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ミステリの祭典

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ミステリ初心者さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:388件

プロフィール| 書評

No.168 5点 聯愁殺
西澤保彦
(2019/05/26 01:04登録)
ネタバレをしています。

 過去の連続殺人事件の生き残った被害者と、担当刑事、ミステリ作家や警察OBや心理学者などが集まる恋謎会でディスカッションして解明しよ~! 的な内容です。毒入りチョコレート事件を思い出しました。
 各人の披露する新事実と推理によって、物語が少しずつ分かっていきます。みな、どこかで否定されてしまうのですが、それぞれ面白い推理でした。
 真相はどんでん返しがあり、楽しめました。被害者が返り討ちにする→その後、被害者が犯人の計画を沿う…の構成を効果的に魅せ、隠すためにうまく叙述トリックを取り入れられています。梢絵が知らない、知りたいのは襲ってきた男の動機であり、嘘は書いてありません。
 物語が進むにつれ、梢絵はかなり怪しくなっていきます(笑)。そのため、まあ梢絵が犯人なんだろうと高を括っていたのですが、襲われた順番が大きな問題であり、頭を悩ませていました。最後まで読んでみて、なぜこの叙述トリックに気づかないのだろうと、あらためて自分の頭のパープリンさに絶望しました(笑)。私は叙述トリックに一生ひっかかり続けるでしょう。

 以下、好みではなかった部分
 読者が推理を楽しむ類の小説ではなかった。新事実→推理→新事実→否定の流れです。その形式の小説は多々あり、この作品特有のものではないのですが、自分は好みではありません(笑)。作者が勝手に推理をしてしまって、置いてけぼり感があります。
 場所・時間をあいまいに書き、その認識をずらす類の叙述トリック自体は目新しさはなかったと思います。しかし、自分はだまされたし、使い方がうまいな~とは感じました。
 偶然に偶然がからみ、読者が真相にたどり着くのはかなり難しいと思います。梢絵が襲われた後、架谷を殺すまでは動機も納得しましたが、それから何人も殺すのはよくわかりません(笑)。ラストシーンでは、狂ったようになっていたんで、もう半分狂ってたんでしょうね。


No.167 6点 ねじれた家
アガサ・クリスティー
(2019/05/22 22:39登録)
ネタバレをしています。

 自分にとって久々のアガサ・クリスティーです。やはり、非常に読みやすく、あまり時間がかからずに読み終えました。登場人物が個性的で、普段海外ものでは名前を覚えられない私でも読むのが苦になりません。
 ねじれた家の住民ではない、外部の人間である主人公が主観の物語で、主に動機の面で捜査しています。一見、関係がないような文章が読み返してみれば伏線であったり、思わせぶりなキャラクターの反応も真相をしるとまた印象が変わり面白いです。終わってみれば、無駄な点が非常に少ないという感想を持つのは、アガサ作品の共通したところだと思います。

 以下好みではなかった部分。
 他の方もさんざん指摘されていますが、この作品に似た本が存在します。にわかミステリファンの私も、さすがに読んでいました(笑) どうやら、某作品のほうが早く書かれているみたいですね? 同じタブーに挑戦していますが、それを小説として成立させ、より効果的に魅せているのは、某作品のほうが上だと感じました。家族がやや風変りなのも似ているかも?
 動機探しが主なストーリーですが、アリバイトリックや犯人当ての要素が好きなので、少しでも入っていたらもっと好きなのですが、犯人が犯人なので複雑なものはできないんでしょうね…。ブービー・トラップのヒントは面白かったです。


No.166 5点 推理小説
秦建日子
(2019/05/14 05:41登録)
ネタバレをしています。

 ドラマ"アンフェア"の原作でしょうか? ドラマはほとんど知りませんが、1~2話みたことがあったような。"ユキヒラ"という名字が珍しいので、気が付きました。それでこの作品がドラマになったんだと知りました(もしくは逆?)。

 非常に魅力的なキャラクターが多く。すいすい読めました。また、叙述トリックについて説明されていて、普段ミステリを読まない人にも理解しやすいように書かれていて好感を持ちました。
 
