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ミステリの祭典

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五覚堂の殺人~Burning Ship~
堂シリーズ

作家 周木律
出版日2014年02月
平均点6.14点
書評数7人

No.7 6点 まさむね
(2024/03/16 23:15登録)
 堂シリーズ第三弾。今回も「館×数学」ミステリであります。
 前作を読んでから随分と月日が経ってしまったので、人物設定があやふやなまま読み進める形になったのですが、やっぱり某作者の某シリーズが思い浮かんじゃいますよねぇ。まぁいいけど。
 密室のうち一つは、本当にできるのかという意味で、驚きました。でも、これは一般的な読者には分からないと思いますね。また、とある登場人物の特性については、「なぜ明言しない。なぜぼかす。何を狙っているのか?」と疑心暗鬼に。最終的には「そのままかい!」と、むしろ清々しく突っ込めます。
 数学を介してはいるものの、全体としてはオーソドックスな館ものという印象。時間軸の設定等も面白かったかな。

No.6 6点 E-BANKER
(2023/07/08 15:57登録)
「眼球堂」「双孔堂」に続く三つ目の「堂」は「五覚堂」。
そう、「五」というのが数学的には結構な意味がある(らしい)・・・多分。
2014年の発表。

~放浪の数学者・十和田只人は、超越者・善知鳥神に導かれ、雪の残る東北山中の館‐「五覚堂」へと足を運んだ。そこで神に見せられた記録媒体には、ごく最近、五覚堂で起きたと思われる、哲学者を父親に持つ一族の遺産相続に纏わる連続密室殺人事件の一部始終が! だが、五覚堂は事件の痕跡が拭い去られている・・・。消失した事件の「解」とは?~

うーmm。見てくれはともかく、ミステリーの骨格は割と古いタイプのそれに思えた。
今回の謎は大きく分けて次の三つかな。
一つ目はやはり「密室」の謎。今回は2種類。1つ目のトリックはひと昔前の推理クイズレベルのもの。スポンジという物証が出てきた時点でほぼ察しがつくのではないか。
2つ目の密室が問題。これはある意味たまげた。この材質って本当にこんなふうになるのか? で、それを引き起こす仕掛けには思わずニヤリ。五覚堂の平面図をよーく見れば・・・ねえ
二番目の謎は、「五覚堂」そのものの謎。ただ、この真相はどう考えても、二階堂の「人狼城」からのインスパイアだろう。そうとしか見えなかった。時間の欺瞞なんかはもう少し面白くできたのではないかとは思ったが・・・
三番目が「動機」。これが先ほど「古いタイプ」と感じた大きな理由かもしれない。
数学的衒学をアチコチに散りばめて前衛ミステリーという外観をしているのに、動機が過去の因縁なんて・・・

ということで、門外漢には意味不明な数学的なアレコレが一見高尚で取っ付きにくい雰囲気を醸し出しているものの、それさえ取っ払えばごく普通の(?)本格ミステリーである。
十和田のキャラにもだいぶ慣れてきたので、なおそのような評価になるのかもしれない。
さて、次はどんな「堂」が待ち受けているのかな?
(ある登場人物に仕掛けられた、いわゆる「叙述トリック」なのだが、フーダニット上の効果が多少あるのは分かるけど、そこまでもったいつけるようなトリックではないと思うが・・・)

No.5 6点 nukkam
(2022/09/29 07:57登録)
(ネタバレなしです) 2014年発表の堂シリーズ第3作の本格派推理小説です。莫大な財産を巡る不条理な遺言書に翻弄される一族という横溝正史の「犬神家の一族」(1950年)を連想させる設定とこのシリーズならではの風変わりな建物を舞台にした連続殺人事件が特徴です。いくら遺言書の指示があるとはいえ殺人事件が起きても警察に連絡しないというのは不自然で(連絡すると遺産をもらえない)、裁判を起こしたらその指示は無効にできるのではという気がしないでもありませんが、まあそれではプロットが成立しなくなるので目をつぶりましょう(笑)。十和田只人、宮司司、宮司百合子が分担で謎解きに貢献するという設定もなかなか効果的だと思います。最終章の22年前の事件についてのエピソードは中途半端に終わらせていて蛇足のような気がしましたが。

