| ミステリ初心者さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.16点 | 書評数:420件 |
| No.320 | 7点 | 危険な童話 土屋隆夫 |
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(2022/09/06 18:52登録) ネタバレをしております。 個人的には警察が主観の文章の小説が苦手で、読見進めるペースが遅くなってしまうことが多いのですが、この本はそれほど苦もなく読み進められました。登場人物が適度に絞られていて、小説的には犯人が分かり切っており、余計なアリバイの捜査などがカットされているところが良かったです。 作風は極めて本格度がつよい推理小説でした。細かくて数が多いアリバイトリックが主で、それほど大がかりな大トリックではないのですが、考えてもなかなかわからない工夫を凝らしたもので、大変満足しました。 凶器や警察への手紙など、逮捕されることをトリックに組み込んだ犯人はあっぱれでした。 危険な童話というタイトルにもある通り、童話を用いて子供を操り、遠隔操作のようなトリックが印象的でした。警察は子供にも注目していたので、犯人にとっては危ない橋ではありますが、虹の色などで出す順番を指定していたりするところもアイディアを感じました。また、小説内で少しずつ童話が書かれており、それがヒントになっている構成もセンスを感じました(笑) 総じて、細かくて緻密なトリックを味わえる、本格推理小説でした。大トリックやドンデン返しがないものの、それが逆にシブく感じます。より読みやすく、よりドラマティックな感じがある鮎川作品のような(笑)。唯一、好みで無い点を挙げるとすると、犯人に同情してしまう事件の背景や、ラストがやりきれません。執念で犯人を追いつめた木曾刑事も無念でしょうね(涙)。 |
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| No.319 | 6点 | 殺意の集う夜 西澤保彦 |
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(2022/08/30 19:28登録) ネタバレをしております。 西澤保彦さんの作品は、読みやすいものが多いです。本作もかなり読みやすく、かつクローズドサークルなのもあり、読了までにさほど時間がかかりませんでした。 本格推理小説というよりかは、テンポが良すぎるサスペンスの色が濃いです。登場人物全員がいわくあり気であり、なにかしらの嘘があります。そのため、あまり犯人当てを楽しむことはできません。まさに、殺意の集う夜といったところ。ただ、ラストに大きなドンデン返しがありました。 ドンデン返しについて。 私は、登場人物の名前(特に主人公格のマリ)がはっきり表記されてないので、露骨に怪しんでいました。しかし、なぜか性別の錯覚トリックに行きつきませんでした(涙)。これだけ多くの性別の錯覚トリックを用いた本を読んでいるのに…。どうやら私は、男性→女性より、女性→男性のパターンのほうが苦手で当てられないようです。 警察・三諸の視点の智恵殺しの犯人である男が出てこないのも疑うべきでしたね。あとは、登場人物の名前に漢数字が使われていますが、六が出てこないのもヒントなのでしょうね。 総じて、読みやすくテンポが良く、衝撃の展開でサスペンスチックな良い作品でした。ただ、推理小説としては、性別の錯覚からのドンデン返しは非常によく見るトリックであり、既視感がつよいです。もうすこし、個性が欲しかったところです。 |
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| No.318 | 5点 | 死者はよみがえる ジョン・ディクスン・カー |
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(2022/08/22 22:47登録) ネタバレをしております。 新訳版を買いました。新訳にもかかわらず、やや読みづらさを感じてしまいました(笑)。訳が悪いというよりかは、場面の移り変わりが急だったり、本の始まりの時点ですでに2つの殺人が終わっているためかもしれません。 推理小説部分について。 かなり意外な犯人でした(笑)。これは当てようがないと思います(笑)。フェアかアンフェアか言われれば…まあアンフェアなのかもしれませんね(笑)。 被害者の首にタオルが巻かれていたり、ジェニーが特殊な方法で絞殺(?)