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ミステリの祭典

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ミステリ初心者さんの登録情報
平均点:6.16点 書評数:416件

プロフィール| 書評

No.196 5点 崖の館
佐々木丸美
(2019/12/29 00:39登録)
ネタバレをしています。

 私の頭が悪いためか、少々読みづらさを感じました(笑)。
 雪によって外へでられない館に集まったいとこたち、そこで起きる事件と殺人、過去の事件の謎・・・など、王道クローズドサークルの流れを踏襲しています。この点については他のクローズドサークル物と同様、やはりわくわくして読み易かったです。
 その一方で、主人公涼子の一人称の文章が詩的?というのか幻想的?というのか、どう形容していいのかわかりませんが、私の拙い脳ではどの程度理解できたかわかりません。さらに、哲文君の美術についての話も難しくてわかりませんでした(涙)。本筋とは関係の無い衒学がちょくちょくありますが、難しいかつあまり興味が無く、相性が悪かったです。

 本作の謎について。
 千波殺しや、研・由莉もそうなのですが、出来たら館の地図がほしいです。とくにいらないのかもしれませんが、館の地図があると話が頭に入り易いと思うので。
 千波殺しについては、あまり誰がどこで何をやっているかふわっとしていていまいち検証がされてない気がします・・・。私がちゃんと読めていないのかもしれませんが。
 研の事件について。この仕掛けって、人によって背の高さも違うし、いつ誰が引っかかるかわからないので絵隠しと連動しづらいしいまいち良い作戦だと思えないのですが(笑)。絵の問題もあり、ここだけ犯人とは別の誰かが何かしているかと思いました(笑)。
 由莉殺しについて。私の頭では理解できません(笑)。中性洗剤で人が死ぬものでしょうか? 証拠を残さず殺せるものでしょうか? 成功率が高いものなのでしょうか?
 絵隠しについて。絵と絵の間隔をあけて空間を作り、絵がなくなったように見せたとのことでした。正直、真っ先に思いついたのがこれだったのですが、これって普通バレませんか(笑)。たまにいく美術館ではなく、すくなくとも哲文や涼子はけっこう絵を見に行っていましたよね? 絶対位置の違和感を感じると思うのですが(笑)。絵を立てかけるためのフック的なものも跡が残ってしまうのでは・・・・? 由莉の説のほうがスマートでしたね(そっちも意外性が無いけれど)。
 千波の日記から犯人が推測できるとの哲文の台詞でしたが、これは良い伏線でしたね。私は、人形のハープの糸が切れても~にはなにか有名な逸話や詩があるのかと思ってスルーしてしまいました(笑)。

 私はあまり犯行動機を重要視していません。しかし、この犯人の心情がよく理解できません(笑)。


No.195 6点 狩人の悪夢
有栖川有栖
(2019/12/20 19:25登録)
ネタバレをしています。文庫版を読みました。

 有栖川さんは、本格オブ本格な作者だと思っています。そのためか、私自身の期待値が上がりすぎてしまったようです(笑)。

 作風は非常に読みやすく、無駄なところが少ない、本格色の強い作品です。個人的に火村のキャラクターが好みではないものの、解決編前あたりまですらすらと読めました。

 これは私だけなのかもしれませんが、大泉の死体が運ばれた廃屋が、落雷地点より北か南か判断がつきませんでした(笑)。1周目読んだときには、大泉の死体を外に運べないから北のほうだと思っていましたが、56pと219pを読み返し南の廃屋のような気もしました。結局結論が出ず、2パターン考えました(笑)。

 何回も読み返し、私も矢作と白布施以外は容疑者から外すところまでは考えました。どうしても、矢作を容疑者から外せませんでした。悔しがりながら解決編を読みましたが、いまいち納得がいきませんね(笑)。犯人の手首を切ったり、ビニール紐を残したり、もしものことを考えた行動を多用しているので、矢作の"証人が確定してないのに音楽をかける行為"だってだれかが通るかもしれないという考えがあったかもしれないし、火村や警察が矢作の都合がよいように考えるかもしれない。裏の裏をかくようなことを言っていては仕方がありません(笑)。心理的アリバイというのでしょうか? これは好みではありませんね(笑)。
※追記:突発的犯行の可能性が高かったことも留意しなければダメでした(笑)