No.4 6点 ミステリ初心者
(2022/01/14 01:27登録)
ネタバレをしています。

 変人っぽい数学者の十和田、十和田に連続殺人事件の問題を提供する(?)神、十和田に振り回されがちな警察宮司、その妹百合子と、前作までにメインキャラクターがそろった感じがあります。
 前作に比べ、十和田のウザい変人感がやや薄まった印象があり、さらに読みやすく読了までに時間がかかりませんでした。
 シリーズを通して、館に仕掛けがあり、ダイナミックな密室トリックが楽しめます! さらに今回は連続殺人であり、密室が2つあり、前作よりもさらにボリュームが上がっております。
 また、密室の仕掛けが明かされた後、それを条件に組み込んだ端正な犯人当てがあったのはよかったです。私は盲目の登場人物がいることを全く予想できませんでしたが、仮にそれが推理できなくても犯人にたどり着き得るという点が素晴らしいですね。

 難癖点。
 登場人物があっさり死んでしまい、クローズドサークルながらあまり緊張感はありませんでした。途中で十和田と神がビデオを見て考察するページが多かったため、事件の渦中にいる人物の心情を書くページが削られたためだと思います。読みやすさとテンポはよかったですが、ここだけ残念です。
 スポンジを使った密室や、館自体が大きく動く仕掛けの密室は、全く推理できませんでした。ただ、あれは本当にうまくいくのでしょうか? また、うまくいったとしても、それを推理するのは、知識がいるのではないでしょうか(私が頭パープリンなだけでしょうか?)。私にはあまり魅力を感じませんでした…が、館ものとしては、満足です(笑)

 総じて、読みやすさ・館ものとクローズドサークルの雰囲気・密室・犯人当てと、バランスがよい作品であり、ここまで3作読んだ中ではベストです。

No.3 6点 メルカトル
(2021/02/02 22:30登録)
放浪の数学者、十和田只人は美しき天才、善知鳥神に導かれ第三の館へ。そこで見せられたものは起きたばかりの事件の映像―それは五覚堂に閉じ込められた哲学者、志田幾郎の一族と警察庁キャリア、宮司司の妹、百合子を襲う連続密室殺人だった。「既に起きた」事件に十和田はどう挑むのか。館&理系ミステリ第三弾!
『BOOK』データベースより。

ガチガチの館ミステリですね。雰囲気はなかなか良い感じです。二つの密室のトリックは同じようなシチュエーションですが、その規模が大きく違います。第一の密室はやや小ネタ的です、それでもそれなりに考えられたものであり、解りやすいのが何よりです。第二の密室は大掛かりな物理的トリックで、そんな馬鹿な事があるのだろうかと誰もが思う類のものですね。バカミスとは言えないかも知れませんが、何らかの痕跡が残るであろうことは疑い様がないでしょう。一々図解で説明されていて、そこは評価が高いです。よってトリックが解明されるまでは7点付けようと思っていました。しかし


【ネタバレ】


しかし、動機の面と犯人の心理面でかなり作者の考えと私の解釈とに乖離が見られることによって点数を下げざるを得ないとの結論に達しました。その反論点とは

・二十三年前の事件で、幾郎が家政婦の優が妊娠八ヶ月だったのを何故鬼丸に聞くまで知らなかったのか。誰の目にも明らかなはずであり、優に特別な想いを抱いていた幾郎なら尚更あり得ない。

・連続殺人事件の真犯人は何故もっとも憎むべき相手が死ぬまで手を拱いていたのか。真っ先に殺意を抱くはずなのにそれを我慢して、その親族を根絶やしにしようとするのはお門違いではないか。

この二点に於いて矛盾を生じているのは間違いないと思います。よってマイナス1点で6点としました。

No.2 7点 makomako
(2019/01/10 19:40登録)
前作の双孔堂では十和田の常軌を逸したとしか思えないエキセントリックさにちょっと引いてしまったのですが、本作品では普通の変な人となっており、まあお付き合いできそうです。
 トリックのスケールはとても大きくこんなことは絶対無理と思えるほどですが、何とか納得できる範囲と思います。
 本作品は必要と思われるところにきちんと図表が示されており、そういった面でも読みやすい。
 正直2作目の双孔堂を読んだときは作者の感覚を疑ったのですが、本作品では作者の実力が感じられ次作も期待ができそうです。

No.1 6点 虫暮部
(2014/04/03 20:00登録)
 色々趣向を凝らしているのは判るけど、前2作より少し落ちるかな。あまりにパズル的でひとの行動の動機を軽視している点が物足りない。
 志田悟についての叙述トリックはすぐに気付いた。不自然な記述が判り易過ぎ。

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