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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1693件

プロフィール| 書評

No.933 6点 暗黒館の殺人
綾辻行人
(2016/06/13 13:52登録)
ジャンルは、新本格というより幻想・伝奇小説に分類されるのではないでしょうか。”視点”の存在(登場)もありますし、偶然が重なりあうことなどもありますし・・・(苦笑)。
『ダリアの時計』から、画家サルバドール・ダリ氏の代表作「柔らかい時計(記憶の固執)」を連想しました。この絵は氏の経験した夢に基づいて描かれ、時計は時空のひずみを象徴しており、現在と過去が入り乱れている夢の時間をあらわしているとのことです。本作のモチーフに通じるものがありますね。偶然か?。


No.932 5点 生きていたおまえ…
フレデリック・ダール
(2016/06/11 14:50登録)
倒叙形式で語られる犯罪計画そして実行、判事による追及はサスペンスフルで楽しめました。しかし、その後の主人公の考え方に感情移入できませんでした。というより心の変遷が理解できなかった(苦笑)。殺した妻を愛していたということなのでしょうが、何をもって愛とするのかが伝わってこなかった・・・。


No.931 8点 影男
江戸川乱歩
(2016/06/11 06:13登録)
(「BOOK」データベース)より~『影男!その正体は、速水荘吉・綿貫清二・鮎沢賢一郎・殿村啓介・宮野緑郎と無数の名をもつやせた男。さらに小説家としては佐川春泥という名で知られ、その執筆する怪奇異風の小説は世にもてはやされていた。このふしぎな男は何をもくろむのであったか!どんな人間ももっているヒミツの裏側を探求するのが影男の目的であった。影のような人間に変化して。かくて、影男の出現するところ、一軒家の地下室で行なわれる闘人、地底のパノラマ国等々。奇々怪々な事件の連続であった。名探偵・明智小五郎の明推理は。』~

オムニバス形式のような作品です。明智小五郎探偵登場は大人向け作品では本作がラストのようですね。大技の密室トリックの例示があったり、乱歩氏らしい覗き趣味もあったり楽しめます。

高評価の最大の理由は下記”先駆的トリック”に敬意を払うものです。

<以下ネタバレ>
有閑マダム達が秘密の組織を作り、そこで美青年二人を闘わせるというショーを開催していた。一人が死亡してしまい、世間体から内密にしたい。そこへ影男が現れる。「この青年が、あすまで生きていて、あす行方不明になったことにすればいいのです。そして、あなた方は、あすじゅうは秘密の行動をしないで、いつ聞かれても答えられるようなアリバイを作っておけばいいのです。事件を今夜からあすに移すわけですね」・・・これって、例の超有名作品と同じ!!!???・・・。
こんな発見をすることも古典を読む楽しみの一つですね。


No.930 6点 赤い密室 名探偵星影龍三全集(1)
鮎川哲也
(2016/06/10 11:44登録)
<ネタバレがあります>
「呪縛再現」・・・「りら荘事件」の原形です。解説によると同人誌(ガリ版)に載っっていた幻の作だそうです。「りら荘」の書評では「華」がない、つまり美人の登場がないなどと苦言を書いていますが、原案の本作では美人が登場しています。どうしていなくなってしまったのでしょうか?(笑)。本作登場のトリックは「りら荘」では使用せず、「憎悪の化石」での使用となっていました。また「朱の絶筆」の書評での苦言部分(ミスリードとして用をなさない)が、ここに登場していました(苦笑)。名探偵・星影氏と鬼貫警部の共演があることは収穫?しかし、初登場の星影氏はかなりキザで鼻持ちならない人物として描かれています。
「赤い密室」・・・長編での密室ものはほとんど考えることはしません、というより面倒くさい?・・・が、短編となるとクイズのようなものなので、かなり真剣になります(笑)。消去法で考えると割合簡単でした。警察がしっかり痕跡を調査すればわかるようなものですね。物理的密室と心理的密室をあわせたところや新聞紙によるアリバイ工作は買います。
「消えた奇術師」「妖塔記」・・・この密室も、これしかないというような、ごく初歩的なものでした。
「道化師の檻」・・・トリックは面白いが、見せ方が良くない。○○の存在や○○の出来事は私としては許容範囲外ですね。
「黄色い悪魔」・・・これもよくあるパターンでの合わせ技。
以上、密室ものはやはり先駆的なものでないと高評価はつけづらいということでした。