 期待値が高すぎたのかもしれませんが、フーダニットとしては江神シリーズの納得感には及ばなかったです(涙)。


No.194 6点 白い家の殺人
歌野晶午
(2019/11/20 20:48登録)
ネタバレをしています。

 一族が館にあつまり、連続殺人が起こっていく。半クローズドサークル状態であり、しかもすぐに殺人があるので、非常にテンポが良くすぐに読了しました。
 3つ殺人が起きます。それぞれ"密室"、"毒殺"、"足跡消失"系の謎であり、とてもボリュームがあります!! 
 第一の殺人について。逆さづりという奇妙な状態の死体に、初っ端からわくわくが止まりません。私は、なんとなく真相に近いものを思い浮かべましたが、やはり偶然の密室は好みではありません。偶然を使わないと、密室にした理由を説明しないといけない義務が発生しますが…(笑)。
 第二の殺人について。第一よりわかりやすい偶然が発生するため、これもなんとなく真相に近いものを予想できました。しかし、犯人にとっての、不利有利関わらずアクシデントが絡むものは好みではありません(笑)。
 第三の殺人について。屋上からつるしたことしかわかりませんでした。大がかりな仕掛けですが、面白かったです。本当に成功できるのかはよくわかりませんが…。
 犯人の殺人に至るまでもよく書かれていて、横溝作品のようです。ただ、静香殺しの動機は納得できません…。

 共犯、偶然があり、好みではありませんが、本格色が強く厚みのあるいい作品でした。


No.193 6点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2019/11/16 20:18登録)
ネタバレをしています。

 犯人の足跡が無い系の謎であり、心中とみせかけて駆け落ちする被害者たちの計画で、今までにないパターンでした。また、足跡を消してつけ直す発想が良いです。
 また、HM卿が車いすで爆走するシーンは非常に良かったです(笑)。

 以下、難癖ポイント。
・普通、心中駆け落ち計画を他人に話しますかね?(笑)。途中、バリー別人説や、バリー偽愛人説とか考えてしまいました(謎)。自分の思ったよりリタが馬鹿でした(笑)。
・もし、ルークが、リタとバリーの足跡の近くに足跡をつけてしまったらどうしていたのでしょうね(笑)。
・銃を落としたのが偶然とするのは難易度が高かったです…すごく悩みました。しかし、トムのポケットが破けていたのはいい複線でした。
・犯人の、ダイヤを元の場所に戻す行為を推理するのは難しいです。鍵はトムが持っていて、チャンスがあることはわかりましたが、アレックを憐れんで戻すということがわからず、結構悩みました。ダイヤを戻せた人間が犯人とする伏線ならば、犯人にとって必須の行動でなければ成り立たない伏線だと思いました。
・ルークの披露する推理に対し、HM卿が"本当のことは一つもない"的なことを言ったため、私はローラー説が覆されたと思ってしまいました。HM卿の配慮だったのですが、小説的にはただ読者を混乱させるだけのものに思えます。犯人当てとしてはイマイチな印象があります。
・読者への挑戦状がないために、どこまで読んでよいものやら分からず、トムが犯人であることを唐突にバラされてしまいました(笑)。データがそろった段階でもう一度最初から読み返すのが好きなので、これにはガッカリしました(カー作品全体的にそうですが)。


No.192 5点 殺戮ゲームの館
土橋真二郎
(2019/11/11 18:53登録)
ネタバレをしています。

 こちらの作品はまだ登録されてなかったようなので、しました。なにか間違っていたらすいません。また、この本の紹介文には密室サスペンスという文があったため、ジャンルはサスペンスとしました。
 上下巻分かれていて、かなりのページ数があるにもかかわらず非常に読みやすく、下巻に関しては一晩で読了できました。クローズドサークル特有のテンポの良さもありました。登場人物のキャラクターの書き分けがうまく、登場人物が多いにもかかわらず混乱せずに読むことができました。
 作品名にゲームとついていて、特殊なルールが設けられています。漫画のライアーゲームや嘘喰いなんかの頭脳戦を期待しましたが、あまりそういったものはありませんでした。また、本格ミステリにあるような読者の裏をかくトリックや、この作品ならではの仕掛けや個性に欠けた印象がありました。ミステリというよりはサスペンス色が強いと思いました。
 


