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ミステリの祭典

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サウスバウンド

作家 奥田英朗
出版日2007年08月
平均点7.14点
書評数7人

No.7 6点 麝香福郎
(2023/08/07 20:25登録)
主人公の二郎は、ごく普通の小学校六年生。ただ一つ普通ではないのは、父親が左翼の元活動家で、国民の義務や年金制度や税金、すなわち国家を認めない頑固者だったことだ。はたから見れば相当面白い変わり者だが、二郎にとっては、何かにつけて問題を起こす厄介な存在。
物語の前半では、まっとうな正義感の持ち主である二郎が、あくどい中学生の恐喝にあい、その災難に友人たちと立ち向かってゆく。小学六年の心臓の鼓動が聞こえてくるほど生々しくスリリングな語り口だ。
だが、小説の加速するのは後半で、父親が家に匿った活動家が事件を起こしたことから、二郎の一家は沖縄の西表島に引っ越しすることになる。
この南島で、新たな事件のタネがまかれ、それまで迷惑千万な脇役に過ぎなかった父親が、がぜん存在感を増し物語は二郎の目から見た、思想闘争の趣を帯びてくる。現代のドン・キホーテである父親の行動を触媒にして、自然と文明、個人と国家、ユートピアと権力という根本的な問題が問われるのだ。自然への憧れを失わない大人のための、苦みの効いた冒険小説。

No.6 6点 いいちこ
(2018/05/31 08:46登録)
個々のエピソードは面白いのだが、他の作品にない説教臭さと、まとまりの無さを感じさせ、主題が曖昧な印象が強い。
読み物としては一定の水準に達しているのだが、著者の本来の力量が発揮されておらず、読者の期待に応えているとは言いかねる作品

No.5 5点 シーマスター
(2011/03/08 23:14登録)
う~ん、奥田作品としては初めて「長さ」を感じてしまった。

小6男子の主人公の目線で語られる自分と破天荒な親父を中心としたライトタッチの(たぶん)社会派小説。

東京での前半は家庭問題と、親父とその仲間の反体制姿勢の問題と、不良中学生の問題がメインだと思うが、いずれも全く緊迫感が感じられず、凸凹凸凹話が進む感じ。
また、リアリティが持ち味の奥田さんにしてはチョットという点も・・・例えば、親父の暴行傷害が無罪放免になるか?息子も札付き後ろ楯付きの不良を相手にソレで済むか?(ていうかその不良がショボすぎ)・・・等々

八重山での後半もいろいろ起こるわけだが、ちょっと島の情景描写がダラダラ多すぎ。私自身、国内外問わず南国は大好きだし何度でも訪れたいとは思うが、その感覚的な思い入れや情感は残念ながら文章で堪能するのは難しい。最後の方のドタバタもシリアスには感じられず寧ろアクション映画型ステレオタイプの反逆一匹狼、という印象はどうにもならない。

それと伊良部シリーズなどでは見事にベールでくるみ抑えてきた教訓臭さが醸し出されてしまっている印象も少なからず受けてしまった。
やっぱり奥田さんは短編か、長編なら「最悪」「邪魔」のようなグイグイサスペンスがいいんじゃないかな、と。

No.4 8点 E
(2010/09/20 22:16登録)
これはとっても爽快☆な作品。
素直に好きな作品でもあり、リアルな「少年像」を見た気がしました。

No.3 8点 あびびび
(2009/11/29 14:28登録)
おもしろい。特に後半の西表島編が最高。小学6年生の男の子が主役だが、その目線の魅力的なこと…。もう一度その時期に戻りたいとさえ思う。

ただ、ほとんど謎のない物語なので、マイナス1点は渋々…。

No.2 9点 itokin
(2008/09/12 11:31登録)
奥田さんの作品はどうしてこんなに楽しいんだろう。この人のユーモアのセンスには脱帽です。小6の子供目線で書かれているがその世界が生き生きと描かれている。それぞれのキャラも際立っていて特にお父さんの虎さん的キャラは最高。

No.1 8点 ひこうき雲
(2008/08/13 00:57登録)
国が嫌いで、税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などないという昔、過激派だった型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いたストーリー。
一部、二部構成になっており、一部は東京での生活。父親は学校、世間を頑と受つけず、無茶苦茶な親父に苦労する話って感じ。二部は、移転して沖縄西表島での生活。こちらでは父親は一転目覚めたように生き生きと仕事を始める。。。。
飽きることなく楽しめます。

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