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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1020 4点 猿来たりなば
エリザベス・フェラーズ
(2017/06/02 11:14登録)
謎としては短編向きか?。よって長編としてのプロットに問題があるのかも?。つまり、それほど魅力的ではない謎で終盤まで引っ張っていくので、どうしても退屈な展開となってしまう。謎もだいたいの予想がついてしまう。よって、中盤辺りで謎を明らかにし、そこからもう一つの物語(真相)を構築した方が二度楽しめる小説になったような気がします。


No.1019 5点 ロイストン事件
D・M・ディヴァイン
(2017/05/27 08:20登録)
題名に異議あり!(笑)。もしミスディレクションの意図があったとしても、あまり感心するものではなかった。内容としてのミスリードはうまいと思いますが、あくまでも題名としてはどうかという意味です。ロイストンという人物像が巧く描かれているだけに残念。まあ、著者らしい細かい伏線と回収は読みごたえはありますし、ラストの勿体ぶった大芝居は楽しめました。


No.1018 7点 真夜中の死線
アンドリュー・クラヴァン
(2017/05/21 20:38登録)
裏表紙より~『セントルイス・ニューズ』のエヴェレットは、事故にあった同僚の代わりに、その夜死刑になる男へのインタヴューを担当するよう命じられた。ところが下調べを始めると、事実関係に不審な点が浮上してくる。これは無実では? 雰時一分の死刑を止めるべく不埒な記者が夜の街に必死の活動を繰り広げる、絶妙の時限サスペンス!~

600頁の長編。デッド・リミテッド型サスペンスです。冤罪を晴らすための正義感を前面に出すというようなこともなく、エンタメに徹していると思います。まず主人公が女たらしの浮気性であり、妻から離婚を申し出られたり、新聞社からは首を宣告されるといった具合。といっても死刑囚側の描写には、ホロリとさせられる場面も用意されています。プロットもよく考えられており、終結に向けて一直線ということもなく、読者に期待させておいて、それを裏切るというような紆余曲折があります。


No.1017 5点 並木通りの男
フレデリック・ダール
(2017/05/10 15:00登録)
大晦日の夜、ウィリアムは男を車で撥ね死亡させてしまった。その妻に連絡しに行くが、死んだはずの男から「怪我で入院、心配するな」と電報が届く。200頁ほどの中編。フランス・ミステリーらしい毒のある結末か?と思いきや、その期待は見事裏切られました(褒め言葉)。


No.1016 7点 山口線"貴婦人号(エレガンス・トレイン)"
草野唯雄
(2017/05/04 11:52登録)
津和野へ向かう山口線下りSLが県境のトンネルにさしかかったとき、崖の上からカメラを構えていた男が突然、宙にとんだ。容疑者となった男はSLに乗車しており、その現場を目撃していたのだ・・・。このトリックは島田荘司氏張りのトリックを思い起こしますが、氏のデビューより以前の発表であり、かなりの高評価としたいと思います。物語は、ほぼ倒叙刑式のような感じで進行します。全体のプロットは、ミステリーファンならすぐ察しがついてしまうと思います。それが明らかになる場面があります。本文~「うーん・・・」誰かが唸った。目の前にモヤモヤと立ち塞がっていた霧。それが一気に吹き払われた感じ。~正にその通りでした(笑)。


No.1015 7点 黒龍荘の惨劇
岡田秀文
(2017/04/30 17:34登録)
トリックにはビックリです。私的には「禁断のトリック」と呼んでいるものでした(笑)。うまく応用されており、まったく気がつきませんでした。残念な点が二つほど。派手な事件の割には淡々と語られており、おどろおどろしさをあまり感じることができなかったこと。探偵の役回りの設定(前作を未読のため不明です)が、探偵らしくないこと。つまり警察に先を越されたことや、ロジックを端折っていたことなどでした。


No.1014 7点 仮面病棟
知念実希人
(2017/04/23 20:13登録)
ミステリー通には、判り易い犯人像みたいですね。一般的には、「面白かった。一気読みできた。」との評が多いようです。私的は後者に一票(笑)。在りそうで、無さそうな、そんなプロットでした。サスペンスものとしてはよくできていると思います。ミスリードの点では、直近に読んだフランスミステリー(2012作品)に同様なアイデアで、もっと強烈なものがあり、ちょっと残念な気がしました。