No.191 6点 ブラウン神父の童心
G・K・チェスタトン
(2019/11/09 14:57登録)
ネタバレをしています。

 2017年に出た新訳版を買いました。しかし、めちゃくちゃ読みづらかったです(涙)。私の国語の能力が低すぎ、どこまで理解できたか不安です(笑)。長くなるのでなるべく短く書きます。
○青い十字架:超人的なブラウン神父(笑)。もっと三枚目な人物かと思っていたら、意外とクールな印象を持ちました。
○秘密の庭:前話のこともあり、自分にとってかなり意外な犯人でした(笑)。
○奇妙な足音:フランボウは大胆で頭がいいですが、足音だけで当てる神父は天才ですね。このトリックだと神父をこういう設定にせざるを得ないですが、なんか現在の叙述トリックを読まされる読者のようですね。
○飛ぶ星:私の読解力が低すぎて、いまいちわかりませんでした。これ以降、フランボウが神父の助手?になる展開は予想外でした。
○見えない男:これと似たトリックを見たことがありますし、後世に影響を与えたのかもしれませんが、ぶっちゃけこれ系は嫌いです(笑)。
○イズレイル・ガウの誉れ:意外さはありましたが、いまいち良さがわかりません(笑)。
○狂った形:登場人物の少なさと、良く見るパターンのため、予想ができてしまいますが、面白かったです。
○サラディン公の罪:これも良く見る話のため予想できましたが、すべて予想通りにいくか疑問です(笑)。おもしろかったです。
○神の鉄槌:ふわっと予想できました(笑)。が、不確定要素がつよすぎて好みではありません。
○アポロの眼:凝った話でした。途中でインク切れのペンを持たせるというアイディアが面白かったです。途中で豹変する教祖も面白い(笑)。
○折れた剣:神父が、過去の出来事の不思議について推理しています。読者にはあまり推理が出来ない事もありますが、死体を隠すなら死体にというのは納得しました。フランボウの解釈も面白かったです。
○三つの凶器:非常に内容が濃い話しでした。ロイスは恋人のために嘘をつき、アリスは勘違いのために嘘をいっている感じになってます。が、やっぱり自殺物は好みではありませんでした(笑)


No.190 5点 少年たちの密室
古処誠二
(2019/10/29 14:57登録)
ネタバレをしています。

 いくさの底の作者とは気づきませんでした(笑)。
 地震のために閉じ込められた高校生とその担任。クローズドサークルかつ視覚と物資が制限された空間での連続で殺人で、そのシーンにはいってから一気に読めるほど読み易かったです。
 クローズドサークル中の殺人の謎とは別に、それ以前に起きた自殺に関する話もあり、最後にはどんでん返しがありました。いろいろな可能性を妄想しましたが、閉じ込められた初期に撮られた写真に登場人物メンバー以外が写っている=ひそかに誰か紛れ込んでいる・・・叙述系のことも考えていました。結果おおはずし(笑)。

 ただ、好みで無い部分もありました。クローズドサークル中の殺人で、早名が犯人だろうことと、細かい部分以外の大体のことを予想しましたが、あれは本当に殺人が可能なのでしょうか? アレ以外に殺せないとは思いましたが、結構殺人難度が高いように思えます。
 また、やりきれない話のため、やや後味が悪かったです。城戸関連は読むのがきつかったです(笑)。


No.189 6点 本格推理②奇想の冒険者たち
アンソロジー(国内編集者)
(2019/10/22 00:22登録)
ネタバレをしています。長くなるので一言ずつ書きます(笑)。

・双子神社異聞:凝っていて面白かった。
・死霊:好みの展開ではありませんでしたが良かったです。
・落研の殺人:性別を誤解させる叙述?トリックはたびたび見ますが、名前を芸名と勘違いさせるのは納得感がつよくて良かったです。
・死線:平面の図を見ているうちに罠にはまってしまった(笑)。個人的には発想が飛躍していてとても良かったが、このやり方で確実に殺せるのか疑問。
・亡霊航路:男女の話しも、推理小説的部分も、あまり好みではありません。
・汚された血脈:私の頭が追いついていません。結局誰が真犯人なのでしょうか? あずさなのでしょうか? しかし、ナイフをなめることを注意していましたよね?
・推理研の冬休み:話の流れ的に、結末がなんとな~く読めました(笑)。
・数文字:いまいちでした。私が推理小説に求めるものではありませんでした。
・落下する緑:すべての伏線を予想できたわけではありませんが、あまり意外性の無い結末でした。
・調香師の事件簿(1):探偵ガリレオのようなミステリでした。ガリレオもそうだけど、推理小説というよりかは豆知識になっていていまいち。
・誰が彼を殺したか:文が読み易いですが、ちょっといまいちでした。
・アンソロジー:あの時本を読んでいたなら・・・という述懐が非常に良いヒントであり、納得感を高めています。が、やっぱり犯人の行動はリスキーすぎませんか(笑)。