されているのを見て、逆に両手が使えない人間が犯人ではないかと一瞬だけおもいました…。が、すぐに犯人候補から外してしまいました。ロドニー殺しの際に使ったベッドのくぼみは、ヒントがありましたかね…? また、非常階段からリネン室の窓へ行けるなど、思いもよりませんでした。かなり大きなミスリードであり、私もまた7階に居た人々の中に犯人がいると錯覚しました。たしかに、リネン室には誰も入られませんから、犯人が入ったとするならば外から…なのでしょうが、あの図から外から入られるなどとても想像できませんでした(笑)。これもなにかヒントがあったらよいのですが、ありましたかね? 極めつけは、留置所に隠し抜け道がある点(笑)。ここの部分はカーも困ったでしょうね(笑)。強引さを感じました。 既読の方に少しヒントをもらいつつ読みなおしましたが、ロドニー殺しにおけるベロウズの犯人の証言から、「証言の犯人の容姿が警察に似ているな?」と思い、警察官と勘違いしたのではというところまで考えました。画像検索すると、なるほどベロウズの証言と警察の容姿が似ております。ただ、登場人物に載っている警察はハドリー警視だけですし、到底犯人とは思えない…。私の思考はそこで止まりました(笑)。 総じて、読者が犯人を当てるにはかなり難しい…アンフェアに近い小説でした。しかし、カーらしいドンデン返しや意外な犯人が存分に楽しめる作品でもあります。私の好みは本格推理小説ですので、5点としておきましたが、もっと高い点でも納得できる本です。 |
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| No.317 | 6点 | 図書館の死体 ジェフ・アボット |
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(2022/07/29 18:41登録) ネタバレをしています。 裏表紙アガサ賞受賞作品と書いてありましたが、なんとなくプロットが似ている気がしなくもなかったです。事件を追うごとに、登場人物たちに隠された秘密が暴かれていって…最後に意外な動機と犯人があきらかになる系です。 緻密なロジックによる犯人当てや、アリバイトリック的なものはありませんでしたが、2時間ドラマのようなテンポの良さを感じました。非常に読みやすかったです。 自身の指紋しかついていない凶器など、不利な状況に追い込まれる主人公が素人探偵になって事件を推理することや、恋愛要素、姉や甥や本当の父との家族愛など、どこかD・M・ディヴァインを思わせるような要素もありました(他の方も書かれていることですが(笑)) 推理小説的要素というと、本格推理小説としてみた場合、やや薄味でした。先にも書いた通り、ヒントが少ないため犯人当てができないことや、アリバイトリックを解く楽しさはありませんでした。あくまで、動機当てや意外な犯人を楽しむ作品でした。 総じて、さまざまな人間模様、感動的なラストなど、物語的な厚みを感じる作品でした。ただ、本格好きの私からすると、もう少し、読者に解ける問題を提示するような作品がみたかったです(笑)。 |
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| No.316 | 5点 | 「ナイルの甲虫」殺人事件 吉村達也 |
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(2022/07/20 00:36登録) ネタバレをしております。 タイトルにワンナイトミステリーとある通り、中編ぐらいのページ数です。すぐに本題に入るし、エジプトの旅行記もしつこくなく、大変読みやすく仕上がっております。 推理小説的な「どうやって殺したか?」についての問題は、ちょっと推理が難しいです。デパートで売っているマジックグッツ的でした。 それよりも、伏線が張ってあるドンデン返しのほうが楽しめました。 中編程度のボリュームなので、そこまで凝ったトリックや犯人当てはさすがに無理ですが、読みやすくドンデン返しが楽しめる本格としては良い作品でした。 |
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| No.315 | 6点 | 偽のデュー警部 ピーター・ラヴゼイ |
