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ミステリの祭典

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影男
明智小五郎シリーズ

作家 江戸川乱歩
出版日1968年01月
平均点5.83点
書評数6人

No.6 6点 虫暮部
(2022/10/18 13:01登録)
 “底なし沼” は江戸川乱歩屈指の名場面だと思っていたが、記憶よりもアッサリしたものだった。それでも(それ故に?)具体的にイメージすると怖い。
 一方、幻想小説じゃないのだから “パノラマ世界” はやり過ぎ。何かしらの種がある前提で読むから、浮き彫りになるのは設計者の “意図” であって、それが裸の美女の山脈とか言われると苦笑するしかない。
 そして、ほんの僅かな出番で全てかっさらう明智小五郎。この話に必要かなぁ? 影男を完全に主役に据えたノワール小説にした方が良かったのでは。

No.5 6点 クリスティ再読
(2020/11/30 23:28登録)
戦後の乱歩というと、何か気の抜けたような小説ばっかりなんだけど、本作と「化人幻戯」「十字路」は乱歩還暦記念と銘打って書かれた、最後の大人向け長編のグループになる。映画シナリオのノベライゼーションの「十字路」は乱歩臭が薄いし、「化人幻戯」は意識してパズラーを書こうとしたし....で「影男」は乱歩通俗長編の総集編みたいなものである。
だから「乱歩らしいね」といえばこの3作のうちで一番「乱歩っぽさ」はある。既出ネタ多数...だけどね、やはり「好きな」ことだから、それなりに筆は乗る。「化人幻戯」だと文章が弛緩して古臭く感じるけども、本作だとそれなりにはテンションを感じるね。
本作の主要人物は、猟奇の冒険者「影男」、犯罪トリックの実践者で殺人請負会社を経営する須原、それに地下パノラマ世界の創造者の3人。でこの3人は言うまでもなく乱歩の分身たち。最後はこの乱歩の欲望を罰するかのように、明智小五郎が一網打尽する。そうするとこの闇のヒーローたちのなんと卑小なことか(泣)ここは最後なんだから、せめて影男くらいは明智の手から逃亡して欲しかったよ。明智自身もこの3人とそう大して違う存在じゃないんだからね...
まあそれでも、名場面としては
・底なし沼に沈む女(スカートが花弁のように...)
・ナイフで斬り合う男女(SM)
・密室トリック
があるし、パノラマ世界描写もかなり充実。評者「乱歩ランド」がもし出来たら、絶対通いつめると思うよ。

No.4 8点 蟷螂の斧
(2016/06/11 06:13登録)
(「BOOK」データベース)より~『影男!その正体は、速水荘吉・綿貫清二・鮎沢賢一郎・殿村啓介・宮野緑郎と無数の名をもつやせた男。さらに小説家としては佐川春泥という名で知られ、その執筆する怪奇異風の小説は世にもてはやされていた。このふしぎな男は何をもくろむのであったか!どんな人間ももっているヒミツの裏側を探求するのが影男の目的であった。影のような人間に変化して。かくて、影男の出現するところ、一軒家の地下室で行なわれる闘人、地底のパノラマ国等々。奇々怪々な事件の連続であった。名探偵・明智小五郎の明推理は。』~

オムニバス形式のような作品です。明智小五郎探偵登場は大人向け作品では本作がラストのようですね。大技の密室トリックの例示があったり、乱歩氏らしい覗き趣味もあったり楽しめます。

高評価の最大の理由は下記”先駆的トリック”に敬意を払うものです。

<以下ネタバレ>
有閑マダム達が秘密の組織を作り、そこで美青年二人を闘わせるというショーを開催していた。一人が死亡してしまい、世間体から内密にしたい。そこへ影男が現れる。「この青年が、あすまで生きていて、あす行方不明になったことにすればいいのです。そして、あなた方は、あすじゅうは秘密の行動をしないで、いつ聞かれても答えられるようなアリバイを作っておけばいいのです。事件を今夜からあすに移すわけですね」・・・これって、例の超有名作品と同じ!!!???・・・。
こんな発見をすることも古典を読む楽しみの一つですね。

No.3 5点 斎藤警部
(2015/08/11 21:39登録)
なんだかツルンと読んじゃって、呆気に取られてあらおしまい、って。 イージー過ぎてプチ退屈なとこもあった。 何のオチ無く終わっちゃった。 影男が楽しそうだからいいや。

No.2 5点 ボナンザ
(2014/04/07 22:22登録)
これはかなりの意欲作。乱歩らしい。ただ、後半いつもの明智無双になってしまい、他作と差別化されないのが残念。

No.1 5点 シュウ
(2008/10/10 19:21登録)
怪人二十面相を主人公にして大人向けにしたような作品です。
パノラマ世界とか殺人請負会社とか面白い要素はあるんだけどなんか物足りない。

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