No.188 7点 開かせていただき光栄です
皆川博子
(2019/10/19 17:48登録)
ネタバレをしています。

 前から気になっていたものの、読んでいなかった作品です。なぜかというと、解剖や1700年代のロンドンが舞台と聞くと読みづらいかもしれないと思っていたからです。しかし、まったくそんなことはありませんでした。解剖のシーンも登場人物の魅力のためか、まったく苦にならなかったです。ロンドンの描写も、まるでその時代に書かれた小説のように感じ、かつ翻訳物でよくある日本語の読みづらさもありません(その時代のロンドンに関しては無知なので、正しいかどうかは知りませんが(笑))。唯一読みづらかったのは、主観の一人であるネイサンが悲惨な目に合うシーンでした。

 ダニエルとその弟子たちの視点と、その少し前のネイサンの視点が交互に書かれているスタイルでした。ロンドンの治安が悪いこともあり、ネイサンが悲惨な目にあっています。ネイサンの主観はエヴァンスの家から抜け出し、エドとナイジェルに助けを求めて解剖教室に向かうところで終わっています。渡るロンドンは鬼ばかり!地獄!救う神なし!とおもいきや、最後にどんでん返しがあり、読後感が非常に良いものとなりました。

 推理小説的要素だけでなく、通常の小説としても楽しめる要素が多かったです。ロンドンの風俗の話、友情物語、ユーモラスなダニエルの弟子たち(アル・ベン・饒舌の人はもうちょっと登場しても良かった!)。私の買った文庫版には、解剖ソングが譜面付きで乗っていました(笑)。私に音楽の心得がないため、だれかうたってみた動画上げてほしいですね。

 以下、難癖ポイント。
・どんでん返しはすばらしかったですが、このトリックはよくあり、あまり驚きはありませんでした。時間と主観が違う人物を交互に書くと、やはり入れ替わりを疑います。そして墓荒らしで死体がよく手に入るとくれば・・・。しかし、全ての伏線を回収できたわけではありませんので、偉そうなことは書けませんが(笑)。某有名作品も同様のトリックでしたが、こちらの作品のほうがはるかに小説として優れていたため、加点しました。


No.187 6点 最初に探偵が死んだ
蒼井上鷹
(2019/10/12 06:30登録)
ネタバレをしています。

 タイトルに惹かれて買いました(笑)。
 非常に読みやすかったです。王道クローズドサークルものの流れを踏襲していて、テンポがいいです。かなりの人数が死ぬにもかかわらず、文も雰囲気が明るいです。
 タイトル通り探偵が最初に死ぬこと、死んだ人間が幽霊になって小説に居続けることがユニークです。
 真犯人やその狙いが意外でした。また、笛木の存在にも秘密があり、おどろきました。

 ただ、推理小説としては、読者に推理させるような類の謎に乏しかったです。主に動機探しが最も大きな謎で、どうやって殺したか・誰が殺したかを楽しめる作品ではありませんでした。
 幽霊の視点や探偵が死ぬこの作品特有の個性をもっと活かした、大きなトリックを期待していました。しかし、あまり個性的などんでん返しは無いように感じました。
 樹里が助かったことはよかったのですが、館の自家発電がとまったことによってG達もこの世に留まることができなくなると思うので、ちょっとさみしいエンドでした(居続けても問題ですが)。


