも
まぁ、そのスリラー小説の部分も読ませる筆力が有るのだが
映画人だったら思わず映画化したくなろような話だ

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