No.1013 5点 かがやき荘アラサー探偵局
東川篤哉
(2017/04/22 20:07登録)
ある事情で会社を首になり、シェアハウスに住む三人組。家賃が払えず、事件を解決することで家賃を免除してもらおうとする。その主人公のアラサー3人組にあまり魅力を感じることができないのが惜しいところ。著者のユーモアのうちでは、ドタバタ調の色恋ものがお気に入りなのですが、本作では、お相手役の啓介との色恋沙汰はないのです。残念。内容的には、「洗濯機は深夜に回る」の謎がなるほどと思いました。


No.1012 7点 ブラディ・ローズ
今邑彩
(2017/04/17 16:59登録)
裏表紙より~『美しい薔薇園を持つ屋敷の主人のもとに嫁いだ花梨。彼の二番目の妻は謎の墜落死を遂げたばかりだったが、主の妹・晶はじめ屋敷の一同は新しい花嫁を歓迎する。やがて、花梨のもとに悪意をむきだしにした脅迫状が届くようになり―。差出人はいったい何者なのか?傑作サスペンス長篇。』~

好みのラスト一行的な作品です。脅迫状は梨花の部屋に置かれ、犯人は薔薇園の住人(主人、その妹、お手伝い2人、庭師)しかいない。さて誰か?という謎。この真相は誰も当てることはできないでしょう(笑)。結構凝ったプロットです。サスペンスなので、伏線はそれほどありませんでした。余談ですが、家の庭に植えてある薔薇の名が数種でてきて楽しめました。


No.1011 6点 霧の晩餐―四重交換殺人事件
笹沢左保
(2017/04/15 13:33登録)
裏表紙より~「「私にも殺したい人間が…」ひとり旅で岩手県遠野を訪れた律子は、雨宿り先で偶然三人の女と知り合った。行動を共にした四人は、胸を刺された瀕死の男を発見するが、事件に巻き込まれることを恐れ、見殺しにした。共通の秘密を背負うことになった四人は、現場から逃げる車中で、それぞれに殺したい人間がいることを知る。やがて一人が、“交換殺人”を提案した…。」~
偶然に出会った4人が、偶然にも殺したい人物がいる。さらにもう一つの偶然が存在した。でもそんなの関係ねえ(古いか)。プロットは面白いし、オチはフランスミステリー的なエスプリが効いていて結構好みのタイプの小説でした。


No.1010 5点 フランス白粉の秘密
エラリイ・クイーン
(2017/04/06 23:04登録)
物語開始早々から事件が発生、この展開は好みです。しかし、この人物が真犯人又はミスリード用の人物であればいいなと思いながら読み始めると、この人物は犯人ではないと初期段階で明言されてしまいました。トホホ・・・。推理小説で、これは失敗では?。あと、非常に気になったのは、大量の血痕の処理はどうなったのでしょう?。結構重要ポイントのはずですが、まったく解明されていません。消去法自体は面白いと思いますが、その消去する理由が論理的でないところがありました。まあ、ハッタリをかましたとエラリー自身が言っているので仕方ないのですが・・・。


No.1009 4点 屋上の道化たち
島田荘司
(2017/04/01 14:57登録)
意図的に軽薄な登場人物にしているのは分かるのですが、そのおかげで物語自体も軽薄な感じとなってしまいました。著者に期待していた作風とは、かけ離れていて残念な結果。


No.1008 6点 殺人四重奏
ミシェル・ルブラン
(2017/03/29 11:46登録)
皮肉なラストは、フランス・ミステリーらしいと言えるのではないでしょうか。なにしろ、フランス推理小説大賞受賞作ですから(笑)。前半に告白があります。題名から、そのパターンがずっと続くのかと危惧しましたが、後半ではひねりが加えられており一安心。200ページ余りの作品で、「最後の一行」的な作品でもあります。気楽に読めるフランス・ミステリーといったところ。


No.1007 6点 ラスト・ウィンター・マーダー
バリー・ライガ
(2017/03/23 22:11登録)
三部作の完結編とは知らずの読書。前作からの完全なる続き物でした。前二作の読者からも「今までの話を少し復習してくれないと、読んでる側は辛いなぁ」との声あり(苦笑)。訳者あとがきを読み、何とか人物相関図を把握するという具合でした。リーダビリティはありますし、親子の対決も読みどころでした。またサプライズも用意されています。まあ、シリーズを読んでいる人にとっては、ある程度予想はつくのかも?。青春ミステリーというより、シリアルキラーものといってよいと思います。ただ、ある重要人物のその後が不明で、完結編としては?マークがつきます。