No.186 6点 シェルター終末の殺人
三津田信三
(2019/09/28 02:24登録)
ネタバレをしています。

 この本を読む前に、海外作品を読んでいたのですが、あまりの読みづらさに三津田信三に浮気(笑)。さすが三津田さんの文は読み易い!終わりまで一瞬でした。
 核ミサイルが落ちてきて急いでシェルターに入ったという、かなり特殊な状況のクローズドサークルですが、読み進めると王道クローズドサークルの流れを踏襲しています。出られないという状況での連続殺人。最後に残った一人は犯人ではない・・・ならだれが?という感じです。
 殺人が多く起こりますが、密室が多いです。ほぼ全て物理トリックであり、私は好みではありませんが、案外楽しめました。密室であることの理由は良くわかりませんが、まああの結末なんでどうでもいいか(笑)。
 割と初期の段階でこの本が三津田による記述であることが明かされます(というかこのシリーズはメタミステリだが今回はノートパソコン持参)。記述に嘘があるパターンもありますが、今回は記述者がひそかに代わるといった驚き要素もありました(主観を曖昧に書いてごまかす系叙述と似てますね)。
 結末はかなり意外なものでした。それを構成させるために、結構無理をしていると思います。作中作にすることや、三津田が頭を打ったことなどでギリギリ成立しているような。しかし、仮面の探偵(これも三津田の妄想?)による指摘で、三津田が一人でないとおかしい点が伏線として残されており、その点は見事でした。星影に引き継がれた後、その最後の文はどうやって星影が書いたのか?という疑問以外はさっぱりわかりませんでした。

 以下不満点。
・ミステリやホラーの映像作品の衒学?が多めでした。何作品かはメモさせてももらいました(笑)。ただ、ちょっとだけしつこかったかもしれません。
・この結末に近いような作品は結構あると思います。近くは無いけれど、主観の精神が不確かなものは、夢落ちや記述に嘘がある系と同じような系統だと思います。つまり、オリジナリティーは感じませんでした。
・自分が犯人で無いことは自分でわかっているッ という文は作中作の時点で効力がないと思う。


No.185 6点 殺人方程式
綾辻行人
(2019/09/22 18:19登録)
ネタバレをしています。

 ずっと前に読了していて、当然書評を書いたつもりでいたのですが、いま見たところ書いていなかったようです(笑)。
 当時、綾辻さん=館シリーズ=○○トリックというイメージがあり、この作品を読んで驚いた記憶があります。また、主人公達のキャラクターが明るく、非常に読み易いのも良かったです。
 大掛かりなトリックですが、フェアに書かれていると思います。んなあほな的バカミス感は無いと思います。ただ私の好みは、このシリーズの次の作品ほうが好みではあります(笑)。


No.184 6点 いくさの底
古処誠二
(2019/09/16 17:31登録)
ネタバレをしています。

 戦争中のビルマの村という、やや特殊な環境が舞台のミステリです。しかし、本の中での説明が簡潔で読みやすく、難なく物語へ入っていくことができました。
 賀川少尉と村長(偽)が殺害され、村長の真の姿が明らかになるにつれて、犯人の動機が分からなくなります。村長は殺されるとき無警戒である→村長は華僑であり重慶軍とパイプがある→日本軍ではなく、村の人間が殺した可能性が高い→しかし賀川少尉はなぜ殺されるのか? と考えが堂々巡りします。最後まで読んだとき、犯人の意外な正体と動機に納得しました。
 犯人につけられた(と錯覚させた)あだ名"イシマツ"のミスリードが見事で、自然と賀川少尉がつけたものと勘違いしてしまいました。しかも、このイシマツは、犯人の正体を推測する伏線にもなっていました。

 以下難癖。
 登場人物の名前がフルネームでないので、なんとなく感情が入らない。このへんはあだ名関連があって難しいのかもしれませんが。
 犯人の賀川少尉に対する殺意を抱いたシーンが淡々としすぎている気がする。もうすこしドラマティックでもよかったかも(?)


No.183 6点 羊の秘
霞流一
(2019/09/14 01:17登録)
ネタバレをしています。

 キャラクターが明るく、始めはユーモアミステリかと思いました。しかし、ページが進むにつれて、過去の自殺者と現在の被害者の関連が明らかになるにつれて暗い出来事やオカルトのような感じが強くなりました。見立て殺人が3つ続きますが、羊に関連した呪術的なものであり、その説明の衒学?のページが多くやや読みづらかったです。

 本格推理小説としては、不可能犯罪2つと犯人当てがあり、満足しました。
 不可能犯罪はどちらもまったく当たりませんでした。足跡のない殺人は、図がほしかったし、偶然が強く絡み、犯人が意図しないものなのでいまいちでした。3番目の殺人は、死体の状況からピタゴラスイッチ的な要素があるとは思いましたが、自分には当てたれる気がしませんでした。
 犯人当ては、かなり細かく小さい出来事から当てているのでかなり難易度が高いように思いました。しかし、説得力があってよかったです。