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(2022/07/14 19:30登録) ネタバレをしております。 非常に特殊な状況のミステリでした。自分の妻を殺そうとした犯人が警部と間違えられ、別事件での名探偵役になってしまうのは面白いですね。 ただ、船に乗る前までがやや退屈な展開でした。船に乗ってからはそれほど苦も無く読了できました。 本格推理小説としてはやや薄味というか、犯人当てやアリバイトリックなどはありません。ドンデン返しのある、広義でのミステリーといった感じです。 ラストがそこそこ大団円で終わるのは爽やかでいいですね(?)。 私はリディア殺害シーンがない、ぼやかされて書かれているので、絶対生きていると思っていました。なにかの叙述トリックになっていると思ったのですが、どちらかというとドンデン返しのための要素だったようですね(笑)。なるほど、船に乗っていなかった(すぐに降りてしまった)とは思いつきませんでした。 総じて、海外翻訳特有の読みづらさは前半以外ではありませんし、明るくて読みやすい本だと思いました。本格度がもう少し高ければもっと好みなのですが、楽しめたので6点としました。 |
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| No.314 | 6点 | あした天気にしておくれ 岡嶋二人 |
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(2022/07/01 19:49登録) ネタバレをしております。 私は競馬については無知だったのですが、それでも大丈夫でした(笑)。非常に読みやすい文でテンポもよく、一気に読み終えられました。 始めは倒叙形式のような感じで、主人公達が狂言誘拐を企てますが、別の犯人が誘拐の乗っ取りをして…といった流れです。競馬という特殊な設定を活かした意外な方法での身代金奪取と、意外な犯人が楽しめます。 私は、セシアが怪我をする前にもう入れ替わっているかもしれない…とうっすら頭によぎったぐらいで、後のことはわかりませんでした。いろいろな偶然も絡みますし、推理小説としては読者が全て推理できないとは思います。 |
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| No.313 | 7点 | ジャンピング・ジェニイ アントニイ・バークリー |
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(2022/06/24 19:19登録) ネタバレをしています。 アントニイ・バークリーの本はまだ3冊目なのですが、明るい作風にユニークな設定が面白いですね。本作も非常に面白い設定でした。 探偵が犯人を庇って証拠を隠蔽したり、ミスが発覚して自分の首を絞めたり、たの推理小説では見られないような設定でした。もちろん、それとは別に、犯人がだれであるか?という検討も楽しむことができます。 また、海外翻訳物にしては非常に読みやすかったです! 最初のパーティーのシーンでは、多い登場人物に扮装もあり、読みづらさを感じました。しかし、ロジャーが椅子についての発見をしてからはかなり読みやすくなり、そこからは一気に読み終えることができました。 推理小説的要素について。 推理小説的には、やや薄味というか、犯人当てにはなってはいなかったです。私は、イーナが梁に登れるシーンから、自殺だと決め込んでいました(笑)。結末はあまり予想できるものではないですね。 ただ、ガチガチの本格推理小説としてではなく、広義のミステリーとして読んだ場合、大変楽しむことができました。 総じて、単純に読みやすく面白い本でした(笑)。イーナは自己顕示欲が強くて面倒な女性だったにしても、ややかわいそうな気がしますが(涙)。 |
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| No.312 | 6点 | 卍の殺人 今邑彩 |
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(2022/06/14 20:57登録) ネタバレをしています。 同作者の他作品も読んだことがありますが、それと同様に非常に読みやすかったです。全くストレスなく読み終えることができました。 さらに、ギスギスしている(?)旧家の館ものであり、連続殺人があり、クローズドサークルではないものの一つの館で話が完結します。これらの要素により、ほぼ一瞬とも思えるほど早く読み終えられました。 推理小説的要素について。 大きな事件は2度。殺人事件は3度起こります。 私は館の地図を見た途端、嫌な予感がしました。そして、亮子が付き合って3カ月であること、宵子が亮子を連れて醸造所を解説して回ったシーンなどを見て、ある程度は真相と同じものを予想しました(笑)。