 作中作の推理小説と同様の事件が起きていき、犯人から"続きを見たければ、小説を落札しろ"という要求がある物語の展開は魅力的でした。
 また、犯人自身が、雪平からの影響からか、これから起こす事件を変更することは面白いです。


 以下、好みではなかった部分。

 犯人の主観の文章に、たぶん嘘はなく、この小説内にある?叙述トリックのルールを破っていないとは思います。しかし、叙述トリックを使うのは、ほぼ=アリバイトリックや論理による犯人断定がない作品が多いです(例外あり)。叙述トリックを味付け程度に使い、メインに持ってこない作品はその限りではありませんが、この作品は叙述トリック一本釣りであり、また個性もいまいちありません。

 この小説の文章は、いつ・どこの・誰の主観か?が説明されてないことも多く、それでいてコロコロ場面が変わり混乱してしまう。さらに作中作文章も存在するため非常にややこしい…。ただ、それをわかりやすくしてしまうと、叙述トリックが成立しないので、仕方ない部分もありますが。叙述トリック自体が、ただ勘違いさせるだけの類なので(そうでないものもあるかもしれませんが(笑))


酷評されるほどでもないとは思います。かといって、心に残る名作でもなく、よくある叙述トリックものの一つでした。


No.165 5点 ドミノ倒し
貫井徳郎
(2019/05/10 01:30登録)
ネタバレをしています。

 この作者の作品は初めて読みます。作風は全然知りませんでしたが、意外にもコメディ調でした(笑) ラストはホラー的?でしたが…
 主人公が聞き込みをし、徐々に事件が明らかになっていく形の小説は、たいてい後半まで退屈なことが多い印象があります。しかし、この作品は、主人公やその周りの人物だけでなく、すべての登場人物に魅力的なキャラクターがあり、退屈さを感じませんでした。

 以下、好みではなかった点。
 本格好きとしては、論理やトリックが薄味でした。それでいて、独創的なアイディアがあるようにも思えません。村や町や多数の人間による共犯やら因習やらは、小説やドラマでちょくちょく見るものです。たしか海外古典作品にもあったような。テレビドラマ"トリック"シリーズを、さらに薄口にしたような作品でした。
 ラストがあいまいな終わり方が不満です。また、キャラクターが魅力的だっただけに、続編を期待しましたが、あの終わり方では無理でしょうね…。
 


No.164 6点 回廊亭の殺人
東野圭吾
(2019/05/04 18:35登録)
ネタバレをしています。

 クローズドサークル風味(?)で、読み易く楽しめました。主人公が過去事件の被害者で復讐者であり、過去事件の犯人探しと現在の発生した事件を追うといった、割と王道系です。資産家の死と遺言、相続問題、隠し子と昔ながらの展開でした。
 トリックも個性があって良かったです。性別を曖昧に書くことや、里中二郎が入れ替わっていた点、偽二郎・殺されていた人物の再登場自体はそれほど珍しくはないですが、主人公の"ジロー"がいわゆる里中二郎・鰺沢弘美でもない、恋人を演じていた鰺沢なところが面白いです(と、私が勝手に思っているだけかもしれないが)。小説上は矛盾していても、主観では矛盾していなくて面白いです(主人公は里中が偽者と気づいていないから、べつに矛盾していないが)。主観と客観でまるで違う事柄でも、感じ方などの差で矛盾でなくなる・・・といった作品が何作かありますね(叙述トリックと相性が良い気がします)。

 以下、好みではなかった点
 主人公が鰺沢と再会したときに、あまりリアクションがないのは不自然。そのため私は、主人公が里中の焼死した死体を見て偽里中の存在に気づいたのかとも思いましたが、その場合は過去事件の真相がバレバレであり、やはり里中鰺沢入れ替わりは知らなかったようですし(だよな・・・?)。
 過去事件、現在事件共に、推理小説としてはいまいち面白みに欠けていた印象でした。動機さがしが主な印象です。ある程度、犯人当てかアリバイトリックの要素があればもっと高得点でした。


