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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.67点 書評数:546件

プロフィール| 書評

No.486 6点 救国ゲーム
結城真一郎
(2022/11/17 12:26登録)
ミステリとして、真相解明に至るプロセスの論理性はある程度評価する。
ただ、この真相に到達するのであれば、十分な説得材料が必要で、提示された社会派としてのテーマ、課題認識は悪くないものの、そこに特段の主張がある訳でもなく、掘り下げが圧倒的に足りないと感じる。
全体として一定の水準には達しているものの、それ以上の迫力はない


No.485 6点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2022/10/20 08:09登録)
最初に与えられる解決が、フィージビリティを無視した平凡な内容であるのは、言わば当然である。
それにしても提示された謎の不可解性に対して強く見劣りがするのは残念であるが。
ただ、それ以上に、それを覆して与えられる真の解決を評価することはできない。
リアリティがないのはよいとして、納得感がまるでないのである。
これほどまでに特殊な登場人物を置けば、どのような不可解な謎にも説明が付くのは当然で、ある種のファンタジーでしかない。
このファンタジー、すなわち登場人物の存在そのものが、ミステリというジャンルのありようや歴史に対する、深い認識から生まれていることは十分に承知しているが、それは言わばよくできたミステリ評論でしかなく、ミステリとは言えない。

本作に込められた著者の野心、稚気、チャレンジング・スピリットは大いに買うのだが、読者の想像を大幅に凌駕するものではない。
あらゆる変化球が投げ尽くされているなかで、突拍子もない変化球を投げると宣言されれば、打者として十分に読めてしまう球種。
ミステリというフォーマットのなかで、このようなアプローチを試みる限り、これが限界なのであろう。

そのような意味で、本作に対して批判的なスタンスに立つつもりはないのだが、一方で激賞されるべき作品であるとは到底思えず、6点の最下層


No.484 7点 13・67
陳浩基
(2022/10/17 18:36登録)
まるで香港に滞在しているかのように、臨場感・熱が伝わってくる筆致から、抜きんでた筆力の高さが窺い知れた。
一方で、社会派ミステリとしては、警察の正義というテーマそのものがありふれているし、とくに目を見張るような主張もない。
また、本格ミステリとして、連作短編集としては一定の水準には達しているものの、突き抜けた印象はない。
これらを俯瞰すればミステリとしては水準クラスであるものの、言わば香港のドキュメンタリーとして一読の価値がある佳作という印象


No.483 6点 第四の扉
ポール・アルテ
(2022/09/29 14:44登録)
本作の核となる事件と、その真相はトリックを含めて平凡。
プロットはサプライズを演出しているものの、独創性は認められない。
海外ミステリの翻訳とは思えないリーダビリティの高さ、冗長さを廃したスピーディな展開は大いに好感がもてるが、作品全体にご都合主義が強く散見される点は減点。
全体として一読の価値はあるものの、世評ほどの傑作とは思えなかった


No.482 6点 透明人間は密室に潜む
阿津川辰海
(2022/09/22 12:35登録)
表題作がズバ抜けたデキ。
透明人間が他の人物には見えないことを考慮し、透明人間自身を視点とした倒叙ミステリとして構成する等、非常によく考えられているのが印象的。
メインの謎に設定されている隠れ場所も秀逸であるが、それ以上に、そこから明らかになる真犯人の実像、そして動機等、透明人間という特殊な設定を最大限に活かしきった傑作と言ってよい。
それ以外の作品の評価も含めると、短編集としてはこの評価


No.481 5点 ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件
ホルへ・ルイス・ボルヘス
(2022/09/13 19:43登録)
kanamoriさんに同感。
翻訳の影響なのか、とにかく難読で、各話の解決は不条理とも思えるものであり、毀誉褒貶が分かれそうな作品


No.480 5点 ベヴァリー・クラブ
ピーター・アントニイ
(2022/09/02 16:49登録)
(直接的な表現は避けましたが、真相を強く示唆する記載を含みます)
真相そのものが抜群の奇想とは言えないし、この真相であれば、どのような不可能状況にも説明がつくのは当然。
そして、共謀者の死亡が単なる偶然で片付けられているに至っては、ご都合主義の極致であり、無気力と言わなければならない。
世評の高い作品であるが、期待外れのデキ


No.479 5点 ウォリス家の殺人
D・M・ディヴァイン
(2022/08/14 13:54登録)
犯人特定に至るロジックが非常に弱い。
特にアリバイの中核を成す事象は、不自然かつご都合主義的であり、その手がかりも納得感に乏しい。
真相解明の決め手は読者の盲点を突いている点で巧みさも感じられるところ、それだけに最終盤の運び、真犯人が明らかとなってから、その手がかりが指摘されるという手順はいま一つという印象が強い


No.478 6点 列車に御用心
エドマンド・クリスピン
(2022/08/09 19:17登録)
非常に世評の高い作品であり、各短編の堅牢性、豊富なバリュエーションは評価。
一方で、その内容・作風はかなり古さを感じさせ、翻訳のまずさも相まって、エンターテインメントとしてはいま一歩