最初の事件が起こったのを見てからはもう確信しました(笑)。やや、予想されやすいというのは欠点かもしれません。ただ、それはフェアさの現われでもあると思います。 不満点はあまりないのですが、亮子が良い人過ぎましたね。ラストがちょっと淡泊に終わります。亮子と宵子の対決、匠の葛藤を描いても面白かったかもしれません(笑)。 総じて、読みやすい文と、館ものらしいダイナミックなトリックが持ち味の作品です。作者あとがきにかかれたような「酷評された」のは信じられません。本格推理小説への愛も感じられる一冊でした。 佳作と呼ぶにはトリックがパンチ不足感が否めませんが、楽しめました。 |
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| No.311 | 6点 | 扼殺のロンド 小島正樹 |
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(2022/06/09 19:47登録) ネタバレをしております。 文章が非常に読みやすく、あまり話が脱線しないため、すいすい読むことができました。また、キャラクターがややコピペ感が否めないものの、あまり癖もなく、読書をじゃましないいい塩梅でした。 推理小説的要素といえば、サービス精神旺盛な密室3連発です。また、随所にミスリードがちりばめられており、全力で読者を欺いてきます。プロローグからしてそうですね。ある程度推理小説を読んだ読者なら、推理小説のプロローグが全く信用のならない紛らわしいものというのは周知のことでしょうが(笑)。 密室はというと、これはやや偶然の要素や、共犯による工作、犯人の失敗などでできたものであり、読者が論理的に真相へたどり着くのは難しいものでした。しかし、腹が割かれた死体と高山病の死体の二重密室はインパクトが強く惹きつけられます。 手を切る→手を縫合するといった、狂気的なアリバイ作りもよかったですね。 総じて、叙述トリックなどがあまり用いていない、正道?のドンデン返しが楽しめる作品です。 文庫版あとがきに島田荘司の名前が挙がっていましたが、読者が論理的に当てられない作品というのが共通しておりますね。島田作品のほうがもっとインパクト重視なのに対し、本作のほうがやや本格チックな分、インパクトの面では劣っているかもしれません。しかし、馬鹿ミス度は島田作品のほうが上でしょうかね(笑) |
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| No.310 | 6点 | 時間島 椙本孝思 |
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(2022/05/31 18:44登録) ネタバレをしています。 読みやすそうなクローズドサークル系をチョイスして買いました(笑)。 表紙がスーツ姿の志々雄真実のような漫画っぽい絵なので、ライトノベルのような雰囲気です。しかし、特にライトノベルというわけでもなく、標準的なよくあるクローズドサークル系のミステリとして読むことができます。 それでいて文は読みやすく、またSF要素が入っておりますがそれほどしつこくなく、説明なども必要最低限であり、キャラクターの書き分けもうまくて、読了まで時間がかかりませんでした。 クローズドサークル系のミステリだけあって、ラストはドンデン返しが用意されています。ミステリとしても満足な出来だと思いました。 私は、ミイラ男が記憶喪失なのをみて、犯人はまゆ=ミイラ男か?と思いましたが(しかしアリバイはある(笑))、なんと犯人らしい犯人はクローズドサークル内にいないという、ミステリ好きの特性を逆手に取ったようなアンチミステリ的トラップにまんまと引っかかりました(笑) ミイラ男のメールでの指示が100%成功するとは限りませんが、このアイディアは面白く感じました。 初めて5年後皆にメールを送ったまゆは、何を考えて送ったのでしょうね? 本作の物語上では、アイドルとして成功した現在をの状態を保つために5年前へメールを送ったことになっております。それは、事件の際に佐倉からメールの存在を明らかにされたから出た行動です。佐倉が死ぬシーンでは、すでの本作の物語上ですべての登場人物にメールを出していた(たぶん)ことがわかります。本作の物語ではすでに何周かした世界だと思いますが、最初に送ったのはどういった状況だったのでしょうか? 本当に怪我をして、奇跡的に助かって、事件を止めたいとしたら、全員を殺害させるようにコントロールするようなメールは出さないと思いますし…。 |
