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ミステリの祭典

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生きていたおまえ…

作家 フレデリック・ダール
出版日1980年12月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 人並由真
(2021/08/08 07:16登録)
(ネタバレなし)
「わたし」こと40歳の建築業者ベルナール・ソメは、30歳の不遜な金貸しステファン・ムソーに800万フラン以上の借金があった。ベルナールは、15年間寄り添った妻アンドレとステファンの間に、ありもしなかった不倫関係を偽装。妻を寝取られて復讐した哀れな哀れ夫に自分を見せかけながら、完全犯罪をたくらむが……。

 1958年のフランス作品。

 自分的には、主人公の内面の変化はまあ良い。そういう心境の変異も、まあまあ、あることだと思える。

 ただし問題は、終盤のどんでん返しが、かなり早めにヨメてしまうことで、この可能性は読者の大半が気づくだろ、という感じである。
 まあそのラインを越えなければ、二転三転ものの形質のなかで、それなりに楽しめる作品ではあろう。
 スパイス的に語られる、ある登場人物の思惑もコワイし。

 悪くはない。「まあ楽しめる」。でもあんまり高い点もあげられない、という意味合いで、この点数か。
 
 ところで文春文庫の登場人物紹介に、なんで中盤からのそれなりに重要キャラ、ルショワール判事の名前が記載されてないの? ステファンの召使いのベトナム人、リー・グエン(こっちは登場人物一覧に名前が記載)より、この判事の方が中盤以降は物語の上で大きな役割を負うと思うのだが。

No.2 5点 蟷螂の斧
(2016/06/11 14:50登録)
倒叙形式で語られる犯罪計画そして実行、判事による追及はサスペンスフルで楽しめました。しかし、その後の主人公の考え方に感情移入できませんでした。というより心の変遷が理解できなかった(苦笑)。殺した妻を愛していたということなのでしょうが、何をもって愛とするのかが伝わってこなかった・・・。

No.1 6点 kanamori
(2015/04/28 18:51登録)
多額の借金を抱える〈私〉ベルナールは、愛情を感じなくなった妻アンドレを小道具にして、金融業者ステファンを殺害する計画をたて実行する。ベルナールの完全犯罪は成功したかに思えたその時、色々な方向から破綻の兆しが訪れて---------。

フランスの人気作家、フレデリック・ダールの初期の傑作サスペンス。スパイ小説やサン・アントニオ名義の軽妙な警察小説も邦訳されていますが、やはりダールの本領はサスペンス小説にあります。
本書は文庫で200ページに満たない小品の作品ということもあって一気読みでした。
ベルナールの殺人計画が倒叙形式で語られる第1部だけでもスリリングで十分に面白いですが、謀殺が発覚以降、やり手の判事ルショワールや女性弁護士シルヴィが登場してからの、物語を二転三転させる第2部が作者の真骨頂でしょう。そのなかで、主人公の心理状況が徐々に変貌していく描写が秀逸で、このあたりはジャン・コクトーが評価するのもわかる文学性を感じます。
フレデリック・ダールといえば、以前は古書店で薄い文春文庫をよく見かけたけれど、最近はほとんど見なくなった。超入手難で知られる「絶体絶命」あたりを文庫で復刊してもらいたいものですね。

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