No.929 4点 街の観覧車
阿刀田高
(2016/06/08 10:53登録)
(再読)裏表紙より~『人生は観覧車、めぐるゴンドラ。人は他人と繋りながら生きている……。私鉄沿線の古い住宅地を見下ろす観覧車からの眺めのなかに、ふと目をひいたさまざまな人間模様。愛する人との邂逅、別れ、突然の死、憎しみ、殺人、避けられぬ運命、幸運とのすれちがのい―10のゴンドラで著者が奏でるロンドの世界。』~
ロンドといっても前の作品に登場した人物が、次の作品の主人公になるといったもので、ほとんど意味がありません。毒気が弱いのでこの評価。


No.928 5点 飛ばなかった男
マーゴット・ベネット
(2016/06/07 18:08登録)
回想シーンが長すぎて・・・。結局、物語の前後を逆にしただけのようなもの。


No.927 5点 朱の絶筆
鮎川哲也
(2016/06/06 10:51登録)
裏表紙より~『人気作家・篠崎豪輔が殺された。軽井沢の彼の山荘に元編集者、挿絵画家、作家志望者、ホステスら関係者が集まっている時だった。絶大な支持を笠に着て周囲の者には傲岸不遜な彼だったゆえ、誰にも殺害の動機は考えられた。だが、警察は容疑者すら絞れない。混迷のなか、さらに殺人は続き…。そこへ名探偵・星影龍三!鋭利な推理で不可解な事件の真相に迫る。』~
物語の流れ、第1の殺人のトリックなどは評価7点ぐらいと思います。読者への挑戦があるので気合を入れて読んだのですが、前半のミスリード?ミスディレクション?にはがっかりでした(苦笑)。まったく効果(影響力)なし!、これが大きなマイナスポイントとなってしまいした。第2以降の殺人のトリックは見るべきものがないし、伏線も弱いというより後出しの感が強かった。犯人を知っているとの発言だけで毒殺されてしまうのは、チョット酷過ぎやしませんか?。


No.926 5点 神様が殺してくれる
森博嗣
(2016/06/03 18:15登録)
「BOOK」データベースより~『パリで往年の大女優が絞殺された。両手首を縛られ現場で拘束されていた重要参考人リオン・シャレットは「神様が殺した」と警察で証言。彼は同時にその神の名前として僕の名を挙げた。僕に身に覚えはまったくない。リオンはかつて大学の寮の僕のルームメイトで、当時から多くの人をその美しさで幻惑した。僕は卒業以来2年半、一度も会っていない。容疑者の特定はおろか、なんの手がかりもないまま、やがて起こった第2の殺人。ミラノで有名ピアニストが絞殺された。またもや現場には皆睡したリオンがいた。インターポール(国際刑事警察機構)に勤務する僕は、現地の警察と連携しながら、独自に捜査を始める―。』~
本格ものとして期待して手に取りましたが、いい意味で裏切られました。著者がこの種の作品を!?という意味です。登場人物同士で、その程度のことは判るだろうというような疑問符がつく点もありますが、おおむね楽しめました。


No.925 6点 甦える旋律
フレデリック・ダール
(2016/06/02 06:53登録)
裏表紙より~『ヴァイオリンを胸に抱いて、ぼくの車に身を投げた女・・・その衝撃で過去の記憶をなくした彼女にぼくは恋をし、彼女の記憶が甦えるために色々なことを試みた。だが彼女の過去の断片が判ったとき、それは恐ろしい話だった。二人は逃げる。誰から?どこへ?-フランス推理小説大賞を受賞した長篇ラブ・サスペンス。』~
ラブ・サスペンスということで、ウィリアム・アイリッシュ氏の作品群に近いイメージです。二人は愛し合うようになるのですが、男は過去を知りたい気持ちと、悪い過去なら知らない方がいいと思う気持ちで揺れ動きます。しかし女性の記憶が徐々によみがえってくるという心理サスペンスものです。顛末はある意味で国民性の差を感じましたね。
余談ですが、あるサイトで「フランスミステリベスト100」と「作家別ランキング(上位30人)」を発表しています。ちなみに本作は63位、作家別は24位です。