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| No.309 | 6点 | 黒龍荘の惨劇 岡田秀文 |
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(2022/05/25 19:01登録) ネタバレをしております。 明治時代が舞台の推理小説です。伊藤博文など、実在の人物も多少出てきて、すこし壮大な話もありますが、基本的には横溝正史の金田一シリーズのような楽しみ方のできる作品でした。 黒龍荘という、かなり大きな館が舞台であり、クローズドサークルかは微妙ですが、ほぼ館で話が完結するので読みやすくテンポもよかったです。 また、キャラクターに癖がなく、最近の推理小説に登場しがちな漫画やライトノベルのようなキャラクターは出てきません。ただ、逆に言うとあまりキャラ立ちしていない人物が多く、特徴的な名前の探偵である月輪も凡人のように見えます。しいて言えば、偉そうな態度をとってもいざとなるとポンコツ気味な谷越警視、たおやかな女性かと思ったら緊急時には江戸っ子の啖呵をきって棒を使う蘭子がよいキャラクターでした。 推理小説部分について。 非常に大がかりな大トリックが楽しめます。ただ、2014年発売にしてはすこし既視感があり、個人的に大きな驚きは感じませんでした。 また、大トリックをするとやはり無理がでてきます。不可能犯罪も、ここまで多くの共犯者がいてしまっては、謎でも何でもありませんね(笑)。 総じて、佳作にはあと一歩足りない作品ですが、文は読みやすく雰囲気はよかったです。本格度も高く、読んで損はありませんでした。 |
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| No.308 | 5点 | 九尾の猫 エラリイ・クイーン |
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(2022/05/13 19:12登録) ネタバレをしております。 正直に言うと、かなり相性の悪い本でした。 まず、非常に退屈で読みづらい文章でした。興味がそそられず、ページが進むのも遅かったです。500ページ近くありますが、250ページぐらいに収めてほしいぐらいです(笑)。 主人公エラリー・クイーンがあることで自嘲的というか、自己卑下がしつこくて、煩わしかったです(涙)。 推理小説的要素は、もっとガッカリなものでした。 読みづらい文章を我慢して読んでいて、ラストのどんでん返しがコレ…? 国名シリーズのようなロジカルな要素もなく、不可能犯罪もなく、意外な犯人がいるかと思えばミステリ好き100人中98人が予想するような犯人…。この作品の良いところがわかりません。アガサ・クリスティーならミスリードに使うような犯人で、さらにどんでん返しがあるでしょうね(笑)。 エラリー・クイーンの作品ということで期待値が上がりすぎてしまったようです。ただ、最後のエラリーを激励?する博士のセリフは良かったです。 |
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| No.307 | 6点 | 密室の鎮魂歌 岸田るり子 |
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(2022/04/29 19:26登録) ネタバレをしております。 タイトルにある通り、密室ものです。3つの密室が登場し、豪華(?)です。 物語は、基本的には麻美が主人公の文章で進みます。ちょっと自己肯定感の少なめなキャラクターで、いろいろな苦悩が書かれており、すこし読みづらさも感じました。麻美の心情が良く書かれているかと思いきや、高木のや一条の死体に対するリアクションは淡泊な印象をもちました(私だけかもしれませんが)。 また、真相が明かされると、殺人者たちの汚い部分が細かく書かれております(笑)。 推理小説的な要素について。 密室が3つ。あとは、意外な犯人とその真相。5年前の事件と、現在の2つの事件では全員犯人が違うという複雑な物語でした。 密室について。 3つの密室がありましたが、最初の1つは拍子抜けするというか、あまりにも古典的というか、古典的過ぎてわからなかったぐらいです(笑)。 2つ目の密室が最も凝っていて、私もわからなかったですし、面白くも感じました。密室の外から死体を動かすのは前例がありますが、キャスター付きの椅子を利用するのは盲点でした。ただ、小説のように成功するかはちょっと疑問ですね。 3つ目の密室は、頭パープリンな私には理解できませんでした(笑)。どうやったんですかコレ? 解説が無いようなのですが? 総じて、ストーリーや殺人者が殺人を犯すに至るまでを細かく書かれていて、かつその伏線もよく張られていたと思います。タイトルに密室とつけるにはやや力不足な密室という感じは否めませんが、邪道ではない密室なので好感が持てました。 |