No.477 4点 盤上の敵
北村薫
(2022/08/02 18:46登録)
ご都合主義としか言いようがない舞台を設定したうえで、さらに著者の都合がよいように一部のエピソードを後出ししているだけ。
加えて本作で描かれるさまざまなエピソードがリアリティ・説得力に欠けるうえ、それらがすべて必要だったようにも思えず、プロットの完成度の点でも難がある。
主人公の犯行計画に至っては、あまりにも杜撰というか、稚拙であり、警察がこれを阻止できないというのはあり得ないだろう。
独特の筆致に読ませるものがない訳ではないが、サスペンスにも乏しく、本格ミステリとしては評価すべき点が見つからない。
3点か4点か、熟慮を重ねたうえで4点の最下層


No.476 7点 medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼
(2022/08/02 18:45登録)
いずれのエピソードも真相解明のロジックが十分に練られており、本格ミステリとして非常に高い水準にある。
また最終盤には大きなサプライズを演出できているが、本作冒頭からそれを示唆する伏線を貼りすぎており、一部のミステリマニアは相当に早い段階で察知することが可能。
作品全体としてフィージビリティがほとんど顧みられておらず、納得感に乏しい点でも少なくない減点としたい。
以上、相当に毀誉褒貶が分かれる作品であろうが、全体として好意的に評価したい


No.475 4点 第四の核
フレデリック・フォーサイス
(2022/07/24 17:26登録)
フォーサイスの作品群は、執筆当時の世情に対し、著者の政治観を投影した舞台を設定し、そのうえでミステリが展開される。
前者が広く読者の共感を得るもので、かつ後者としても良質であるがゆえに、高く評価されてきたと考える。
翻って本作は、1980年代前半の欧州情勢を背景とする前者の存在感が強く、それを理解できない現代日本の読者にとっては、平凡な作品という印象が拭えない。
読者に著しく同時代性を要求する作品であり、このような評価とした


No.474 5点 我が家のヒミツ
奥田英朗
(2022/07/13 19:07登録)
同様の作風の他作と比べ、各短編の核を成す課題認識が共感性に乏しい。
それゆえに相変わらず達者ではあるものの、軽量コンパクトな印象が強く、見劣りすると言わざるを得ない


No.473 5点 ファミ・コン!
鏑矢竜
(2022/07/01 17:37登録)
アイデアは抜群に独創的であり、筋も悪くないので、読後感は悪くない。
したがって、批判的なスタンスをとるつもりはないのだが、最終盤のサプライズ以外に何かをもたらす作品ではないだけに、1個のミステリとして、作品としては、この程度の評価としたい


No.472 7点 パラサイト・イヴ
瀬名秀明
(2022/05/06 20:34登録)
現在となっては既視感も感じるが、執筆当時の世相を考えれば、非常に斬新な発想・アイデアではなかろうか。
最終盤・クライマックスに向かって加速する疾走感の演出も見事な佳作


No.471 6点 チーム・バチスタの栄光
海堂尊
(2022/05/06 20:34登録)
日本語は決してうまくないが、簡潔な叙述は平明で、ユニークなキャラクター造形と相まって読ませる力はもっている。
一方で、犯人は意外性に乏しく、トリック・動機も平凡。
平均的な水準の作品


No.470 5点 神の拳
フレデリック・フォーサイス
(2022/01/04 18:20登録)
意欲的な作品ではあるのだが、登場人物とサイド・ストーリーの多さから、前半部分のリーダビリティは非常に低い。
最終盤に至って、それらが一点に収斂していくのだが、読後にやや疲労感も感じるところ


No.469 3点 幽霊刑事
有栖川有栖
(2021/11/29 20:23登録)
見るべきところがなく、これほど特殊な設定を導入している点を勘案すれば、さらに厳しい評価にならざるを得ない


No.468 6点 透明人間の納屋
島田荘司
(2021/11/16 20:16登録)
これはテーマの選定と、プロットの構築力の勝利だろう。
本格ミステリとしては至ってチープであるにもかかわらず、サプライズを演出している。
こども向けミステリーとして執筆していること自体が、一種のレッドへリングとして機能している点に至っては、見事と言わざるを得ない。
これだけ内角高めのストレートを投げられると、外角低めに切れるスライダーを打つのは難しい。
小品であるがゆえに、これ以上の評価は難しいが、著者の類まれな力量が光る、一読の価値がある佳作


No.467 5点 理由
宮部みゆき
(2021/11/16 20:14登録)
本作は、当時社会問題化していた住宅ローンによる破綻と占有屋を主題に、それにまつわる人々の生き様を掘り下げつつ、1個の殺人事件に収斂させていく構成をとっている。
視点人物が刻々と変化するものの、そのプロットは単純で、骨格は一本道であり、そして何より真相がチープすぎるがゆえに、そうしたエピソードの数々が夾雑物と映り、読後に強く冗長さを感じさせるのである。
この内容で、この長尺をもたせ切る筆力はさすがだが、よく比較される「火車」には遠く及ばないと言わざるを得ない

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