No.924 7点 夜歩く
横溝正史
(2016/05/31 06:08登録)
題名「夜歩く」はディクスン・カー氏の作品名(1930)と同じだったので、氏を意識した内容か?と思いきや全く関係ありませんでした。それよりクリスティー氏を意識した作品だったのでビックリ!(笑)。首なしの真相とアリバイトリックは秀逸でした。


No.923 8点 黒い蘭の追憶
カーリーン・トンプスン
(2016/05/28 10:00登録)
裏表紙(略)より~『誘拐された少女ヘイリーは、必死の捜査にもかかわらず、惨殺体となって発見された。事件が迷宮入りして十九年後、ヘイリーの母親キャロラインの周囲では事件の関係者が次々と殺されていく。誘拐犯がふたたび戻ってきたのか、それとも……? 息詰まるようなサスペンスで全米書評子から絶賛をあびた大型新人のデビュー作。』~
読者からみた容疑者候補が次々と殺されたり、銃撃により怪我をしたりする。登場人物から容疑者は徐々に絞られてくるのだが動機が全く分からない。この辺までの展開は新人らしからぬものがあります。そしてラストでのどんでん返し。Good(笑)。本邦であまり評判にならなかったのは、主人公とその元夫の人物造形が感情移入できるような人物でなかったからかも?・・・。本作は「100冊の徹夜本 海外ミステリーの掘り出し物」(佐藤圭氏)から選んで読んでみた1冊で、本当に掘り出し物といった感じでした。


No.922 5点 切り裂く男
ウィリアム・J・コグリン
(2016/05/24 18:03登録)
(タイトル・男14冊目)裏表紙(略)より~『殺人者が戻ってきた・・・ルッソー警部補は確信した。その女の死体は首から下の皮を剥がれ、腹部は縦に切り裂かれて内臓が掻き出されていた。そして全身の骨という骨が折られていた。それは数年前に犯行を重ねた、エドワード・ティーグとそっくり同じ手口であった。彼は心神喪失を認められて無罪となっていた。法が野放しにしたのだ。』~
(昔、父親と一緒に猟に出かけ、早朝の霧のなかで獲物を待ちうけていたときと同じ気分だった。)というような猟と対比させたシリアルキラーの心理が挿入されており、結構不気味な感じがしました。シリアルキラーものとして、何か特長のある作品とは思いませんが、まあ、心神喪失で無罪となる事へ疑問(社会派的なメッセージ)がこめられていることは感じました。


No.921 5点 蝮のような女
フレデリック・ダール
(2016/05/20 08:16登録)
(タイトル・女31冊目)「BOOK」データベースより~『南仏の豪邸に棲む美しい姉と車椅子の妹。一夜のアバンチュールの謎を追って、禁断の館に足を踏み入れた男はたちまち“魔性”の虜に。毒された三角関係は、やがて意想外の破局へ…。 』~

200ページほどの中編です。内容は短編向きと思われるブラック・ユーモア系でした。もう少し男の心情(疑心暗鬼)が伝わってくればなあ・・・と思いました。しかし、あとがきによると著者の特徴は「心理描写のディテールにある」ということなので、あと2,3冊は読んでみようかとは思います。


No.920 6点 消されかけた男
ブライアン・フリーマントル
(2016/05/17 19:07登録)
(タイトル・男13冊目)2012版東西ベストではランク外となっています。なんとなく頷けます。スパイ物としての緊張感やスピード感に物足りなさを感じました。ラストの展開がサプライズという作品。


No.919 5点 誰かが泣いている
デイヴィッド・マーティン
(2016/05/14 17:45登録)
裏表紙より~『ピューリッツアー賞を受賞し視聴者の信頼も厚いニュース・キャスターのジョン・ライアン。ある日、彼は幼児虐待のニュースを読みながら涙を抑えることができず、結局番組を降番。その直後ライアンは、自宅前で黒人女性から奇怪なメッセージを手渡される。だが女性は彼の目前でタクシーに飛び込み自殺。衝撃をうけるライアンは、真相を掴もうと田舎町ハメルンへ向かう。そして、そこには18人もの赤ちゃんの殺害を噂される謎の小児科医キンデルがいた…。』~

主人公をはじめエキセントリックな人物ばかりで、ついて行くのが大変でした。グロテスクな描写やクレイジーな行動が大筋を占め、読後ドッと疲れが・・・(苦笑)。赤ちゃん殺害(噂)の真相は、ショッキングなものです。この点は高評価なのですが、物語の構成、リーダビリティにやや難があるような気がします。前作「嘘、そして沈黙」が好過ぎたのかも。