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| No.306 | 7点 | 魍魎の匣 京極夏彦 |
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(2022/04/23 00:38登録) ネタバレをしております。 純粋な本格推理小説というよりかは、広義でのミステリーです。ホラーとして読んだ方が楽しめると思います。 戦後の雰囲気、妖怪や宗教や占い霊能力の話、カナコ殺人未遂事件にバラバラ殺人事件、カナコ消失、木場の恋(?)、久保の狂気…長さに見合った、濃厚な作品でした。京極堂のいう通り、推理小説的には一本の事件でもなく一人の犯人でもありません。しかし、それぞれの要素がうまく物語に絡んでおり、よくまとまった印象なのは素晴らしいです。 また、個人的には、姑獲鳥の夏にくらべて読み易さが向上した印象があります。これは原因がよくわかりませんが、姑獲鳥の夏は鬱ぎみの関口による主観文章が大半であり、すこし暗かったように思えましたが、それに対し今作は鳥口や榎木津など明るくて面白いキャラクターの出番も多かったせいかもしれません。 推理小説的要素について。 大きなトリックや論理的犯人当てはありません。カナコの消失トリックも、さんざん伏線があったので、発想自体は気づきました。ただ、あそこまで大幅に取り除かれていたとはまったく予想できませんでしたが…(涙)。 消失トリック自体よりも、美馬坂のしていたこと自体がおぞましく感じられ(そう感じること自体が間違っているかもしれませんが)、ホラーの感じが強いです。久保の狂気や、手術をして箱に入ったときの主観文章は、どこか乱歩の有名作品と同じような気持ち悪さを感じてしまいました。カナコのこともあり、後味が悪い作品ではありますね(涙)。 そういえば、雨宮はどうなったのでしょうね…? 総じて、推理小説的要素に関しては薄いですが、ホラーとしてみた場合は厚みがある作品でした。トリック自体よりも、それを利用した物語の組み立てが素晴らしく、姑獲鳥の夏よりもさらにオリジナリティも感じました。 ホラー作品は推理小説的技術の評価がしづらいので、話の面白さや個性で点を上下させようと思いますが、なかなか良かったので7点としました。 |
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| No.305 | 6点 | あなたは嘘を見抜けない 菅原和也 |
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(2022/04/02 18:42登録) ネタバレをしております。 二人の視点を交互に繰り返して物語が進みます。孤島の廃墟に出かけた恋人を失って、恋人は本当に事故で亡くなったのか、殺されたのかを調べる青年高辻。一方、映画を製作するために孤島の廃墟に出かけたグループの一人の青年亮太です。 恋人を失った青年は、突発的に殺人してしまう描写があります。ちょっと衝撃的ですが、それ以降はクローズドサークルも相まって、非常に読みやすい本です。読了まですぐでした。 推理小説的部分について。 孤島に出かけたメンバーがハンドルネームで呼び合います。こうなると、やはり、高辻が追う孤島の事件と亮太が体験している事件は別物と考えますよね(笑)。ただ、あまり深く考えずに読んだせいで、私は本のトリックである"高辻から見て過去の事件と思いきや、未来の事件"という時間の認識をずらす叙述トリック的仕掛けを見破れませんでした。わたしは嘘を見抜くべきだった(笑)。よくよく考えれば、ヒントも結構あったかと思います。 また、それとは別に、亮太が体験する密室殺人事件が起こります。少なくとも、私は前例を見たことがない密室だったため、この点では満足しました! ただ、死体に痕跡は残らないものですかね…? そうでなくても、やや知識がいる謎となっているのはマイナスですね。ミキが○っさくと呟いたのは、吉作落としですね! 蔦かなにかをロープにして崖を降りるのですが、蔦の収縮がおこってロープが短くなり、崖に取り残れる恐怖の話ですね…(涙)。 総じて、テンポがよく読みやすい本であり、最近よくある叙述トリック1本の小説とは違って密室殺人も用意してある良い本でした。ただ、叙述トリックも密室の謎も、佳作にはもうひと踏ん張り欲しかったところでした(笑)。 |