 ラストはホラー?のような感じで終わりましたが、犯人断定の推理を覆すものでないので、邪魔にならないと思います。


No.182 8点 吸血の家
二階堂黎人
(2019/09/01 22:53登録)
ネタバレをしています。

 今まで、なぜか敬遠していた二階堂黎人作品で、今作が長編では初めてです。これほど濃厚な本格を書くとは知らず、これからはまりそうです(笑)。
 旧家の雰囲気(?)や、過去のおどろおどろしい怪談じみた伝説。その遺伝子を受け継ぐ人々。美しい姉妹…などなど、どこか横溝作品を思わせ、そのためか非常に読み易く、厚い本にも関わらずさほど時間がかからず読了しました。横溝作品の素晴らしい雰囲気に、さらに本格度を加えたような作品で、好みです。また注釈が丁寧で、ミステリに対する愛も感じました。この本にでてくるタイトルも何冊か気になりました。

 本作の謎も、不可能犯罪3連発という、豪華で魅力たっぷりな物となっています。
 井原殺しについて。実は、私が唯一当てる事のできたのがこれでした。私が当てられるということは、難易度が低いということですが、3つの事件中もっともフェアであることかもしれません(伏線もたくさんありましたしね)。私はこの謎が一番好みでした。
 瀧川殺しについて。時計を壊したのは、瀧川の時計が壊れていることを知らない人物ではないか?ということを思った以外、あとのことはさっぱり(笑)。様々なミスリードによって、自然と犯行時間がずらされているのが見事でした。結末は犯人以外に協力者がいて、犯人を庇っていたというものですが、まあ笛子一人でもできないことはないし(?)、物語の色どりを加えるという点でありでした。
 大権寺殺しについて。これもさっぱりわかりませんでした。凍ったテニスコートに足跡がつかない具合や、石灰?をまいた具合がよくわからず、いまいちな印象を持ちました。注釈で説明はありますが、私は警部とおなじ"石灰をまいたら目立つんじゃ?"とか思ってしまいました(笑)。

 以下不満点。
 不可能犯罪ものにはつきものですが、やはり協力者の存在は不満です。井原殺しの真相や、話の流れ的に笛子がイト子と親子なのは察したし、何かしらやっているとは思いましたが、協力者がいるとやはり難易度が跳ね上がりますね(笑)。しかし、それを示唆するような伏線を残してあるのが流石です。
 瀧川殺しの死体放置は大胆であっぱれですが、犯人にとって危ない橋を渡りすぎなのでは…?
 過去の名作のネタバレはやめてほしです(笑)。


No.181 6点 鬼面村の殺人
折原一
(2019/08/19 20:58登録)
ネタバレをしています。

 とても明るいキャラクターたちが、非常に読みやすい作品でした。主人公の黒星警部、相方の虹子は魅力的でした。
 メインのトリックは、建物が消失するという大掛かりなもの。あとは小粒目の密室が2つ。大がかりなものだと、やはり大人数で行わなくてはならず、馬鹿ミスの香りが漂います(笑)。黒星と虹子の主観が入れ替わり、読んでいると別々の位置にいることをわかりにくくさせるミスリードが良かったです。

 以下、不満点。
 別作品のネタバレはやめてほしいです。ビニールハウスの密室は私の盲点で、はっとさせられましたが、これも前例があるんですね(笑)。

 黒星警部が気に入ったので、いつかまたこのシリーズを読みたいと思います。


No.180 7点 仮面舞踏会 伊集院大介の帰還
栗本薫
(2019/08/12 01:54登録)
ネタバレをしています。

 私はチャットについての知識がありません、そのため、序盤は読むのに苦労しました(笑)。しかし、中盤からは一気に惹きこまれ、すいすいページが進みました。
 これまでに読んだことのないジャンルであり、本格推理小説としてではなく、純粋な小説としても楽しめました。
 中盤にある、「男性が作ったの理想の女性キャラクター」やその逆の話がありましたが、これはとてもよく共感します(笑)。漫画やアニメだけでなく、推理小説の女性探偵とか当てはまる部分が多いともいます(笑)。

 以下、不満点。
 犯人のだいたいの正体、姫野が怪しいということはすぐに気づきました。しかし、犯人が精神病?をわずらっていて行動に予想しづらいことと、犯人が姫野の意図しない行動をしてしまっているため、犯人当てやアリバイトリックという楽しさはありませんでした。事件は、すべて犯人の思い通りにいく小説のほうが好みです。
 やや後味の悪いラストでした。姫野になにも罰が与えられていないのが不満です。


