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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.68点 書評数:570件

プロフィール| 書評

No.390 5点 モルグ街の殺人・黄金虫 -ポー短編集Ⅱ ミステリ編-
エドガー・アラン・ポー
(2018/08/23 15:56登録)
表題作「モルグ街の殺人」は、毀誉褒貶はあっても真犯人の意外性において突き抜けた作品であり、高く評価したい。
それ以外の作品は、全体として古さを感じさせ、短編集全体としてはこの評価


No.389 2点 アインシュタイン・ゲーム
佐飛通俊
(2018/08/23 15:55登録)
ミステリとしても、1個の読物としても、何ら評価すべき点がなく、これまで読了した作品の中で最低クラスと評価せざるを得ない


No.388 6点 百器徒然袋 風
京極夏彦
(2018/08/10 13:11登録)
前作の雨と全く同じ性格の作品。
プロットの完成度・堅牢度、コメディとしての面白さは増しているが、本格度はやや低下している。
同じく6点の上位


No.387 4点 セーラー服とシャーロキエンヌ 穴井戸栄子の華麗なる事件簿
古野まほろ
(2018/08/01 16:18登録)
本作の狙い・趣向は理解できるのだが、本格ミステリとしての骨格が脆弱であり、作品の面白さにつながっていない


No.386 6点 オリンピックの身代金
奥田英朗
(2018/07/27 08:43登録)
客観的事実が一部先行し、その後に各登場人物の行動・心理が叙述される、倒叙的な構成を取っており、その時間軸の間隔が短縮する作品後半においては、サスペンスが大きく減退する構成となっている。
その点において、本作の構成は全体として非常に緻密であるものの、長尺すぎるという評価にならざるを得ない。
また、本作の主題、つまり日本社会が敗戦から立ち直っていく高度経済成長時代、とりわけその象徴的な存在である東京オリンピックの背景にある、理不尽な格差社会に対する課題認識は評価する。
しかし、その課題認識に対する主人公のアクションが、テロリズムという形態を取ることに違和感が拭えないのである。
確かに、日本の富の多くがオリンピックの開催地たる東京に落ちるのであろうが、主人公の仲間たちをはじめ、各地方もその恩恵に多少なりとも浴するのは間違いない。
にもかかわらず、それに対する反発がテロリズム、しかもそのエネルギーが政治ではなく警察に向かうのが不可解と言わざるを得ない。
主人公による麻薬の常習が、そうした行動原理の不可解さに対するエクスキューズであるように感じられる点は非常に残念


No.385 3点 名探偵の証明
市川哲也
(2018/07/09 17:08登録)
まず叙述の拙劣さは、これまで私が読んできたミステリ作家の中でも1・2を争う、商業出版としていかがなものかというレベル。
作中で発生する事件と、その推理プロセスは、それが本作の主題ではないことを差し引いても、何ら評価できるものがない。
それでいて、名探偵の存在意義を問う本作のメインテーマからも、印象に残るものが何もない。
当然厳しい評価にならざるを得ない


No.384 3点 終着駅殺人事件
西村京太郎
(2018/07/02 18:37登録)
作品の底流をなす抒情性等、全体としてのテイストは決して嫌いではない。
ただ、全登場人物が殺されることによって真犯人が判明するプロットとはよいとして、その間実証的な捜査を全く行なわず、情緒的な言動に終始する捜査陣の無能ぶりはいかがなものか。
その他、犯行プロセス全体の合理性・フィージビリティの低さ、トリックのレベルの低さなど、本格ミステリとして評価できる点がない


No.383 7点 天空の蜂
東野圭吾
(2018/06/27 11:22登録)
みなさんが指摘しているとおり、著者の抜きんでた先見性を立証する作品。
執筆当初から映画化を意識したかのようなキャッチーなプロットもお見事。
人物描写、とりわけ犯人の背景にある人間関係と犯行動機の作り込みには甘さも感じるが、良質なサスペンスであり、ギリギリ7点の評価


No.382 5点 火刑法廷
ジョン・ディクスン・カー
(2018/06/19 16:09登録)
提示された謎の不可解性は強烈だが、その真相は数々のご都合主義的な偶然と小粒なトリックによるもので、拍子抜けと言わざるを得ない。
にもかかわらず、非常に長尺の作品であり、それでいて読者への伏線も不十分であることから、本格ミステリとして評価することは難しい。
そうした性格から、本作は最終盤のどんでん返しによって完結するサスペンスと解したいが、その視点からは意外性が不十分な印象


No.381 7点 ギリシャ棺の秘密
エラリイ・クイーン
(2018/06/08 20:26登録)
登場人物が非常に多いにもかかわらず、犯人と目される人物が限定的で、かつ少数の証拠で容易に絞り込まれてしまう点で、筋肉質かつエレガントな「オランダ靴」には遠く及ばない。
また、プロットに盛り込まれたエピソードやガジェットが、その巨体に見合う十分な効果を挙げておらず、中だるみを強く感じさせる印象。
真犯人の衝撃を買って7点の最下層