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| No.304 | 7点 | 妖魔の森の家 ジョン・ディクスン・カー |
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(2022/03/31 23:22登録) ネタバレをしております。 ・妖魔の森の家 短めですが、推理小説に必要なものがつまっており、大変質が高かったです。 カーらしいミスリードとどんでん返しが楽しめますね。犯人の行動がやや手際が良すぎたり、本当にばれずにできるのか?という疑問はありますが、それでも良い作品でした。 ラストのHM卿のセリフは、すこしだけホラー感もありましたね。 ・軽率だった野盗 殺人現場が不可解で面白いです。犯人にとって不幸な偶然が重なっているものの、合理的な解決だとおもいました。 ・ある密室 結局、犯人の意図しない密室であり、やや知識が必要であり、被害者が嘘を言ってしまっている(勘違いだが)のがマイナスでした。 ・赤いカツラが手がかり これも非常に不可解な状況で、狂気的な感じもありました。 偶然に偶然が重なっており、推理は難しいですが、意外な犯人もあって面白かったです。 ・第三の銃弾 全推理小説を見ても、これほど不可解な状況はめったにみられません(笑)。しかし、不可解であればあるほど、やはり解決に無理が生じますね。 容疑者の男の証言が嘘であれば、なるほど謎は解けますが、読者にとっては謎を謎のままにしてほしかったところですね(笑)。 共犯者の存在も少し残念でした。 総じて、全体的に、冒頭から面白い不可解な状況を楽しめる中短編集でした。カーらしく、その解決は偶然や証言者の嘘などが多く、推理は難しいものになりますが、短編ならばそれほどこだわらなくてもよいかな?と思いました。 |
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| No.303 | 6点 | ドッペルゲンガー宮「あかずの扉」研究会流氷館へ 霧舎巧 |
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(2022/03/14 00:41登録) ネタバレをしています。また、アガサ・クリスティーのそして誰もいなくなったのネタも割れてしまう可能性があります。 非常に凝った作品です。 あかずの扉メンバーはキャラクターが立っていて、清涼感?があります。そのメンバーが事件に巻き込まれることになります。あかずの扉メンバーの一人がクローズドサークルと化した館に行くことになりますが、ほとんどが主人公二本松カケルの視点で書かれているので、クローズドサークル内の情報が電話でのやり取りとクローズドサークルでの事件が起こっている館とそっくりな館になります(主人公の方でも死体があるので、無関係ではないが)。 また、かなりの文量が犯人の犯行に至るまでの説明に費やされており、犯人の背景をよく知りたい、こだわりたい人には最適です。 メンバーに何かしらの恋愛要素があり、それでいて爽やかな印象があるのもよかったです。 推理小説の部分について。 クローズドサークル内の文章が乏しく、クローズドサークルならではのサスペンス感は楽しめません。しかし、テンポはそれほど悪くなく、非常に丁寧に書かれていたため、個人的には悪くなかったです。 そして誰もいなくなったを読んだ読者に向けた(?)であろうミスリードもよかったです。 大掛かりな館の仕掛けがありましたが、それもうまくストーリーに落とし込んでいると思います。 一方で、ちりばめられた謎の多さと、その解決の細かさから、非常に難易度が高くなってしまっています。後動のような推理ができた読者は何人いたのでしょうか(私が頭パープリンということもありますが)。犯人当てとして読んだならば、どこまで読んだらいいかわからず、やはり読者への挑戦状が欲しいところでした。 総じて、読みやすい文章と本格愛を感じる、佳作な推理小説でした。細かい謎が多すぎて、私は解こうと思えないような戦意喪失感を味わってしまいましたが、頭の良い人ならば合うかもしれません。 |
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| No.302 | 6点 | 忌名の如き贄るもの 三津田信三 |