No.163 6点 硝子のハンマー
貴志祐介
(2019/05/01 00:35登録)
ネタバレをしています。

 始まって100pぐらいは、猿・ロボットが出てきて、なにやらバカミスの香りがしましたが、杞憂でした(笑)
 前半半分は、事件発生~探偵による検証と仮説→否定を繰り返す構成です。専門用語なども多かったですが、非常に読み易かったです。
 後半半分は、倒叙形式のような感じでした。犯人の半生~殺人のシーンまで、かなりのページ数があるにもかかわらず、前半と同じく一気読みできるほど読み易いです。凝った構成でした。

 以下、好みではなかった部分。
 これまでにない密室のパターンで、はっとさせられました。しかし、それを推理小説として成立させるために、多くの難題があります。介護ロボット、頭部を手術した被害者の存在でそれをクリアしていますが・・・。
 はめ込みの窓って、あんなに簡単にいじれるものなのでしょうか? 自分は窓ガラスに対する知識がまったくの無知なので、真相聞いたときはピンときませんでした。推理小説を問題としてみた場合、いまいちかもしれません。

 自分は、実は、純子によるとんでも推理"監視カメラの前に廊下の写真を置いた"や"秘書三人が入れ替わり時間を稼いだ"は結構好きです(笑) 無理がありますが。


No.162 5点 幻想即興曲
西澤保彦
(2019/04/24 01:53登録)
ネタバレをしています。

 凝った構成の作品でした。手記のような作中作がメインですが、その筆記者が推理小説を書こうとして出来た文章だったり、他人の手が加えられているところに個性を感じました。
 とはいえ、真相自体はあまり驚愕するようなものでなく、犯人あてともアリバイトリック物でもありません。前に、"Aの手記を元にした推理小説(作者Bは真相を知らない)""途中で記述者がひそかに変わる"という、この作品とやや似ている作品を読みましたが、そちらの方がラストのどんでん返しにうまく使っていました。

 後、好みの話で申し訳ありませんが、この作品のキャラクターはいまいち好みではありませんでした(笑)


No.161 6点 本格推理③迷宮の殺人者たち
アンソロジー(国内編集者)
(2019/04/20 12:08登録)
 ネタバレをしています

 ○葵荘事件・・・非常にフェアな作品ですが、少し地味かも。
 ○落ちて死んだ男・・・文章が読みやすくていいですが、謎はバレバレだしいまいち。
 ○狼どもの密室・・・珍しいパターンだし、変わっている凶器が良かったですが、確実に殺せるんでしょうか?
 ○イブ・ステップの殺人・・・犯人の行動が危ういかも。
 ○嵐の後の山荘・・・犯人に殺意が無かったり、偶然が絡んでいますが、これまでに見たことの無いパターンが見られて満足。
 ○嵐の山荘・・・これはいまいちはまりませんでした。
 ○霧の館・・・本格度は低いですが、さすがのクオリティ。詩的な表現がミスリード?だったり、どんでん返しがあったり、満足しました。
 ○密室の矢・・・被害者が犯人に協力するタイプの密室は嫌いです。
 ○欠けたサークル・・・ダイイングメッセージが日本語で、外国人教師が勘違いしたのはすぐわかりましたが、あまり印象には残りませんでした。
 ○酒亭『銀富士』の殺人・・・カニバっている話でグロいはずなのに、コミカル?で読みやすかったです。ただ、作者の言うように、トリック自体は簡単にばれます。
 ○死人に口あり・・・いまいちでした(笑)
 ○マグリットの幻影・・・盲点があるのは知っていましたが、予想できませんでした。が、私がミステリに求めるものとは違いました(笑)
 ○時空館の殺人・・・なかなか面白かったですが、ややありきたりな発想で、すぐにわかりました。あと、他作品のネタバレはやめてほしいです。


No.160 6点 異邦の騎士
島田荘司
(2019/04/17 19:08登録)
 改訂版です。御手洗潔シリーズは、この作品から読まないほうが楽しめます。
 以下、ネタバレをしています。

