蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1701件 |
No.321 | 8点 | 虚無への供物 中井英夫 |
(2012/11/30 13:25登録) 三大奇書は難解?との意識があり、手に取りづらかったのですが、東西ベスト100の2位ということで拝読。通常のミステリーと同様、読みやすいものでした。推理合戦の元祖?「毒入りチョコレート事件」を彷彿させ、国内外の有名作家のトリックが引用され楽しめました。作中作や見立て殺人(シャンソン、薔薇、不動)の推理などの構成は、かなり凝っていると思います。Wikipediaより「アンチ・ミステリーとは狭義には三大奇書を・・・『ドグラ・マグラ』はその大胆な構成と幻想小説らしさ、『黒死館殺人事件』は本筋と含蓄の主客転倒、『虚無への供物』は文中に推理小説自身を否定する記述が含まれることから、三大奇書に科せられた別名であった。」本作の真相がアンチ・ミステリーの元祖であるということがよく理解できました。 |
No.320 | 7点 | 国境 黒川博行 |
(2012/11/26 18:25登録) 小説として楽しめたが、やや長編で時間がかかってしまいました。いわゆるミステリー系(謎解き)以外に分類されるエンタメ系、ハードボイルド系はあまり好みでないので・・・この評価で。 |
No.319 | 8点 | 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? 詠坂雄二 |
(2012/11/23 09:59登録) 「電気人間の虞」が全く肌に合わなかったので、本作はどうかな?という気持ちで読みましたが、これは収穫でした。佐藤誠はなぜ首を切断したのか?というホワイダニットです。真相には、「うーん、成程そういうことか・・・」と納得してしまいました。ホワイダニット1本で一冊書き上げたことについて、評価したいと思います。最終章の「署名」も余韻のある終わり方で結構でした。 |
No.318 | 7点 | 東西ミステリーベスト100(死ぬまで使えるブックガイド) 事典・ガイド |
(2012/11/22 17:28登録) 本日、週間文春より臨時増刊(1月4日号)。1985年版の改訂版であり、1985年以降の作品が多数ランクインしています。日本推理作家協会、SRの会、大学ミステリークラブ、各地の読書会、国内外のミステリー通へのアンケート結果(387人の回答)であり、得点は1位10点、2位9点・・・として集計されたものです。ちなみに、このサイトでの評価(本日現在)と比較してみました。 順位(前回) 書名 投票人数 当サイト平均点数 人数 1(1)獄門島 85 8.05 42 2(2)虚無への供物 73 6.52 21 3(21)占星術殺人事件 60 8.22 167 4(6)ドグラ・マグラ 49 5.29 14 5(-)火車 60 7.21 80 6(3)点と線 49 6.35 17 7(12)大誘拐 54 7.53 36 8(-)十角館の殺人 46 7.95 240 9(-)魍魎の匣 45 8.01 119 10(7)本陣殺人事件 31 7.60 30 <海外編> 1(4)そして誰もいなくなった 91 8.53 62 2(1)Yの悲劇 65 7.89 35 3(10)シャーロック・ホームズの冒険59 7.90 20 4(2)幻の女 60 7.88 24 5(8)アクロイド殺し 47 8.23 48 (感想)通ではない平凡なミステリーファンの私とは、だいぶ評価に差があることがわかりました。三(四)大奇書が上位に入っていることが一番の相違点ですね。このサイトで、満点をつけている法月綸太郎氏、折原一氏がベスト100に入っていませんでした(苦笑)。慰めは、このサイトで低評価3.4点(私の評価を除く)のダ・ヴィンチ・コードが69位にランクされていたことですか。ベスト100の作品が自分にとって面白いかどうかは別にして、今後参考にしてゆきたいと思います。 |
No.317 | 8点 | 造花の蜜 連城三紀彦 |
(2012/11/21 12:42登録) 誘拐物の傑作だと思います(マイベスト3に入ります)。二重三重に仕掛けられた大小のトリックに魅せられました。最終章は、続編のようなものであり、本編・続編の二つを通して題名「造花の蜜」に繋がっていくものと思いました。 |
No.316 | 9点 | どこまでも殺されて 連城三紀彦 |
(2012/11/19 10:26登録) 「7回も殺されている」・・・一体どういうこと???という謎をひきずりながら物語は進みます。妄想ではないこと(きっちりしたオチ)を期待しながら読んでいくのですが、途中、男子高生が教師に助けを求めるあたりから、やはり妄想でしかない?と思ってしまいます。その辺の描き方は秀逸だと思います。そして、裏表紙にある「驚愕の展開」になるのですが、大変満足な結果でした。 |
No.315 | 5点 | 毒薬の輪舞 泡坂妻夫 |
(2012/11/17 17:48登録) 舞台設定はそれなりに楽しめたのですが、小技が多く、ややインパクトに欠けた感じがしました。子供の登場、毒薬となると、エラリー・クイーンの某代表作をイメージしてしまいました。 |
No.314 | 5点 | 死者の輪舞 泡坂妻夫 |
(2012/11/12 18:42登録) ユーモア系の特異な刑事が登場するのですが、なんとなく馴染めない感じがしました。プロットは題名より解りやすいし、前例があるので驚きはありませでしたが、ラストにおいては一捻りがありました。 |
No.313 | 7点 | 枯葉色グッドバイ 樋口有介 |