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(2022/02/24 18:42登録) ネタバレをしています。 待ちに待った刀城言耶シリーズ新作長編です! 相変わらず戦後の時代と民俗学の合わさった良い雰囲気です。ただ、今回はいろいろな難しい用語が多く、刀城言耶シリーズにしては意外なほどページが進まず、読了まですこし時間がかかりました。特に、場所を表す言葉がおおく、位置関係を頭の中で想像するのが大変でした。そのため、地図が欲しかったところです。 推理小説的要素について。 解決編前まで読み、既読の方からヒントをもらいながらあれこれ妄想しつつ推理しました。ヒントがなければとても真相にたどり着けないような、ものすごい数の伏線とミスリードでしたね(笑)。それを存分に活かした意外な犯人は、シリーズ屈指とも言えます。 今作一番の良い点といえば、犯人のその意外な動機です。なぜ市糸郎はころされたのか? 葬式がしたかったからだとは、なかなかに狂っていますね。それを推理するためには、尼耳家が村八分にあっていることを理解しなければならないのですが、ここには読者・探偵共に与えられていない情報が隠されていましたね。すこしだけ叙述トリックのような香りのする仕掛けですね。 村八分・葬式といった、本シリーズと相性の良い要素を、動機に絡めたところが、本作で一番気に入っております。 以下、難癖部分。 トリックは遠隔殺人。ヒントは出ておりましたが、尼耳家の人間がほぼ全員アリバイがないため、推理は難しいものになるでしょう(笑)。このトリック、遠隔殺人系で超有名作品にほぼ同様のものがあり、オリジナリティーという点では評価できません。凶器の処理について滝を利用するアイディアは見事でしたが、有名作品には他にも遠隔殺人があり厚みでは全く敵っていません。 また、これは本シリーズでもお決まりのパターンですが、証言者がかなり信頼できません。今回は視力が悪いとのことなので、ある程度は予想した居ましたが。証言者がミスリードにしかならないのは、カーも一緒ですね(笑)。 総じて。 アリバイトリックや論理的な犯人当てを期待すると、すこし期待外れな感じがあります。刀城言耶シリーズは多重解決が売りの一つでもありますので、論理的な犯人当てができないことを許容するとしても、犯人のトリックが小粒すぎるのはいただけません。 しかし、ガチガチの本格推理小説ではない、一冊の本としてみるならば、非常に面白い本であることは確かです。私はアリバイトリックと犯人当てが好きなので点数は低めですが、良い作品なことは確かです。 |
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| No.301 | 7点 | 双蛇密室 早坂吝 |
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(2022/02/11 23:16登録) ネタバレをしております。 明るい作風、読みやすさ、高い本格度が楽しめるシリーズです。今回もまたそうでした。かなり速く読了しました。また、シリーズすべてに言えることですが、一見ギャグやエロなど不要に思える要素も、最終的に推理小説として組み込まれており、技量が高いと思います。 タイトルの通り、テーマは蛇と密室。2つの大きな密室事件が起こります。 1つはビルからビルへ飛ぶトビヘビを使ったアクロバティックな密室です。が、これはあまり好みではありません(笑)。犯人が狙い通りに犯行を行った密室であり、よりフェアではあるのですが、ややバカミスな香りもします(笑)。 もう1つ、足跡とプレハブ小屋の二重の密室がメインだと思います。もっと詳しく書くと、黒太郎はいかにして死んだのか?という問題がメインです。そんな可能性があったとは…全く予想していない展開に度肝を抜かれました。とはいえ、ヒントはちりばめられていました。推理ではなくメタ的な考えではありますが、この作者の書く小説に妊婦・アナフィラキシーショックが登場するならば、もっとよく考えるべきでした…。唯一、難癖をつけるならば、偶然の要素が非常に多く、犯人の狙い通りではなかった密室殺人だったことですね(それもヒントがありますが)。 総じて、今回も読みやすく、また思考の盲点を突くようなどんでん返しが見られ、満足しました。途中、多重解決のような、らいちの偽解決がありますが、ちゃんとその否定を論理的にできる点はポイントが高いです。 |
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