No.179 5点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2019/07/30 21:24登録)
 ネタバレをしています。

 かなり昔、創元推理文庫のやつを購入していました。しかし、そのときは訳の文章の合わなさと、文字の小ささや印刷の汚さのため、一度読むのを挫折しております。このあいだ読んだ新訳版の"緑カプセルの謎"や"ユダの窓"などは非常に読みやすかったので、新訳版の"白い僧院の殺人"を再購入(笑)。しかし、よく理由はわかりませんが、これもちょっと読みづらさを感じてしまいました。館の見取り図ぐらいはほしかったなぁと思いました。

 今作は、ミステリ初心者の私でも3~4作品はみたことのある"雪の密室"。犯人はどうやって足跡を残さずに現場を去ったのか…という問題は、ちょっと考えただけでもわくわくします。しかし、実は雪の密室に良い思い出がありません(笑)。雪の密室ものには犯人に有利な偶然や協力者が多すぎる印象があります(そもそも雪が降ること自体が偶然だし)。今作もそんな感じです。この作者の作品は、素晴らしいアイディアとそれを成立させるための強引な要素が混じっている印象ですが、今回は強引さが勝っていると思います。


No.178 6点 ○○○○○○○○殺人事件
早坂吝
(2019/07/20 00:34登録)
ネタバレをしています。

 非常に読み易く、読み始めてから2日で読了しました。
 南国モードには笑いました(笑)。みんなに認知されているのもウケる。ただ、これも微妙に伏線だったんですね(?)。
 包茎だの剥けているだの、六とんを思い出すワードがでて、メフィスト臭がするな~と思ったら、本当にメフィストだったんですね(笑)。らいちとのチョメチョメシーンも読んでいるときには"ここいらないだろ"と思ってましたが、結局推理に絡んでおり、雰囲気はギャグ調でも案外無駄がない印象でした。登場人物がヌードだということを隠した叙述トリックのひとつだと思いますが、そのメイントリックと物語全体がマッチしててよかったです。
 "挿話 井の中の蛙"で、まるで挑発のような文章がかかれていて腹が立ちますが(笑)、仮面=入れ替わりという鉄板ネタをミステリオタクの沖が気づかないはずがないというヒントが与えられていて良いですね。まあそれでも、叙述トリックと挑戦状は相性が悪いと思います(笑)。
 ビッチ探偵は非常に新しいですね(笑)。いま作者の作品ページをのぞいてみると、シリーズ化されていますね。この作品のレベルなら他も読んでみたいです。

 以下、難癖。
 仮面入れ替わり系は、知人ではバレると思います・・・。顔以外の要素が多いですよね。体の見た目や声や体臭、雰囲気や動作とかやはり仮面つけただけでは難しいのでは(似ているという描写はありますが)。包茎問題も、剥けば同じってわけでもないだろうし・・・。
 タイトル当てであって、犯人当てでないとのことですが、純粋論理思考で犯人を当てられると書いてあります。到底そうは思えないのですが。らいちの"ナニやアレにアイスピックを入れる"説も主観が否定したわけではなく、解決編後で明かされた要素。ヌーディストでなくても話が通用するように、どっちとも取れるように書かれているのが叙述トリックであって読者には判断が付かないと思います(偉そうに書きましたが、もしかしたら読み落としているかも・・・ヒントはあったと思いますが絶対に裸でないと通用しないシーンはないかと)

 いろいろ書きましたが、良い叙述トリックのアイディアとそれを活かした良作品だと思います。


No.177 6点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2019/07/18 02:35登録)
ネタバレをしています。

 犯人の緻密な計画や、アクシデントを利用しそれを計画に組み込む機転に感服しました。また、私が今までに読んだ鮎川作品よりも今作のほうがより犯人について細かく書かれており、小説としての厚みを感じました。

 しかしながら、鬼貫警部が登場するまで、個人的に好みではない展開でした。そのため、なかなかページが進みまず、読みづらさを感じました。社長の死~動機探し~犯人候補のアリバイ検証→候補から外れるという繰り返しは苦手です(笑)。労働組合と会社側の対立、宗教団体との対立も面白さは感しませんでした(宗教団体のほうは、非常に怖かったです)。
 さらに、犯人にやや都合が良い証言者や、予期せぬ偶然の要素はどちらも好みではなく、その点では期待はずれでした。

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