 犯人当てやアリバイ崩しを楽しむ類の小説ではありませんが、物語の結末をあれこれと予想し、どんでん返しがあり、読み返すもの楽しい良い作品でした。また、最後にわかる大きな仕掛けがすばらしいです。
 この作者の作品で、"斜め屋敷"や"占星術"を持っていますが、斜めは個人的に好きではなく、占星術は文章の相性が悪いのか手記の段階で読むのを諦めました。しかし、この作品は読了まですぐでした。

 好みでは無かった部分。
 中盤ぐらいで、そこそこ物語の結末が読めてしまったため、驚きがありませんでした。鏡を見られない主人公。すぐに親しくなる怪しい良子。日記。そこまで来ると、免許証を頼りにたどり着いたアパートに住む中年女性の正体も読めてしまいます。本物の益子が兄だったのはわかりませんでしたが・・・。
 真の益子側の計画が成功するかは微妙じゃないでしょうか? ひょんなことで主人公の本当の記憶が戻ったら終わりです。日記をみた主人公が、日記に書いてあることを確かめようとすればすぐに嘘だとバレれます。
 主人公がベンチで起きるところから始まり、それ以前の記憶が一切無いのですが、たしか事故後は病室にいませんでした? ずっと昏睡状態なら、たか子が記憶障害と確かめるすべが無いのだし・・・。すると、病室での記憶はどうやって消したんでしょうか? (顔がメロンみたくなる描写があるので、薬物か?)
 この小説を成立するためには、主人公が自分の顔を確かめない→鏡を見ないことが必須で、ここが少々難しい点かもしれません。物語上では、主人公が鏡を見られないとわかってから、偽益子にすると計画修正したようですが。

 と、いろいろ難癖をつけていますが、作者あとがきでも"ミステリーではない"的なことが書いてあったため、的外れな意見かもしれません。


No.159 6点
F・W・クロフツ
(2019/04/11 15:34登録)
 ネタバレをしています。

 鮎川・横溝の例の作品を読んだ後に、この作品を読みました。突発的な犯行だし、一つ一つのトリック自体はそれほど大トリックというわけではないのですが、考えてみるとなかなか難しく全然あたりませんでした(笑)

 中盤までやや退屈で、読了まで時間がかかりました。警察が主観の小説は、事件の全貌が徐々に明らかになっていく展開が多く、少しだけ苦手です。もう少し、登場人物に個性があると良かったです。
 あと、証言が曖昧なことが多く、そこだけ気になりました。


No.158 8点 魔眼の匣の殺人
今村昌弘
(2019/03/31 03:35登録)
 ネタバレをしています。

 絶対に当たる予言という実際にはありえない超常現象?を組み込んでの作品です。しかし、その予言の性質を丁寧に説明されていたり、共犯者の存在を探偵が明かしていたり、変則的な要素が入っていても本質は端正な本格推理小説でした。私は、時間をかけて読み返して、そこそこ真相を推理する事が出来ました(細かい多数の部分ははずしており、胸を張って当てたとはいえないが)。私は、普段当てられないことが多いため、難易度はやさしいかもしれません。
 サキミが、十色勤の日記のサキミとは別人だと予想していました(ねずみ関連で)。しかし、十色への復讐のための自殺とは予想できませんでした。話の流れ的に、女性であり、日記に登場する人物である、ダウジングのハルか誰かかと(笑)。岡町君がサキミとは思ってませんでした(笑)。思えば、十色勤の側近であり、女性の可能性がある岡町君以外にはありえないのですが、十色勤は鬼畜ですね・・・。十色勤の"サキミがこの子(久美)が死ぬ予言をしてしまったら・・・"という懸念ですが、結果的にサキミの孫に対して当たってしまったのが皮肉的で良い伏線でした。岡町=サキミが予想できたのなら、自殺未遂の意味やフェルト人形にも気づけたかもしれず、悔しいです。フェルト人形に関しては、論理的に当てられると解決編でわかり、より悔しいです。

