home

ミステリの祭典

login
巡礼者パズル
ダルース夫妻

作家 パトリック・クェンティン
出版日2012年09月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 いいちこ
(2023/01/23 11:30登録)
著者と翻訳者の、いずれの力量に負うのかは定かではないが、闘牛・カーニバルといったメキシコの異国情緒満載のガジェットを活かしつつ、登場人物の息遣いさえ聞こえてくるような描写は、ミステリとしては出色のデキであり、とにかくよく描けている。
探偵が足下のトラブル解決に振り回され、真相解明が後回しになっていくのだが、そうした展開を通じて、登場人物の造形を掘り下げつつ、その複雑な人間関係がどのように収拾されるのかという興味で引っ張っていく。
多重解決風の趣向は、登場人物が非常に少ないがゆえに、難易度が高かったことと推察するが、読み応えが感じられた。
明かされた真相はサプライズに欠けるものの、十分な納得感を演出しており、また最後にもたらされた人間関係の清算も非常に印象深い。
一読の価値のある佳作であり、6点の上位と評価

No.3 6点 nukkam
(2014/09/02 15:13登録)
(ネタバレなしです) 1947年発表のダルース夫妻シリーズ第6作の本書はダルース夫妻を含めてわずか6人の主要登場人物の複雑な人間関係を描いており、(論創社版の巻末解説でも紹介されていますが)同時期に書かれたエラリー・クイーンの「災厄の町」(1942年)や「十日間の不思議」(1948年)に通じるところがあります。クイーンと大きく異なるのはメキシコを舞台にしたからでしょうか、異様な熱気のようなものが全編を支配しており息苦しいほどです。これだけ乱れた人間関係を官能描写を一切使わずに表現する手腕はお見事で、本格派推理小説としての犯人当て謎解きもありますが、この人間関係をどう収束させるのかという興味で最後まで引っ張ります。

No.2 7点 蟷螂の斧
(2013/12/27 14:18登録)
登場人物は6人。一癖も二癖もある6人がおりなす愛憎劇。サスペンスものと思いきや、不審な転落死事件から、”多重解決”風な展開となります。5人がそれぞれ犯人を思い描くが、愛情が絡みあい、お互いかばいあったりし、犯人を捜すより、事件をもみ消すような共同犯的な雰囲気となります。このあたりが楽しめますね。真相もユニークです。本作1947年。日本ではA氏の作品M(1977年)を思い起こします。

No.1 7点 kanamori
(2012/10/04 18:32登録)
”パズル・シリーズ”最後の6作目。といってもダルース夫妻は(ちょい役で登場の「わが子は殺人者」を含め)この後も3作品に登場しますが。
前作「悪魔パズル」が本格ミステリ要素の少ないスリラー寄りだったので今回も同様路線かと思っていましたが、いい意味で予想を裏切る出来です。
闘牛やカーニバルなど異国情緒豊かなメキシコを舞台にし、複数の男女の愛憎劇を主軸にした緊張感のあるミステリ趣向十分の謎解きモノでした。主要人物はダルース夫妻を含め6人で、シリーズ初期作と比べると、パズルのピースが少ないシンプルな構成ながら、一癖も二癖もある4人の男女の中で犯人候補が三転四転する多重解決的な展開が面白い。
しかし、パトQ作品が新訳を含め年3作も出る時代が来るとは思わなかった。ダルース夫妻シリーズの残りもそのうち出るみたいだから、この勢いでスタッジ名義のウェストレイク医師シリーズも訳出してもらいたいものです。

4レコード表示中です 書評