No.918 8点 嘘、そして沈黙
デイヴィッド・マーティン
(2016/05/13 08:12登録)
裏表紙より~『ワシントン郊外の邸宅で、実業家ジョナサン・ガエイタンが血まみれの死体で発見され、自殺と断定された。しかし、捜査にあたったキャメル刑事は、実業家の妻メアリーに秘密の匂いをかぎとった。彼女は前夜、邸宅に侵入した男の存在を隠しているのだ。その殺人狂の男フィリップは近くのモーテルに身をひそめ、次々と陰惨な殺人を引き起こし、事件は意外な展開を見せてゆく―。「『サイコ』『羊たちの沈黙』の伝統を受け継ぎ、新時代を築く傑作!」と絶賛されるD・マーティンのサイコ・スリラー問題作。』~
サイコ・キラー系なのでグロテスクな描写はありますが、素直に面白いと言える作品でした。人物造形(刑事、被害者?の妻、殺人鬼)は緻密でうまいと思います。殺人鬼については、少し頭が弱くドジなところがあるというところが若干の救いか・・・。ユーモア、ペーソスを取り混ぜ、自殺か殺人かという謎で引っ張て行きます。真相はこれに近いものは数作品ありますが、厳密な意味では初物でした。伏線はあるのですが、当然判りませんでした(苦笑)。ラストで題名(原題・邦題とも)の意味がわかります。エピローグでの粋な計らいが、人間ドラマ的な印象を与えてくれました。


No.917 6点 ブラジルから来た少年
アイラ・レヴィン
(2016/05/10 12:13登録)
アイデアはいいと思います。ただし、謎や題名の意味が中盤で判ってしまい、もったいなかったですね。もっと引っ張れば、もっと楽しめたのに・・・。裏に流れるテーマは「ローズマリーの赤ちゃん」と同じなのかも。○○の赤ちゃんと本作の少年たち。


No.916 5点 裁くのは誰か?
ビル・プロンジーニ
(2016/05/08 13:52登録)
米大統領選に因んで・・・。内容については、基本的に否定派ですが、サスペンスものなので容認(苦笑)。それらしきオチの後に更にとの二重落ちは楽しめました。本書評によれば森博嗣氏が本作(1977年、翻訳1992年)を絶賛しているとのことですが、氏が1999年に発表した作品で本モチーフを用いていたということで納得。


No.915 6点 クリーピー
前川裕
(2016/05/06 13:42登録)
裏表紙より~『大学で犯罪心理学を教える高倉は、妻と二人、一戸建てに暮らす。ある日、刑事・野上から一家失踪事件の分析を依頼されたのを契機として、周囲で事件が頻発する。野上の失踪、学生同士のトラブル、出火した向かいの家の焼死体。だがそれらも、本当の恐怖の発端でしかなかった。「奇妙な隣人」への疑惑と不安が押し寄せる、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。」~
題名の「ぞっと身の毛がよだつような;気味の悪い」というようなサスペンスものとは言えません。ホラー、サスペンス、推理ものの要素をいろいろと欲張りすぎたため、全体的に薄味になってしまい物語の構成自体も中途半端な感じとなってまいました。しかし、高評価の理由は、ホラー・サスペンス系と見せかけて、読者の期待を裏切る?結構本格的要素のある真相を用意しているところです。まあ、本格ものとして身構えて読めばわかるのかも(苦笑)。


No.914 6点 目は嘘をつく
ジェイン・スタントン・ヒッチコック
(2016/05/04 13:30登録)
裏表紙より~『わたしは騙し絵画家。人の目を欺く幻影を生みだすのが仕事だ。そのわたしのもとへ、美術品収集家として名高い大富豪の老婦人がやってきた。屋敷の舞踏室に、壁画を描いてほしいのだという。しかし、屋敷でわたしを待っていたのは、十五年前に起きて迷宮入りした殺人事件の、今も消えぬ暗い影だった…読後に強烈な印象を残す、心理サスペンスの新しい傑作。』~
娘の殺人事件については、老婦人は決して話そうとしない。隠された真相は?とは別にもう一つの物語が・・・。ということで結末は予想とは大分違っていました。著者によれば、「これはミステリでも何でもない。テーマは”錯覚(イリュージョン)”だ」ということです。毛色の変わった心理サスペンスでした。

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