 以下難癖。
 十色の絵を見た王寺は、葉村の部屋にねずみの屍骸をおき、より絵の状況に近づけ葉村を殺そうとした。絵は必ず当たる。しかし、このとき、ねずみの屍骸をすべての部屋から出してしまったらどうなのか? 矛盾してしまう。 どこからかねずみが現れて死ぬのか? ただ、小説内に十色の能力の前例は上げられていて、読者に説明がなされているため、フェアだと思います。
 サキミ毒殺事件について。毒を入れるチャンスや、扉の前の赤いエリカなど、はじめから自殺→別の人間が花を撒いたにおいがぷんぷんしました。しかし、"十色の絵の状態を、現実側が近づけることで間接的に殺せる"考えが頭にはなかったため、最後まで撒かれた花の解釈に困りました(笑)。
 ヒルコ自殺未遂により、朱鷺野は安全圏に入ったと思った。それにより、交換殺人を拒否し口論になったと思いますが、そのあとの王寺の行動がやや不可解。結局王寺は、朱鷺野が交換殺人に応じた形にしていますが、それだと朱鷺野のロッカーの鍵の件が嘘だとばれてしまい、交換殺人をやっていたこともバレると思います。また、朱鷺野が即死ではなく、気絶だったというこは、読者からしたら推測が難しいとは思います(私が鈍くさいだけ?)。

 個人的には、前作よりもさらに不満点が少ないです。絶賛された前作からの2作目のため、難しい面もあったかもしれませんが、今作も上質な本格推理小説であり、いよいよ作者の力量が本物だと確信しました。
※追記:う~ん、やはり素晴らしい作品なので、一点上げて8とします(笑)


No.157 6点 金雀枝荘の殺人
今邑彩
(2019/03/01 22:16登録)
 ネタバレをしています。

 クローズドサークルで非常に読みやすいです。登場人物が多いですが、苦になりません。ページがすいすい進みました。さらに、幽霊?や呪いが存在するのが個性的で(あんまりありませんよね?)、いい意味で推理小説離れしたストーリー性に貢献しています。物語中、多くの人が殺されますが、読了感は非常にいいです。

 以下、好みでは無かった点。
 本格推理小説としてみた場合、"誰が殺したのか"や"どうやって殺したのか"また"なぜ殺したのか"という推理をめぐらす要素が乏しかったです。絵李沙たちを殺した犯人がどうやって出たのか?は面白かったですが、長編としてはやや弱い印象でした。

 後期の横溝作品のような趣があると思うのですがどうでしょう(詳しくありませんが)


No.156 7点 どちらかが彼女を殺した
東野圭吾
(2019/02/24 18:39登録)
 ネタバレをしています。文庫版です。

 これまでに読んだことのないタイプの推理小説で、個性があってよかったです。最後まで読んだとき、「??」でした(笑)。例えるなら、ラストページに読者への挑戦状があり、解決編がない感じでしょうか? 解決編がないものの、犯人断定の手がかりがあり、理不尽な感じもしないので、ありでした。
 妹を殺された兄が、犯行現場の証拠を勝手に持ち出して独自に事件を捜査→復讐のために潤一と佳世子を追う。それを加賀が追うといった構図が、なんだがスリリング(?)で、ページがすいすい進みました。東野作品は物語の構成がうまいのか、文がうまいのか、毎回読みやすくて良いですね…。倒叙もののような趣で、なおかつフーダニットの楽しみも損なわれてないですね!
 話の流れ的に、潤一と佳世子の利き手を解き明かせば犯人がわかるのは理解しましたが、読み返す作業が煩わしく感じ、袋とじ解説を読んでしまいました(笑)。

 以下、難癖。
 園子は、文を書くときや食事が右利きのやり方で、その他が左利きのやり方…というのは、兄である主人公の述懐なんでいいですが、その他の人たちもそうとは限らない気はします。左利きの人は右もうまく扱えることが多いから右利きの殺し方でも左利き犯人だ~といった作品も見たことがあり、推理小説にでてくる"利き手問題"は作品によって立場がころころ変わるのが苦手です。


