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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.67点 書評数:541件

プロフィール| 書評

No.421 5点 エジプト十字架の秘密
エラリイ・クイーン
(2019/07/05 20:31登録)
推理プロセスの一部における論理性の高さには、目を見張るべきところがあるのは事実。
一方、本格ミステリとしての骨格に比してプロットが冗長すぎ、かつ一部に破綻が感じられる点、ご都合主義の印象が強い点等があり、世評ほどの傑作とは感じられなかった


No.420 4点 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知淳
(2019/06/26 18:42登録)
著者の日常の謎系作品は、真相が飛躍する衝撃とリアリティの絶妙なバランス、それを解明するプロセスの論理性が特色であるが、そのいずれにおいても本来のポテンシャルが発揮されていない。
最近の読了作は軒並み同様の評価であり、近年における低調ぶりを裏付ける作品


No.419 5点 ○○○○○○○○殺人事件
早坂吝
(2019/06/26 18:41登録)
チャラけた作風であり、真相の一部には無理も感じるものの、伏線やトリックには妙味も感じられ、思った以上に本格の出来栄え。
メイントリックも趣向こそ目新しさはないものの、そのために用意された舞台設定や、底流する思想には好感。
ただ問題は、本作が持つ唯一無二のオリジナリティと言うべき「タイトル当て」の解答に全く面白みがなく、その趣向自体に意味がないのである。
「タイトル当て」が我々読者が期待するような、メタレベルのミスディレクションになっている訳ではなく、タイトルが判明したところで作品世界に何らの影響も与えないのである。
これでは話題性を狙って奇をてらったものの、消化不良な作品という誹りは免れないだろう。
以上を総合考慮して5点の上位


No.418 4点 死の枝
松本清張
(2019/05/11 18:47登録)
例によっていずれの短編も、小さな瑕疵や偶然から事態を反転させ、真相を判明させるというプロットであるが、犯人の行動に合理性が感じられず、またはご都合主義的に感じられる等、どの作品からも違和感が拭えない。
この点で「黒い画集」はもちろん、「張込み」「影の車」にも遠く及んでおらず、この評価


No.417 4点 十三番目の人格―ISOLA
貴志祐介
(2019/05/06 17:54登録)
その後、傑作・佳作を多数残している著者であるだけに、本作がデビュー作であることを割り引いても、この不出来ぶりは予想外と言わざるを得ない。
まずもって、人物造形やストーリーの運びに、とにかくリアリティが感じられないのである。
主人公は家出して風俗産業で働いているが、キスの経験さえない処女。
最終学歴は高卒で、中学時代には不登校も経験しているはずなのに、マイナーとも言える古典作品の知識があり、独学をベースに心理学者と対等に会話し・・・
20代前半で東京在住の美女だが、イケメンとは言え、30代後半の世慣れない学者に、自宅を遠く離れた甲子園で唐突に一目惚れ・・・
しかし、それ以上に問題なのは、本作の主題が拡散を続け、全く不明確なまま完結する点である。
本来、本作の主題は「多重人格者とエンパスのやり取り」であるべき(と私が勝手に考えている)ところ、終盤に唐突に「恋愛」と「幽体離脱」のゴッタ煮に移行し・・・
これならIsolaが13番目の人格である必要など全くない。
著者は「13」という数字が持つイメージが何となく欲しかったに過ぎない。
にもかかわらず、「十三番目の人格」を副題にまでしている意図は一体何なのか・・・
いやそもそも、作品前半の各人格とのやり取りに、こんなに紙幅を割く必要があったのかどうか。
もっと言えば、主人公が「エンパス」である必然性も・・・
読了後に本作のプロットに対する、さまざまな疑問が頭を駆け巡る作品


No.416 6点 鬼の跫音
道尾秀介
(2019/05/06 17:45登録)
どの作品からも確かなテクニックが感じられる一方、既視感も強い。
したがって、完全に外している作品がない一方で、突き抜けた作品もない。
短編集として水準には達しているものの、軽量コンパクトな印象が強い


No.415 6点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2019/04/29 18:00登録)
ミステリの新たな地平を切り開いた点で、非常に歴史的意義が大きい作品であることは認める。
しかし一方で、1個のミステリとしては、謎そのものが魅力に乏しい、犯行計画が杜撰、偶然の影響が大きい、推理における論理性・必然性が弱い等、多くの点で相当に甘さも感じてこの評価


No.414 5点 メイン・ディッシュ
北森鴻
(2019/04/29 17:59登録)
連作短編集であるにもかかわらず、真相を示唆する伏線や手掛かりに乏しく、読後の納得感は弱い。
料理というガジェットを除いて全体を俯瞰すれば、小粒な作品と言わざるを得ない