No.1006 6点 秘密の友人
アンドリュー・クラヴァン
(2017/03/19 16:35登録)
法月綸太郎氏の「ミステリー通になるための100冊(海外編)」で紹介された一冊で、我孫子武丸氏の推薦本とのこと。精神科医のコンラッドは殺人罪で起訴された少女エリザベスを看ることになる。彼女は二重人格で「秘密の友人」が現れるという。この辺まではエログロ描写のあるサイコキラーものか?と思いきや、途中から物語は全く違う展開となって行きます。タイムリミット系エンターテイメントと言っていいのでは。犯人は犯行を否認するのですが、ある人物が言う印象的な言葉でラストを迎えます。


No.1005 4点 夜は千の目を持つ
ウィリアム・アイリッシュ
(2017/03/14 20:07登録)
法月綸太郎氏の「ミステリー通になるための100冊(海外編)」で紹介された一冊。いまなら「ホラー」に分類されるかも・・・とありましたが、まったくその通りでした(苦笑)。タイムリミットものの著者らしさは垣間見れたのですが、嗜好と一致せず、この評価。


No.1004 6点 そして医師も死す
D・M・ディヴァイン
(2017/03/07 16:35登録)
本作のトリックは、パトリック・クエンティン氏のパズルシリーズで一度お目にかかって以来です。結構気に入っているプロットの一つです。主人公、婚約者、未亡人の色恋沙汰に気を取られ過ぎてしまいました。それが作者の罠だったのか?(笑)。


No.1003 5点 システィーナ・スカル
柄刀一
(2017/03/03 09:44登録)
表題作~ミケランジェロの「最後の審判」を見てショック死した老婦人。その老婦人が持っていた人骨から過去の首切り事件の謎を追うというものです。首切りの根拠は、今一つ説得力がないような・・・。また、ショック死の原因は「最後の審判」が○○○に見えるというもの(新説?)ですが、私にはこじつけのようにしか思えませんでした(苦笑)。


No.1002 6点 複雑な殺人芸術
評論・エッセイ
(2017/02/21 22:32登録)
1997年から2006年の評論集。「ミステリー通になるための100冊(海外編)」1ミステリー幼年期、2探偵小説の黄金時代、3アフター・ザ・ゴールドラッシュ、4アメリカ探偵小説の自立、5フレンチはお好き?、6あいつの名はポリスマン、7スパイ・ストーリー、8追憶のネオ・ハードボイルド、9一発屋(?)たち、10ミステリーは進化する?と各項目10冊程度の作品と2、3行の簡単な紹介文。気になったのは「夜は千の目を持つ」ウィリアム・アイリッシュ~今ならホラーに分類されるかも。「殺人四重奏」ミシェル・ルブラン~女優殺しの四段返しの真相をロンド形式で描いた。「秘密の友人」アンドリュー・クラヴァン~我孫子武丸が絶賛しているのでリストに追加。の3冊です。
続いて14作品の評論。本書を手に取ったのは、「わが子は殺人者」パトリック・クェンティンの解説文を読みたいがためのものでした(笑)。「騙し絵の檻」ジル・マゴーンは著者と森英俊氏が絶賛していますが、さてどうでしょうかといったところ。
次の「初期クイーン論」は難解でした。探偵小説を数学定理に当てはめ説明していると思うのですが、なんとなくこじつけのような気もします。いわゆる後期クイーン的問題「「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと」も、そもそも証明してくれなくても読者は困らないのでは?。読後感は、評論家気質(多読で良く分析している)のほうが作家気質を上回っているような気がしました。お気に入りの作家の1人なので創作活動(本格長篇)で頑張ってもらいたい。


No.1001 5点 赤い橋の殺人
シャルル・バルバラ
(2017/02/19 17:27登録)
裏表紙より~『19世紀中葉のパリ。急に金回りがよくなり、かつての貧しい生活から一転して、社交界の中心人物となったクレマン。無神論者としての信条を捨てたかのように、著名人との交友を楽しんでいた。だが、ある過去の殺人事件の真相が自宅のサロンで語られると、異様な動揺を示し始める。』~

1855年の作品で、「罪と罰」(1866)への影響があった作品かも?ということで拝読。共通点は主人公の思想が似ていること、貧しさからの殺人があること、そして苦悩といったところです。まあ比べてもあまり意味はない?。200Pの中編ですが主人公の幻想や苦悩は結構濃いめに描かれていました。本作や、初のミステリー長篇といわれる「ルルージュ事件」(1866)がフランス生まれであることが興味深かった。

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