No.155 7点 災厄の紳士
D・M・ディヴァイン
(2019/02/18 18:08登録)
 ネタバレをしています。

 意外な犯人であり、大きな驚きがありました。それにもかかわらず、とてもフェアに成立していて、とても好感があります。犯人の主観がある小説特有のアンフェアさ?がありませんでした(それも好きですが)。それでいて、ページが進むにつれて、読者が自然とアルマを犯人からはずしてしまうストーリーもよかったです(自分が鈍いだけかもしれませんが)
 サラによる犯人断定シーンもよかったです。私は、"ネヴィルの車のハンドルのみ指紋が拭かれているのはおかしい。どうやって乗ったのか?"ということしか気づけませんでした。一瞬アルマを疑ったんですがね(笑)。

 以下、好みでは無かった部分。
 殺人が起こるまでかなりページ数があり、自分にとってはやや退屈な展開でした。何が謎なのかわからず、思うようにページが進みませんでした。最初のほうに、誰が犯人か?あるいはどうやって殺したのか?が提示される小説は、それを考えながら読み進められるので、ページがすいすい進むんですよね(笑)
 ストーリーや意外な犯人という良い要素はありましたが、この小説ならではの大トリックや個性は少ない気がします。サラが論理的にアルマを疑ったのは良かったのですが、フーダニットとしては他の容疑者が犯人ではない理由が足りなかった印象です。つまり、推理小説としては薄味なイメージです。


No.154 7点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2019/02/10 12:30登録)
 ネタバレをしています。

 同作者のある作品が、この作品に近いトリックを使っていることを知っていたため、ある程度はネタが割れている状態で読みました。こちらの作品もなかなか面白く、甲乙つけがたい出来です。どちらも趣向はにていますが、別種のトリックが混ぜ込んであり、個性が立っています。
 基本的な物語の流れは、王道クローズドサークル物のそれです。過去の事件の疑問から始まり、何かしらの問題があって館を抜けられない登場人物たち、そこで起きる新しい事件・・・といった感じですが、強盗団がおしいるのは新鮮でした。
 この作品は、叙述トリック・・・?なのでしょうか? 主人公が朋美のピルケースに睡眠薬を入れたことを伏せられていて、その点では叙述トリック的なのですが、主人公は結局自分の行為とは直接関係が無かったと思っているのがミソで、罪の意識も殺したとも思っていませんでした。実際、朋美は睡眠薬を飲みませんでしたし。間接的には殺していますが。この点では、岡嶋二人のある作品を思い出しました。

 以下、難癖。
 タイトルに"殺人"とついているならば、これはアンフェア(笑)。"仮面山荘事件"とかにしたらよかったのに。細かい事を言うようですいませんが。※追記 事件でもねぇな(笑)


No.153 7点 ユダの窓
カーター・ディクスン
(2019/02/09 01:52登録)
ネタバレをしています。読んだのは新訳版です。

 HM卿のキャラクターが好みです。そのため、苦労なく読むことが出来ました。180pくらいのHM卿が、キレかけて(?)「シッ、シッー!」と言っていたシーンが好きです。
 作品の始まりから不可思議な状況で、一気に惹きこまれました。物語中盤らへんで、ジミーの災難はエイヴォリーの勘違いから発生したものと明かされますが、密室の謎は解けません。物語終盤で密室の謎が明かされますが、犯人はまだわかりません。何が起こったのか?どうやったのか?誰がやったのか?よくばり3点セットで満足度が高い本格推理小説でした。

 私は、密室の謎はさっぱりわかりませんでした。ただ、犯人とその行動はだいたい見当がつきました(というか、犯人はややわかりきった感じか)。
 途中、アメリアとスペンサーの共犯を疑っていました。動機は遺産ほしさに。アメリアが実行犯。ジャケットの下にゴルフ服を着ていて、犯行時にジャケットを脱ぎ、エイヴォリー視点では"ユダの窓"からは服しか見えず、エイヴォリーはスペンサーだと勘違いする・・・というとんでも推理をしていました(笑)。それだと、クロスボウで狙いがつけられないし、エイヴォリーがダイアーにアメリアの車を取りに行かせるのは矛盾してしまいますね。