No.413 7点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2019/04/02 08:49登録)
足跡のトリックは一見して無粋・無骨な印象を受けるものの、被害者が仕掛けている点、犯行時間の誤認をリードしている点等、考え抜かれたもの。
老医師の手記という構成がもたらす真犯人の衝撃も含め、地味な印象が強い作品だが、完成度の高い佳作


No.412 7点 その可能性はすでに考えた
井上真偽
(2019/04/02 08:46登録)
ライトノベルの仮面を被ったゴリゴリの本格ミステリというプロフィールは、古野まほろの再来を思わせる。
毀誉褒貶が激しい作品であろうが、非常に斬新なアイデア、着地姿勢が乱れたものの、それでも1個のミステリとして着地させ切ったプロットの構想力、論理性の高さを高く評価したい


No.411 4点
麻耶雄嵩
(2019/04/02 08:45登録)
全体として著者の意図を掴みかねる作品。
本格ミステリとしては、アクロバティックな真相を成立させるだけの説得力に欠けており、この評価


No.410 6点 大いなる眠り
レイモンド・チャンドラー
(2019/02/28 18:49登録)
本作は複数の短編を組み合わせて作られたらしく、プロットは錯綜かつ破綻気味で、ミステリとしての完成度は低い。
ただ、これまでに読了した作品の中では、作者特有の抒情性が最も十全に発揮されており、その点を評価したい


No.409 5点 怪盗グリフィン、絶体絶命
法月綸太郎
(2019/02/28 18:48登録)
二転三転するプロットに作者の苦労・工夫の跡が垣間見られるのだが、それがストレートに作品の面白さにつながっていない。


No.408 6点 Rommy
歌野晶午
(2019/01/28 13:51登録)
ありふれたネタではあるものの、作品の構成や叙述に少しずつ感じていた違和感が氷解する真相であり、カタルシスは強い。
その説得力を補強するため、時系列をバラし、手記を多用した作品全体の組み立ては巧妙。
一方で、登場人物の造形や歌詞が陳腐で、真相を示唆する伏線に乏しく、リアリティやフィージビリティには弱さを感じる。


No.407 7点 我が家の問題
奥田英朗
(2019/01/25 20:15登録)
相変わらず達者、素晴らしく達者。
そのクオリティの高さに手放しで賛辞を送りたい。
取り上げられている「我が家の問題」と登場人物の生き様が、あたかも日本家庭の最大公約数であるかのように普遍性があり、それゆえにリアリティと共感性が高く、読んでいて全く飽きることがない。
それでいて筆致も実に巧みであり、「我が家の問題」を前向きに受け入れ、乗り越えていこうとする夫・妻・こどもの健気な姿が強く胸を打つ。
本サイトではこれ以上の評価は難しいが、軽量コンパクトな作品でもあり、万人に一読を勧められる佳作


No.406 2点 探偵Xからの挑戦状!
アンソロジー(出版社編)
(2019/01/25 20:14登録)
企画はすばらしいが、肝心のクオリティはミステリ読みの試練に耐えられるものではない


No.405 5点 死者は黄泉が得る
西澤保彦
(2019/01/25 20:13登録)
連続殺人事件自体はミステリとして相当に食い足りないレベル。
一方、死後のパートに仕掛けられたトリックは非常に秀逸であるが、「蘇生」という飛び道具の存在とそのルールがいかにもご都合主義であり、山口氏の作品のような必然性が感じられない点は、大きな減点材料。
エピローグのどんでん返しもインパクト先行で、破綻しているように感じられる部分がある。
意欲と構想は買うが、瑕疵・アラも散見される作品


No.404 7点 検察側の証人
アガサ・クリスティー
(2019/01/04 15:13登録)
そのプロットから着地点がある程度察せてしまうのは大きな難点であり、軽量コンパクトという印象は拭えないものの、全体として非常に完成度の高い作品と評価


No.403 6点 夏と花火と私の死体
乙一
(2019/01/04 15:11登録)
奇抜極まるアイデアは買うが、それ頼みの印象が強く、いわば「掴みはOK」という作品。
ただ、執筆当時の年齢が17歳であるという事実を考慮しなくても、その乾いた筆致には高い筆力が感じられ、後日の飛躍を伺わせるデキではある


No.402 6点 私が彼を殺した
東野圭吾
(2019/01/04 15:09登録)
本格ミステリとしては毀誉褒貶もあろうが、3人の容疑者に等しく犯行動機と機会を与え、一般の読者が到達できるレベルの真相を用意し、という本作の制約を考えれば、出色のデキと評価してよいのではないか。
終盤に向けて徐々に各章の尺を縮めていくことで、サスペンスを盛り上げていく手際も見事。
ただ、このテの趣向の宿命として、作品の焦点を「犯人当て」のみに絞り込んだ結果、人物が描けていない、登場人物に魅力が感じられない点が大きな難点。
趣向そのものに歴然とした限界があり、著者の相当な苦労にもかかわらず、それが十全に報われたとは言えない作品

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