時間島 |
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作家 | 椙本孝思 |
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出版日 | 2009年07月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | メルカトル | |
(2023/03/03 22:44登録) 「お前たちは島から生きて出られない」―廃墟の島『矢郷島』でのロケ中、突如送られてきた動画メール。『5年後の未来』にいるという『ミイラ男』が、ロケ参加者9名が皆殺しにされると予言する。やがてその言葉通り、出演者、スタッフが次々と殺されていく。誰が殺しているのか。なぜ殺されるのか。一体この島で何が起きているのか。息つく暇もない展開、予想だにしない衝撃の結末!異色ホラーミステリー。 『BOOK』データベースより。 冒頭これは期待できると思いました。時間島と呼ばれる所以が語られ、真面なミステリではないのかも知れない、しかしそれも仕掛けの一部だろうと受け取りました。それが裏目に出ましたね、ガチガチの孤島ミステリかと思わせておいて、実はサスペンスじゃん。しかも、最後には現実と乖離した独特の世界観を強引に見せられて、ちょっと期待を裏切られた感じでしたね。 ただミイラ男の正体には驚かされました。しかしそれだけ。私の頭が固いのか、単なる説明不足なのか、どうにも納得できないしこりの様なものが残りました。そしてご都合主義が酷くて、そんなに上手くいくものかという疑問やわだかまりを覚えました。後味スッキリとは真逆の結果に、出来れば読みたくなかったと大袈裟ですが思いました。 |
No.2 | 6点 | ミステリ初心者 | |
(2022/05/31 18:44登録) ネタバレをしています。 読みやすそうなクローズドサークル系をチョイスして買いました(笑)。 表紙がスーツ姿の志々雄真実のような漫画っぽい絵なので、ライトノベルのような雰囲気です。しかし、特にライトノベルというわけでもなく、標準的なよくあるクローズドサークル系のミステリとして読むことができます。 それでいて文は読みやすく、またSF要素が入っておりますがそれほどしつこくなく、説明なども必要最低限であり、キャラクターの書き分けもうまくて、読了まで時間がかかりませんでした。 クローズドサークル系のミステリだけあって、ラストはドンデン返しが用意されています。ミステリとしても満足な出来だと思いました。 私は、ミイラ男が記憶喪失なのをみて、犯人はまゆ=ミイラ男か?と思いましたが(しかしアリバイはある(笑))、なんと犯人らしい犯人はクローズドサークル内にいないという、ミステリ好きの特性を逆手に取ったようなアンチミステリ的トラップにまんまと引っかかりました(笑) ミイラ男のメールでの指示が100%成功するとは限りませんが、このアイディアは面白く感じました。 初めて5年後皆にメールを送ったまゆは、何を考えて送ったのでしょうね? 本作の物語上では、アイドルとして成功した現在をの状態を保つために5年前へメールを送ったことになっております。それは、事件の際に佐倉からメールの存在を明らかにされたから出た行動です。佐倉が死ぬシーンでは、すでの本作の物語上ですべての登場人物にメールを出していた(たぶん)ことがわかります。本作の物語ではすでに何周かした世界だと思いますが、最初に送ったのはどういった状況だったのでしょうか? 本当に怪我をして、奇跡的に助かって、事件を止めたいとしたら、全員を殺害させるようにコントロールするようなメールは出さないと思いますし…。 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2021/05/17 15:24登録) (ネタバレなし) その年の8月3日。深夜枠の低予算番組『オススメ! 廃墟探訪!』のロケ撮影のため、出演者とスタッフ総勢9人は「浦島太郎」風の逸話が残る無人の島「矢郷島」に到着した。だがそこで大学生でバイトADの佐倉準は、自分の携帯に奇妙な動画メールを受け取る。それは「5年後の未来」に存在すると称する全身包帯の怪人からだった。正体を語らない怪人は、自分は5年前の9人のロケ隊の一人だったが当時の記憶が欠損、しかしその島で(佐倉視点で)今から8人の人間が殺されるはずだ、と語る。怪人の請願は、佐倉自身がその殺人者かもしれない可能性を承知で、惨劇を食い止めてほしいというものだった。やがて未来からの通信ということを実証するように、怪人の予言通りに地震が発生。そして犠牲者が次々と生じてゆく。 文庫版で読了。特殊設定のもとに展開する『そして誰もいなくなった』パターンのクローズド・サークルもので、フーダニット。文庫版の裏表紙には「異色ホラーミステリー」と謳われている。 2時間ほどで読めてリーダビリティ的には最高の作品で、登場人物も頭数の少ない分、明確に書きわけられている。 安い予算で番組を作る制作側の事情、いつ発注を切られるかおびえる外注スタッフの苦労、それなりに人気俳優になったため出演料のランクがあがってかえって仕事がとりにくくなったベテラン俳優などといった、生々しいTV業界のネタもいっぱい。 特殊設定部分の叙述にはやや大ざっぱなところを感じたし、何より真犯人の思惑については、いろいろ乱暴だなあとかツッコミたくもなるが、それでもこの作品は最後に明かされる真相の意外性がなかなか。作者の着想を得点的に評価するなら、結構なものだとは思う(部分的に察しがつく人は少なくないと思うが、たぶん細部まで見通すのは難しい?)。評者などは、特に劇中のとある人物の行動は、ミスディレクションにまんま引っかかった。 最後に語られる動機に関しては、かなり(中略)という思いも湧くが、こういう作品ならアリというか、むしろこういうものでないとこの物語を支えられないだろう。 コミカライズもされてるようなので、機会があったら覗いてみようかとも思う。 |