(2012/11/08 10:44登録) 既読2作品は青春ミステリーでしたが、本作は凄惨な一家殺しと女子高生絞殺で趣(重さ)が相違していました。共通している主題は、被害者の過去を調べれば、知りたくないことまで暴かれる・・・その覚悟があるか?というような気がします。ホームレスの元刑事と女性刑事、女子高生(惨殺された家族の生き残り)の関係がユーモラスに描かれ、本作品の底に流れる陰湿さを緩和しており、うまいと思います。元刑事の推理(勘によるものが多く本格とは言い難いのですが・・・)が当たっているようで微妙に?という点が本作の読みどころではないかと思います。 |
No.312 | 5点 | 風少女 樋口有介 |
(2012/11/06 20:56登録) 主人公は、中学時代に好意を寄せていた麗子の死を知る。風呂場での事故死とされていたが、不信を抱き、麗子の妹と調査を始める。ミステリー度はそれほどありませんが、麗子の友人関係(主人公の同級生)を調べていくうちに、それぞれの若者の生き方が浮き彫りになっていくといった青春物語です。 |
No.311 | 6点 | ぼくと、ぼくらの夏 樋口有介 |
(2012/11/05 08:30登録) 同級生が自殺したことに無反応・無関心な主人公。この点には違和感を覚えました。その後、心の変化は良く解らないのですが、自殺の調査に乗り出します。どうも主人公の性質を把握することができませんでしたが、ユーモアもあり青春ミステリーとして楽しめました。 |
No.310 | 6点 | 妖かし蔵殺人事件 皆川博子 |
(2012/11/02 18:33登録) 過去、何代にも亘って起きている蔵からの人間消失事件という謎が、妖しく漂い、皆川ワールドの片鱗を醸し出しています。歌舞伎の舞台(大仕掛け)や小道具を使ったトリック自体は、それほどの驚きはありませんが、複雑な人間関係が解きほぐされてゆく過程は楽しめました。 |
No.309 | 4点 | 未完成 古処誠二 |
(2012/11/02 07:37登録) 一般小説にミステリーがプラスされた感じです。孤島の自衛隊射撃場で小銃が紛失し、その謎を追うものですが、どうしても大事件とは思えませんでした(自衛隊では、秘密状態で解決しなければならない重大事件という設定)。ホワイダニットがメインで、それはそれなりに納得できるものでしたが、謎が小粒なので、なかなかページが進みませんでした。 |
No.308 | 8点 | 悪意 東野圭吾 |
(2012/10/29 19:11登録) 通常のミステリーにおいてはトリック重視なので、動機にはそれほど感心はありません。しかし、計画犯罪の場合は、絶対納得できる動機があって欲しいと思っていたので、本作はその点、非常にマッチした作品でした。同じ倒叙ものでは、「X」より本作の方が数段上のような気がします。 (ネタばれ)計画犯罪における動機そのものに対するトリックという点で高評価です。ただ、文鎮、古い大学ノートに関しては、違和感が残ります。 |
No.307 | 7点 | ウェディング・ドレス 黒田研二 |
(2012/10/27 21:03登録) 途中で???となり、そのままラストへ。読み返せば解ると思いますが、そのような読み方をしない性質なので、???のままは初体験でした。密室トリックは、発想はいい(+2)と思いますが、現実味は?で(-1)といったところ。文章はすっきりしていて読みやすかったですね。デビュー作、かつ、イニシエ(2004年)より本作(2000年)の方が早い出版ということで+1。 |
No.306 | 5点 | 知床岬殺人事件 皆川博子 |
(2012/10/25 20:27登録) 一人住まいの女性宅に、昨日約束した映画製作費の出資をお願いしたいと、映画監督が訪れてきた。女性には全く身に覚えがない話であった。やがて女性は自分が二重人格であると気がつく。そして殺人が起こり、女性は容疑者として捕らえられる・・・。もう一人の人格が殺人を犯したのか?という展開(皆川ワールド)を期待したのですが、後半は通常のミステリータイプのストーリーとなってしまい残念です。 |
No.305 | 2点 | 電氣人閒の虞 詠坂雄二 |
(2012/10/24 13:01登録) いやはや、何と評価して良いやら・・・。ホラー系の恐怖感・サスペンス感もないし、推理小説らしい推理もないし・・・。ただ唖然としたのみ。 |
No.304 | 7点 | 田沢湖殺人事件 中町信 |
(2012/10/19 18:45登録) 物語開始と同時に事件が起こり、すぐ謎解きが開始されるので、だれることなく読むことができました。密室や時刻表アリバイトリックなどありますが、それより大きなミスディレクションが本作の読みどころと思います。写真と○○・・・気になっていたのですが、そう来ましたか!ということでやられてしまいました。 |
No.303 | 8点 | ここに死体を捨てないでください! 東川篤哉 |
(2012/10/18 16:31登録) ドタバタ調の作風にも慣れ楽しめました。香織と鉄男のコンビがいいですね。そして奇想天外なアリバイトリックは、お気に入りのひとつになりそうです。そして犯人も、そのトリックに・・・洒落た構成です。 |
No.302 | 6点 | 今日を忘れた明日の僕へ 黒田研二 |
(2012/10/17 16:55登録) 記憶喪失の設定が面白い。事故以前のことは覚えているが、その後の毎日(前日)を忘れてしまうというもの。その間に、女子高生の自殺や、友人が殺害される事件が起きる。そのことがフラッシュバックし、自分が係わっているのではないかと、日記を調べ始めるのだが・・・。登場人物が少ないので、フーダニットよりホワイダニットの方が色濃いような感じを受けます。日記から真相にたどりつく過程は楽しめました。 |