No.380 6点 サウスバウンド
奥田英朗
(2018/05/31 08:46登録)
個々のエピソードは面白いのだが、他の作品にない説教臭さと、まとまりの無さを感じさせ、主題が曖昧な印象が強い。
読み物としては一定の水準に達しているのだが、著者の本来の力量が発揮されておらず、読者の期待に応えているとは言いかねる作品


No.379 5点 陰の季節
横山秀夫
(2018/05/02 13:50登録)
いずれの作品も小粒ではあるものの、一定の水準を保っているのは間違いない。
ただ、ご都合主義的な偶然や登場人物の不可解な言動等、リアリティの弱さ、主人公の推理が論理性に乏しく、飛躍が散見される点で、ミステリとしてのツメの甘さが散見される点は気になった。
読了順が逆になったことで、著者の後日の飛躍を実感させられる読書となった


No.378 5点 ジェリーフィッシュは凍らない
市川憂人
(2018/04/27 11:38登録)
伏線・ディテールに至るまで非常によく考えられた作品。
ただ、そもそもフーダニットを放棄した作品であろうから、犯人が直感的に分かってしまうのはよいとして、肝心のハウダニットも想定の範囲を脱していない。
各所で綱渡り、ところによってはアンフェアな仕掛けが講じられているのに、それだけの効果が挙げられていない。
著者の確かな実力は感じられるものの、作品の構想自体に難があり、それが十全に発揮されていない


No.377 5点 QED 六歌仙の暗号
高田崇史
(2018/04/17 15:51登録)
各登場人物の目を覆うようなオーバーリアクションをはじめ、叙述そのものの拙劣さ、ヒロインがワトソン、つまり探偵の引き立て役として全く機能していない点など、第一作の難点は改善されていない。
最も重要なガジェットの1つであるダイイングメッセージが、ハナから「七」に見えない点も大きな難点。
歴史解釈がもし著者のオリジナルだとすれば、高く評価することができ、5点の最下層としたが、ミステリとしては平凡で、歴史解釈とミステリの両者が有機的に連携しているとも言えない。


No.376 6点 百器徒然袋 雨
京極夏彦
(2018/03/30 14:16登録)
キャラクター小説としての色彩が強く、長編ほどのスケール感・完成度に達していない点で、百鬼夜行シリーズの同人誌的なスピンオフ作品という評価が妥当だろう。
それでも本格ミステリとして一定の水準に達しているし、何より読物として抜群に面白く、6点の上位


No.375 6点 体育館の殺人
青崎有吾
(2018/03/26 19:32登録)
真相解明プロセスの論理性の高さ、作品の各所に配されたガジェットの活用の巧みさ等、デビュー作としては出色のデキだろう。
明かされた真相がややもするとサプライズに乏しく、犯行計画のフィージビリティにもやや難点を感じるが、全体としては極めて堅牢な本格ミステリであると言えよう。
6点の最上位


No.374 4点 幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート
倉知淳
(2018/03/16 10:33登録)
著者の日常の謎系作品は、真相が飛躍する衝撃とリアリティの絶妙なバランス、それを解明するプロセスの論理性の高さが特色であるが、そのいずれにおいても「猫丸先輩の推測」はもちろん、「猫丸先輩の空論」にも遠く及んでおらず、4点の下位


No.373 6点 葬儀を終えて
アガサ・クリスティー
(2018/03/06 15:26登録)
プロット全体の重要な前提となる、ある事実が判明した瞬間、プロットが一挙に反転し、真犯人が特定されるという構成の妙は買う。
しかし、犯行の動機や目的に比して、その手段があまりにもリスキーであり、それが全く露見しなかったことも含めて、リアリティが感じられない。
真相解明に至る推理のプロセスにも疑問が残り、世評ほどに高く評価することはできない


No.372 8点 背徳のぐるりよざ セーラー服と黙示録
古野まほろ
(2018/02/28 15:35登録)
何と言っても「太平洋戦争終了直前から閉鎖されたカトリックのムラ社会」という奇想天外な舞台設定が奏功。
これにより本シリーズと横溝の名作の世界観を折衷し、十戒の遵守という設定により、本格ミステリと親和性の高い論理世界を実現している。
ホワイダニットを解明する前提となる真相は、その内容にやや疑問を感じる点が残るものの、そうした事態が発生する蓋然性は高く、本作のタイトルに込められた意図も含めて強烈な破壊力を持っている。
フーダニットは真相とそれを解明するプロセスもさることながら、その証明の手際が実に鮮やか。
以上、細部には毀誉褒貶があるものの、本格ミステリとしての骨格の堅牢さを評価してこの点数


No.371 7点 神秘の島
ジュール・ヴェルヌ
(2018/02/20 19:12登録)
「海底二万里」以上に、緻密に組み上げられた莫大なガジェットが、本作の魅力の源泉であり、その抜きん出た構築の才は高く評価する。
一方、こども向けの作品であることも影響しているのか、登場人物がことごとく万能であり、ご都合主義的な幸運に再三恵まれるなど、スムーズすぎるプロットがサスペンスを減じているのは事実。
とりわけ、リンカーン島の生活インフラは、あのような少人数がわずか4年間で建設できるかと言えば、大いに疑問が残るところ。
しかし、総合的な評価としては、非常に面白い作品であり、リーダビリティの高さも相まって、高いレベルにあるのは間違いない

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