 以下、難癖ポイント。
 密室ものとしては、あまり好みではありませんでした・・・。
 エイヴォリーはなぜ書斎から矢を出すことを容認したんでしょうか? HM卿も言及していましたが、レジナルドに傷害偽装の罠を仕掛けるならば、矢は書斎になくては変です。これについて、私は結構悩んでいたんですが、結局なんやかんやで片付けられたのはガッカリです。
 事件当時、霧が濃かったようです。ジミーは少し遅刻し、ダイアーも車を取りに行ったときは少々遅れてました。HM卿のメモでは、アメリアがスペンサーを迎えに行くのが"すごいスピードだ"とかいう記述がありましたが、結局関係なかったんですね。これ、いろいろ考えちゃいました(笑)。


No.152 4点 密室殺人ゲーム・マニアックス
歌野晶午
(2019/02/06 20:37登録)
ネタバレをしています。また、前作、前々作のネタバレも少ししています。

 非常に読みやすく、すいすい読み進みました。シリーズ恒例の特殊な設定も踏襲されています。

 このシリーズは結構好きなのですが、この作品は好みではありませんでした。前作までは、各キャラクターの出題が短編集のように楽しめる上に長編としてもなにか大仕掛けがあるような感じでしたが、今作はそのどちらも楽しめませんでした。

 解説をみると、この作品は外伝的作品で、4作目が本編&最終作らしいです。それに期待しています。


No.151 5点 生存者ゼロ
安生正
(2019/01/29 01:37登録)
ネタバレをしています。

 主要キャラクターの過去の出来事や葛藤がよく書かれていて、厚みがあります。ストーリーもドラマティック。無能政府も、主人公達を引き立たせる役としてよかったです。海外ドラマのような趣がありました。

 難癖をつけるようで申し訳ないのですが、シロアリに食われた死体を感染での死と勘違いするような事があるのでしょうか? また、シロアリに食われても即死ではないのだがら、かなり抵抗するはずで、シロアリも相当数死ぬと思うのですが、シロアリの死体は残らないものなのでしょうか?


No.150 6点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2019/01/22 22:24登録)
 ネタバレをしています。

 遼吉を殺す動機を持った容疑者にはアリバイがあり、捜査が難航する…実は…という犯人の狙いはこれまでに見たことがなく、新鮮でした。
 また、森山殺しにおける、犯人達のアリバイトリックも楽しめました。
 これは違うかもしれませんが、社会派や男女の愛憎の小説のように見せかけた本格は、何か作者からのメッセージなのかも…?

 自分は、この本における仕掛けを、まるで見抜けませんでした。
 ほんの妄想レベルですが、情死に見せかけた死体が白骨化していたことから、2体の死体の殺された時間が大分違うんではないか?ということ。本筋の情死は偽装であることから、タイトルの"情死"は誰か別の人物同士である→犯人男女ペア→共犯の可能性…この2点ぐらいでした;;

 以下、好みでなかった部分。
 やはり、共犯は好みではありません。また、森山殺しにおけるアリバイ工作も、ややリスキーだと思います。


No.149 6点 世界の終わり、あるいは始まり
歌野晶午
(2019/01/18 20:05登録)
 ネタバレをしています。

 これまでに読んだことのないタイプの小説でした。いろいろな展開や、意外な結末があり、濃い作品でした。はっきりとはしないラストだったのですが、主人公の想像によって色んな結末が見れたため、これもありかと思います。
 同作者の、"密室殺人ゲーム"シリーズとは、ある意味真逆な作品でした(私の勝手な感想)。

 以下、苦手だった部分。
 主人公が想像をめぐらす前の部分が、やや長いと思いました。
 中盤まで、読むのに苦労しました。いろいろなことを想ってしまい、読むのが苦痛でした。

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