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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.68点 書評数:570件

プロフィール| 書評

No.90 8点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2014/04/28 14:34登録)
この著者、ミステリのあり方や限界に対して非常に自覚的で、その問題意識を作品の主題とすることが多い。
ただ決して声高に主義主張するのではなく、作品を提示し読者の評価に委ねてくる。
本作ではいわゆる「後期クイーン問題」がテーマ。
散りばめられた「偽の手がかり」と「本物の手がかり」を峻別するため、再三にわたってロジカルなアプローチが試みられる。
それでいて、犯人による誤導の後に示される、この問題に対する回答としての真相は、問題自体を無効にするような、皮肉極まりないもので実に秀逸。
確かに物語のクライマックスでは、荒唐無稽なトリックや無理筋と言わざるを得ない真相が明らかになるが、敢えて無難な落とし処を選ばなかった点を、作者ならではの稚気と解したい。
以上、他の作品とは異なる評価軸から採点してこの結果


No.89 7点 半落ち
横山秀夫
(2014/04/22 15:27登録)
本作の評価が世評と比較しても異様に辛いと感じる。
やはり投稿者の多くがミステリ読みであり、ミステリとして評価されているからなのだろう。
確かにミステリとしては脆弱な構造で、致命的な欠陥も存在しているのだが、1個の読物としては出色のデキ。
犯人を取り巻く人々を描き、犯行の筋を追いながらも、警察と検察の立場と利害や、職業倫理と組織の論理のコンフリクト・葛藤を抉り出す筆致は見事。
一本道のプロットと美しいラストは、素直すぎる、キレイすぎる印象は否めないが、抜群のストーリーテリングで爽やかな読後感を残すのも確か。
一言で言うとミステリ初心者向けの佳作ということだろう。
中級者以上には食い足りないかもしれない


No.88 7点 ユージニア
恩田陸
(2014/04/21 13:47登録)
存在するのは登場人物の人数分の主観的事実であり、客観的事実など存在しないという主題自体はありふれたもの。
しかし、物語のほぼすべてが手記風に語られるプロットが斬新。
読者に少しずつ見せていく真相が、事実なのか虚偽なのか幻惑しつつ、ミスリードの罠に嵌めていく手腕は見事。
ただ惜しむらくはラスト。
最終的にはぼかされるとしても、一旦キレイに着地してくれれば8・9点も望みえたのだが。
残念


No.87 6点 花と流れ星
道尾秀介
(2014/04/14 17:31登録)
「流れ星のつくり方」は短編のオールタイムベストで上位常連の名作だが、評判に違わぬラストのキレ。
その他の作品については、世評どおり冴えない内容だが、子供(特に少年)の心理描写の鋭さには改めて感心。


No.86 6点 新宿鮫
大沢在昌
(2014/04/14 17:20登録)
個性的な登場人物たちの活躍を活き活きと描き出す筆致で、リーダビリティは高い。
ただミステリとしての仕掛け・企みは希薄。


No.85 9点 スイス時計の謎
有栖川有栖
(2014/04/07 17:29登録)
表題作以外の3作は見るべきものがない「凡作」。
表題作はロジックの比類なき切れ味と、無駄を削ぎ落としたストイックなプロット・構成が光る傑作。
中途半端なボリュームだけに、長編にも短編にもカテゴライズされず、随分と損をしているだろうが、長編に水増ししてもクオリティが低下するだけだろうから、やむを得まい。
それでも短編のオールタイムベストの常連にランクインしている事実は伊達ではない


No.84 7点 第三の時効
横山秀夫
(2014/04/07 17:19登録)
文章は決して上手い方ではない。
しかし、非常に短い各センテンスが訥々とした独特の語り口で読ませる。
各話ともプロットは緻密で合格ラインを超えているが、とりわけ最終盤で二転三転する表題作が抜群のデキ。


No.83 7点 叫びと祈り
梓崎優
(2014/04/04 18:54登録)
各話とも舞台設定を活かし切ったプロットが素晴らしく、テクニカルな筆致が光る。
特に「砂漠を走る船の道」の真相の美しさ・衝撃度は別格で、ホワイダニットとしては最高級。
それだけに、随所で用いられる●●トリックのぎこちなさ、そして何より最終話「祈り」の結末が蛇足に感じられて残念。


No.82 7点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2014/04/04 18:49登録)
動機の納得性、考え抜かれた伏線の妙、トリックの鮮やかさなど、さすがの出来映え。
ただし、よく比較される「仮面山荘殺人事件」とはプロットの堅牢さで確実に差があり、一段落ちると言わざるを得ない。


No.81 6点 館島
東川篤哉
(2014/04/04 15:40登録)
犯人特定に至るプロセスはロジカル。
メイントリックは豪快ではあるが、意外性に乏しく実現性にも無理を感じる


No.80 8点 貴族探偵
麻耶雄嵩
(2014/03/22 10:13登録)
舞台設定や、トリックの奇抜さではなくロジックで勝負している点など、骨格は「謎解きはディナーのあとで」に非常に似ている印象。
ただ事件の真相や登場人物の性格付けには、この作者らしい稚気やエキセントリックさが発揮されている。
収録作品では「こうもり」が断然。
読者をあざ笑うようなアクロバティックな逆●●トリックは前代未聞で驚くべき奇想。
反則スレスレだが唯一無二のキレ味


No.79 4点 殺人の門
東野圭吾
(2014/03/20 18:49登録)
リーダビリティは相変わらずでさすが。
ただ作品の狙い・主題が途中でわかると、その後の展開が一定程度読めてしまい、緊迫感が殺がれるのが難点。
ラストも悪くはないのだが、救いのない物語はカタルシスが感じられない分、読後感が重苦しい


No.78 4点 成吉思汗の秘密
高木彬光
(2014/03/20 18:44登録)
純粋に読み物として楽しむべき作品だが、内容にかなり無理を感じてこの点数


No.77 6点 生ける屍の死
山口雅也
(2014/03/20 18:42登録)
独創的なプロットと真相は一定の評価
蘇生に関するルールが冒頭に明示されておらず、作品世界に没入するまでに戸惑いを感じた点が惜しい
人によっては高く評価するのも頷ける作品


No.76 5点 笑わない数学者
森博嗣
(2014/03/20 18:38登録)
メイントリックの難易度が低すぎる点が減点材料
逆トリックの意味するところは不明


No.75 6点 宿命
東野圭吾
(2014/03/20 18:14登録)
ミステリとしては作りこみに甘さを感じる
作者のすばらしいリーダビリティとテクニックが上乗せされてこの評価


No.74 5点 霧越邸殺人事件
綾辻行人
(2014/03/20 18:09登録)
プロットやトリックは及第点だが、解明されない謎がご都合主義と解さざるを得ず減点材料
作者の稚気と解せる人なら高得点の作品


No.73 6点 ロートレック荘事件
筒井康隆
(2014/03/20 18:04登録)
トリックの巧拙よりも、トリック以外のプラスアルファが感じられない点でこの点数に止めたい


No.72 7点 星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン
(2014/03/20 18:00登録)
壮大な舞台設定を背景としたハードSFながら本格ミステリとしても佳作。
映像で楽しめれば、なおよかったか


No.71 8点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2014/03/20 17:56登録)
プロットが抜群
犯行動機を巡る人間ドラマや印象的なラストシーンもよい
トリックに無理を感じるのが唯一の瑕疵

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